Festo v. SMC   

(CAFC decided on July 05, 2007

侵害の判断において、まずは文言侵害が大原則であり、1の例外として均等論適用による侵害があり、均等論を適用できない状況の一つとして特許性に関わる理由により限縮補正された要素という2の例外(禁反言の法理)がある。 さらに、3の例外(禁反言の法理適用の例外規定)として、特許性に関わる理由で限縮補正された構成要素であっても所定要件を満たす場合には均等論の適用が許可されるというのが現行の判例法である。

判決の争点は上記第3の例外を判断する上で、イ号の形態が forseeable(予測可能性)であったか否かという要件を如何に判断するかであり、本判決によると、foreseeability(予測可能)であったか否かを判断するときに Function/Way/Resultの3要素テスト(機能・方法・結果の実質同一性を判定するテスト)あるいはInsubstantial Changeなるテスト(非実質的な違いか否かを判断するテスト)を適応する必要はない。 イ号の問題となる構成要素がクレームの補正時に先行技術文献(引例)に開示されているという場合には、問題となるイ号の要素は当業者にとって予測可能であったであろうと判断される。

Summarized By Tatsuo YABE

On August 13, 2007

Case Briefing:

【争点】

1988年にFesto社はSMCを相手とし侵害訴訟を提起し、早19年もの年月が経過し、いまだもって本件審理は継続されておりました。 19年の審理期間において2回の大法廷判決(CAFC)および2回の合衆国最高裁の判決が下されました。 特許性に関わる補正を行った場合には均等論の適用を例外なく禁止するという完全禁止理論とその例外を設けるという柔軟適用理論との間で長期にわたり審理が行われましたが、現行判例法(Festo大法廷判決)においては減縮補正された構成要素には禁反言の法理に基づき原則均等論を適用することはできないが、以下の3つの要件の何れかに該当する場合には均等論の適用を許可するということになっております:

(1)       イ号の形態が補正時に unforseeable(予見不能)である;

(2)       補正の理由がイ号の形態を回避するためになされたものではない;

(3)       上記(1)、(2)以外の理由でイ号の形態を補正において盛り込めなかったであろうということが妥当性を持って理解される場合;

即ち、侵害の判断においてまずは文言侵害が大原則であり、1の例外として均等論適用による侵害があり、均等論を適用できない状況として特許性に関わる理由により限縮補正された要素という2の例外がある。 さらに、3の例外として、特許性に関わる理由で限縮補正された構成要素であっても上記(1)〜(3)の何れかを満たす場合には均等論の適用が許可されるというのが現行法である。

今回の争点は上記第3の例外を判断する上で、上記(1)の forseeable(予測可能性)という要件をいかに判断するかである。

 

【判示事項】

イ号の問題となる構成要素が対応するクレームの要素に対してforeseeability(予測可能)であったか否かを判断するときに Function/Way/Resultの3要素テスト(機能・方法・結果の実質同一性を判定するテスト)あるいはInsubstantial Changeなるテスト(非実質的な違いか否かを判断するテスト)を適応する必要はない。 イ号の問題となる構成要素がクレームの補正時に引例(先行技術文献)に開示されているという場合には、問題となるイ号の要素は当業者にとって予測可能であったであろうと判断される。

 

【事実への適用】

Festoの特許出願クレームにおいてスリーブという構成要素を「磁性化可能な材質」に限縮補正された。 この補正は対応ドイツ出願で引用された先行技術文献の開示(非磁性材のスリーブを開示していた)を回避するためなされたもので、もともとのクレームのスリーブは磁性材あるいは非磁性材のいずれをも含むものであって、そのスリーブを磁性材に限縮補正したものであって、SMC社の製品はアルミを使用しており、同アルミは非磁性材料であることに論争はなく、同アルミの形態を予測不能な材料であったと主張することは間違いである。

上記判示に至った理由:

      Festoが予見可能性の判断に採用を主張するF/W/Rテストは、そもそもクレームの構成要素にイ号の構成要素がどれだけ類似するかを判断し、均等物としてクレームの権利範囲に包括できるかを判断するために使用されるものであって、経過書類禁反言の範疇を決定するために適用するために構築されたものではない。

      Festoの予見可能性の判断基準(問題となる均等物に対しF/W/Rテストを遂行する)を採用すると経過書類禁反言の法理が実体的な意義をなくしてしまうことになる。

      広範なクレームにおいてもともと予測可能であった代替物(構成要素)である均等物が、同広範に定義されたクレームを限縮補正するということによって予測不能にはならない。 例えば、補正前のクレームにおいて電球の構成要素として金属製のフィラメントであると定義しており、引例を回避するために、フィラメントの材質を「使用寿命の長い金属A」に限縮補正した場合に、電球のフィラメントに使用されることが周知であった金属Bは、それが長寿命の材料として使用されることが知られていなくとも予測不能な材料にはならない。

      Festoの主張する論理は均等論の基本概念に矛盾している。 Festoは、審査経過中に周知ではない問題となる均等物を含む製品が、補正後のクレームで定義する特徴と実体的に異なる場合には、特許権者は補正クレームで除外された形態を後に権利範囲に取り込むべきであると主張していることになる。 しかしこれは言い換えると、新規で特許性を識別しうる構成を備えた製品は均等論によって権利範囲に包括されるべきであるといっていることになる。 しかし均等物というものは「非自明で」、且つ、「非実質的にしか相違しない(実体的な違いはない)」ものということはありえない。

 

【結論】

予見可能性の判断において、問題となる均等物が非実質的な違いを判断するテストあるいは機能・方法・結果の実質同一性を判定するテストを満足するかどうかを判断する必要はない。 焼結金属工業(SMC)のアルミ製のスリーブはFestoの磁性材のスリーブに対し、予見可能な代替物であったと判断され、然るに、同アルミ製のスリーブに対して経過書類禁反言が適用されると判示する。 然るに、地裁での判決(SMCの製品はFesto社の米国特許第4354125号を侵害しない:2005年6月13日)を支持する。

 

Newman判示による反対意見】

予見可能性の判断は非実質的な相違を判断するテストあるいは機能・方法・結果の同一性を判断するテストのいずれも考慮に入れる必要はないとする上記判決は過去のCAFC判決から大きく離反するものであるとして反対意見を述べております。

For details, please visit: http://fedcir.gov./opinions/05-1492.pdf