Edward
H. Phillips, v. AWH Corp.
CAFC
03-1269, -1286
Decided:
Commented
by Tatsuo YABE on
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原告: Edward
H. Phillips, (Phillips)
多数意見: NEWMAN判事、LOURIE判事
本事件は明細書の開示によってクレーム用語の権利範囲が減縮的解釈されることを肯定した判決であります。 問題となった特許USP4677798(以下798特許と称する)はPhillips氏の米国特許で、刑務所の建造物に使用される暴力&破壊行為に対抗可能な建築モジュール(規格壁パネルで構成される)をクレームしており、同パネルは同用途に所望される防音性、耐火性、衝撃抵抗(弾丸或いは爆弾などに対抗する耐久性)、及び軸方向及び横方向に優れた荷重支持性能を示す構造となっている。
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クレーム1 |
1. Building
modules adapted to fit together for
construction of fire, sound and impact resistant security barriers and
rooms for use in securing records and persons, comprising
in combination, an outer shell of substantially parallelepiped shaped with two
outer steel plate panel sections of greater surface area serving
as inner and outer walls for a structure when a plurality of the
modules are fitted together, sealant means
spacing the two panel sections from steel to steel
contact with each other by a thermal-acoustical barrier material, and
further means
disposed inside the shell for increasing its load
bearing capacity comprising internal
steel baffles extending inwardly from the steel shell
walls. |
反対意見: DYKE判事
上記多数意見に対してDYKE判事は、上記出訴期限に関しては同意するものの、"baffle"(バッフル)の解釈に対して真っ向から反対しております。 上記多数意見に基づく
baffle(バッフル)の解釈は過去のCAFC判決の判示事項と矛盾するので下級審で言い渡された略式判決を破棄するべきであるとコメントしております。
争点となったバッフルを規定しているクレーム1の関連箇所は以下のとおりであって、
1. Building modules adapted to fit together for
construction of fire, sound and impact resistant security barriers and rooms for
use in securing records and persons, comprising in combination,
further means disposed
inside the shell for increasing its load bearing capacity comprising internal
steel baffles extending inwardly from the steel shell walls.
即ち、当該箇所では「加重を支持する能力を増強するための内部に設けられた鋼製の壁面より延設する鋼製のバッフル」というように定義されております。 しかしながら壁面を進入してくる弾丸の貫通を阻止するための機能をバッフルが備えていることに関してはクレーム1では一切言及されておりませんのでクレームのNotice機能を重視するのであれば耐荷重支持性を増強させるために配置された鋼製バッフルという構成要素に壁面との角度関係の特徴を盛り込んでクレームを限定的に解釈するのは妥当ではないと思料します。
このように従属クレーム2においてバッフルがパネル面に対して弾丸を偏向させるような角度を持って配置されていると規定しており、これは出願人の意図としてクレーム1ではバッフルの弾丸偏向機能を持つような配置角度を特定せずに、荷重支持性能の増強のみに機能を絞った定義であり、クレーム2において対荷重支持性能に加えて、弾丸偏向機能を実現するための配置角度なる特徴を追記したということは明瞭であると考えます。 また、クレームドラフティングストラテジーの観点からもクレーム1,2の記載は適切なクレーム展開であると思慮します。 然るに、コロラド地裁の略式判決及びそれを支持したCAFC多数判決に疑問を感じます。
さらに、Phillips氏(その代理人)がクレーム1を上記意図(即ち、クレーム1ではパネル内に荷重支持性能増強のためのバッフルの存在のみ定義し、クレーム2で弾丸偏向機能を実現するための配置角度なる特徴を定義する)でドラフトしたのであれば「バッフルの配置角度は傾斜角度に限定される必要はない」という一文を明細書のどこかに挿入しておくべきであったと思慮します。
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以下判決分抄訳
Summarized
by Tatsuo YABE
このウエブサイトに掲載している情報について細心の注意を払っておりますが、このウエブサイトをご利用になったことにより生じるいかなる損害についても責任を負いかねますのでご了承ください。
原告: Edward H. Phillips, (Phillips氏)
被告:
AWH
Corp., Hopeman Brothers, Inc., and Lofton Corp. (AWH)
背景:Phillips氏は米国特許第4677798号の特許権者であって1989年AWHと同特許を基礎とする販売活動に対する契約を締結した。 同契約は1990年に満了し、その後1991年初頭にPhillips氏がAWH社の販売用カタログを確認したところPhillips氏の技術と関連する製品をAWH社が継続的に使用していることが判明した。 1991年1月から1992年6月にかけて当事者間で書面のやり取りが行われた。 1997年2月3日にPhillips氏はAWH社を相手取り同特許クレーム1,21,22,24,25,26を侵害しているとしてコロラド地区連邦地裁に訴訟を提起した。 2002年11月には連邦地裁は798特許のクレームの解釈を発表した。同解釈によると798特許のクレームで規定されている “baffle”という用語は112条第6項の
means plus functionクレームと解釈され明細書(図面)の開示を読み込むべく減縮的に解釈されると結論づけた。 同明細書の開示内容とは(1)バッフルは壁面に対して鈍角或いは鋭角である(即ち、対パネル面配置角度が90度以外);(2)バッフルは壁モジュールの中間部において係合バリアを形成するである。 同クレーム解釈の基にはPhillips氏はAWH社の侵害を証明することができないのでAWH社の非侵害の略式判決の申し立てを認めると判断した。
Phillips氏の所有する同特許は(798特許)は刑務所の建造物に使用される暴力&破壊行為に対抗可能な建築モジュール(基準型壁パネルで構成される)をクレームしており、同パネルは同用途に所望される防音性、耐火性、衝撃抵抗(弾丸或いは爆弾などに対抗する耐久性)、及び軸方向及び横方向の加重支持性能を示すことが記載されている。
多数意見: NEWMAN判事、LOURIE判事:
争点となったクレームの構成要素は
“baffle”という用語であって、以下の要件を明細書及び図面から盛込んで解釈する:(A)バッフルがパネル表面に対して傾斜しているというバッフルの配置角度に関する特徴;(B)互いに係合する配置であるという特徴
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DISCLOSURE
OF THE INVENTION |
従来の記載欄には、「先行技術には安価なハウジングに強力な衝撃を与える武器に対応する有効な方法がなかった」と記載している。
明細書(コラム5の17−19行目)において図6を参照し、外側の壁を貫通しようとするような弾丸を偏向するような角度でバッフルは配置されている。
上記のような明細書での明白な説明によって、特許権者は、発明は耐衝撃性また弾丸に対する耐久性に優れたパネルであって、バッフルは90度以外の角度で配置されなければならないと考えていると判断する。 798特許に開示されているように、バッフルが90度で配置されている形態では弾丸を偏向することはできない、且つ,当該90度の配置状態は先行技術(USP2717664及びUSP4505101)に開示されている。
バッフルという用語は今回問題となったクレームの全てにおいて上記意味合いと整合性のあるように使用されている。
我々は798特許の権利範囲を上記のように限定的に解釈するので、且つ、AWHの形態が鋭角或いは鈍角なるバッフルの配置をしていないので、連邦地裁の非侵害の判断を支持する。
然るに図6に破線で示すように、外側鋼壁を貫通するかもしれない弾丸が進入してくるときにバッフルによって偏向される傾向がある。 バッフルの配置角度が90度ではない状態ではない形態(即ち90度の形態)を開示した図面が存在しない。
まとめ:
― バッフルは means plus functionクレームではない。
― バッフルの配置角度が90度ではないという特徴はバッフルという用語の一般的な意味に反する。
@ 特許権者はバッフルが90度以外で配置された形態しか明細書に開示していないからといって、その形態にクレームを読み込むことには反対である。 Liebel,
358 F.3d at 906
A 多数意見ではバッフルの配置角度が90度以外でないと弾丸を偏向することができないとし、弾丸の偏向があたかも必須の効果のように述べているが、本願においては他の目的も開示されている。 Liebel判決において明記しているように、特許された発明が幾つかの目的を達成するというときに、権利範囲を解釈するときに、同特許の全てのクレーム記載された目的の全てを満たすような構造に限定解釈する必要はない。さらに、特定の主題を除外するという明白なディスクレーマーがない場合には、たとえ発明者が当該発明を特定の方法で使用することを予期していたとしても当該クレームの権利範囲を同予期した内容に限定的に解釈されるものではない。
Liebel, 358 F.3d at 909 (quoting Northrop Grumman Corp. v. Interl Corp., 325
F.3d 1346, 1355 (CAFC 2003) バッフルが90度配置されている場合には多数意見に基づく構成からは排除される、然しながら、本願明細書で開示された耐荷重支持性能及び温度,音響の隔離という目的を達成する.クレームに通常の意味合いを持たせると満たされない目的を認識するということはそれ自体では当該通常の意味合いを限定的に解釈するために十分な放棄ではない。
Bバッフルが90度配置されている状態は先行技術文献に開示されていると多数意見は述べているが、それは通常の意味合いをバッフルという用語に与えた場合のクレームの無効を示唆しているのかもしれないが、特許クレームの一つの特徴が先行技術文献に開示されているということ自体は特許クレームの有効性に重大な疑問を投げかけるものではない。 クレームされた発明の各要件と全ての要件を単一の先行技術文献が満たす場合に新規性を失うことになる。 クレームはその有効性を維持するように構成されなければならないという一般論があるからといって、不明瞭なクレーム用語を通常の意味に則さないに拘わらず限定的に解釈してもよろしいということではない。
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