USPTO's Supplemental Examination Guidelines for Determining Compliance with 35 U.S.C. 112 Federal
Register/ Vol. 76, No. 27 Summarized by Tatsuo YABE on |
112条の要件に対する補足ガイドライン (以下要旨のみ)
米国特許庁は112条(特に112条第2項のクレームの明瞭性)に関する補足ガイドラインをFederal Registerにて公表した。 このガイドラインはFederal Registerでの公表日(2011年2月9日)より施行する。 本ガイドラインの目的は審査経過を明瞭にすること、即ち、審査官のクレーム解釈を明瞭にし、クレームが不明瞭と判断される場合にはその理由を出願人に明瞭に伝え、出願人に補正の機会を与え、(権利化された後に)許可された理由を理解しやすい経過書類を作成することにある。 こうすることで、公衆へ権利範囲を通知する特許の役割を果たし、結果として特許の品質を向上することに繋がる。
本ガイドラインはこれまでの112条第2項の審査の仕方を変更するものではなく、寧ろ、まとめという形式で、112条第2項と112条第6項のMPF(Means+Function)形式で表現された構成要素(及び機能表現されたクレーム)との相互関係を説明し、また、出願人にとってはどのような場合にクレームの用語が不明瞭と判断されるのか、且つ、不明瞭と判断された場合に出願人はどのように補正(或いは対応)するべきかの指針を示す。
http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2011-02-09/pdf/2011-2841.pdf
PART I (112条第2項に対する審査のガイドライン)
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STEP 1: クレームの解釈
A. 最も広い合理的な解釈
審査官は、クレームを解釈するときは、MPEP2111に基づき、最も広い合理的な解釈をしなければならない。 尚、最も広く合理的な解釈をする場合に、クレーム用語は明細書で特記されていない場合には明らかな(plain)意味合いで解釈されなければならない。 ここで、明らかな(plain)意味合いとは当業者にとって通常且つ一般的な意味合いである。 そのような解釈をするための最良の手引きは明細書である。 明細書でクレーム用語の意味合いが明瞭に説明されている場合にクレームの公衆への通知機能が最大限に果たされる。
B. 審査段階におけるクレームの明瞭さの判断基準は特許されたクレームとは異なる。
特許されたクレームには282条に基づきその有効性が推定される。 裁判(訴訟)においては、クレーム用語が理解不能な程度に不明瞭な場合を除いて明瞭と判断する。 拠って、裁判所においてはクレーム用語はその最も広範な合理的な解釈(意味合い)が与えられない。 然し特許が発行されるまでは有効性の推定を受けないので、審査官はクレーム用語の意味合いを最も広く、且つ、合理的に解釈をし、明白な審査経過を作成することが重要である。 クレーム用語に最大限広範な合理的意味合いを与えたときに、2つ以上の合理的な解釈が可能となる場合には、当該クレーム用語は不明瞭である。
C. クレームの構成要素は112条第6項の解釈を起因するか?
審査官はクレーム用語が112条第6項の解釈を起因するか否かを判断しなければならない。 もしその解釈が妥当すると判断される場合には、当該用語を明細書の開示物とその均等物に限定解釈する。
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STEP 2: クレームの用語が明瞭か?
審査段階において、出願人は不明瞭なクレーム用語を補正する機会を与えられると共に、クレームされた発明の権利範囲を明瞭且つ正確に記載する義務を負う。
A. 確定できないクレーム用語
1. 機能的に表現されたクレーム:
クレームの用語をそれが何であるかを規定するのではなく、それが何を実行するかで規定する場合に、当該クレーム用語は機能的表現と解される。 112条第6項で規定しているとおり、クレーム用語を機能的に表現すること自体は問題ではない。 しかし、112条第6項のMPF(Means + Function)の形態はとらずとも、クレーム用語を機能的に表現することも可能である。 そのようなクレーム用語として、まずは構造体としてクレーム用語を規定し、その後にそれが何をするかという形式で規定する。 a conical spout (the
structure) that allow several kernels of popped popcorn to pass through at the
same time (the function). -- In re Schreiber (CAFC 1997)
以下のようなクレーム用語が機能的で、不明瞭と判断された。
"fragile gel"は明細書でそのサポートが機能的に表現されているだけなので不明瞭と判断された。 どの程度の「脆さのジェル」なのか不明瞭であると判断された。 - Halliburton Energy Servs. V. M-I
LLC (CAFC 2008)
"comparatively large grains
of such size and contour as to prevent substantial sagging or offsetting during
a normal or commercially useful life for such a lamp or other device" はgrainのサイズ及び形状を特定できないとして不明瞭と判断された。
- General Elec. Co. v. Wabash Appliance Corp. (
"substantially pure carbon
black in the form of commercially uniform, comparatively small, rounded smooth
aggregates having a spongy or porous exteiror"は不明瞭と判断された。 - United Carbon Co. v. Binney &
Smith Co (
以下は明瞭と判断された。
"transparent to infrared
rays"は明瞭とされた。 何故なら、明細書で、透明の度合いは各種ファクターに依存するものの、実質的な量の赤外放射線は常に透過すると開示されていたからである。 - In re Swinehart (CCPA: 1971)
" essentially free of
alkari metal"は明瞭と判断された。 何故なら出願人は当該用語を当業者が理解するに十分な指針および例を明細書で示しているからである。 - In re Marris (CAFC: 1997)
機能的に表現されたクレームの文言が不明瞭であるか否かを審査官が判断するときには、次の項目を考慮すること: (1) クレームでカバーされる発明主題が明白であるか? (2) 文言は発明の境界を明白に規定しているか、それとも解決されるべき問題を規定あるいは得られる結果のみを規定しているのか? (3) どのような構造あるいはステップがクレームに包括されるかが当業者に理解されるか?
審査で不明瞭と判断された場合に出願人は(1) 定量的な表現に補正すること; (2) クレームの構成要素を満たす特性を算出する数式が明細書に示されていることを指摘する; (3) クレームの構成要素が満たされるか否かを判断するガイドラインが明細書にあることを示す; 或いは、(4) クレームの機能を果たす構成(明細書の開示)にクレームを補正する、などで不明瞭の拒絶を回避可能である。
2. 度合い(程度)を示す用語
用語の度合いがクレームで規定されている場合に、審査官はその度合いを計測する基準が明細書にあるか、もしその基準がないとしても、当業者にとってその度合いを含むクレームの権利範囲が明瞭であるか否かを検討すること。 審査段階において、出願人は規則132条に基づく宣誓書でクレーム用語を満たすものと満たさないものの例を提示しても良い。
3. 主観的に表現された用語
上記した度合い(程度)を示す用語の解釈と同様に、クレームに主観的な用語がある場合に当該用語の基準を示す開示が明細書にあるかを検討すること。
Datamize判決(コンピューターとインターフェースするスクリーンに関する発明)において、"aesthetically
pleasing look and feel"という用語が使用されたが、見る人によってpleasingか否かの判断が異なるであろうという理由で不明瞭と判断された。
4. マークッシュ(Markush)形式のグループ
Markushクレームは一般的に以下のように表現される:
selected from the group consisting of A, B, and C;
Markush形式であるからといって不明瞭と判断されるわけではない。 但し、Markushクレームにおいて、(1) 構造的な類似性(同一の物理的あるいは化学のクラスに属する)を共有しない; 或いは、(2) speciesに対する共通の使用方法(機能的に均等物として記載されているか、当業者にとって周知である)がないという場合にはMarkushクレームは不明瞭と判断される。
5. 従属クレーム
112条第4項に基づき、従属クレームはその従属先の(親クレーム)の全ての特徴を含むと解釈される。 拠って、従属クレームでありながら、従属先のクレームの特徴の一部を削除したり、置換したりする場合には当該従属クレームは不明瞭と判断される。
B. 明細書とクレームとの整合性
明細書は、審査官と公衆に対しクレーム用語の意味合いを明確にするためのクレーム用語の解説書(用語集)として機能することが望ましい。
とは言え、クレーム用語の意味合いを解釈するのに必要なガイダンスを明細書が示している(例: クレーム用語と明らかに均等な用語を使用する場合)限りは、クレームで使用する用語と全く同じ文言を明細書で使用する必要はない。
クレームの用語が明白である場合であっても明細書の開示と矛盾がある場合にはクレームは不明瞭と判断される。
C. 112条第6項に基づくクレーム用語の解釈
1. クレーム用語が112条第6項解釈を起因するか?
クレームの用語に "means for" 或いは "step for" というフレーズを使用している場合には112条第6項に基づく解釈をするという推定が働く。 しかし、112条第6項の解釈が推定された構成要素の機能を実現するための構造をクレームでさらに規定している場合には当該推定に反証可能である。
逆に、 "means for" 或いは
"step for" というフレーズを使用していない場合には、112条第6項に基づく権利解釈をするという推定は働かない。 しかしながら、"means for" あるいは "step for" の代わりに用語を置換しただけで、結局のところ機能表現をしている場合には112条第6項の適用を受けるであろう。 例えば、"mechanism for"、"module for",
"device for", "unit for", component for ",
"element for", "member for", "apparatus for",
"machine for"、或いは、 "system for"などがある。
逆に以下の用語は112条第6項の適用を受けなかった(以下の用語を使用するだけで112条第6項の解釈を免れるという短絡的な理解はNG:筆者注):
"circuit for",
"detent mechanism", "digital detector for", “reciprocating
member", “connector assembly", "perforation", "sealingly
connected joints, "eyeglass hanger member"などがある。
以下のときに、審査官は112条第6項の解釈を適用する:
(1) クレームの構成要件が means for または step for というフレーズを使用し、 或いは、非構造的な表現を使用し、そのフレーズ或いは表現が構造的な表現で修飾されていない場合; (2) クレームの means for または step for というフレーズ、 或いは、非構造的な表現が、機能的な用語で修飾されている場合; または、(3) クレームの means for または step for というフレーズ、 或いは、非構造的な表現が、機能を果たすために必要な構造、材料、行動を充分に規定していない場合。
2. 112条第6項に基づくMPF形式のクレーム用語が112条第2項に基づく不明瞭と判断されるのは?
クレームの構成要素が112条第6項に基づく解釈が妥当すると判断された場合には、審査官は当該要素のクレームされた機能を決定し、明細書に当該機能を達成するための構成、材料、或いは、行動が開示されているかを検討する。 112条第2項の明瞭性の要件をパスするには、クレームされた機能と明白にリンクする構成、材料、あるいは、行動が明細書に開示されていなければならない。
審査官がクレームされた機能を実現するための構成に対応する明細書の開示を特定するのが困難な場合には、規則1.105条に基づき出願人に説明を負担させても良い。
3. コンピューター実行型のMPF形式の構成要素
コンピューター実行型のMPF形式の構成要素がある場合には、それに対応する明細書の開示は単なる一般目的に使用されるコンピューター或いはマイクロプロセッサでは不十分である。 この対応する明細書の開示とは、一般目的に使用されるコンピューター或いはマイクロプロセッサをMPFで規定された機能を実行する特別のものに変換するアルゴリズムを含まなければならない。 拠って、明細書にコンピューターあるいはマイクロプロセッサに関連するアルゴリズムが記載されていない場合には112条第2項に基づく拒絶が妥当である。
過去の幾つかのCAFCの判例において、特許権者が一般目的に使用されるコンピューターをクレームで規定する機能を実現するための特殊目的のためのコンピューターに変換するためのアルゴリズムが当業者にとって自明の場合には、明細書から割愛できると主張しているが、そのような理解は間違いである。 何故なら、出願人は、自らがMPF形式で規定したクレーム用語に対応する十分な構成物を明細書で開示する義務を負っているからである。
出願人は112条第6項の解釈を意図し、MPF形式でクレームの用語を表現した場合には、MPF形式で規定されたクレームの構成要素は明細書で開示された構成(ハードウェアとソフトウェア)およびその均等物に限定的に解釈される。 然るに、審査官はクレームのMPF(の機能)のみを満たすソフトエアの全てを含むと解釈するべきではない。 もし、クレームのMPF用語に対応する構成(アルゴリズムおよび当該アルゴリズムでプログラムされたコンピュータ或いはマイクロプロセッサ)が明細書に記載されていなければ、当該MPF用語は不明瞭と判断され、拠って当該用語を含むクレームは112条第2項の基に拒絶されるべきである。
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STEP 3: クレーム用語の不明瞭さを解消する
A. 審査官は明瞭な経過書類(記録)を作ること。
B. 拒絶理由は充分説明すること:
クレームを不明瞭として拒絶をするときには、その理由を充分に説明し、出願人がそれに対応できるようにすること。 クレームされた用語よりも、さらに良い用語表現があるという理由のみでは不明瞭と判断してはならない、寧ろ、出願人により良いクレームの表現を提案するのが望ましい。
C. 効率の良い審査をすること:
1. クレームが不明瞭な場合に、それをどのように解釈して新規性・進歩性の拒絶をしたのかを明瞭に説明すること。
2. クレームの明瞭さのみが拒絶理由で残るような場合には出願人とのコミュニケーション(電話インタビューなど)で解決するべく努力すること。
D. 審査官の審査記録を明白にすること:
1. 審査経過全体を見て、許可に至った理由が明瞭でない場合に、審査官は特許許可理由を記録に残すことが望ましい。 特にインタビューの後に特許許可とする場合には特許許可に至った理由をきちんと記録するべきである。
2. クレームの用語(構成要素)を112条第6項に基づく解釈をする場合には、その旨を拒絶理由通知で述べること。
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PART
II:
コンピューター実行型の機能クレームの審査に対する補足情報
1) 112条第1項の開示要件を満たすか否かを判断する;
クレームを機能的に表現する場合に、所望される結果のみを規定することも可能である。 しかし、そのようなクレームがある場合、明細書においてクレームで規定された所望される結果を実現するための詳細な説明が必要である。 コンピューター実行型の機能クレームを審査する場合に、審査官は、明細書に開示されたコンピューターとアルゴリズム(必要なステップ、又は、フローチャート)の説明が、当業者がクレームされた機能を実行するのに充分であり、クレームされた発明主題を発明者が確かに所有していたということを当業者が合理的に理解できるレベルであるか否かを判断すること。
当業者がクレームされた発明主題を実現できるレベルであり、且つ、発明者が当該クレームされた発明主題を所有していたことが合理的に理解できるレベルに明細書の開示がない場合には112条第1項の「開示要件」違反となる。
2) 112条第1項の実施可能要件を満たすかを判断する;
クレームの権利範囲の全域に渡って実施可能要件を満たすこと(当業者が過渡の実験 "undue experiments" をすることなく発明を実施できること)。 過渡の実験(Undue Experiments)が必要か否かを判断するには以下の要件を考慮に入れる:
@ クレームの広さ; A 発明の性質; B 先行技術; C 当業者のレベル; D 当該技術の予想可能性; E 発明者が記載する実施化に対する指針; F 発明の試作品の存在; G 明細書の開示を参酌し、発明を実施するのに必要となる実験の数;
過渡の実験(不当な数の試行錯誤)が必要か否かは単一の要因で判断するのではなく、上記の要因を比較衡量すること。
3) 102条(新規性)および103条(非自明性)の要件を満たすか否かを判断する;
機能的に表現されたクレーム用語で、特定の構成を規定していない場合には、当該用語で規定された機能を実行可能な全てのデバイス(装置)を包括するという理解で新規性と進歩性を判断する。
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