False Marking 関係の訴訟に関して一言

2009年12月28日のForest Group判決(Fed Cir)において、特許番号を虚偽表示する者に対する損害賠償額が事案毎にMax500ドルではなく、虚偽表示に対応する製品毎にMax500ドルであると判示されたため、米国特許法292条の基に刑事的民事訴訟(特許を製品に虚偽表示するものに対して米国政府の代わりに民間人が訴訟を提起する)が今日までに米国の各地で数百件提起された。 昨今、(2010年8月3日)にCAFCでStauffer事件の口頭審理が行われ、原告の当事者適格性がヒアリングの争点となった。 要は、被告と利害関係のない者が連邦地裁に訴訟を提起する資格があるのかということが争点であり、また、米国政府が原告が訴状を提出するという訴訟の初期の段階で介入することが正当なのかという点が争点となった。 同Stauffer事件の判決如何によって、現在数百件のPendingとなっている米国各地の連邦地裁で提起された訴訟が原告不適格ということで却下される可能性もある。 Stauffer事件の行方を今後Watch要である。

by Tatsuo YABE

on August 08, 2010

   

False Marking (虚偽表示)

 

背景

 

米国特許法287条

特許でカバーされる製品、あるいは、それを梱包するパッケージに該当する米国特許番号を付すことによって、被疑侵害者に対する損害賠償額算定の起算日となり、そのような番号を付さない場合には、被疑侵害者に実際に当該特許が存在するという注意を喚起した日となるという趣旨のことが規定されている条文。

 

米国特許法292条

特許の虚偽表示を禁止することに関する条文であり、当該虚偽表示を見つけたものは、何人であっても米国政府に代わって、訴訟を提起することが可能であり、最大500ドルの損害賠償額を米国政府と2分すると規定されている。

(a) Whoever, without the consent of the patentee, marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with anything made, used, offered for sale, or sold by such person within the United States, or imported by the person into the United States, the name or any imitation of the name of the patentee, the patent number, or the words "patent," "patentee," or the like, with the intent of counterfeiting or imitating the mark of the patentee, or of deceiving the public and inducing them to believe that the thing was made, offered for sale, sold, or imported into the United States by or with the consent of the patentee; or

Whoever marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with any unpatented article, the word ''patent'' or any word or number importing that the same is patented for the purpose of deceiving the public; or

Whoever marks upon, or affixes to, or uses in advertising in connection with any article, the words "patent applied for," "patent pending," or any word importing that an application for patent has been made, when no application for patent has been made, or if made, is not pending, for the purpose of deceiving the public -

Shall be fined not more than $500 for every such offense.

(b) Any person may sue for the penalty, in which event one-half shall go to the person suing and the other to the use of the United States .

 

Forest Group Inc. v. Bon Tool Company (Fed Cir: Dec. 28, 2009 )

本判決によって、米国特許法第292条の虚偽表示による罰金(最大500ドル)は事案毎ではなく、虚偽表示がある製品毎に課せられることが判示された。 この判決以降、わずか1年の間に数百件にも及ぶ虚偽表示を理由とした訴訟が提起された。 尚、虚偽表示を理由とする訴訟は、刑事的民事訴訟(qui tam lawsuits)の形態をとるため、通常の民事訴訟のような利害関係者という当事者適格性が必要ないと解釈された。 刑事的民事訴訟というものは公共の利益のために私人が政府の代わりに訴訟を提起し、損害賠償額が算定されれば米国政府とそれを2分するという性格のものである。 本判決以前では勝訴しても事案に対して最大500ドルの罰金を政府と2分するという理解であったため、殆どこの種の訴訟は提起されなかった。

 

 

Pequignot v. Solo Cup Co. (Fed Cir. June 10, 2010 )

Solo社は、21億個にも及ぶカップの蓋に既に有効期限が切れた特許番号を表示していた。 PequignotはSolo社を「虚偽表示」で訴えた。

 

本判決の判示で注記すべきは、虚偽表示と認定するには、公共を欺く意図の証明が必要であるということが明示された点である。 本判決によって裁判所は、以下を判示した:

 

1.              製品が過去の特許でカバーされていたとしても、当該特許が既に有効期間を失効している場合には、そのような特許の表示は「虚偽表示」である。

2.              既に有効期限の切れた特許の番号を製品に記載したり、特許されていない製品に「特許でカバーされているかもしれない・・・」というような文言を付記することは公共を欺く目的で意図的に虚偽表示の行為に関与したと推定される。

3.              但し、被疑者側が公共を欺く意図が存在しなかったということを、証拠の優越性のレベルで証明することで当該推定(公共を欺く意図があった)を覆すことができる。

 

本事件においては、Solo側が外部の弁護士に助言を求め、当該助言に基づき誠実に判断(製品に付した特許番号を金型から除去し、また、パッケージの文言を「・・・may be covered by one or more U.S. or foreign pending or issued patents・・・」という文言に変更した)をしたという事実に鑑み、公共を騙す意図はなかったと事実認定された。

 

 

Stauffer v. Brooks Brothers, Inc. (Fed Cir: Aug. 3, 2010 )

Staufferは調整型のボータイの製造者、Brooks社を虚偽表示で提訴した。 しかし、連邦地裁は同訴えを、Stauffer氏には当事者適格性が無いとして、訴えを却下した。 米国政府とStauffer氏は同判決を不服としCAFCに控訴し、2010年8月3日にCAFCにおいて、口頭審理が行われ、特に以下の2つの争点に関してヒアリングが行われた:

 

1.              競合関係にない原告が、292条を基礎とする虚偽表示を理由に当該被疑者を訴えるための当事者適格性があるのか?

2.              原告が訴状を提出する初期の段階で、裁判所が292条のアクションに対する原告の訴訟適格性を判断する時点において、米国政府が介入することは正当か?

 

合衆国憲法第3章において、連邦裁判所において審理される事案の原告の当事者適格性として、@ 実際の損失、(injuries in fact)と、A 損失を回復できる可能性 (redressability)が要件とされる。 但し、292条においては「誰でも・・」と規定されている。 この点をどのようにCAFCが判断するのかは、現在数百件にも及ぶ虚偽表示を理由とする裁判に大きな影響を与えることになる。 本事件の今後の展開、要Watchであります。   

 

 

合衆国連邦議会上院による特許法改正法案S515

同法案において、米国特許法292条の「何人も」という文言を「競合者であって、損害を被った者」に改訂することが提案されている。

(法案の成立前に、上記CAFC事件「Stauffer事件」の判決がでると予想されます。) 


************************************************************************

 

以上  

 

 

(1) US Patent Related  (2) Case Laws  (3) Self-Study Course (4) NY Bar Prep (5) LINKS Home