L (Microsoft Corp. v. i4i Limited Partnership,
U.S. Sup Ct. granted writ of certiorari November 29, 2010
(合衆国最高裁判所: 2010年11月29日、裁量上訴受理)
2010年11月30日、合衆国最高裁は、 審査官に検討されなかった引例でもって特許の無効性を証明するときの基準は、 「明白且つ説得性のある証拠」が妥当するのか、否かに関して審理するとした。 Summary by Tatsuo YABE December
07, 2010
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問題となった特許は、i4i (Infrastructures for Information Inc.,:カナダの会社)のUSP5787449で、1994年6月2日に出願され、1998年7月28日に発行された特許である。1995年6月8日前に出願された所謂特許発行後17年の有効期間がある特許である。当該特許は、ドキュメントのコンテンツとメタコードとを個別に記憶することでXMLのようなマークアップ言語を含むドキュメント編集の手法に関する。
当該特許のクレーム1は以下の通りである。
1. A computer system for the manipulation of the architecture and content of a
document having a plurality of metacodes and content by producing a first map of
metacodes and their addresses of use in association with mapped content; said
system comprising:
metacode map distinct storage means;
means for providing a menu of metacodes to said metacode storage means;
and means for compiling said metacodes of the menu by locating, detecting and
addressing the metacodes in the document to constitute the map and storing the
map in the metacode storage means; and
means for resolving the content and the metacode map into the document.
マイクロソフト社(MS社)がMSワードソフトにXML編集機能を組み込んだときに、i4i社が侵害訴訟を提起した。 テキサス州東部地区連邦地裁はMSの販売行為を故意侵害と判断し、陪審による2億ドル(約170億円)の損害賠償、裁判官による4千万ドル(約35億円)の賠償金の増額と、XML編集機能を備えたワードソフトの販売差止め(2009年8月11日の差止め命令の60日後から執行)の判決を下した。 尚、MS社は当該判決を不服としCAFCに控訴し、差止めを一時くい止めたが、2009年12月22日、CAFCは地裁の判決(特許の有効性、故意侵害、損害賠償額の増大、販売差止めの決定)を支持した。
2010年11月29日、合衆国最高裁は、MS社の裁量上訴を受理することを決定した。 最高裁での審理の争点は以下の通り:
米国特許法第282条によると、「特許はその有効性が推定される、然るに、特許、或いは、当該特許のいずれかのクレームの無効を主張する場合の立証責任は当該無効を主張する者が負担する」と規定されている。 CAFC(連邦巡回区控訴裁判所)は、マイクロソフト社に対して審査で引用されなかった102条(b)項の引例を用いて特許の無効を立証するにしてもその立証は「明白且つ説得性のある証拠(*1)」によって証明しなければならないと判断した。
争点は、CAFCの判断、「マイクロソフトの無効の抗弁は明白且つ説得性のある証拠で立証されなければならい」、は正しいのかである。
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(*1) 通常の民事訴訟における立証責任の基準は「証拠の優越性(即ち、より確からしいか否か)」であり、刑事事件における立証責任の基準は、「合理的な疑いの余地がないこと」である。 「明白且つ説得性のある証拠」による立証責任の度合いは前記両者の間であり、侵害訴訟においては、特許権者の侵害者の侵害行為に対する立証責任は「証拠の優越性」の基準であるが、侵害者の特許無効の抗弁に対する立証責任は「明白且つ説得性のある証拠」という基準がCAFCで長年採用されてきた。 MS社は同立証責任のハードルを低減すること、即ち、証拠の優越性のレベルに引き下げるのが妥当と主張、もしそれが適わないとしても、特許庁で検討されなかった先行技術(引例)でもって無効の抗弁をするときの立証責任は少なくとも、「証拠の優越性」のレベルに引き下げるべきであると主張している。
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