112条(f)関連の判例
■ WSOU Investments v. Google LLC - Fed. Cir. 2023-10-19
クレームの”a processor”はMPF解釈される場合とそうでない場合があるので要注意。MPF解釈されることを想定し明細書で対応するアルゴリズムを開示しておくこと!
■Media
Rights v. Capital One (Fed. Cir. September 4, 2015)
MPF解釈と112条2項のクレームの明瞭性:
本事件はWilliamson大法廷判決(2015年6月16日)以降のMPFクレームに関する判決であり、Media
RightsのUS7,316,033特許(以下033特許)で問題となったクレーム用語の一つはcompliance mechanismで、確かにmeansという用語は使っていない。しかし当該用語には当業者が理解しうる構造体を含んでいるとは理解できないとして地裁およびCAFCは当該用語をMPF用語であると判断し、112条第6項解釈を適用した。そして、問題となるクレーム用語で規定する機能を実現するための構造体(アルゴリズム:すなわち、MPF用語に対応する構造体)が明細書に開示されているか否かを判断した。結論としてはcompliance mechanismというクレーム用語に対応する機能(4つの機能)に対応する構造体(機能を実現するための十分な開示)が開示されていないとして112条第2項のクレームの明瞭性の要件を満たしていないとして当該クレームを無効と判断した。
■Williamson
v. Citrix - (Fed.
Cir. en banc: June 16, 2015)
MPF解釈と112条2項のクレームの明瞭性:
CAFC大法廷はmeansという用語を使用しない構成要素にMPF解釈(112条第6項解釈)を適用する基準を明示した。しかし、当該基準(3Prongテスト)はWilliamson判決以前からMPEP2181に記載されていたので審査においてクレーム用語のMPF解釈の判断基準は変わらない。問題となった構成要素は”distributed leaning control module”で”module”は”means”を置換したにすぎない、”module”以外でも、例えば、mechanism、 element、 deviceなども十分明白な構造をその用語に内在(含意)するものではなくmeansを使用するのと等価である。さらにlinking wordとして”for ・・・ing[機能]”の代わりに”configured to”或いは”so that”に書き換えてもMPF解釈に影響を与えない(詳細はMPEP2181参照)。
■EON
v. AT&T Mobility LLC - (Fed. Cir. May 6, 2015)
MPF解釈とアルゴリズム:
ソフトウエア関連発明を規定するMPF用語の機能を実現するための構造(アルゴリズム)を記載しておくことの重要さを再警告した判決。地裁判決と本CAFC判決の間にTeva判決(2015)とNautilus最高裁判決(2014)が出た。
■ Ibormeth v.
Mercedes-Benz (Fed. Cir. October
22, 2013)
MPF解釈と112条(b)項の関係:
112条(f)項解釈されるクレームの構成要素(computational means)が112条(b)項のクレームの明瞭性を充足する要件を判示した。即ち、MPF解釈された当該構成要素の機能に対応する構造あるいはアルゴリズムを当業者が理解できるレベルに明細書で開示されていなければならない。(2015年のWilliamson判決の基礎)
■ Arisocrat Tech. v.
International Game Tech. (Fed. Cir. March 28, 2008)
MPF解釈(制御手段):
クレーム1のMeans Plus Functionで表現された "game control means" に相当する明細書の構成(structure)が一般的なマイクロプロセッサとしか開示されていなかった。 CAFCは、当該明細書の開示のみでは、112条第6項で言う構造・構成(Structure)が開示されていないと判断した。プログラム関連発明の場合には、112条第6項で言う明細書で開示されたstructureとはTangibleな構造体(構成要素)という意味ではなく、一般的なマイクロプロセッサであれ、それがプログラムによって特定の機能を実行することになるので、この場合にはプログラムに相当するアルゴリズムが112条第6項でいうstructureに相当する。従って、ソフトウェア関連発明においてクレームで「制御手段」或いは「制御部」を機能で規定する場合には明細書にマイクロプロセッサなどを記述するとともに、機能を実行するアルゴリズムを記載しておくことが必要である。機能を実現するアルゴリズム(Structure)の開示が不十分な場合には112条第2項のクレームの明瞭性の要件を満たさないとしてクレームは無効とされる。⇒ 2015年のWilliamson大法廷判決で112条6項解釈の適用基準と112条2項の明瞭性との関連性が明白に判示された。