■ Halo
v. Plus (Supreme Court: June
13, 2016)
284条の賠償額増額の発動基準(地裁裁判官に与えられた裁量権):
最高裁は、米国特許法284条に基づく懲罰規定(所謂上限3倍賠償)の発動の基準に関して判示した。Seagate判決(2007年のCAFC大法廷判決)で判示された284条の賠償額増額の発動基準(主観要件と客観的要件:
Subjective knowledge & Objective recklessness)は全面的に否定された。即ち、地裁裁判官に与えられた裁量権の行使に適切な自由度があることが確認された。今回の判決は、285条の発動(弁護士費用の負担)に関する2014年のOctane判決及びHighmark判決からある程度予想された。要は、条文に特定の規定がない限り地裁裁判官に与えられた裁量権の行使はある程度の自由度が認められるということだ。とはいえ裁判官がきままに発動できるというほど安易なものではないと注意を喚起している。
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Octane事件、Highmark事件 (Supreme Court: April 29, 2014)
285条に基づく「例外的な事案」:
本判決は285条に基づく「例外的な事案”exceptional
case”:弁護士費用を相手側当事者に負担させうる」に関する事案である。最高裁はCAFCがこれまで適用していたBrooks判決(Brooks
Furniture v. Dutailer :2005年CAFC判決)の法理(判断基準)を全面的に否定した。Brooks事件の法理では285条の例外的な事案を認定するには①客観的に根拠のない訴訟(objectively baseless)、且つ、②主観的悪意(subjective
bad faith)で訴訟を起こしたという2つの要件を「明白かつ説得性」のある挙証基準(C&C基準)で証明しなければならない。
最高裁判決では、285条の「例外的な事案」とは通常の意味合いで解釈するべきで、即ち、訴訟における一方当事者の実質的な強さ(準拠法および事実関係の観点から)が他方当事者と比べて顕著に秀でている、或いは、不合理に訴訟が行われたという意味である。地裁は、事件の全貌を考慮しながら、事案が例外的なものであるか否かを事案毎に判断する裁量権を有する。