101条、特許保護適格性
■ ChromaDex v. Elysium - Fed. Cir. 2023-02-13
クレームは自然界に存在するもの(牛のミルクに含まれるNR)を単離しただけで自然界に存在するものと顕著な差がないとし特許保護適格性(101条)が否定された判決(2013年のMyriad最高裁判決に類似)
■Am. Axle v. Neapco 合衆国最高裁上告不受理 - 2022-06-30
1年半以上待たれたAm. Axle v. Neapcoの事案は、5月24日の訟務長官(Solicitor General)による上告受理を推奨する意見書の提出にも拘わらず上告不受理となりました(2022年6月30日)。 最高裁から上告不受理の理由は一切述べられていません。
■AmericanAxle v. Neapco - Solicitor General's Amicus Brief - 2022-05-24
101条、特許保護適格性:
2022年5月24日に米国訟務長官(政府側として最高裁に助言する機関)が最高裁に対して上告受理を推奨する意見書が提出された。上告受理を推奨するに至った経緯(地裁判決とCAFC判決)と上告受理を推奨する意見書の概要をまとめた。本事件に関わる技術はメカの分野で、車両の駆動軸の内側にライナーを挿入する構造であり、当該ライナーの質量と剛性度合いを調整し駆動軸に生じる2種類の振動モードを減衰するという内容である。
■ Endo v Teva - Fed. Cir. 2019-03-28
101条、特許保護適格性:
Vanda判決(2018年)以降に保護適格性(101条のEligibility)が認められた治療方法に関する事案である。 薬の投与量と人体の反応(薬物動態)との関係を規定するクレームにはEligibility(特許保護適格性)を認めない、しかしながら当該関係を利用し薬の投与量(あるいはその頻度)を規定するステップがクレームにある場合にはEligibility を認める。
■ Core Wireless
Licensing v. LG Elecs., Inc. - (Fed.
Cir. January 25, 2018)
101条、特許保護適格性:
Coreの「携帯電話など画面の小さなスクリーンにおける表示の仕方の特徴」に対する特許、非常に広いクレーム、Aliceパート1をクリアし101条適格性満たす。
■ FINJAN v.
Blue Coat System - (Fed.
Cir. January 10, 2018)
101条、特許保護適格性:
FINJANの「ウイルス検出手法」に関する特許、非常に広いクレーム、Aliceパート1をクリアし101条適格性満たす。
■Rapid
Litigation v. CellzDirect - (Fed.
Cir. July 5, 2016)
101条、特許保護適格性:
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101条保護適格性判断テストであるMayo(Alice) 2-Part TestのStep 1 Analysis:
"whether
claim is directed to judicial exception(クレームが司法上の例外に照準を合わせているのか?)"の判断をさらに明示した。発見(discovery)自身には特許保護適格性はない、しかしその新規且つ有用な適用には保護適格性あり、よってクレームは司法例外を主題としていない(not directed to judicial exception)と判断すると判示した。
■ Bascom v.
AT&T - (Fed.
Cir. June 27, 2016)
101条、特許保護適格性:
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101条保護適格性判断テストであるMayo 2-Part TestのStep 2 Analysis:
Abstractアイデアを顕著に超えた(significantly more than abstract idea)ことを証明するために"Inventive Concept(発明概念)" の存在を挙証し認められた数少ない判例と考える。
■Recent
Developments in Patent Eligibility Issues under 35 U.S.C. 101: 2016-06
101条、特許保護適格性:2010年のBilski判決以降の101条関連最高裁判決とPTOの101条審査ガイダンス(及び昨今のEnfish事件とTLI事件)を時系列でまとめました。
■TLI
Comm. LLC v Automotive, LLC (Fed.
Cir. May 17, 2016)
101条、特許保護適格性:
本事案で問題となった295特許(USP6,038,295)のクレーム17は、本判決の5日前に判示されたEnfish判決(2016年5月12日)で問題となったクレーム(地裁判決を破棄し保護適格性が認められた)と比較すると対照的に保護適格性を満たさない典型的なクレームと理解される。クレームはAbstractアイデアに対するものと判断され、他の構成要素と組み合わせてもAbstractアイデアを顕著に超えていないと判断される代表的なクレームとして学習する価値はあると考える。
■Enfish v.
Microsoft (Fed. Cir. May 12, 2016)
101条、特許保護適格性:
Mayo判決の2パートテストのSTEP2Aステップ1ではクレームがAbstractアイデアに関わる構成要素を含む、或いは、クレームがAbstractアイデアに関わるというレベルで”directed to…(照準を合わせる)”を満たすのではなく、明細書を参酌しクレームがAbstractアイデアに着眼しているのか、それともコンピューターの機能を向上することに着眼している(照準を合わせている)のかを判断するべきであるとした。 即ち、形骸化傾向にあったステップ1(フローチャートSTEP 2A)のハードルを上げた。
■ Ultramercial
v. Wildtangent - (Fed. Cir.
November 14, 2014)
101条、特許保護適格性:
本事件はAlice v. CLS
Bank事件(最高裁判決:2014年6月19日)後、101条適格性が否定された数多くのCAFC事件の一つである。 UltramercialのUS7346545特許の権利者であり、当該特許は、宣伝を見ることを条件にメディアコンテンツの視聴を許すというビジネス手法に関する発明をクレームしている。
■ Digitech v.
Electronics for Imag'g Inc.- (Fed.
Cir. July 11, 2014)
101条、特許保護適格性:Alice
v CLS Bank最高裁判決後、初の101条適格性に関するCAFC判決であり、画像処理に関する集積されたデータ及びその手法は101条を満たさないと判示した。
■
Alice v. CLS
Bank - (Supreme Court: June 19, 2014)
101条、特許保護適格性:
最高裁は、Aliceの特許(4件)のクレーム(方法、記憶媒体形式、及び、システム形式のクレーム)は第3者機関(supervisory institution)を介在し金融取引のリスクを軽減(risk hedge)する手法に関し、実体的には「抽象的なアイデア(Abstract Idea)」を規定しているのみであるとして101条保護適格性(Eligibility)を満たさないと判断した。尚、本判決までは最高裁にて主に方法クレームの適格性が審理されたが、本Alice判決によって抽象的なアイデアを規定した方法クレームをシステムおよび記憶媒体の形式に書き換えることはclaim draftsmanにとっては容易なことであり、そのような小手先対応で「抽象的なアイデア(方法クレーム)」を保護適格性を有する発明に変換することはできないと判示した。
■ Associate for
Molecular v. Myriad Genetics (Supreme Court: June 13, 2013)
101条、特許保護適格性:
Myriadは、変異することで乳がん、および、子宮がんの原因になる確率が顕著に増大するという遺伝子の位置とその配列(BRCA1とBRCA2と称する)を発見した。Myriadの発見は染色体の一部に含まれる800万にも及ぶヌクレオチドのペアーの中からの発見であり、革新的なものであるが、それは反復解析の手法によるものであり、それ自体で保護適格性を満たすことにはならない。合衆国最高裁:(1)そもそもDNAは情報であり、単離されたDNAは、自然界に存在するDNAとその情報の成分に違いはないとして101条の適格性を満たさないが、(2)研究室で生成されたcDNAは自然界に存在する状態のものではないとして101条適格性を満たす。
■ CLS bank v.
Alice CAFC en banc (Fed.
Cir. en banc: May 10, 2013)
101条、特許保護適格性:この度(2013年5月10日)、長らく待たれたCLS bank判決(CAFCの大法廷判決)が出た。10人の判事による大法廷判決は過半数の多数意見(Majority Opinion)に至らず、5人の判事を代表しLourie判事によって書かれた意見がPer Curium(今回の大法廷判決とする)の判決となった。そもそも101条(保護適格性)のハードルは低いもので多くの場合には他の条文、記載要件或いは新規性・進歩性の判断をすることで特段101条の審査さえする必要はなかった。しかし、2012年に最高裁がMayo判決において適格性に対する新しい法理(保護適格性に対する新規判断基準)を判示した。当該法理論には「発明概念」の必要性を盛り込むなど、実務者には到底理解し難いもので裁判官が適用するには余りにも無理があり、過去にはあり得ないSplit Decisionとなった(6 opinions)。
■ Mayo v Prometheus - (Supreme Court:
March 20, 2012)
101条、特許保護適格性:
治療方法(免疫介在性胃腸疾患の治療効果を最適化する方法)に関する101条適格性に関して最高裁判決がでた。最高裁はCAFC判決を破棄し、Prometheusの特許を無効とした。最高裁は、Bilski判決 (2010年)後に、本事件の審理をCAFCに差戻した。同差戻し審において、CAFCはPrometheusの特許クレームの特許主題適格性(101条)を認めた(2010年12月)。当該判決を不服とするMayoの裁量上告が認められ、この度、合衆国最高裁の判決が下された。最高裁によるとPrometheusのプロセスクレームは自然法則を適用するにあたり特許可能な主題にまでクレーム全体の性質が変換されていない(自然法則に追加されたステップは周知のルーチンである)という理由でPrometheusの治療方法に関するクレームの101条適格性を否定した。
■ Prometheus Lab. v.
Mayo (Fed. Cir. December 17. 2010)
101条、特許保護適格性:
Bilski判決(2010年6月28日:合衆国最高裁)後に、治療方法に関するクレームの101条適合性に対するCAFCの判断が明示された判決である。治療方法クレームにおいて、ある薬を投与し、それが体内で違う物質に変換されるとき、分解された物質の血中濃度を測定するステップを規定し、当該測定値に応じて所定の対応をすることをクレームしたる場合には101条を満たす。何故なら、薬を投与した後に体内で異なる物質に分解されるステップはBilski判決の Machine or TransformationテストのTransformationを満たすからである。
■ Bilski v. Kappos (Supreme Court June 28, 2010)
101条、特許保護適格性:
Bilski事件で問題となった発明は、商取引分野におけるリスクをヘッジ(リスク防止策)する方法に関し、CAFC大法廷判決(2008年10月)においては方法クレームが特許保護適格であるか否か(即ち、米国特許法第101条を満足するか)の判断は1972年の合衆国最高裁判決(Benson事件)の法理の適用が妥当すると結論づけた。この度最高裁は、Machine
or Transformation (MOT)テストは方法クレームの保護適格性(101条)を判断する上で有用な判断基準であるが唯一の基準ではないと判示した。⇒ここからが101条の適格性に対する混乱の始まり!
■ In re BILSKI (Fed.
Cir. en banc: October 30, 2008)
101条、特許保護適格性:
CAFC大法廷判決は「プロセス発明」が特許可能主題か否かを判断する基準は、1972年の合衆国最高裁判所、Benson事件で判示されたテスト( Machine or
Transformation テスト)を適用するとした。 当該Machine or Transformationテストとは以下の(1)または(2)が満たされれば101条で規定するところの特許適格性のあるプロセスクレームであると判断する:
(1) クレームされたプロセスは特定の機械 (Machine)、或は、装置に関連付けられているか? 又は
(2) クレームされたプロセスは特定の物(Article)を異なる状態或は別の物に変換 (Transformation)するか?