USPTO
Issued 101 Exam Memorandum in
light of McRO
v. Bandai Namco
(Fed. Cir. 2016-7-5) & Bascom
v. AT&T
(Fed. Cir. 2016-6-27)
Decisions
Posted
Nov.
02,
2016
Summarized
and Commented by Tatsuo YABE - November
29,
2016
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2010年から2014年の間に合衆国最高裁が101条に対する4件の判決(Bilski;
Mayo; Myriad; Alice)を出した。それら判決を受けてPTOは101条審査に対するInterim審査ガイダンス(2014年12月)を出した。[注:
Alice大法廷判決後、2014年3月にPTOは101条審査ガイダンスを出したが同年に最高裁がAlice判決を出したので同年12月にInterimとして審査ガイダンスを出した。]
尚、2015年7月に審査ガイダンスの内容がさらに更新された。その後、暫くは静観状態があったが2016年5月からCAFCが数件101条関連判決を出すとその直後に審査官に対する通知(メモランダム)を出し、審査官にCAFC判決の要旨を説明するとともに101条審査に対する留意点を述べた。そのようなメモランダムも今回で4回目となった。以下に紹介するのは4回目のメモランダム(2016年11月2日発行)である。
しかし、今回のメモランダムを出す前から流石にPTOも草臥れ、嫌気がしてきた。そこで2016年10月17日にFederal
Register(官報)でラウンドテーブルディスカッションの開催(11月14日@USPTOと12月5日@スタンフォード大学)とそこでのテーマを列記している。当該Federal
Registerを読む限りにおいてPTOは101条審査に自身で対応する限界を承服し、より多くの助言を関係団体に求めることとした。尚、Federal
Registerに列記されているディスカッションのテーマに、4件の101条関連最高裁判決によって訴訟において問題が生じた事実を募っており、101条改訂の必要性(現在の4つのカテゴリーで良いのか?例外規定を挿入するべきではないか?101条でDiscoveryという用語があるがそもそもDiscoveryは保護適格性があるのか?等々)を明示(示唆のレベルを遥かに超えている)しており、特許庁で特許保護適格性を判断するうえにおいて法改正の必要性とそれに則する審査規則と審査便覧の抜本的な改訂を長期戦で構築することを覚悟していると理解される。とは言え、PTO長官Michelle
K. Lee氏が近日には退官される予定であり、PTO長官として最後に本音レベルで合衆国最高裁の101条判決に対する不服を明言し、後進にその解決をゆだねているようだ。
実務者としては官報でアナウンスされたらラウンドテーブルの結果を受け、今後PTOがどのような対応をするのか要Watchと考える。しかし現実問題として101条の法改正に至る道のりは遠い(そもそも101条はThomas
Jefferson大統領による1793年の特許法と殆ど変わっていない)。従って、当面は101条拒絶を受けた場合には、2016年5月4日付の審査官通知(メモランダム)に記載された101条拒絶に対する出願人の反論の仕方[see
*1]に基づき対応するのが妥当と思料する。
筆者独断:
尚、昨今のCAFCの判決文(特許保護適格性が認められた判決文)を読めば読むほど、結局は101条の文言「ANY
NEW AND USEFUL・・・」に戻っているように理解される(昨今のCAFC判決、Rapid
Litigation判決; Bascom判決でのNewman判事のConcurring
Opinion;Electric Power Group判決[see *2])。即ち、新規で且つ有用な発明は保護適格性があると主張することは極めて妥当であると思料する。ここで特に着眼したいのはUSEFULという文言である。1998年のState
Street Bank事件(Fed. Cir.)においてビジネス手法だからといって無条件で101条保護適格性が否定されるわけではないと判示された。そこでState
Street Bank事件が判示した法理論はUseful,
Concrete, Tangible Result (UCTR)テストをパスするものは101条の要件を満たすということだった。 即ち、有益、具体的、且つ、現実的な結果を生じる発明は101条保護適格性を満たすということだ。しかしながら2008年のBilski大法廷判決は自身の当該UCTRテストを否定し、寧ろ、最高裁Benson判決(1972年)で判示されたMachine
or Transformation (MOT)テストを支持した(最高裁にゴマすりをした)。101条で規定するUSEFULを主張するのにクレームはUSEFULな発明を規定しているという主張のみでは説得性がない。要は、何故USEFULなのかを審査官に説得することが望ましい。そこでUCTRテストのCTRを挙証する(クレームで規定する特徴によって・・・・という具体的[”Concrete”]、且つ、現実的[”Tangible”]な結果[”Result”]を生じる)のが望ましいと考える。
以下、2016年11月2日付審査官通知の概要:
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先般、2016年5月19日にUSPTOは2件のCAFC判決(5月12日のEnfish事件と5月17日のTLI事件)に鑑み審査官に対するメモランダム(5月19日審査官通知)を出した。その後、2016年7月14日、USPTOは2件の判決(7月5日のRapid
Litigation事件と6月27日のSequenon事件)に鑑みさらなる審査官に対するメモランダム(7月14日審査官通知)を通知し、当該2件の判決の要旨を説明した。尚、これら2件の判決で争点となったクレームは生物科学系の手法(プロセス)である。
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さらに、2016年11月2日、USPTOは2件の判決(6月27日のBascom
v. AT&T事件と9月13日のMcRO
v. Bandai Namco 事件)に鑑み審査官に対するメモランダム(11月2日審査官通知)を通知し、これら2件の判決の要旨を説明し101条審査に対する留意事項を追記した。
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McRO v. Bandai Namco (Fed.
Cir. 2016-9-13)
McROの特許は、コンピューター技術を活用し、喋る人の唇の動きと顔の表情とを自動的にシンクロナイズするというアニメ画像処理に関する。従前はマンパワーによってのみ唇の動きと顔の表情とをシンクロさせていた技術と比べるとそれらの動きの調和により現実味と正確さがあり、コンピューター関連技術に改良を齎すとしてSTEP2Aの判断において、クレームは例外規定(Abstract
Idea)に対するものではない(not directed to a
judicial exception, “abstract idea”)と判断した。
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尚、本判決から学習されるべきことは、STEP2Aを判断するときにクレームをそれ全体として検討することが重要である。しかしながら、クレーム全体を過度に抽象化すること、或いは、その本質部分に焦点を合わし簡略化することは避けねばならない。2016年5月4日付及び2016年5月19日付のメモランダムでも同様の注意を促したので参照されたい。
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コンピューター関連技術を改良するということは、コンピューターあるいはネットワークの操作性を向上させるということに限定されるものではなく、従来コンピューターでは実現できなかった機能をコンピューター関連技術で実現可能にするための規則の集合体(基本的には数学的関係)であっても良い。
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Bascom v. AT&T
(Fed. Cir. 2016-06-27)
Bascom事件において、CAFCは地裁のSTEP2Bの判断(例外規定を顕著に超えていない)の間違いを指摘し、地裁判決を破棄した。Bascomの特許はインターネットで視聴できるコンテンツに対する選択可能なフィルター機能(個々のユーザーのニーズに合致するカスタマイズされたフィルター)に関し、当該機能をインターネットのサービスを提供するプロバイダーのサーバーに設置したことを特徴とする。CAFCはBascom特許クレームで定義する個々のエレメントは確かに新規なものではないし、個々に判断する限りにおいて顕著なものはない、しかし、それらを当該クレームで規定するように組み合わせることで発明概念(inventive
concept)が現出される。即ち、Bascom特許クレームにおいて、フィルター機能を有するツールをエンドユーザーから離反したる箇所に設置し、エンドユーザー個々のニーズに合致するカスタマイズされたフィルターを提供するということが「発明概念」に相当する。
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本判決から学習されるべきことは、STEP2Bを判断するときに、クレームの構成要素が個々には新規なものではなくとも、それらがクレームで規定される従来技術とは異なるアレンジメント(組み合わせ)によってクレーム全体として例外規定を顕著に超えたものと判断される場合がある。2016年5月4日付及び2016年5月19日付のメモランダムでも同様の注意を促したので参照されたい。
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Preemption(他者よりも先に特定の技術エリアに対する権利を取得してしまうこと:即ち、広範な技術エリアに排他権を認めると後発者が自由に活動できる余地がなくなるという懸念が生じる:筆者)に関して:
PTOはさらにPreemptionに関して、機会を見て後述すると述べている。PTO曰くはCellzDirect事件及びBascom事件においてはPreemptionがないのでSTEP2Aの例外規定に該当しない、及び、発明概念が存在すると判示された。さらに、McRO事件においてもPreemptionが存在しない場合にはクレームは例外規定に該当しないと判示した。しかし、他の判決(Synopsys;
FairWarning; Intellectual Ventures v. Symantec; Sequenom;
and OIP)においてはPreemptionの存在如何に拘らずクレームが例外規定に対するものである判断している。然るに、出願人が自身の発明(クレーム)が例外規定を適用するすべてを包括するものではない(Preemptしない)と反論してきた場合、再度STEP2Aにおいてクレームがコンピューター関連技術に改善を齎すものか、或いは、クレームが特定の手法によって所望される結果を導き出すものかを判断すること。
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References
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■ 2016年5月4日、USPTO通知(5月4日通知)[*1]:
出願人の応答に対する審査(評価)
101条拒絶に対して出願人は、(i)
クレームを補正(クレームにさらなる構成要素を追加、或いは、構成要素を補正し)クレームが全体として例外を顕著に超えたものにする、及び/又は、(ii)
審査官の101条拒絶理由が間違っているという反論、乃至は、証拠を提示し、101条拒絶に対応することが可能である。
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101条拒絶を受けた場合の出願人の対応の仕方
(A) クレームを補正し、或いは、クレーム補正することなくともクレームが「例外」を規定していないと反論する;
(B) クレームで規定している他の構成要素(「例外」以外の構成要素)によってクレームが全体として「例外」を顕著に超えたものになっていると反論する。
上記(B)で言う「顕著に超えた(“significantly
more than”」を主張するのには、
(i)
他の構成要素によってクレームの「例外」を有意義に限定する(meaningfully
limits);
(ii)
他の構成要素によって他の技術或いは技術分野に改善(向上)をもたらす;
(iii)
他の構成要素によってコンピューター自身の機能を向上させる;
(iv)
当該技術分野において周知、定常的ではない特定の構成要素(特徴)が追加されており、クレームが特定の有益な適用を実現することに限定する。-
Adding a specific limitation other than what is well-understood, routine and
conventional in the field, or adding unconventional steps that confine the claim
to a particular useful application.
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■ 2016年5月19日、USPTO通知(5月19日通知)の概要:
Enfish, LLC v. Microsoft Corp.(5月12日)とTLI
Communications LLC v. A.V. Automotive, LLC判決(5月17日)に鑑みた特許保護適格性に関して:
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2016年5月12日にEnfish判決が出た。当該判決は特許保護適格性の判断基準の大枠を変えるものではない。しかしながらMayo判決2パートテストのSTEP
2AにおけるAbstractアイデアの特定に関してさらなる見解を述べた。
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STEP
2Aを判断するにあたり以下の4点を言及した。
[1]
クレームがAbstractアイデアに対するものか否かを判断する場合に、当該クレームと判例法でAbstractアイデアに対するクレームであると判断されたクレームとを比較判断してもよい。
[2] STEP2Aにおける” directed
to …”という判断は「例外」に対するものか否かを判断するための十分なフィルターとして機能させるべきである。即ち、STEP2Aにおいて、明細書を参酌しクレームの特質が全体として特許保護不適格な主題に対するものか否かを判断する。
[3] クレームされた発明の照準点(focus)を理解するときにクレームを過度に一般化し、クレームの文言の縛りを解除してしまうことになってはいけない。(クレーム発明の過度の一般化は危険である)
[4] クレーム発明が汎用コンピューターによって実施可能であるということのみで保護不適格と判断するのは間違いである。
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2014年の101条審査ガイダンス、2015年7月の更新版、及び、2016年5月4日付審査官への通知で記載された内容は上記4つの項目と整合性がある。
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特にEnfish判決において、ソフトウェアに対するクレームであってもコンピューター関連技術を改善する主題に対するクレームはSTEP
2Aの「例外」としてのAbstractアイデアであるとは言えない。ソフトウェアはハードウエアと同様にコンピューター関連技術に非抽象的な改善をもたらすことが多々あり、クレームがソフトウェアに対するものであるからといって自動的にAbstractアイデアではない。
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然るに、101条適格性の判断において、審査官はコンピューター関連技術に改善する主題に対するクレームをSTEP
2Aの「例外」としてのAbstractアイデアではないと判断し、STEP2BのAdditional
Elementの特定を省くという審査をしてもよい(STEP2Bをスキップできる)。
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■ USPTOの審査ガイダンス(2014年12月)の101条審査に関わるフローチャート
(*)
Judiciary
recognized exception –
判例法で保護適格性を認められていない主題(自然現象、自然法則、抽象的なアイデアなど)
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[*2]
昨今の101条関連の判例で、101条の条文で規定するNEW
AND USEFULを実体的に101条を満たす理由としていると理解されるもの:
Bascom Global Internet Services v.
AT&T (Fed. Cir. 2016-06-27)
Newman判事はConcurring
Opinionで、101条の条文に戻ろう、101条の立法趣旨は4つのカテゴリーに属する新規で有用なものは保護適格性(Eligibility)を有し、特許されるか否か(Patentability)は他の条文(112条、102条、103条)のハードルで結果を出せばよいではないか!
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Rapid Litigation Management
v.CellzDirect
(Fed. Cir. 2016-07-05)
- The end result of the ‘929 patent
claims is not simply an observation or detection of hepatocytes to survive
multiple freeze-thaw cycles.
- Rather, the claims are directed to a
new and useful method of preserving
hepatocytes cells.
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Electric Power Group v. Alstom (Fed. Cir.
2016-08-01)
The district court in this case wrapped up
its application of the Supreme Court’s framework by invoking an important common
sense distinction between ends sought and particular means of
achieving them, between desired results (functions) and
particular ways of achieving (performing) them.
The district court reasoned, “there is a
critical difference between patenting a particular
concrete solution to a problem
and attempting to patent the abstract idea of a solution to the
problem in general.”
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