American Calcar v. American Honda Motor

 Fed. Cir. Decision

2014/09-26

Opnion

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Therasense判決後の不公正行為が認められた数少ない事件

 

By Tatsuo YABE

2014-11-29

 

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まとめ:

本事件はPost-Therasenseの不公正行為が認定された数少ないCAFC判決(2:1)の一つである。Therasense大法廷判決(6:4:1)は不公正行為の成立要件として「要性」と「意図の」要件の挙証基準を判示した。 被告が原告の不公正行為を証明するためには、「重要性の要件」に関してはBUT FORテストを採用し、未提出情報がPTOに正しく伝えられていたら特許が成立していなかったであろうということを証明することが必要であり、意図の要件は間接証拠(状況証拠)によって証明することも可能であるが、間接証拠から騙す意図が唯一合理的に推論されるということを証明しなければならない。これら2つの要件を個々に明白かつ説得性のある挙証基準で証明しなければならない。 今回多数意見(Prost判事、Wallach判事)は両要件をTherasense大法廷判決の法理にかなうレベルに証明できていない。

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反対意見、Newman判事の判決文がまさに妥当すると理解される。 重要性の要件に対しては再審査で問題となった未提出の情報が審理されたに拘らず特許の有効性が維持された。 この事実のみに鑑みても不公正行為が認定されることはありえない。 また騙す意図に関しても発明者の証言の信憑性がないこと、未提出の情報の重要性を認識していたこと、及び、当該情報を提出できる十分な期間があったということを理由としているようであり、2012913日の1st Media v. Electronic Arts (SONY Computer Entertainment America)の判決と真っ向から矛盾する。 1st Media判決にあるように・・・Therasense判決の基準に基づき、騙す意図の要件を立証するには、(a) 出願人は当該情報(先行技術)を周知していた; (b) 当該情報は重要な情報である; さらに、(c) 当該情報をPTOから隠蔽するという判断を意図的に行った、ということを証明しなければならない。 上記(a)-(c)の要件の何れが欠けても意図の要件の立証はできない。

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2011年のTherasense大法廷判決は満場一致の判決ではなく、6:4:1で4人の判事が反対意見を出した。 4人の反対意見の中に今回の多数意見の筆者Prost判事の名前がある(Wallach判事はTherasense大法廷判決には参加していない)。 American Calcar社(特許権者)は現判決を承服することも可能であるが、8年も継続してきた訴訟でもあり、やはり最高裁へ裁量上告するか、Fed Cir大法廷でのヒアリングを申立てをする道が残されている。 或いは、2012916日から可能となったAIASupplemental Examを実施し、不公正行為の抗弁を封じたのちに他の連邦地裁で訴訟を提起することも可能であろう。

 

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Prost, Wallach, Newman判事 (反対意見):

Prost判事による多数意見(2014926日)の概要:

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特許権者: American Calcar

問題となった特許:米国特許第6,330,497号、6,438,465号、6,542,795

上記特許は米国特許第6438465号(1997128日出願)からの継続出願(明細書同じ)  

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問題となった特許クレーム(発明)の概要:

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車両の情報および車両の機能を制御可能な車両搭載型複合メディアシステムに関する。

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代表的なクレームは以下の通り:

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1. A system for use in a vehicle comprising:
a memory for storing a plurality of displays having predetermined contents, the plurality of displays being associated with a plurality of aspects of the vehicle;
an interface for entering a query to conduct a search concerning an aspect of the vehicle;
an input device for selecting a result of the search;
a processor responsive to the selected result for identifying at least one of the plurality of displays which is associated with the aspect of the vehicle; and
a display element for showing thereon the at least one display.
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Fig. 11: Driver’s view                         Fig. 12: Instrument Panel(図111105が選択された)

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背景及び判決文の概要:

Calcarはホンダを上記3件の米国特許を侵害しているという理由で侵害訴訟を提起した。ホンダは非侵害、特許無効、権利行使不能の抗弁をした。 本事件が控訴中にTherasense大法廷判決20115月)が出たので、当該判決に鑑みて地裁に差戻しされた。本判決は差戻し審での地裁判決から控訴された。 

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本事件はPost-Therasense判決であって、不公正行為が21で認定された。 不公正行為が認定された事実は、Calcarの創立者であって発明者の一人であるObradovich氏の行為に関する。 Calcar社はQuick Tipsという車両の紹介マガジンを刊行している。 1996年にObradovich氏はホンダの1996年型Acura RL(以下96RL)の情報を掲載するべく同車両に乗車し、搭載されていたナビゲーションシステムを操作した。 Calcar社の社員によって同ナビゲーションシステムの操作状態とオーナーマニュアルの写真を撮らせた。 その後、Obradovich氏は355特許に対応する米国特許出願明細書を作成した。 同明細書に96RLを従来技術と称して記載した。 さらに地裁で96RLに搭載されていたナビゲーションシステムをCalcar社の発明の基礎としたことを認めた。

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Obradovich氏は355特許出願審査中にホンダ96RLに乗車したときに撮影したナビの操作状態を示す写真とオーナーマニュアルをIDSとして特許庁に提出しなかった。

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Prost判事による多数意見において、Obradovich氏は355特許出願審査中にIDSするタイミングが十分にあったに拘らず96RLのナビの操作状態を示す写真とマニュアルをIDSしなかったという行為が重要性の要件とだます意図の二つの要件を満たすとして不公正行為を認定し差戻し審における地裁判決を支持した。

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● 重要性の要件:

Therasense大法廷判決によると未提出の情報が正しく提出されていれば特許されなかったであろう、即ち、BUT-FORテストをみたすことを明白かつ説得性のある挙証責任で証明しなければならない。 多数意見によると以下代表的なクレーム1の:

USP6,438,465 -- クレーム1

概要訳

1. A system for use in a vehicle comprising:
a memory for storing a plurality of displays having predetermined contents, the plurality of displays being associated with a plurality of aspects of the vehicle;
an interface for entering a query to conduct a search concerning an aspect of the vehicle;
an input device for selecting a result of the search;
a processor responsive to the selected result for identifying at least one of the plurality of displays which is associated with the aspect of the vehicle; and
a display element for showing thereon the at least one display.

 車両に使用されるシステムであって以下の構成要素を含む:

 予め決定されたコンテンツを個々に含む複数のdisplayを記憶する記憶部、前記複数のdisplayは車両の態様に関連するものである;

 車両の態様に関連するサーチを実行するように質問(query)を入力するインターフェース;

 サーチ結果を選択するための入力装置;

 前記選択されたサーチ結果に応答する処理部であって前記車両の態様に関連した複数のdisplayの少なくとも一つを特定する;及び

 前記少なくとも一つのdisplayを表示する表示部材。

 

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上記太線・下線部分の特徴のみが先行技術と識別される特徴であって、特許庁にIDSされなかった情報(96RLのナビの操作状態を示す写真とオーナーマニュアル)が当該要(かなめ)の特徴と重要な関連性があり地裁の判断のように465特許および795特許は権利化されていなかったであろうという判断を支持した。

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● 意図の要件:

多数意見によると、(すべてではなく)部分情報のIDS(情報開示)の場合に、意図的に選択した部分のみを開示していた場合には、不公正行為の意図の要件は否定されない。 Partial disclosure of material information about the prior art to the PTO cannot absolve a patentee of intent if the disclosure is intentionally selective.

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地裁はObradovich氏の証言に信憑性がないと判断した。証言に信憑性がないというだけで騙す意図の挙証責任は満たされない。然し差戻し審においてObradovich氏が提出しなかった情報の重要性を認識していたことは明らかである。 Therasense大法廷判決によると、騙す意図は直接証拠から証明できることは稀で、間接証拠によって挙証することも可能である。 但し、間接証拠で挙証する場合には、集積された事実(状況証拠)から唯一最も妥当に推論されるのが騙す意図でなければならない。Calcar側はObradovich氏の米国特許出願実務に不慣れなことに起因する過失或いは重過失であると主張したが、同意できない、寧ろ、十分にIDSする時間があったのに拘らず96RLのナビゲーションの操作状態を示すことを開示するのを失念していたというよりも意図的に避けたと理解される。

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上記理由で497特許、465特許、及び、795特許は不公正な行為によって取得されたという地裁の判決を支持する。 依って、これらの特許は権利行使不能である。

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Newman判事による反対意見:

本事件に関する争点は不公正行為の有無である。Therasense大法廷判決の法理に基づき重要性と意図の要件を考慮するも多数意見には同意できない。 重要性の要件に関しては497特許に対して再審査が実施され上記問題となった未提出の情報(写真とオーナーマニュアル)とさらにHondaの訴訟における無効理由が提出され再審査されたが497特許の有効性が維持された。即ち、特許庁において上記問題となった未提出の情報は重要ではない(特許性を否定しない)と判断された。 本来であればこの事実に鑑み不公正行為は成立しない。

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騙す意図の要件に関して、多数意見はObradovich氏の証言の信憑性のなさを主たる証拠としている。 そもそもTherasense大法廷判決は被告側が不公正行為の抗弁をゲームのように多用しすぎる(濫用する)ことを是正するために重要性と意図の要件の立証基準を厳しくしたのである。特許法(判例法)の安定性と統一性維持のためにTherasense大法廷判決の法理を正しく適用するべきである。 依って多数意見に同意できない。

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