Prometheus Lab. V. Mayo

Fed. Cir. December 17, 2010

 

Bilski判決(2010628日:合衆国最高裁)後に、治療方法に関するクレームの101条適合性に対するCAFCの判断が明示された判決である。 治療方法クレームにおいて、ある薬を投与し、それが体内で違う物質に変換されるとき、分解された物質の血中濃度を測定するステップを規定し、当該測定値に応じて所定の対応をすることをクレームしたる場合には101条を満たす。 何故なら、薬を投与した後に体内で異なる物質に分解されるステップはBilski判決の Machine or TransformationテストのTransformationを満たすからである。

 

Summarized by Tatsuo YABE

Jan 27, 2011

   

 

概要

 

権利者: Prometheus Lab

被疑侵害者: Mayo

問題となった特許: Prometheusの米国特許第6355623号と米国特許第6680302号であって、治療方法に関する発明を規定している。

 

争点: Prometheusの2つの米国特許の方法クレームは101条を満たすか否か?

経緯: 2004年にPrometheusMayoを相手に侵害裁判を提起した(南部地区カリフォルニア連邦地裁)。 Mayoは略式判決の申立をし、地裁はそれを認め、Prometheus2つの特許は101条を満たさないと判断した。 Prometheusは控訴し、2009CAFCは地裁判決を破棄した(2つの特許は101条を満たす)。 20106月にBilski合衆国最高裁判決(方法クレームの101条適格性に対して判示した)が出されたので、最高裁はCAFCに対して、2009年の判決を再度審理するように命じた。 本判決は最高裁から差し戻しされ、再度審理されたCAFCの判断である。

判決文:

 

http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/08-1403.pdf

 

CAFCの意見の概要 

 

CAFC20081030日に大法廷においてプロセスクレームの特許保護適格性(101条の適格性)の判断基準は1972年の合衆国最高裁によるBenson判決が妥当するとした(CAFC: In re Bilski)。 当該CAFC大法廷判決では1972年の合衆国最高裁判決(Benson判決)による判示、Machine or Transformationテストにより判断されるべきであるとした。 その後、Bilskiによる裁量上訴が認められ、合衆国最高裁によるBilski判決(2010628日)が下され、合衆国最高裁はMachine or Transformation MOT)テスト自身を肯定するも、当該MOTテストが101条適格性を判断する唯一のテストではないとし、2008年のCAFC大法廷判決を一部否定した。 

 

上記のように、2008年のCAFC大法廷判決による101条の適格性に対する判断基準が2010年の合衆国最高裁により一部否定されたことにより、2009年のCAFC判決(*1)を不服とするMayo社の裁量上訴が認められ、合衆国最高裁は控訴審(CAFC)に対し2010年最高裁のBilski判決に鑑み再度審理をするように命じた。 

 

本判決はCAFCにおいて合衆国最高裁(2010年:Bilski判決)に鑑み、再度Prometheus社の治療方法に関る2つの米国特許が101条を満たすか否かを審理した結果であり、結果的には2009年のCAFC判決(Prometheus社の2つの米国特許は101条を満たす)を維持した。

 

(*1) CAFCは、2008516日の地裁判決(Mayo社の略式判決の申立てを認め、Prometheus社の治療方法に関る米国特許第6355623号と米国特許第6680302号は101条を満たさないとして無効と判断した)を破棄した。

 

その理由は、Prometheus社の2つの特許の方法クレームは合衆国最高裁によるBilski判決(2010年)によって肯定された、Machine-or-Transformationテストを満たすからである。 上記のように、2010年の最高裁判決(Bilski)において最高裁は、Machine or Tansformationテストは唯一の判断基準ではないとするも、そのテストの使用は正しいとした。 

 

当該2つの特許の方法クレーム(独立クレーム)は少なくとも2つのステップを規定しており、(1)薬を人体に投与するステップと、(2)体内での代謝レベルを判定するステップはBilski判決の machine or transformationテストの"Transformation"を満たすからである。 即ち、Prometheus特許でクレームされた治療方法によって、投与された薬(AZA或いは6−MP)は人体内部で異なる物質(TG或いは6MMP'という物質)に変換(Transform)され、この変換が問題となる特許の核心部分であり、変換された物質のレベルを判定し、薬の毒性を最低限に抑え、効果を最適にすることを目的とするからである。 Prometheus社の専門家の証言にあるように、上記(1)のプロセスを経て、(2)のプロセスを実施するために人体より採取される血液サンプルは単なる人から(自然に)採取される血液ではない。 当該2つのステップはMayo社が議論するような、単なるデータを取得するステップではない、さらに、当該2つのステップは代謝のレベルと薬の効能との相関関係を利用する行為の全てを独占するものではない。

 

1989年のCAFCによるIn re Gramsという判例があるが、この事件においては、出願人は(1)個々の人に臨床試験を行い、(2)当該試験結果に基づき疾患を検出するというアルゴリズムをクレームしたにすぎず、当該手法は実体的には数学のアルゴリズムであり、試験を受けた人体に変化('Transformation')を及ぼすものではない。 然るに、In re Gramsで問題となったクレームと、本事件に関るPrometheusの2つの特許の方法クレームとは明白に識別される。

 

尚、USP'623特許クレーム1の whereinクローズにおいて、赤血球中の6TGのレベルが所定値以下のときには薬の投与量を増やすこと、さらに、当該所定値以上の場合には投与量を減らす必要性を規定しているが、これらは確かに医者に対する警告と理解されるが、しかしこれら警告を遵守するか否かは医師の判断に委ねられる。 これら whereinクローズはメンタルステップと解されるかもしれないが、上記のように、(1)と(2)のステップによって Machine or Transformationテストを満たす以上は、これら wherein クローズが付随しているという事実に鑑みて101条の適格性が否定されることはない。

 

【結論】

 

Premetheusの2つの米国特許は101条を満たす。

拠って、地裁の判断は誤りである。

破棄・差し戻し

 

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 問題となった特許のクレーム等:

 

Prometheus社はUSP6355623USP6680302の唯一単独の独占的ライセンシーであり、これら特許は基本的には胃腸および胃腸以外の自己免疫疾患の治療に用いられるチオプリン薬の最適投与量を決定する方法に関する。 これらの薬は6MPAZAを含み、クローン病および結腸炎の治療に用いられ、6MPは体内に投与されると、6MMPと6TGを含む種々の6MP代謝体に分解される。

 

これら6MPおよびAZAのような薬は自己免疫疾患の治療に長年使用されてはいるが、ある患者には効果がない、或いは、毒性による問題が生じている。 然るに、これら特許された手法によって毒性の副作用を最小に抑え、効果を最適化することを目的としている。

 

これら特許のクレームは2つのステップを規定し、それらは(1)サブジェクト()に対して6TGを提供する薬を投与するステップと、(2)投与されたサブジェクト(人)の体内における6TG及び/又は6MMP(薬の代謝物)のレベルを評価するステップである。 ‘623特許のクレーム1では測定された代謝物のレベルを予め設定された代謝レベルと比較し、その結果に応じて”whereinクローズで規定されているように、投与する量を増減し、サブジェクトに対し投与する薬の毒性を最小に抑え、効果を最適にする。

 

 

以下問題となった特許のクレーム:

 

これら2つの米国特許は199948日に出願された米国特許出願第09/2883441998924日の仮出願から優先権を受ける)から継続出願されたものである。

 

‘623特許のクレーム1は以下の通りである:

 

1. A method of optimizing therapeutic efficacy for treatment of an immune-mediated gastrointestinal disorder, comprising:

 

(a) administering a drug providing 6-thioguanine ('6TG') to a subject having said immune- mediated gastrointestinal disorder; and

 

(b) determining the level of 6-thioguanine in said subject having said immune-mediated gastrointestinal disorder,

 

wherein the level of 6-thioguanine less than about 230 pmol per 8x10**8 red blood cells indicates a need to increase the amount of said drug subsequently administered to said subject and

 

wherein the level of 6-thioguanine greater than about 400 pmol per 8x10**8 red blood cells indicates a need to decrease the amount of said drug subsequently administered to said subject.

 

‘302特許のクレーム1も実質同じであり、6TGレベルを判定するのに加えて、6MMPのレベルを判定することを規定している。

 
1. A method of optimizing therapeutic efficacy for treatment of an immune-mediated gastrointestinal disorder, comprising:

 

(a) administering a drug providing 6-thioguanine ('6TG') to a subject having said immune-mediated gastrointestinal disorder; and

 

(b) determining a level of 6-thioguanine or 6-methyl-mercaptopurine ('6MMP') in said subject having said immune-mediated gastrointestinal disorder,

 

            wherein a level of 6-thioguanine less than about 230 pmol per 8x10**8 red blood cells indicates a need to increase the amount of said drug subsequently administered to said subject and

 

            wherein a level of 6-thioguanine greater than about 400 pmol per 8x10**8 red blood cells or a level of 6-methyl-mercaptopurine greater than about 7000 pmol per 8x10**8 red blood cells indicates a need to decrease the amount of said drug subsequently administered to said subject.

 

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