■ WSOU Investments v. Google LLC - Fed. Cir. 2023-10-19
クレームの”a processor”はMPF解釈される場合とそうでない場合があるので要注意。
MPF解釈されることを想定し明細書で対応するアルゴリズムを開示しておくこと!
■
Deere v.
Gramm- Fed. Cir. 2021-02-04
自明性(敢えてMPF解釈):
"coiled
spring"の代わりに"biasing
means for biasing.."とクレームすることでMPF解釈され余裕で非自明と判断された。
■ MTD v. Iancu
(PTAB) - Fed. Cir. 2019-08-12
MPFクレームの戦略的活用:
特許権者がクレームの構成要素に112条6項解釈の適用を主張しクレームの無効(自明)を免れた面白い事件。MPFクレームは時として有効活用できることを明示した判決。
■ SKKY v
MINDGEEK - (Fed.
Cir. June 7, 2017)
MPF解釈(meansを付けて意図的にMPF解釈):
明細書にはwireless
deviceという用語があるが、出願人は敢えて”means”を付記しクレームでは、wireless
device meansと規定し、6項解釈(明細書の開示と均等物という減縮解釈されるので権利化しやすい)を希望し審査段階では認められた。しかしIPRでの審理ではwireless
deviceという用語はそれ自体で構造体と理解され”means”という用語を付けただけで6項解釈は適用されないと判断した。CAFCも審決を維持した。
■Media
Rights v. Capital One (Fed. Cir.
September 4, 2015)
MPF解釈と112条2項のクレームの明瞭性:
本事件はWilliamson大法廷判決(2015年6月16日)以降のMPFクレームに関する判決であり、Media
RightsのUS7,316,033特許(以下033特許)で問題となったクレーム用語の一つはcompliance
mechanismで、確かにmeansという用語は使っていない。しかし当該用語には当業者が理解しうる構造体を含んでいるとは理解できないとして地裁およびCAFCは当該用語をMPF用語であると判断し、112条第6項解釈を適用した。そして、問題となるクレーム用語で規定する機能を実現するための構造体(アルゴリズム:すなわち、MPF用語に対応する構造体)が明細書に開示されているか否かを判断した。結論としてはcompliance
mechanismというクレーム用語に対応する機能(4つの機能)に対応する構造体(機能を実現するための十分な開示)が開示されていないとして112条第2項のクレームの明瞭性の要件を満たしていないとして当該クレームを無効と判断した。
■Williamson
v. Citrix - (Fed. Cir. en banc: June 16, 2015)
MPF解釈と112条2項のクレームの明瞭性:
CAFC大法廷はmeansという用語を使用しない構成要素にMPF解釈(112条第6項解釈)を適用する基準を明示した。しかし、当該基準(3Prongテスト)はWilliamson判決以前からMPEP2181に記載されていたので審査においてクレーム用語のMPF解釈の判断基準は変わらない。問題となった構成要素は”distributed
leaning control module”で”module”は”means”を置換したにすぎない、”module”以外でも、例えば、mechanism、 element、 deviceなども十分明白な構造をその用語に内在(含意)するものではなくmeansを使用するのと等価である。さらにlinking
wordとして”for
・・・ing[機能]”の代わりに”configured
to”或いは”so
that”に書き換えてもMPF解釈に影響を与えない(詳細はMPEP2181参照)。
■EON
v. AT&T Mobility LLC - (Fed.
Cir. May 6, 2015)
MPF解釈とアルゴリズム:
ソフトウエア関連発明を規定するMPF用語の機能を実現するための構造(アルゴリズム)を記載しておくことの重要さを再警告した判決。地裁判決と本CAFC判決の間にTeva判決(2015)とNautilus最高裁判決(2014)が出た。
■ Ibormeth v.
Mercedes-Benz (Fed. Cir.
October 22, 2013)
MPF解釈と112条(b)項の関係:
112条(f)項解釈されるクレームの構成要素(computational
means)が112条(b)項のクレームの明瞭性を充足する要件を判示した。即ち、MPF解釈された当該構成要素の機能に対応する構造あるいはアルゴリズムを当業者が理解できるレベルに明細書で開示されていなければならない。(2015年のWilliamson判決の基礎)
■ Flo Healthcare
Sol. v. PTO & Rioux Vision (Fed.
Cir. Oct 23, 2012)
MPF解釈(高さ調整機構):
本事件の争点は「高さ調整機構」というクレーム用語が112条第6項解釈されるか否かであった、しかしCAFCは、「PTO審判部のクレーム解釈をCAFCで判断するときの基準(Review
STD)」に関してIntra-Circuit
Conflictを認め、大法廷での審理の必要性を名言した。
■ Arisocrat Tech. v.
International Game Tech. (Fed.
Cir. March 28, 2008)
MPF解釈(制御手段):
クレーム1のMeans Plus
Functionで表現された
"game control means" に相当する明細書の構成(structure)が一般的なマイクロプロセッサとしか開示されていなかった。 CAFCは、当該明細書の開示のみでは、112条第6項で言う構造・構成(Structure)が開示されていないと判断した。プログラム関連発明の場合には、112条第6項で言う明細書で開示されたstructureとはTangibleな構造体(構成要素)という意味ではなく、一般的なマイクロプロセッサであれ、それがプログラムによって特定の機能を実行することになるので、この場合にはプログラムに相当するアルゴリズムが112条第6項でいうstructureに相当する。従って、ソフトウェア関連発明においてクレームで「制御手段」或いは「制御部」を機能で規定する場合には明細書にマイクロプロセッサなどを記述するとともに、機能を実行するアルゴリズムを記載しておくことが必要である。機能を実現するアルゴリズム(Structure)の開示が不十分な場合には112条第2項のクレームの明瞭性の要件を満たさないとしてクレームは無効とされる。⇒
2015年のWilliamson大法廷判決で112条6項解釈の適用基準と112条2項の明瞭性との関連性が明白に判示された。
■ Phillips, v.
AWH Corp. (Fed.
Cir. April 8, 2004)
クレームの解釈(単一の実施例に限定的に解釈):
本事件は明細書の開示によってクレーム用語の権利範囲が減縮解釈されることを肯定した判決である。問題となった特許USP4677798はPhillips氏の米国特許で、刑務所の建造物等に使用される暴行或いは破壊行為に対抗可能な建築モジュール(規格パネルで構成される)をクレームしている。 争点となったのはクレーム1の" baffle(バッフル)"という用語の権利範囲解釈であって、Newman判事及びLourie判事(多数意見)によると同用語
"baffle"は構造的な表現であるので
6項(MPF)解釈はしないと判断しながらも、明細書中の実施例の形態及び図面では"baffle"はパネル壁面に対して90度を除く角度で延設するものしか開示していないとして同実施形態の特徴をクレーム1の
"baffle"に読み込んで権利範囲を解釈し、AWH社のイ号形態を非侵害と判断した(下級審の略式判決を支持した)。 DYKE判事は"baffle"の解釈に対して反対意見を述べている。⇒ 後に2005年Phillips大法廷判決において最終判断がなされた。