Re-Exam(再審査)関連判決



 Cuozzo Speed v. PTO - (Supreme Court: June 20, 2016) 
IPRを開始するか否かのPTOの判断に対し控訴可能か?
1争点はIPRを開始するか否かの審判部の判断に対して控訴可能か否かであり、最高裁はAIA_35 USC §314(a)の条文で明白に規定されている通りUSPTOの判断は確定(最終)判断とし控訴不可であると判示した。第2争点はIPRにおけるクレーム解釈の基準であり、AIA_35 USC §316(a)(4)で規定されているように、IPRにおけるクレーム解釈基準はUSPTOに決定する権限が与えられていると判示した。PTOが採用しているBRI基準は、再審査、インターフェアランス等の基準と同じでIPRにおいて同基準が採用されることは妥当性を欠くものではない。

 American Calcar v. American Honda Motor - (Fed. Cir. 2014-11-26) 
Post-Therasenseで不公正行為が認められたCAFC判決。
Post-Therasense不公正行為関連の判決(2:1)である。多数意見は、再審査で未提出情報の重要性が否定され、意図的に騙す意図の挙証が弱いに拘らず不公正行為を認めた。Newman判事の反対意見の方に理があると筆者は考える。即ち、重要性の要件に対しては再審査で問題となった未提出の情報が審理されたに拘らず特許の有効性が維持された。この事実のみに鑑みても不公正行為が認定されることはありえない。然し、今後は出願審査過程において未提出の文献(知る状態にあったがIDS提出し忘れたような文献)が見つかった場合にはAIAで2012年9月16日から可能となったSupplemental Examを実施し、被告の不公正行為の抗弁を封じてから訴訟を提起することが重要であろう。

 Fresenius v. Baxter:  (Fed. Cir. 2013-07-02)
再審査の確定判決と係属中の訴訟:
本事件は再審査の結果(確定判決)の係属中の訴訟に対する影響に関して判示した。より詳細には係属中の訴訟がどの程度進行していれば再審査の結果が考慮されないかが判示された。3人の判事うち2人の多数意見によると再審査結果が確定した時点における訴訟の進行状態がFINALである場合には再審査の結果(問題となるクレームが無効)は考慮されない。ここでいうFINALの状態とは特許侵害訴訟において全ての争点の最終結論がでており(CAFCで確定)、唯一、判決の執行を待つ状態を言う。


 Fresenius v. Baxter base Hypo Quiz and Answers
再審査の確定判決と係属中の訴訟:
侵害訴訟において被告の敗訴(侵害と損害賠償額)が確定し、その執行のみを待つ場合には、後に再審査によってクレームが無効と判断されたとしても被告は損害賠償の支払い義務を負う。再審査、IPR、PGRを含み訴訟の開始時期、及び、PTO及び訴訟における挙証責任との関連性に対するQ&As.


 Marine v. HemCon (Fed. Cir. en banc: 2012-03-15)
再審査におけるIntervening Rights:
米国特許においてIntervening Rightsという用語は、通常252に基づく再発行出願(特許発行後2年以内のBroadening Reissue)によって権利範囲が拡大された場合に、権利範囲の拡大によってのみ侵害となった第3者の行為(クレームが拡大される前は非侵害)を特許再発行後も一定の範囲で許容しようとする米国特許法252条の規定に基づく権利である。再審査においてはクレームの権利範囲を部分的であっても拡大することはできないので再発行出願におけるIntervening Rightsの考え方とは性質を異にする。今回、大法廷判決(6:4)によって、307(b)Intervening Rightsの意味合いが説示された。即ち、再審査によってクレームが減縮補正された場合には (減縮補正された後も第3者の行為が侵害と認定されたとしても) 再審査以前の侵害行為に対する損害賠償を免責するという侵害者にとって非常に有利な権利である。この法理の考え方は、再審査によってクレームが減縮補正されるということは再審査前、即ち、減縮補正前のクレームは無効であったと解釈できる、依って、無効な特許クレームの権利範囲を侵害する行為はそもそも損害賠償の対象とならないという考え方である。