USPTO’s Examination Guidance on 112(f)

Broadest Reasonable Interpretation

And

Definiteness of 112(f) Limitations

 

Published at USPTO’s website May 04, 2014

 

Summarized by Tatsuo YABE

June 04, 2014 

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クレームの構成要素が112条第6項(AIAでは112f項)に基づき限定的に解釈される場合に、その限定的解釈を明白にするための審査ガイドPTOのウェブサイトで公開(201454日)した。当該審査ガイドには審査官及び出願人に理解しやすいように例示を含んでいる。

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要約:

審査においてクレームはBRI基準(Broadest Reasonable Interpretation: 合理的な最も広い意味合いで解釈する)で解釈される。 112条(f)項に基づくMPF形式の構成要素もBRI基準で解釈される。 但し、112条(f)項が適用される構成要素をBRI基準で解釈するとその範囲は、明細書中の対応する開示(対応する構造、材料、アクション)と均等物と理解される。

即ち、明細書に開示された対応する開示がMPF構成要素の一部を構成すると解釈される。従って、MPF形式の構成要素(112f項で解釈される構成要素)に対応する構造(材料、アクション含む)が明細書(SPECと図面を含む)にない場合にはMPF構成要素の範囲が不明瞭であるとして112条(b)項拒絶を受ける。 このように、112条(b)項の拒絶を受ける場合には112(a)項の開示要件も違反することになる。

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米国特許出願業務に携わる実務家にとっては本ガイドラインを一読し概要を理解しておくことを推奨します。

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以下本ガイドラインの概要:

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注意:"112(6)"Pre-AIAMPFクレームに対する条文で、"112(f)" AIA2011916日に成立)のMPFに対する条文。

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まず、クレームの構成要素が112条(f)項の限定解釈を受けるか否かの審査ガイドラインの詳細はMPEP21813条件テスト(3 Prong Analysis)を参照のこと: (3条件テストの適用の仕方に関しては201382日にPTOのウェブサイトで公開された)

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(1)まずは、3条件テスト(3 Prong Analysis)を活用すること(3つの条件全てを満たす場合112()項で解釈する);

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1条件

クレームの構成要素にMeansあるいはMeansに代わる用語(代替え用語)を使用しているか?

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2条件

Means或いは代替え用語が機能表現で修飾されているか(典型的な例としては means for・・・ または他の連結用語で機能表現と結びついているか)?

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3条件

Means或いは代替え用語が、クレームされた機能を達するための十分な構造、或いは、材料で修飾されていない

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(2)反駁可能な推定:

さらに、クレームの構成要素が「Means+機能の用語」で規定されている場合には112条(f)項の解釈をするという推定(反駁可能な推定:rebuttal presumption)が働く。しかし、クレームにおいて、当該機能を達成するための十分な構造或いは材料を伴い当該機能が規定されている場合には、当該推定を反駁可能である。

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上記とは逆に、クレームの構成要素が「Means+機能の用語」で規定されていない場合には112条(f)項の解釈をしないという推定(反駁可能な推定:rebuttal presumption)が働く。しかし、(a)構造或いは材料の代わりの用語が使用されており、(b)それが機能で規定されており、(c)当該機能を達成するための十分な構造或いは材料が規定されていない場合には、当該推定に反駁可能である。

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(3)審査におけるクレーム用語の解釈はBRI(Broadest Reasonable Interpretation: 合理的な最も広い意味合いで解釈する)基準が適用される。 BRI基準において通常は明細書の開示内容に鑑み当業者にとっての一般的な意味合いで解釈される。(クレーム用語の解釈に明細書は参酌されるが、用語の意味合いはクレームに明白な特徴が記載されていない限りは明細書の好適実施例の特徴に限定解釈されるべきではない)

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クレーム用語が112条(f)項で解釈される場合でもBRI解釈基準を適用するが制限が伴う。112条(f)項の条文に規定されているように明細書の開示物(明細書で開示された構造、材料、又は行為)とその均等物に限定される。

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即ち、以下のように解釈される:

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クレーム用語が112条(f)の適用を受けない場合

BRI =

クレーム用語は一般的な意味として解釈される。(明細書の詳細な開示内容はクレームの一部ではない)

クレーム用語が112条(f)項で解釈される場合

BRI = 

明細書の対応する開示(対応する構造、材料、行為)と均等物。 (明細書に開示された対応する開示がクレームの一部を構成すると解釈される)

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(4)Determine Corresponding Structure, Material (or Acts)

      何が対応する構造、材料、又は動作か? 

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明細書(112条の条文において明細書の詳細な説明と図面とを含む)に開示された構造或いは材料であってクレーム用語の機能を実行するもの。 然るに、クレーム用語が112条(f)の適用を受ける場合に、クレームが112条(b)項の明瞭性の要件を満たすには、当該用語に対応する明細書の開示内容が明瞭であることが要求される。

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明細書で対応する構造あるいは材料とは、クレーム用語で記載された機能の全てを実行するものではなければならない。 さらに、当該構造或いは材料はクレーム用語の機能と明瞭にリンクするものではなければならない。

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(5)不十分な開示とは?

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(5A

明細書で対応する構造または材料に相当する箇所に機能に関してのみ開示されている場合(対応する構造または材料が開示されていない)。 或いは、機能を実現する構造がブラックボックスで表現されている場合。

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(5B

クレームの構成要素が機能Aと機能Bを実施すると規定されているのに明細書の対応する構成においては機能Aしか実現されない。 或いは、明細書の対応する構造のみでは(追加の構造がない場合には)機能を実現できない場合。

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(5C

明細書で開示された対応する構造がクレームの機能にリンクしていない場合

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(6)112条(f)項の適用を受ける構成要素に対応する明細書の十分な開示物が存在しない場合には112条(b)項の拒絶となる。 審査官は、拒絶理由通知に以下のような理由を明示すること:

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A)

112条(f)項の解釈が適用される。 然し、当該構成要素に対応する明細書の開示物(規定された機能を実現する開示物)が存在しない。

B) 

112条(f)項の解釈が適用される。 但し、対応する明細書の開示はクレームされた機能を実現するのに不十分である。

C)

112条(f)項の解釈が適用される。 然し、クレームされた機能とそれを実現するための明細書の開示物との明白な関連性(リンク)が欠落している。

D) 

112条(f)項の解釈が適用されるか否かはっきりしない。

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Examples:

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EX. 1

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質問:

クレームの構成要素

means for rotatably securing an arm to a base and for locking the arm into an angled position”

 

アームをベースに搖動可能に取り付け、且つ、所定角度でロックする手段

明細書

Specification A: The arm 10 is secured to the base 12 by a rotatable hinge assembly 14 that has a locking pawl 16 that locks the arm 10 into an angled position with respect to the base 12. 

 

アーム10は搖動可能なヒンジAssy14によってベース12に取り付けられており、前記ヒンジAssy14はロック爪16を備えアーム10をベース12に対して所定角度位置に固定可能である。

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上記クレーム構成要素は112条(b)項に鑑み明瞭か?

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回答:

明瞭

明細書に開示されたヒンジAssy14及びロック爪16はクレームで規定された2つの機能を実現する。

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EX. 2

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質問:

クレームの構成要素

means for rotatably securing an arm to a base and for locking the arm into an angled position”

 

アームをベースに搖動可能に取り付け、且つ、所定角度でロックする手段

明細書

Specification B:

The arm 10 is secured to the base 12 by a rotatable hinge assembly 14.

アーム10は搖動可能なヒンジAssy14によってベース12に取り付けられている。

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上記クレーム構成要素は112条(b)項に鑑み明瞭か?

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回答:

不明瞭

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理由:

明細書に開示された搖動可能なヒンジAssy14はアーム10をベース12に対して所定角度でロックする機能を達成しない。

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Make a rejection using FP 7.30.02 and 7.34.18

Sample Detailed Reasons using F¶ 7.34.18

Claim element “means for rotatably securing an arm to a base and for locking the arm into an angled position” is a limitation that invokes 35 U.S.C. 112(f). However, the written description fails to disclose the corresponding structure, material, or acts for the claimed function. The rotatable hinge assembly 14 is identified as the structure for performing the function of rotatably securing the arm to the base, but it is not sufficient to perform the function of locking the arm into an angled position and no other structure for performing that function has been identified. 

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EX. 3

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質問:

クレームの構成要素

“means for rotatably securing an arm to a base and for locking the arm into an angled position”

 

アームをベースに搖動可能に取り付け、且つ、所定角度でロックする手段

明細書

Specification C:

The arm 10 is rotatably secured to the base 12 and locked into an angled position.  

 

アーム10は、ベース12に対して搖動可能であり、ベース12に対して所定角度位置に固定可能である。

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上記クレームの構成要素は112条(b)項に鑑み明瞭か?

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回答:

不明瞭

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理由:

明細書は機能のみ開示しており、当該機能を達成するための構造体を一切開示していない。

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Make a rejection using FP 7.30.02 and 7.34.18

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Sample Detailed Reasons using FP 7.34.18

Claim element “means for rotatably securing an arm to a base and for locking the arm into an angled position” is a limitation that invokes 35 U.S.C. 112(f). However, the written description fails to disclose the corresponding structure, material, or acts for the claimed function. The specification merely recites the function and does not identify any specific structure that rotatably secures the arm to the base or locks the arm into an angled position. 

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EX. 4

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質問:

クレーム

Claim 4

A system, comprising:

means for recording an image.”

 

クレーム4

画像を記録する手段を備えたシステム。

明細書

 

 

 

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上記クレームは112条(b)項に鑑み明瞭か?

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回答: 不明瞭

クレーム4は不明瞭であるという理由で112条(b)項で拒絶。FP 7.34.01.

112条(f)項を適用する(明細書の開示物を機能クレームの構成要素として読み込む)には、クレームに2つ以上の構成要素を含むことが条件である。単一の構成要素(means + function要素)しか規定していないクレームは明細書の開示物に限定解釈されない。

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35 USC 112(f) Element in Claim for a Combination.— An element in a claim for a combination may be expressed as a means or step for performing a specified function without the recital of structure, material, or acts in support thereof, and such claim shall be construed to cover the corresponding structure, material, or acts described in the specification and equivalents thereof.

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依って、クレーム4の構成要素に対するBRI基準に基づく解釈は112条(f)項の限定解釈(明細書の開示物)がされないので画像を記録するすべての画像記録装置を包括し、権利範囲の境界線のない「純粋な機能クレーム」となるので不明瞭と判断される。

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⇒ 当業者であれば112条(f)が適用される構成要素の機能を達成する方法を見つけられるであろうという出願人の主張は対応する構造を開示するという112条(b)項の要件を満たさない。 112条(f)項の目的は、機能でのみ表現されたMPF形式の構成要素に境界線を与えるための明細書におけるサポートの存在を確保するためである。依って、112条(b)項の拒絶を受けた場合にはMPFクレームの機能を実現するサポートが明細書に存在することを主張し、それを特定すること、或いは、(可能であれば)機能表現された構成要素を構造体の表現に補正し、112条(f)項が適用されないようにすることである。

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⇒ 112条(f)項の構成要素に対応する構造物の開示が明細書に存在しない場合には112(a)項のW-D要件(開示要件)違反をも意味するであろう。 そのような場合には審査官は112条(b)項の拒絶に112(a)項の拒絶理由を追記すること。 尚、112(a)項のW-D要件でいう開示とは明細書の文言、図面、図表、或いは、数式(formulas)等を含む。

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(7)Determined Equivalents

      均等物の決定:

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112条(f)項が適用されるクレーム用語には、当該用語に対応する明細書の開示物(構造・材料・行為)にさらに「均等物」が含まれる。 

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即ち、クレーム用語で規定された機能を実現する明細書に特定されたものと同じ構造を開示した先行技術は新規性の引例となり、さらに、当該特定された明細書の構造と均等物を開示した先行技術も新規性の引例となりうる。

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また、当該特定された明細書の構造と均等物でなくとも自明性の判断に使用されうる。

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尚、均等物はクレームで規定された機能と同一の機能を達成しなければならない。

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もし均等物が特定されていない場合には、以下の何れかの手法において先行技術における機能の均等の幅を特定することが可能である。

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         先行技術の構成要素は、クレームに対応する明細書の開示物と実質的に同じ手法にて、クレームで規定されたものと同一の機能を実現し、当該明細書の開示物と実質的に同じ結果を得る。

         先行技術に開示された構成要素がクレームに対応する明細書の開示物と交換可能(interchangeability)であると当業者が認識したであろう。

         先行技術に開示された構成要素とクレームに対応する明細書の開示物との違いが非本質的なレベル(insubstantial differences)である。

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EX. 5

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質問:

クレーム

Claim 5

A recording system, comprising:

      a base; and

      a camera mounted to the base for recording images.”

クレーム5

ベースと

前記ベースに取り付けられ画像を記録するカメラを備えた

記録システム。

明細書

The specification describes the camera as a digital video camera that records images for broadcasting.

 

クレームのカメラに相当する開示:放送するために画像を記録するデジタルビデオカメラ。

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上記クレームのBRI解釈は明細書の均等物に限定されるか?

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回答:

クレーム5”camera”は画像を記録でき、ベースに取り付けられる当業者にとって周知されるカメラのすべてを含む。BRI基準に基づく解釈は好適実施例に限定解釈されない。

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即ち、ベースに取り付け可能で、画像を記録できるすべてのカメラは当該構成要素に対する新規性を否定する。

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EX. 6

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質問:

クレーム

Claim 6 

A recording system, comprising:

      a base; and

      means for recording images mounted to the base.

 

クレーム5

ベースと

前記ベースに取り付けられ画像を記録する手段を備えた

記録システム。

明細書

The specification identifies a digital video camera for recording and storing images that is remotely operable.  The preferred embodiment is a pan tilt zoom camera with recording ability (which is a typical surveillance camera), and no equivalents are specifically defined.

クレームの手段に相当する開示:

画像を記録・保存可能で、遠隔操作可能なデジタルビデオカメラ。 好適実施例として画像を記録保存可能なパンチルト型のズームカメラ(通常の監視用カメラ)。 均等物は開示なし。

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上記クレームのBRI基準による解釈は明細書の均等物に限定されるか?

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回答:

“means for recording images”BRI解釈は明細書に開示された構造とその均等物(当業者に認知される均等物)に限定解釈される。

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当該均等物のリスト(クローズされたリスト)が明細書に開示(規定)されている場合には当該均等物は規定されたリストに限定的に解釈される。 クローズされたリストが明細書に開示されていない場合には当業者にとって認識されるすべての均等物が包括される。

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依って、新規性の引例としては、ベースに取り付けられ、画像を記録保存できる遠隔操作可能なデジタルカメラと好適実施例に開示されたパンチルトタイプのズームカメラと、それらの均等物を開示したもの。 尚、当該均等物とは画像を記録保存するという機能と同一機能を有し、遠隔操作可能なデジタルカメラの均等物である。

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均等物の範囲を考察するに、クレームされた機能(画像を記録保存する: recording and storing images)と同一の機能を、実質的に同一の手段(being remotely operable to record and store images)で達成し、実質的に同一の結果(digital video)を得る装置を含む。

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均等物によってクレームの新規性の拒絶をする場合にはPTO審査官は均等の構造を特定すること。

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例)Claim 6 is rejected under 35 USC 102(b) by being anticipated by Ref. X that discloses a digital camcorder 10, which is an equivalent to the disclosed pan tilt zoom camera because it performs the same function in substantially the same way and produces substantially the same result.

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⇒ 出願人は引例の教示内容(開示物)が非均等物であることを証明する(例: カムコーダーはクレームされた機能を実現できない)

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(8)まとめ:

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112条(f)項はクレームの構成要素を機能で表現する(MPF)ことを許容するが、MPFで表現された構成要素の範囲は制限を受ける。

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112条(f)項が適用される構成要素をBRI基準で解釈するとその範囲は、明細書中の対応する開示(対応する構造、材料、アクション)と均等物がクレームの一部を構成すると理解される。

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112条(f)項が適用される構成要素(MPF構成要素)に対応する開示(対応する構造、材料、アクション)が明細書に存在しない場合にはMPF構成要素の境界線が不明なので、112条(b)項の基にクレームは不明瞭と判断される。

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112条(f)項の基にクレームの構成要素(MPF構成要素)が解釈される場合には審査官はその旨を特許局通知(OA)で明示し、MPF構成要素をどのように解釈したかが明瞭になるように記録すること。

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参考:

 

均等論と均等物との関係

 

(1) US Patent Related

(2) Case Laws

(3) Self-Study Course

(4) NY Bar Prep

(5) LINKS

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