FESTO大法廷判決(II) 2003926

 

United States Court of Appeals for the Federal Circuit No. 95-1066

 

Summarized BY Tatsuo YABE on Sep. 30, 2003

 

 

長く待たれたFESTO事件のCAFC大法廷判決が2003926日にでました。

 

判事内容の要約は以下のとおりです。

 

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CAFC大法廷判決 (I)20011129日)においては以下の条件が満たされると補正された構成要件に対して均等論が一切適用できないということが判事されました。

 

(要件1)米国特許法101112102103条で定義される特許性の要件のいずれかに該当する理由によって補正がなされたか?

(要件2)当該補正は権利範囲を減縮するものか?

 

上記要件1と要件2を満たす補正がなされた構成要素がある場合にその構成要素には均等論の適用を禁止する(均等論の適用の完全禁止: Complete Bar)。

 

その後、FESTO及び多くの要請に応じて裁量上訴が認められ、最高裁で再度審理がなされました。最高裁の判決(2002528日)で上記FESTO大法廷判決(I)の完全禁止(Complete Bar)は推定(Rebuttable Presumption)であるとし当該推定に反証するための3つの手法を提示しました。 即ち、上記2つの要件が満たされ均等論の適用が完全禁止されるという推定が成立しても以下のいずれかの反証に成功すると均等論を適用できる可能性が留保されると判事しました。

 

(反証手法1) 予見不能性: 問題となる均等物の形態が補正時に予見できなかった。

(反証手法2) 補正は問題となる均等物の形態を回避することとは実質的には関係ない理由で実行された;

(反証手法3) その他の理由: 文言が不適切であった。 補正時に問題となる均等物の形態を包括するべく補正することが通常のクレーム起案実務者にとって妥当ではなかった。

 

上記最高裁判決において、上記3点(反証)に関して、CAFCで再審理するよう差戻し、それに対する判決が今回のCAFC大法廷判決(II)であります。

 

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FESTO最高裁の推定(反証可能な推定)に反証するための3つの方法に関しては詳細な指針を示しませんでしたが以下のようなガイダンスを示しております:

 

反証手法1に関して: 

 

      「予期不能性」の判断基準はクレーム補正時において当業者にとってどうであったかが判断の基準である;

      後に開発された技術(真空管に対してトランジスタ等)は「予期不能性」を満たす;

      公知技術は予期可能性の範疇に入りやすい(然し、必ずしもそうではない)

      今回の事件に関して地裁において「予期不能性」を外部証拠及び専門家の証言を考慮し判断されるべきである。

 

反証手法2に関して:

 

      減縮補正をした理由が問題となる均等の形態に直接関連するものであったか否かを判断する;

      問題となる均等の形態を包括するような先行技術を回避するべく補正された場合には反証手法2は適用できない;

      着眼されるべきは経過書類より理解できる特許権者の補正を為した客観的な理由である;

      判断基準としては経過書類を参酌されるものとし、経過書類を理解するために当業者の証言が必要である場合を除いて証拠を追加することはできない;

 

反証手法3に関して:

 

      補正時に何故問題となる均等の形態を包括できなかったのかを示す「用語の不適切な使用」などを証明することで反証可能となる;

      本反証手法を実行する場合において経過書類の枠内でおこなうこと;

 

 

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CAFC大法廷は上記ポイントに関して言及し、具体的な事件内容に関してはFESTOは上記反証手法23に関しては反証の可能性がないとし、上記反証手法1「予見不能性」に関してはその可能性を認め地裁にその判断をするように差戻した。

 

即ち、FESTOが勝訴するために残された可能性は、FESTOの2つの米国特許(Stoll特許:USP4,354,125 及び Carroll特許: USP3,779,401)の補正時 (磁性体の材質: magnetizable material”シーリングリング: a pair of searing rings”に関する補正)においてアルミニウム製のスリーブと単一のシーリングリング機構を備えたSCM(焼結金属工業)の形態が当業者にとって予見が不能であったということを地裁で証明する必要があります。

 

上記多数意見に追加する形でRader判事が賛同意見を述べ、Newman判事が反対意見を述べております。 Newman判事の反対の趣旨としては、大法廷の多数意見は反証手法1に基づき地裁に差戻しているもののFESTOが当該反証を成功する可能性に対してバイアスのある意見を述べていることを批判するとともに、反証手法23に関しても経過書類の枠を越えて判断されるべきであると述べております。

 

 

詳細は Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co. 95-1066 –を参照ください。 或いはhttp://www.fedcir.gov/opinions/95-1066c.docをクリック下さい。

 

 

 

参考資料

 

 



Festo v. Shoketsu Kinzoku Kogyo (SMC)

United States Court of Appeals for the Federal Circuit No. 95-1066

 

Festo—Owner of USP4,354,125 (Stoll Patent) and USP B1 3,779,401 (Carroll Patent)

 

FESTO I               マサチューセッツ地裁       SMC INFR UNDER DOE

02/03/1994                 SMC Appealed to CAFC

FESTO II              CAFC     Affirmed (SMC INF UNDER DOE)

12/14/1995                 SMC Petitioned

FESTO III             SUPREME COURT   Vacated/Remanded In view of W-J

03/17/1997             Remanded to CAFC

FESTO IV             CAFC      Re-affirmed (SMC INF UNDER DOE)

04/19/1999             SMC en banc Re-Hearing Requested.

FESTO V              CAFC      Granted en banc Rehearing

08/20/1999

FESTO VI             CAFC en banc Decision (I)   No Infringement under DOE

11/29/2000

FESTO VII             SUPREME COURT   Vacated/Remanded to CAFC

05/28/2002             Remanded to CAFC

FESTO VIII     CAFC en banc Decision (II) > Remanded to District Court

09/26/2003