USPTO’s
Memorandum 2021年01月06日
PGRにおける112条(b)項の判断基準 From
PTO’s Director Andrei Iancu to PTAB members Summarized by Tatsuo YABE – 2021-01-18 |
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ご存知のように2011年のAIA改正法によって特許訴訟の代替え手続きとしてPTOの審判部(Patent
Trial and Appeal Board)において特許を無効にする付与後の手続き(Post
Grant Proceedings)が新設された。それら手続きとしてPGRとIPRがある。特許発行後9か月以内であればPGR(Post
Grant Review)という手続きで101条、112条、102条、103条の全てのカードで特許の無効を主張することができる。IPR(Inter
Partes Review)は特許発行後9か月以降に可能な手続きで特許を無効にするには102条と103条のみである。
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尚、PGR及びIPRは共に特許訴訟と出願審査手続きのハイブリッドのような手続きである。即ち、訴訟的な要素としては簡略化されたディスカバリーの手続きがあり、審査手続きの側面としては手続き中にクレームを限定的ではあるが補正することが可能である。
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2018年10月にPTABの付与後手続き(PGR:IPR)でのクレーム解釈基準が審査におけるBRI基準から訴訟におけるPhillips基準に変更となり、その後PTABにおいてクレームの明瞭性の判断基準も訴訟の基準に合わせるべく変更となるのかという疑問が生じた。今回PTO長官のメモランダムによってPTABにおけるクレームの明瞭性の判断基準も訴訟での判断基準、即ち、Nautilus基準(2014年最高裁判決)に変更すると通知された。即ち、Nautilus最高裁の基準では、当業者にクレームの権利範囲を合理的な確証を与えるくらいの明瞭さがクレームに要求される。
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このように今回の改訂によって付与後手続きにおけるクレーム解釈の基準に加えてクレームの明瞭性の要件も訴訟における基準と合致することになった。
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但し、上述したようにIPR手続きにおいてはクレームを不明瞭という理由では無効にはできない。依って、今回のメモランダムによる明瞭性の判断基準の変更はIPR手続きには影響しないと考えがちである。しかし、IPR手続きを開始するか否かを判断する際(Reasonable Likelihood that
the petitioner would prevail w/r/t at least 1 claim challenged in the petition)にもクレームが明瞭性の要件を満たしていることが要求される可能性がある。即ち、無効を主張されているクレームがNautilus基準に鑑みて不明瞭であればIPRを開始できなくなる可能性がある。事実、2020年2月のSamsung
v. PRISUA判決においてIPR手続きを開始したもののクレームが不明瞭で新規性・進歩性の判断ができないとPTABが判断したところ、CAFCは、PTABはIPR手続きにおいてクレームを不明瞭であるという理由で無効にはできないが、クレームが不明瞭であればそもそもIPR手続きを開始するべきではなかったと判示した。(以上筆者)
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PTAB付与後手続きにおけるクレーム解釈の基準:
2012年にこれら手続きが開始された当初はクレーム解釈の基準は審査と同じくBRI基準であった。即ち、クレームの解釈は当業者にとって合理的で且つ最大限広くクレームの意味合いを解釈するということだった。しかし、2018年にクレーム解釈の基準はBRI
(Broadest Reasonable Interpretation)基準から訴訟における基準、即ち、Phillips基準(BRI基準と比較するとより限定的にクレームの意味合いを解釈する)に変更された。2018年11月13日から新基準でクレームを解釈することになった。
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■ PTAB付与後手続き(PGR:
Post Grant Review)におけるクレームの明瞭性の判断基準(即ち、112条(b)項を満たす要件):
尚、クレームの明瞭性の要件(112条(b)項の要件)に関してPTABの審理ではIn
re Packard(2014年のCAFCの判決)の基準が適用されていた。Packardの基準では、クレームにおいて意味が不明な用語或いはフレーズを含む場合にはクレームを不明瞭と判断する。
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訴訟におけるクレームの明瞭性の判断基準:
2014年のNautilus判決(最高裁判決)まではクレームを112条(b)項のカードで無効にするにはクレームが解消不能なくらい不明瞭(insolubly
ambiguous)であることを挙証する必要があった。言い換えると権利化された米国特許にはPresumption
of Validity(有効性の推定)が働くので少々の不明瞭さでは潰れないということだった。
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しかし2014年のNautilus判決において最高裁は、当業者にクレームの権利範囲を合理的な確証を与えるくらいの明瞭さが要求されるとした。即ち、訴訟において112条(b)項のクレームの明瞭性の要件はかなり厳しくなった。Under
Nautilus, a claim of a patent challenged for indefiniteness is unpatentable for
indefiniteness if the claim, read in light of the specification delineating the
patent, and the prosecution history, fails to inform, with
reasonable certainty, those skilled in the art about the scope of the
invention.
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References:
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■ 35
U.S.C. 112(b):
The specification shall conclude
with one or more claims particularly pointing out and distinctly
claiming the subject matter which the applicant regards as his
invention.
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明細書は、出願人が発明と考える発明主題を特定するとともに明確にするひとつ以上のクレームで完結されなければならない。
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■ In
re Packard (Fed. Cir. 2014)
Packardの基準では、クレームにおいて意味が不明な用語或いはフレーズを含む場合にはクレームを不明瞭と判断する。
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■ Nautilus v. Biosig
Instruments (SCOUTUS: 2014)
2014年のNautilus判決(最高裁判決)まではクレームを112条(b)項のカードで無効にするにはクレームが解消不能なくらい不明瞭(insolubly
ambiguous)であることを挙証する必要があった。2014年のNautilus判決において最高裁は、当業者にクレームの権利範囲を合理的な確証を与えるくらいの明瞭さが要求されるとした。Under
Nautilus, a claim of a patent challenged for indefiniteness is unpatentable for
indefiniteness if the claim, read in light of the specification delineating the
patent, and the prosecution history, fails to inform, with
reasonable certainty, those skilled in the art about the scope of the
invention.
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■ Phillips v. AWH (Fed. Cir. en banc: 2005)
Phillips判決によると、クレーム用語を解釈するときに@内部証拠(クレーム; 明細書; 経過書類)を重視すること、A辞書及び専門書(外部証拠)を使用することを否定しないが、内部証拠以上に過渡に依存するのは妥当ではないと判示した。
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■ Changes to the Claim
Construction Standard for Interpreting Claims in Trial Proceedings Before
the Patent Trial and Appeal Board, 83 FR 51340, Oct 11, 2018
2012年に付与後手続き(PGR:IPR)が開始された当初はクレーム解釈の基準は審査と同じくBRI基準であった。即ち、クレームの解釈は当業者にとって合理的で且つ最大限広くクレームの意味合いを解釈するということだった。しかし、2018年にクレーム解釈の基準はBRI
(Broadest Reasonable Interpretation)基準から訴訟における基準、即ち、Phillips基準(BRI基準と比較するとより限定的にクレームの意味合いを解釈する)に変更された。2018年11月13日から新基準でクレームを解釈することになった。
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