| Supreme Court Decision No. 13-369 June 02, 2014 | Nautilus v. BioSig |
最高裁は112条(b)項の「クレームの明瞭性」のハードルを高くした。 | Summarized
by Tatsuo YABE June 04, 2014 |
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最高裁はCAFCの112条(2)項要件の判断基準、即ち、「クレームの意味合いが分析可能(“amenable
to construction”)である場合、或いは、クレームが解消不能(“insolubly
ambiguous”)な程度まで不明瞭ではない場合には112条(2)項の要件を満たす」を否定した。 最高裁が示した基準は、「明細書および経過書類を参酌しても当業者が合理的な確証をもって発明の権利範囲を理解できない場合には112条(2)項の要件を満たさない
(A patent is invalid for
indefiniteness if its claims, read in light of the patent’s specification and
prosecution history, fail to inform, with reasonable
certainty, those skilled in the art about the scope of the invention)」である。 今回の最高裁の112条(2)項要件に対する判断基準の方がCAFCの基準よりも厳しくなったことは理解できるが、最高裁はまたしても「当業者が合理的な確証をもって発明の権利範囲を理解できる・・・」という文言を事実関係にどのように適用するべきか容易ではない。本事件はCAFCに差し戻しされたので、CAFCが上記最高裁の判断基準を問題となるUSP5337753のクレーム1の”in spaced relationship”にどのように適用するかを要Watchである。
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尚、最高裁はもうひとつの争点、「282条の有効性の推定は112条(2)項の要件を希薄にするか(即ち、112条(2)項に基づく無効の挙証責任を上げるか?)に対しては一切言及していないようだ。
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以下最高裁判決の概要:
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Nautilus v. BioSig -- Sup. Ct. No. 13-369
CAFC判決:2013年4月26日
最高裁上告受理:2014年1月10日
最高裁判決: 2014年6月2日 (CAFC判決破棄差し戻し)
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本事件は112条(2)項で要求されるクレームの明瞭性と明確性の要件に関する。 112条(2)項は次のように規定している、即ち、明細書は、出願人が発明とする主題を明瞭に特定し、且つ、識別するように記した一つ或いはそれ以上のクレームで完結すること。
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BiosigはUSP753(USP 5,337,753)の権利者であり、当該特許はエクササイズ機器を使用するユーザーの心拍数をモニターする技術に関する。 特許権者によると従来技術の心拍数を検出するにあたり心臓の鼓動より生成されるECC信号に運動中のユーザーの筋肉の収縮によって生じるEMG信号がノイズとして干渉し、ECC信号の正確な検出を妨害するという不具合があった。 そこでUSP753特許においては共通電極11,15と活性電極9,13とをユーザーがグリップできる位置に配置し、EMG信号による干渉を中和するという発明をなした。 USP753特許のクレーム1ではこれら2つの電極が互いに所定間隔を開けて円柱状のバーに配置されていると規定した。BiosigはNautilusを特許侵害で提訴した。
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地裁(SDNY:
South District of NY)においてマークマンヒアリグの後に、Nautilusが略式判決の申し立てをした。 申し立ての趣旨は問題となるクレームの「所定間隔を開けて・・(in
spaced relationship)」という用語の意味合いは不明瞭であり、112条(2)項の要件を欠くとしUSP753は無効であると主張した。 地裁は略式判決の申し立てを認めUSP753特許は112条(2)項の要件を満たしていないとして無効と判断した。
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CAFCにおいて地裁判決は破棄された。 CAFCは、クレームの意味合いが分析可能(“amenable to
construction”)である場合、或いは、クレームが解消不能(“insolubly ambiguous”)な程度まで不明瞭ではない場合には112条(2)項の要件を満たすと結論づけた。
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最高裁は、上記CAFC判決を破棄し、差戻した。
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1. 最高裁によると、明細書および経過書類を参酌しても当業者が合理的な確証をもって発明の権利範囲を理解できない場合には特許は112条(2)項の基に不明瞭であり無効である。両当事者は112条(2)項の判断をする場合の対象は当業者であることに同意するとともに、明細書及び経過書類を参酌した上での判断であることにも同意している。 両当事者は、112条(2)項がどこまでの不明瞭さを許容するのかに関して意見が対立している。 112条(2)項の明白性の要件はクレーム用語に内在する限定事項も考慮にいれなければならない
(Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo, 535 U.S. 722, 731)。 然しながら、多少の不確実性を容認することは発明を助長するために必要な代価と言えよう。 さらに、特許はそもそも弁護士に、あるいは、一般大衆のために作成されたものではなく、あくまで当業者宛に作成された文章である。
Carnegie Steel v. Cambria Iron Co.,
185 U.S. 403, 437 同時に特許は公共に対し何が権利範囲かを明白に知らせる通知機能を果たさなければならない。 当該通知機能によって公共はどの領域が開放されているかを理解でき(
Markman v. Westview Instruments
517, U.S. 370, 373)、企業による開発実験により生成されたものが結果的には特許侵害のリスクを負うという不確実なエリア(属否の判断が困難なエリア)を除去するということが重要である。 尚、特許法で言うところの明白性とは特許主題に対する妥当なレベルを超えるものではない。
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2.
CAFCが採用する112条(2)項要件の判断基準(所定の不明瞭さを許容している)は112条(2)項の要件を満たさない。 CAFCは753特許のクレームはその意味合いを分析可能(“amenable
to construction”)か、或いは、クレームが解消不能(“insolubly
ambiguous”)な程度まで不明瞭かという基準で検討したが、そのような判断基準は112条(2)項の要求する明瞭性を満たさない。 不明瞭ではあるが、解消不能(“insolubly
ambiguous”)なレベルではないというクレームを許容すると112条(2)項要件より導かれる公共への通知機能を喪失させるとともに、クレームの不確実なエリア(属否判断が困難なエリア)を維持することを助長(United
Carbon, 317 U.S. at 236)することに繋がるであろう。
CAFCの「クレームが解消不能(“insolubly
ambiguous”)な程度」に対する(CAFCの判決文における)詳細な説明は112条(2)項の要件に追従していると理解できるが、我々(最高裁)はCAFCの判断基準自体が少なくとも今回の質問に対する本質的な解決手段になることを確保しなければならない。 CAFCの判断基準、即ち、クレームはその意味合いを分析可能(“amenable
to construction”)か、或いは、クレームが解消不能(“insolubly
ambiguous”)な程度まで不明瞭かという表現は不十分であり、そのような判断基準では地裁判事および特許弁護士を信頼できるコンパスがないまま海に放置することになりかねない。
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3. 我々(最高裁)は第1審ではないので上記で判示した112条(2)項の判断基準をNautilusとBiosigの論争に適用することは差し控えCAFCに差戻す。 CAFCは上記で示した我々(最高裁)の判断基準に基づき753特許の問題となるクレームが明瞭であるか否かを再度審理すべし。
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参考資料:BACKGROUND
INFO
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Nautlius v. BioSig
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