Abbott v. Becton, NOVA Biomedical and Bayer Healthcare

Case No. 2009-1511

Fed Cir. Jan 25, 2010

 

Finding of Equitable Conduct due to contradictory 

statement made during the related (but 'not a counterpart') EP prosecution to EPO

Summarized by Tatsuo YABE

On March 07, 2010

 

 2010年4月26日にCAFC大法廷で審理することに決定:

 

Added July 17, 2010

   

筆者コメント:

 

(以下の判決は、2010年4月26日にCAFC大法廷で審理することが決定された) 

(⇒ 2011年5月25日大法廷判決がでました。)

 

連邦地裁において、@米国特許庁以外のフォーラム(欧州特許庁)に対してAbbott社が供述した内容が米国特許庁に対してなした供述と真っ向から反対するとし、当該欧州特許庁になした重要な供述内容が米国特許庁に開示されなかったこと、さらに、A当該欧州で供述した内容と全く矛盾することを確認した上でAbbott社の特許弁護士と技術博士が米国特許庁を欺く意図をもって当該矛盾する供述をしたと事実認定し、不公正行為と認め、米国特許5820551の権利行使を不能と判決した。 当該地裁判決に対してCAFCは地裁の裁量権の濫用があったか否かという基準で審理をした結果、地裁の判決を2−1で支持した。 不公正行為が認定されるには、「(1)開示されなかった或いは不正確に開示された情報の重要性」と「(2)非開示或いは不正確な開示が意図的に行われた」という2つの要素が被告によって証明されなければならない。 今回の事件では(1)の情報の重要さが決定的なレベルであったこと(言い換えると、欧州での供述を伝えると米国特許は成立しなかった)、および、(2)欧州での供述が疑いの余地がない、明白な内容であり、それを周知の上で当該欧州での供述と真っ向から矛盾する供述を米国特許庁になしたということで騙す意図の存在が明白にあったと判断されたと理解される。

 

本判決に対する現地弁護士事務所の速報を斜め読みすると、読者は米国特許庁にIDSする場合に対応諸外国での関連出願の開示情報と矛盾しないかをチェックする必要があるかのごとく捉えがちであり、米国特許庁に対する開示義務の厳格さを再認識することになる。 但し、判決文を正確に読むと歴然であるが、欧州特許庁になした供述(optionallyという用語をその文言のとおり、オプションであって、MUSTではないことに疑いの余地はないと供述した)を後に確認しながらもそれと全く矛盾する供述(optionallyという用語は使用されているもののそれはオプションではないと当業者は理解する。 即ち、オプションではなく、MUSTだと宣誓書で宣言した。)を米国特許庁に成した事によるものである。 もしも本事件において米国特許庁に同じ供述をしたとしても、当該欧州での供述(そもそも時期も全く昔であり、当時の全く別の特許担当者による供述である)を確認せずに行っていたとしたら今回のようなシビアな制裁(権利行使不能)を受けなっかたであろうと予想される。

 

従って、米国特許庁に対して通常の妥当な誠実義務をもって引例に対する開示に反論(米国特許庁に対して)をしているのであれば権利行使不可というようなシビアな制裁を受けることはないと考える。 勿論、IDSの開示義務の重要さを再認識することは大事だが、妥当な誠実義務以上の義務をような新規システム(対応諸外国での引例に対する反論の内容と矛盾しないかを全てチェックするようなワークフロー)を構築する必要はないと考える。

 

■ 背景技術:

Abbott社はカリフォルニア北部地区連邦地裁の判決(クレーム1−4は無効で、USP5820551(米国551特許)の全体は不公正行為により権利行使不可)を不服としてCAFCに控訴した。 約2360万人のアメリカ人は糖尿病の問題を抱えており、当該糖尿病とは体内で充分なインシュリンを生成できない、或いは、インシュリンを効果的に使用することができないという病気である。 インシュリンはグルコースを細胞に吸収することで血糖値を制御する役割をする。 体内で充分にインシュリンを製造できない或いは有効活用できない場合にはこのグルコースが血中に蓄積し、そのまま放置すると、意識不明、失明、肝臓病、下肢の切除などの重大なる問題の原因となる。 然し今日の医学ではグルコース量の測定を家庭で実施できる安価な測定具を提供可能となっている。 問題となる特許(USP5820551)はこのグルコースを測定するための使い捨て片(Strip)に関する。 当該グルコース測定片に一滴の血液を垂らすか、或いは、当該測定片を血中に浸すことによって、血液中のグルコースが当該測定片のEnzyme(酵素)と化学反応を起こし、電子を生成し、測定具の活性電極に転送することでグルコースのレベルを測定可能となる。

 

■ 概要:

CAFCでは551特許の自明性、Abbott社の不公正行為、非侵害(地裁の判断)に関して検討した。 ここでは不公正行為に関するCAFCの判断に関してのみ要約する:

 

地裁は米国382特許の欧州版の無効手続き中にAbbott社がEPOに対して述べた重要な内容を米国特許庁に開示しなかったとして米国551特許を権利行使不可と判断した。 

 

不公正行為とは、PTOを欺く意図を持って、特許を得るうえで重要な情報を歪曲してPTOに伝える、重要な情報を隠す、または、間違った情報をPTOに伝えることを含む。 Innogenetics. N.V. v. Abbott Labs (Fed Cir 2008); Pharmacia Corp. v. Par Pharm Inc. (Fed Cir. 2005)

 

不公正行為を主張する側が上記した情報の重要性および欺く意図をそれぞれの閾値レベルに達していることを明白且つ説得性のある証拠で証明しなければならない。 裁判所は、「重要性」と「騙す意図」のそれぞれのレベルを比較衡量し、どちらかひとつの要素がより重大であることが証明されれば他方の要素の証明度合いは低くとも不公正行為を成立させることができる。 Digital Control Inc. v. Charles Mach Works (Fed Cir 2006)

 

CAFCは地裁の不公正行為に対する判断に対しては「裁量権の濫用があったか: abuse of discretion 」というレベルで判断する。 Star Scientific Inc. v. R. J. Reynolds Tobacco Co. (Fed Cir 2008)

 

不公正行為と判断された場合にはその制裁は厳格であり、特許全体が権利行使不能となる。 拠って、特許権者の不正な行為が軽微なレベルである場合に特許全体の権利を消滅させるということも、また、不公正な行為である。 Star Scientific, 2366

 

A. PTOに開示されなかった情報の重要性

 

1994年1月12日、Abbott社はEP0078636特許(米国382特許のEPファミリー)の出願審査中(無効手続き)にEPOに対して、D1引例と識別するために、EP’636特許における血液サンプル内で設置される電極に保護皮膜をつけることは望ましいものの、不可欠な要素ではないと主張した。  

 

EP'636特許の11ページ第1パラグラフ(米国382特許のコラム4:63行目以降)に以下のように開示されている:

 

Optionally, but preferably when being used on live blood, a protective membrane surrounds both the enzyme and the mediator layers, permeable to water and glucose molecules.  This can be a film of dialysis membrane, resiliently held.....

 

1995年5月23日、Abbott社は再度、上記開示内容の解釈に対して保護皮膜の使用は望ましいのであって、MUSTではないことは「疑いの余地はない(unequvacallyi clear)」とEPOに対して供述した。

                                             

米国特許5820551(血液サンプル内に載置される電極には保護皮膜は使用されないと規定した)は1983年の原出願から数々の継続出願を経て、成立した特許である。 当該551特許の審査中にAbbott社自身の米国特許4545382(米国特許382)が先行技術として引用された。 1997年、USPTOの審査官とのインタビューにおいて、Abbott社の特許弁護士、Pope氏は引例である382特許においては、電極に保護皮膜を使用することは望ましく、オプションのように開示されているが、同開示内容の真意は、血液サンプル内で使用される電極には保護皮膜の使用が必要であると当業者は理解すると主張した。 審査官はその主張に同意し、Abbott社が宣誓書において、そのような保護膜を使用することは不可欠であると考えられていたことを示す証拠を宣誓書の形態で提出することによって、382特許と識別できるであろうと述べた。 その後、Abbott社のSanghera博士によって宣言書でその趣旨をUSPTO審査官に伝えた。  

 

■ 問題となった米国551特許

 

USP5820551のクレーム1:

代表的な図

1. A single use disposable electrode strip for attachment to the signal readout circuitry of a sensor to detect a current representative of the concentration of a compound in a drop of a whole blood sample comprising:


a) an elongated support having a substantially flat, planar surface, adapted for releasable attachment to said readout circuitry;
b) a first conductor extending along said surface and comprising a conductive element for connection to said readout circuitry;
c) an active electrode on said strip in electrical contact with said first conductor and positioned to contact said whole blood sample;
d) a second conductor extending along said surface comprising a conductive element for connection to said read out circuitry; and
e) a reference counterelectrode in electrical contact with said second conductor and positioned to contact said whole blood sample,

wherein said active electrode is configured to be exposed to said whole blood sample without an intervening membrane or other whole blood filtering member and is formed by coating a portion of the first conductor with a mixture of or layers of an enzyme which catalyzes a redox reaction with said compound in whole blood and a mediator compound which transfers electrons from said redox reaction to said first conductor to create a current representative of the concentration of said compound in said whole blood sample; and 

wherein said active electrode which is formed on a portion of said conductor is not in electrical contact with said reference counterelectrode but these electrodes are so dimensioned and positioned that they can be simultaneously completely covered by a single drop of whole blood such that this drop provides an electrical path between these electrodes to support said current representative of the concentration of said compound in said whole blood sample.

図3: 18、20 電極   19、21導電ライン

図6: 31 前方側の第1電極  32 後方側の第2電極

 

■ 出願人(Abbott社)の主張の矛盾点(まとめ)  

 

D1引例に対して

米国382特許(EP636特許)に対して

EP636特許出願時の主張

(米国382特許と同じ内容)

D1引例と識別するために、EP636特許(米国382特許)では保護皮膜の使用は望ましいが、不可欠(MUST)ではないと述べた。

 

米国551特許出願時の主張

 

米国382特許(EP636特許)と識別するために米国382特許(EP636特許)では保護皮膜の使用はMUSTであると述べた。

 

 

B. PTOを欺く意図:

 

PTOに対する非開示の行為が意図的に行われたということを証明するために、全ての証拠を参酌し、PTOを欺く意図があったということを示す充分な非難されるべき行為がなければならない。 Kingsdown 863 F.2d at 876  意図を裏付ける直接証拠は通常は得ることはできないので、状況証拠によって意図を推論することが可能である。 Star Scientific, 537 F.3d at 1366

 

地裁は以下の事実認定をし、Abbott社がPTOを欺く意図を持ってEPOに対する開示を隠匿したと判断した。

 

(1) 382特許に関してAbbott社がPTOに供述した内容は米国551特許の拒絶を回避する上で非常に重要な内容であった。

(2) EPOに対してAbbott社がなした供述は、後にAbbott社がPTOに対して供述した内容と矛盾するので、PTOにとって当該EPOに対してなした供述は重要な内容であった。

(3) Abbott社の米国特許弁護士、Pope氏とSanghera博士は当該EPOに対してAbbott社がなした供述の内容を知っていながら、意識的にPTOには開示しなかった。

(4) Pope氏とSanghera博士ともにEPOになした供述の内容をPTOに開示しなかった理由を妥当性を持って説明できなかった。

(5) Pope氏とSanghera博士のEPO情報の非開示理由は全く信じるに値しないので、PTOを欺く意図を示唆する。

 

CAFCは上記5つの事実認定に対して地裁の明白な誤認はないと判断し、「意図」の存在を確認した。 特に(3)に関しては米国551特許の審査中にEPOでの経過書類の内容をチェックし、問題となるEPOに対する供述をPTOに開示しないという積極的な判断をしたことに対してAbott社側も同意している。

 

 

 EP636特許(米国382特許) と米国551特許

 

EP636特許 米国382特許 米国551特許
原出願は、英国出願8132034号(優先日:1981年10月23日)を基礎とし、1982年10月21日に欧州出願された。 原出願は、英国出願8132034号(優先日:1981年10月23日)を基礎とし、1982年10月22日に米国出願された。 原出願は7件の英国出願(優先日:1983年5月5日〜1984年8月29日)を基礎とし、1984年5月7日に米国出願され、その後、継続出願を繰り返し、米国551特許は1995年6月6日に出願され、1998年10月13日に特許された。

 

■ 地裁での判断:

上記事実を基にカリフォルニア北部地区連邦地裁は不公正行為を構成するための2つの要件:

 

(1)特許を得るために重要な情報が隠匿された;

(2)当該隠匿行為はPTOを欺く意図で実行された。

 

が満たされたと判断し、その結果として、当該米国551特許の権利行使を不可とした。

 

■ CAFCの判断:

EPOに対して述べられた出願人(Abbott社)の意見は、米国551特許を審査するUSPTOにとって重要な情報であり、Abbott社のSanghera博士およびPope特許弁護士は共にEPOに提出された当該意見をUSPTOを欺く意図をもって隠したという地裁の判断に明白なエラーはないとして、地裁の判決を支持した。 尚、この不公正な行為を基礎として地裁が米国

551特許を権利行使不能とした判断は地裁裁判官の裁量判断の枠を超えるものではない。

**************** 以上2:1の多数意見 (FRIEDMAN判事: DYK判事)**********************

 

■ LINN判事による反対意見あり:

 

(1) US Patent Related  (2) Case Laws  (3) Self-Study Course (4) NY Bar Prep (5) LINKS Home