Maxwell Case

Susan M. Maxwell v. J. Baker, Inc

(CAFC case decided on June 11, 1996)

 

Summarized by Tatsuo Yabe on Mar 01, 2002

Revised on April 14, 2002

 

Susan Maxwellの米国特許第4,624,060号のクレーム1,2,3を侵害するという陪審の評決を不服としBaker社の法判断の申立てを拒絶したミネソタ(ミネアポリス)地区地裁の判決を不服とし、Baker社は当裁判所に控訴した。

対象となる特許: 米国特許第4,624,060号−ペアとなる靴を離間しないように互いに連結しておくために、各靴の内側に(穴付きの)タブを取り付け、フィラメントを使って互いのタブを連結するためのシステムに関する特許である。 図2が代表的な図である。

Maxwellのクレーム1に対する解釈に賛同できない。 クレーム1において、タブは靴の内側ソールの一端部より、靴上部の内側面と離間した状態で、垂直方向に上方に延設することを規定している。 さらにクレーム3では、タブは靴の上部の内側面に沿って上方へ延設していることを定義している。 従って、両クレームにおいて靴の上部に沿って延設する分離したタブを要件としている。

従って、Maxwellのクレーム解釈ではクレーム1の要件である「タブは靴より分離したものであり、靴上部に沿って延設する」という特徴を無視することになる。 明細書或いは経過書類の何れにも、クレームをそのように解釈できるということを示唆する記載はない。

Baker社は陪審の評決を支持することは間違いであると議論し、「靴の裏地に取付けられた固定タブを使用する」という技術が、Maxwellの特許明細書に代替案として開示されていたがクレームされていないということで、公共に提供されたものであると主張している。 特に、Baker社は、Maxwell社の明細書の開示で「(コラム2,11.      41−43行目)代替案としてはタブは靴の横側或いは後側の裏地の縫目に縫い合わせても良い」という形態を参照したとして、この開示が被疑侵害の形態であると主張している。 Maxwellは最高裁判決であるGraver Tank v. Linde Air Products Co., 339 U.S. 605, 85 USPQ 328 (1950)を引用し、明細書に代替案を記載しておくことは、現実に均等物を見出すことをサポートすると反論した。 当裁判所はBaker社の主張を支持する。

特許権者は、出願時に自己の発明を狭く記載し、侵害訴訟時になってから、明細書に均等物を開示しているという理由で均等論侵害を主張することはできない。 そのようなことがもし可能であれば特許出願人が出願時に広範な開示を明細書にするものの、減縮されたクレームで出願することによって、明細書の開示に匹敵する広範なクレームの審査を回避することを促すことになる。 Genentech, Inc. v. Wellcome Found. Ltd., 29 F. 3d 1555, 1564, 31 USPQ2d 1161, 1167 (Fed. Cir. 1994)

米国特許法第112条の要求事項「出願人は自分自身が発明であるとする主題を特定し、明白にクレームすること」という要件に反するものである。 さらに、出願人が自らクレームする発明に対して慎重に審査がされた後に特許が認可されるとする米国特許の審査体系にも矛盾するものである。 従って、当法廷はBaker社の主張「明細書に開示されているがクレームされていない主題は公共に提供されたものである」を支持する。

(中略)

Maxwellは自らのクレームを靴の内側と外側ソールとの間に取付けられた固定タブに限定した。 Maxwellは、「固定タブを裏地の縫目に縫込むという代替案」を明細書で開示したがクレームしなかった。 このような代替案をクレームし忘れたことによって、米国特許庁は、これら代替案の形態が特許しうるものであるか否かを検討する機会を略奪されたのである。  法的な解釈として、Baker社はMaxwellが公共に提供したタブの取付けシステムを使用することによって当該Maxwellの特許を侵害することはできない。 従って、当法廷はBaker社の均等論を適用しても非侵害であるとの主張に基づく法判断の申立てを拒否する地裁の判決を取消す。

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