CAFC
en banc Decision Fed
.Cir. 大法廷判決
In re Bernard
L.
BILSKI Decided
on October 30, 2008
Summarized by Tatsuo YABE on
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筆者のコメント:
2008年10月30日、CAFC大法廷判決によって「プロセス発明」が特許可能主題か否かを判断する基準は、1972年の合衆国最高裁判所、Benson事件で判示されたテスト(
Machine – or – Transformation テスト)であると言及された。
当該Machine
– or – Transformationテストとは以下の(1)または(2)が満たされれば101条で規定するところの特許可能なプロセスクレームであると判断する:
(1) クレームされたプロセスは特定の機械
(Machine)、或は、装置に関連付けられているか? 又は
(2) クレームされたプロセスは特定の物(Article)を異なる状態或は別の物に変換
(Transformation)するか?
本大法廷は上記(1)の要件に関しては、Bilski側の自認(問題となるプロセスは、特定の装置に関連付けて実行する必要はないと認めた)により、どのようにそのテストを適用するのかBilskiのプロセスに関連付けて一切述べていない。 当該要件を判断することに関して、Benson判決より、単なる付け足し程度の装置による実行ステップは不可であるとは述べているが(P24判決原文)、コンピューターとの関連でどのようにプロセスクレームをドラフトすればビジネスモデルが特許可能主題となるかに対するガイダンスにはならない。
さらに、本大法廷判決は、1998年のState
Street Bank事件の判示、「現実社会における具体的な有用な結果を創出するか否かで判断するテスト」は不十分であると説示した。 然るに、本大法廷判決は、1998年以降取得されたビジネスモデル関連特許の有効性に少なからずとも影響を与えると考える(B-Model特許のライセンス費用の見直し、無効化のアクション増大など)。
本事件は、Bilskiのプロセスクレームが101条の基に特許可能主題であるか否かという判決というよりは、もっと重要な争点は「根本原理それ自身」、あるいは、「抽象的なアイデア」に特許を与えないための判断基準をどう設定するかであったと思える。 その判断基準を35年以上も前のBenson最高裁判決(1972年)から引用し、それを今回のCAFC大法廷判決によるルール(審査便覧の101条に関するセクションも大きく改訂されるであろう)とする必要性の真意が一体何であったのか少し疑問が残る。 何故なら、多数意見判決原文P14に、今後の科学技術の進展に伴う当該テストの不適合が発生する可能性が予期されているとともに、最高裁が新たなテストを設定する必要性が述べられている。
本判決の意義:
本判決は、米国特許法第101条(特許可能主題)で規定される一つのカテゴリーである「プロセス」に関して判示した合衆国最高裁判決(*1)を支持するとともに、これまでのCAFC判決の不明点を明確化した:
(*1) Gottschalk v.
Benson U.S. (1972)
特許可能なプロセス(101条)か否かを判断する基準は、合衆国最高裁判決(Benson事件:1972年)で示された”Machine
– or – Transformation (機械との関連、或は、対象物の変換)”テストであると判示した。
Machine
– or – Transformationテストとは以下の(1)または(2)が満たされれば101条で規定するところの特許可能なプロセスクレームであると判断する:
(1) クレームされたプロセスは特定の機械、或は、装置に関連付けられているか? 又は
(2) クレームされたプロセスは特定の物(Article)を異なる状態或は別の物に変換するか?
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さらに、本大法廷の多数意見は以下を説示した:
本多数意見はBenson判決の
machine – or – transformationの適用を支持するも、科学技術のさらなる発展・進歩によって当該テストの妥当性に疑義が生じる未来を予見し、そのときには合衆国最高裁が新たなテストを設定するであろうと述べている。 (判決原文P14、P15)
プロセスクレームにおいて特定の「機械」を規定する、或は、「特定の物への変換」を既定したとしても、それらクレームされた「機械」あるいは「変換」は、発明プロセスにとって非本質的な問題解決後の行為(ステップ)であってはならない。 (判決原文P16)
101条で規定される「新規で且つ有用な」という文言の解釈は、102条あるいは103条で要求される新規性あるいは非自明性の要件に対し、さらなる要件を付加するものではない。 (判決原文P17)
プロセスクレームの一部が特許可能主題であるか否かでプロセスクレーム全体が特許可能主題であるという判断基準は間違いである。 (判決原文P17)
特許可能主題であるか否かを判断するのに、Freeman−Walter-Abeleテストは不十分である。 (判決原文18、P19)
特許可能主題であるか否かを判断するのに、State
Street Bank事件の判示、「有用で、現実の確実な結果を得られるか否かで判断することで特許可能主題であるか否かを判断する」は不十分であるとした。 (判決原文P20)
さらに、裁判所の助言者からの質問、特許可能主題であるか否かを判断するのに「技術的なものであるかどうかで判断するテスト」の採用に関して当該テストは不明瞭であり、不適切であるとした。 (判決原文P21)
ビジネスモデルであるから特許不可主題であるという判断は間違いであるとしたState
Street Bank
事件の判断は正しい。 ビジネスモデルは101条の特許可能主題ではないという規則は存在しない。 (判決原文P21)
プロセスクレームが101条の特許可能主題であるか否かを判断するのに、プロセスクレームが十分に物理的なステップ(Physical
Steps)を既定しているか否かで判断するのは間違いである。 (判決原文P23)
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多数意見の概要:
(A)
問題となった特許出願クレーム:
米国特許出願第08/833892号のクレーム1:
Bilski氏(およびWarsaw氏)の特許出願クレームであって、商品取引におけるリスクを回避する手段に関する方法クレームであって以下の通り:
1.
A method for managing the consumption risk costs of a commodity sold by a
commodity provider at a fixed price comprising the steps of:
(a) initiating a
series of transactions between said commodity provider and consumers of said
commodity wherein said consumers purchase said commodity at a fixed rate based
upon historical averages, said fixed rate corresponding to a risk position of
said consumer;
(b)
identifying market participants for said commodity having a counter-risk
position to said consumers; and
(c)
initiating a series of transactions between said commodity provider and said
market participants at a second fixed rate such that said series of market
participant transaction balances the risk position of said series of consumer
transactions.
(B)
下級審(PTOの審判部)の判断:
PTOの審査官は、当該プロセスクレームは特定の装置において実行されるものではなく、単なる抽象的なアイデアを操作し、現実事象に対し適用することなく、単に数学的問題を解決するものであり、“技術的な主題”ではないとし、特許可能主題ではないとし、クレーム1−11を101条のもとに拒絶した。
審判部は、PTO審査官の言う、“技術的な主題”ではないというテストは使用されておらず、それを拒絶の根拠にするのは間違いであるとした。 さらに、審判部は特定の装置で実行可能であるか否かという判断基準は間違いであるとした。 すなわち、同テストが満たされなくとも、物理的な主題を異なる状況に変換するものであれば特許可能な主題であると述べた。 当該プロセスクレームはそのような変換をするものではないと判断した。 さらに、審判部は、当該プロセスクレームは現実社会での実体的な有用性を生成するものではないとし、101条で規定する特許可能な発明主題ではないと判断した。
(C)
大法廷の判断:
PTOの審判部の判断を支持した。
プロセスクレームが101条の特許可能主題であるか否かの判断は最高裁判決(Benson判決)で判示されたMachine
– or – Transformationテストで判断するのが妥当である。 即ち、以下の(1)または(2)が満たされれば101条で規定するところの特許可能なプロセスクレームである:
(1) クレームされたプロセスは特定の機械、或は、装置に関連付けられているか? 又は
(2) クレームされたプロセスは特定の物(Article)を異なる状態或は別の物に変換するか?
Bilskiのプロセスクレームは上記(1)、(2)のいずれの要件も満たしていない。 故にBilskiのプロセスクレームは101条の特許可能主題ではない。
(D)
判決に至った理由の概要:
Bilskiのプロセスクレーム1はBensonテスト(Machine-or-Transformationテスト)の第1要件及び第2要件のいずれも満たさないと判断した。 尚、大法廷は第1要件に関してはBilski自身の自認(Bilski自身が問題となるプロセスクレームは特定の機械・装置に関連付けられているものではないと述べた)を認め、さらなる詳細な検討はしなかった(P24判決原文)。 第2要件に関しては問題となるプロセスクレームはいづれの物をも異なる状態あるいは別の物に変換するものではないと判断した。 即ち、Bilskiのプロセスクレームは許された時間内で商品を購入する法的権利のオプション(危険度合いに関連づけられた代替案)を情報交換することを権利範囲としてクレームしているにすぎないと述べた。
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(E)
以下の判例(not exclusive)を引用した:
Diamond
v.
加硫処理された合成ゴム製品の製造プロセスに関するクレームにおいてArrhenius方程式に基づく(数学の)アルゴリズムを用いて加硫状態における温度を測る時間を計算するステップを既定していた。 最高裁は、数学のアルゴリズム自体は、自然法則と同種のものであり、特許可能主題ではないと述べるも、当該プロセスクレームは特許可能な主題であると判断した。
発明者は数学の公式を特許しようとしているのではない。 むしろ、合成ゴムの加硫処理のプロセスに対する権利を得ようとしているのである。 当該クレームには周知の数式(公式)を使用することが規定されているが、発明者は当該公式の使用に独占権を得ようとしているのではない。 むしろ、当該公式を当該クレームで規定されるプロセスに使用することと関連付けることのみに権利を得ようとしているのである。
根本原理の使用を全ての領域から排除する権利を特定分野に限定することによって当該原理を特定のものに適用をしたことにはならない。 抽象的な数学の公式は、特許クレームがその使用を全ての分野で排除しようとしているのか、それとも特定分野での使用を排除しようとしているのかに拘わらず、当該公式は特許しうる主題ではない。
本大法廷の多数意見は、Diehr事件におけるプロセスクレームは、Benson判決のテストの二つの要件をともに満たすと述べた:
Diehrのプロセスクレームは、コンピューター化された合成ゴムの加硫装置において実行されるプロセスであり(第1要件満たす)、生のゴムをモールドし、加硫処理し、加硫合成ゴム製品とする(第2要件満たす)。
Gottschalk
v.
上記のDiehr事件とは異なり、問題となった発明は2進数のフォーマットをディジタルコンピューターにプログラムされたアルゴリズムを使用し、2値化のフォーマットに変換するプロセスに関するクレームであた。
最高裁は当該プロセスクレームは特許可能主題ではないと判断した:
アイデア自身を特許することはできないと理解されている。 ここで当該数式(公式)は実態的な(現実的な)活用がされていない。 もしも問題となるプロセスクレームに権利を付与すると、BCD数値を2値化する数式に特許を与えることになり、すなわち、数式(当該公式)自身の活用に排他権を与えることになってしまう。
101条で規定するプロセスクレームは以下のいづれかの要件を満たす場合に、101条の特許可能主題である:
(1) クレームされたプロセスは特定の機械、或は、装置に関連付けられているか? 又は
(2) クレームされたプロセスは特定の物(Article)を異なる状態或は別の物に変換するか?
State
Street Bank v. Signature Fin. (Fed. Cir. 1998)
(判示は略する)
(F) 反対意見:
By
Judge Newman:
Bilskiのプロセスクレームに特許可能主題(101条)を認めた。 多数意見は101条判定基準にさらなるハードル(規則)を追加したことになる。
By
Judge Mayer:
多数意見は不十分な結論で終わっている。 ビジネス手法に特許を認めることは産業の発展を阻害するとした。
By
Judge Rader:
Bilskiのプロセスクレームは抽象的なアイデアにすぎない。 本法廷はPTO審判部の判断を支持した。 それ以上に、101条ハードルに対するさらなる判定基準を1972年の判決より持ってくる必要があるのか?
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以上