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Supreme Court Decision No. 13-298

June 19, 2014

Alice Corp. v. CLS Bank Int’l

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CAFC大法廷判決を支持

 

抽象的なアイデアを規定するステップ(方法クレーム)をコンピューターで実行する形式に書き換えたシステムクレームは特許保護適格性なし。

Computer-Implemented Abstract Idea is not Patent-Eligible.

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  Summarized by Tatsuo YABE

June 23, 2014     

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最高裁はCAFC大法廷判決を支持した。 即ち、Aliceの特許(4件)のクレーム(方法、記憶媒体形式、及び、システム形式のクレーム)は第3者機関(supervisory institution)を介在し金融取引のリスクを軽減する手法に関し、実体的には「抽象的なアイデア(Abstract Idea)」を規定しているのみであるとして101条保護適格性(Patent Eligibility)を満たさないと判断した。 尚、システム形式および記憶媒体形式のクレームも抽象的なアイデアを規定した方法クレームのステップを通常のコンピューターで実行させるにすぎず「抽象的なアイデア」を101条保護適格性を有する発明に変換するものではないと判断した。

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そもそも本事件の下級審(CAFC大法廷)が混乱した元凶はMayo v Prometheus判決(2013年最高裁判決*6))において特許不可主題を含むクレームが101条要件を満たすためにはそれ以外のステップにおいてクレームが全体として特許不可主題をはるかに超えたものに変換されていることが要件(Does the claim as a whole “significantly more than” judicial exception?)であると最高裁が判示したからである。 Mayo判決と今回のCLS Bank事件との大きな違いはMayo判決までは方法クレームに対する101条保護適格性が争点であったが、本CLS Bank事件において方法クレームの域に留まらず、システムおよび記憶媒体形式のクレームにまで101条保護適格性の判断が拡張されたからである。 今回の最高裁判決は101条保護適格性の判断(Mayo判決の法理)が方法クレームの域に留まらず特許保護例外(自然法則、自然現象、抽象的なアイデア等)を含むクレーム全般(クレームのカテゴリーは関係ない)に適用されることを確認した。

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但し、本最高裁判決はMayo判決以上に新たな法理を生み出したわけではなく、且つ、Bilski判決の法理を適用し、本事件のAlice特許の101条適格性を否定した。 然るにProsecutionの実務家としては、Mayo判決(2012年最高裁判決)以降の実務の形態を大きく変更する必要はないと考える。 唯一、コンピューター関係発明(あるいはソフトウェア関係発明)のクレームドラフティングにおいて、自然法則或いは抽象的なアイデアを主たる構成要素として含む場合に、101条適格性の判断に自信を持てない場合、あるいは、101条の拒絶を受けた場合には、先般USPTOが公開した101条適格性に関する審査ガイドライン(201434日公開*8))を参照することで対応するのが妥当であろう。 尚、本CLS Bank事件の最高裁判決が混乱した場合には当該審査ガイドラインを再度見直しになる可能性を危惧したが、当該ガイドラインの内容が大きく変更されることはないだろう。

 (以上筆者注)

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以下最高裁判決の概要:

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Alice v. CLS Bank -- Sup. Ct. No. 13-298

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経緯:

DC地裁判決: Alice特許4件は101条を満たさないとして無効。

CAFC大法廷判決(5:5)2013510:

多数意見はでず、Per Curium判決(Lurie判事)としてAlice特許4件は101条を満たさないとして無効

最高裁上告受理:2013126

口頭審理: 2014331

最高裁判決: 2014619日 (CAFC判決支持)

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本事件はAbstractアイデアを含むクレーム(方法クレーム、記憶媒体クレーム、及び、システム形式クレーム)101条適格性に関する。

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Aliceは金融取引における受け渡しリスクを軽減するためのスキーム(構想)を開示した複数の特許の権利者である。 当該特許は特に当事者間(二者の間)における金融取引における債務の受け渡しを促進するもので、問題となる特許(複数: USP5,970,479*1); USP6,912,510; USP7,149,720; USP 7,725,375)は(1)金融取引債務の受け渡しに係わる方法;(2)当該手法を実行するコンピューターを利用したシステム;(3)当該手法を実施するプログラムのコードを記録したコンピューター可読型記憶媒体をクレームしている。 CLS Bankは世界市場における為替取引を業とし、Aliceの特許クレームは無効であり、権利行使不能であり、非侵害であるという理由で確認訴訟を起こした。 Bilski判決後に、地裁において問題となるAliceの特許は抽象的なアイデアをクレームしているにすぎないとして101条を満たさないと判断された。 2013510日にCAFCは大法廷にて5:5の判決(6つの意見がでたがLourie判事によるPer Curium意見として)として問題となったAlice特許のクレーム全ては101条を満たさないとして地裁判決を支持した。

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以下、最高裁判決(全一致)の要旨:

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問題となるAlice特許のクレームは抽象的なアイデアをクレームしているので101条の要件を満たさない。

最高裁(Thomas最高裁判事による全員一致の判決文)は、上記CAFC大法廷判決を支持した。

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(A). 本裁判所(最高裁)は特許保護適格性を規定した101条には明記されていないが例外規定が内在していると解釈してきた。 それらは自然の法則、自然現象、及び、抽象的なアイデアである。 Association for Molecular Pathology v. Myriad Genetics2013年最高裁判決*7)  101条の例外規定(内在する規定)を適用するにあたり、本法廷(最高裁)は人の創意工夫の基礎となる要素(101条を満たさない)とそれら基礎的要素を統合してなる他の物(101条を満たす)とを識別することが不可欠である。 Mayo Collaboration Services v. Prometheus Lab2012年最高裁判決*6)

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(B)  上記考え方を基本とし、本件特許のクレームが101条の例外規定の概念に関するものか否かを判断しなければならない。 そうである場合(例外規定に該当する)には、クレームの構成要素がそれら個々に、或いは、組み合わせによってクレームの性質を101条に適合するものに変換しているかを検討することが必要である。

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(1) 本件においては、クレームの全ては第3者の介在による金融取引という抽象的なアイデアに関する。 長年蓄積された判例規則によるとアイデア自身は特許保護適格性を満たさない。 Gottschalk v. Benson事件(Gottschalk v. Benson: 1972年最高裁判決*2))においてBCDコード(2進化10進コード)を2進数の形式に変換する数学のアルゴリズムに関するクレームが特許保護適格性を否定した。 また、Parker v. Flook事件(Parker v. Flook: 1978年最高裁判決*3))においては炭化水素の触媒変換プロセスにおける限界を演算する数学の公式に関するクレームの適格性を否定した。 昨今では、Bilski事件(Bilski v. Kappos: 2010年最高裁判決*5))においては、商取引における価格変動に起因するリスクを低減する手法に関する特許の適格性を否定した。 本事件はこれら判決に準じ、特にBilski事件に類似しており、問題となるクレームは抽象的なアイデアに関するものである。 要は第3者を介在させて金融リスクを軽減するという仲介者介在による金融取引という概念である。 Bilskiで問題となった商取引のリスクを軽減するというアイデアと同様に、第3者が介在する取引は我々の経済活動の基礎的なもので広く行き渡った手法である。 さらに、第3者を介在させる取引は近年の経済活動の基本的な構成要素である。 然るに、第3者を介在させる金融取引は抽象的なアイデアであって101条の保護適格性の範疇にはいらない。

 

(2) Mayo判決のフレームワークの次のステップとして、方法クレームを実行するのに、通常のコンピューターによる演算を必要とするからという理由で抽象的なアイデアが101条適格性を満たすものに変換されるものではない。

(i) 既に良く知られた方法に、ごく一般的なステップを追加することによって、Mayo判決で判示した変換(Transformation:自然法則がそれを顕著に超えたものとなる)に必要な発明概念(Inventive Concept)を付与することにはならない。 コンピューターをクレームに追加することで101条適格性を好適にするものではない。 抽象的なアイデアに「それを適用する・・」という用語を追加する、或いは、抽象的なアイデアの適用を特定の技術環境に限定したとしても101条適格性を満たすには不十分である。 抽象的なアイデアに、「コンピューターを伴い適用する」という用語を追加して2つのステップを組み合わせても101条保護適格性に影響を与えるものではない。 抽象的なアイデアを含むステップに一般的なコンピューターによる実行ステップを追加することはクレームを起案する人の手腕の範疇であってそれを超えるものではない。

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(ii) 本事件における方法クレームは抽象的なアイデア(3者を介在させる金融取引)を一般的なコンピューターで実施させることを指示しているにすぎない。 クレームのステップを個々に分析する。 以下のステップがコンピューターによって実行されるにすぎない: 影の口座(shadow account)を開設し、維持するステップ; データを受けるステップ; 口座の残金を調整するステップ; 自動的な指示を発行するステップ; ・・・は単なる一般的なステップである。 これらステップがクレームで規定された順番で組み合わされたとしても、個々に分析したステップに何か実体を追加することにはならない。 方法クレームを全体としてみたとしても、それは一般的なコンピューターによる第3者介在の取引という概念を超えるものではない。 それはコンピューター自身の機能を効率化することでもなければ、それ以外の技術或いは技術分野における改善を意図していない。 第3者を介在させる金融取引という抽象的なアイデアに一般的なコンピューターを活用するように指示(ステップ)は抽象的なアイデアを101条の保護適格性を満たす発明に変換するには不十分である。

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3  さらに、Aliceのシステムおよび記憶媒体形式のクレームは問題となる方法クレームで規定する抽象的なアイデアに実体的な特徴を追記するものではない。 依って、これらクレームも101条適格性を満たさない。

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(以上)

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余談ではあるが、米国のロースクールLL.M(あるいはJDの3L)で知財(特に米国GWUなど)を専攻する方は1972年のBenson最高裁判決から本最高裁判決までの101条関連の最高裁判決をまとめて、何らかの結論を導き出す形式の論文を書かれてはいかがでしょうか? 

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References:

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35 U.S.C. §101:

Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title.

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*1) USP 5,970,479Claim 33

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Claim 33 recites:

“A method of exchanging obligations as between parties, each party holding a credit record and a debit record with an exchange institution, the credit records and debit records for exchange of predetermined obligations, the method comprising the steps of:

              “(a) creating a shadow credit record and a shadow debit record for each stakeholder party to be held independently by a supervisory institution from the exchange institutions;

              “(b) obtaining from each exchange institution a start-of-day balance for each shadow credit record and shadow debit record;

              “(c) for every transaction resulting in an exchange obligation, the supervisory institution adjusting each respective party’s shadow credit record or shadow debit record, allowing only these transactions that do not result in the value of the shadow debit record being less than the value of the shadow credit record at any time, each said adjustment taking place in chronological order, and

              “(d) at the end-of-day, the supervisory institution instructing on[e] of the exchange institutions to exchange credits or debits to the credit record and debit record of the respective parties in accordance with the adjustments of the said permitted transactions, the credits and debits being irrevocable, time invariant obligations placed on the exchange institutions.”

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*2) Gottschalk v. Benson1972年:最高裁判決)

BCDコード(2進化10進コード)を2進数の形式に変換する数学のアルゴリズムに関するクレームの特許保護適格性を否定した。

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*3) Parker v. Flook判決(1978年:最高裁判決)

炭化水素の触媒変換プロセスにおける限界を演算する数学の公式に関するクレームの特許保護適格性を否定した。

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*4) State Street v. Signature Finance Group (19987月:CAFC判決;通常の3人のJudgeパネル)

本判決まではビジネス手法は「抽象的なアイデア」であるとして101条の保護適格性を否定されると考えられていた。 本判決において、ビジネス手法に関する発明であるからという理由のみで101条保護適格性を否定されるべきではないと判示された。 101条保護適格性を判断するうえにおいて重要な判断事項は現実社会に対するPractical Applicationがあるか否かである。 当時としては画期的な判決であり、この事件以降しばらくの間、ビジネス手法関連出願が増大した。 

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*5) Bilski v. Kappos判決20106月:最高裁判決)

商取引における価格変動に起因するリスクを低減する手法に関するクレームの特許保護適格性を否定した。 最高裁自らが過去に利用したMachine or Transformationテストは101条保護適格性を判断する唯一のテストではないと説明した。 また、CAFCState Street Bank事件(1998*4))の判示事項のみで101条適格性を判断するのは正しくないと言及した。

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*6) Mayo Collaboration Services v. Prometheus Lab20123月:最高裁判決)

免疫性胃腸疾患の治療効果を最適化する手法に対するクレーム(個々人の代謝に応じ薬の投与量を増減する)は自然法則を顕著に超えるものではないとして特許保護適格性を否定した。

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*7) Association for Molecular Pathology v. Myriad Genetics20136月:最高裁判決)

(1)そもそもDNAは情報であり、単離されたDNAは、自然界に存在するDNAとその情報の成分に違いはないとして101条の保護適格性を満たさないが、(2)研究室で生成されたcDNAは自然界に存在する状態のものではないとして101条適格性を満たすと判断した。

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*8) 審査ガイドライン(201434日公開)

審査ガイドライン先般のPrometheus判決(2012年、最高裁判決)の判示事項、「101条保護適格性を得るためには自然法則に追加された特徴によってクレームが自然法則を顕著に異なるものになる」という「顕著に異なる(significantly different)」の意味合いを解釈するためのガイドラインである。 「顕著な違い」を支持する好適な要因(a)-(f)と負の要因(g)-(L)を比較衡量することで判断するということを審査官に通知した。 Prometheus判決では “significantly more than”という用語を用いて判示下(筆者注)。

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本審査ガイドラインではEXAMPLES AHでもってそれら要因の適用の仕方を例示している。 本ガイドラインで示された「顕著な違い」を支持する「正の要因(a)-(f)」および否定する「負の要因(g)-(L)」を比較、衡量し、正の要因の該当数が負の要因の該当数よりも多ければ多いほど101条保護適格性を満たすことが明瞭ということになる。

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考資料:BACKGROUND INFO

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Alice v. CLS Bank|

  

 

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