Enfish
v. Microsoft Fed. Cir. Decision 2016-05-12 Summarized
and Commented by Tatsuo YABE May
31, 2016 |
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本判決において以下Mayo判決に鑑みて作成された101条保護適格性に対する判断基準のステップ1(以下フローチャートSTEP
2A)で「クレームが例外規定(*1)(本事案ではAbstractアイデア)に対するものか?
- “directed
to
a judicially recognized exception” --」という”directed
to”をどのように解釈するかに焦点が絞られた。端的に言うとステップ1(以下フローチャートSTEP
2A)ではクレームがAbstractアイデアに関わる構成要素を含む、或いは、クレームがAbstractアイデアに関わるというレベルで”directed
t…”を満たすのではなく、明細書を参酌しクレームがAbstractアイデアに着眼しているのか、それともコンピューターの機能を向上することに着眼している(照準を合わせている)のかを判断するべきであるとした。 即ち、形骸化傾向にあったステップ1(以下フローチャートSTEP
2A)のハードルを上げた。
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(*1) Judiciary recognized
exception – 判例法で保護適格性を認められていない主題(自然現象、自然法則、抽象的なアイデアなど)
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しかし他のコンピューター関連発明に関する事案においてMayo判決の2パートテストのステップ1(フローチャートSTEP
2A)での判断が明白にできない場合にはステップ2(以下フローチャートSTEP
2B)においてコンピューター技術の分野に改善をもたらすか否かを判断できると補足している(判決文18ページ下段)。
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2016年5月19日、特許庁(USPTO)は本判決
Enfish, LLC v. Microsoft Corp.(5月12日)とTLI
Communications LLC v. A.V. Automotive, LLC判決(5月17日)に鑑みて、審査官に対する通知(メモランダム)を出した(PTOのリアクションは早い!)。当該5月19日通知においてEnfish判決の判示事項を列記し、PTOが過去に公開した101条ガイダンス(2014年の101条審査ガイダンス、2015年7月の更新版、及び、2016年5月4日付審査官への通知)の内容はEnfish判決の判示事項と整合性が維持されているとしている(即ち、新たに101条審査ガイダンスを変更する必要はない)。 審査官に対するメッセージとしては、クレームがコンピュータ関連技術の向上に対する場合には当該クレームはSTEP
2A(Enfish判決ではステップ1)のAbstractアイデアに対するものではない(a
claim directed to improvements in computer-related technology is not directed to
an abstract idea under Step 2A of the subject matter eligibility examination
guidelines)と判断し、STEP
2B(Enfish判決ではステップ2)の判断(additional
elementsの分析等)を省いても良いと述べている。コンピュータ関連技術(例:コンピューターの機能)の向上に対するクレームは判例法でAbstractアイデアとして保護適格性を否定されたクレームと類似するものではないと述べている。
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皮肉なことに特許庁が2016年5月4日に審査官に101条審査に対する通知(以下5月4日通知と称する)を出したその直後に101条保護適格性判断に関する2件のCAFC判決(5月12日にEnfish事件と5月17日にTLI事件)が出た。特許庁は早速5月19日に審査官に対する通知(5月19日通知)を出した。当該5月19日通知においてEnfish事件及びTLI事件の判示は5月4日通知と整合性があると述べているが、実際にはそうとは取れない点がある。即ち、5月4日通知では101条審査におけるSTEP
2AとSTEP 2Bの役割を明示するとともに厳格化している。STEP
2Aではクレームのどの要素が「例外」に相当するかを特定し、STEP
2Bではクレームのどの要素が「例外」ではないかを特定し、クレーム全体として「例外」を顕著に超えたか否かを判断し、OAできっちりと説明することを審査官に徹底するように通告している。しかしEnfish判決(コンピューター関連発明)ではSTEP
2A(ステップ1)では明細書を参酌しクレームがAbstractアイデア(「例外」)に着眼しているのか、それともコンピューターの機能を向上することに着眼している(照準を合わせている)のかを判断するべきであると判示している。言い換えるとSTEP
2Aで既にクレーム全体としてAbstractアイデアを超えたものに焦点があるのかを判断するべきであると判示している。EnfishはSTEP
2Aで判断に迷うときにSTEP 2Bでの判断があると述べている。
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出願実務者としての考察:
上記したように、審査官への5月4日通知の内容とEnfish判決には明らかに不一致な点があると思料する。しかし実務者として考えると、Enfish判決においてもSTEP 2Aの判断が微妙な場合にはSTEP 2Bでの判断を許容している(Enfish判決文18ページ下段:以下コピー参照)。依って、STEP 2AとSTEP 2Bの判断を通過した場合に101条適格性が認められるという結果は変わらない。
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依って、出願実務においては5月4日通知に記載されている「101条拒絶に対する出願人の対応」に基づき対応することが望ましいと考える:
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「101条拒絶に対する出願人の対応」
(i) クレームを補正し(クレームにさらなる構成要素を追加、或いは、構成要素を補正し、クレームを全体として「例外」を顕著に超えたものにする、及び/又は、(ii)
審査官の101条拒絶理由が間違っているという反論、乃至は、証拠を提示し、101条拒絶に対応することが可能である。
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101条拒絶を受けた場合の出願人の対応の仕方
(A) クレームを補正し、或いは、クレーム補正しなくともクレームが「例外」を規定していないと反論する;
(B) クレームで規定している他の構成要素(「例外」以外の構成要素)によってクレームが全体として「例外」を顕著に超えたものになっていると反論する。
上記(B)で言う「顕著に超えた(“significantly
more than”」を主張するのには、
(i) 他の構成要素によってクレームの「例外」を有意義に限定する(meaningfully
limits);
(ii) 他の構成要素によって他の技術或いは技術分野に改善(向上)をもたらす;
(iii) 他の構成要素によってコンピューター自身の機能を向上させる;
(iv) 当該技術分野において周知、定常的ではない特定の構成要素(特徴)が追加されており、クレームが特定の有益な適用を実現することに限定する。-
Adding a specific limitation other than what is well-understood, routine and
conventional in the field, or adding unconventional steps that confine the claim
to a particular useful application.
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以下Enfish判決の概要
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特許権者:Enfish
被疑侵害者:Microsoft
問題となった特許:
米国特許第6151604号(以下604特許と称する)と米国特許6163775号(以下775特許と称する)
共に優先日は1995年3月の米国出願09/035510(米国特許5729730)に訴求する。所謂1995年6月8日以前の権利化後17年から出願後20年に権利期間が変更となる95年米国特許法改正前の駆け込み出願からの特許。
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問題となった特許の概要:
発明はデータベースに関するもので通常の論理モデル(関連モデル)に自己参照(self-referential)という特徴を加えたもので、通常の論理モデル(関連モデル)で各種データを体系化し保存する場合には複数のテーブルを作成する必要があるが、Enfishの自己参照型の論理モデルを活用することで単一のテーブルの中で新しい列を作成することで対応するコラムを作成できるというデータの管理体系を構築したもの。 以下に通常の論理モデル(関連モデル)とEnfishの「自己参照型の論理モデル」との違いを概説(本判決文の中で説明されている)しているので参照されたい。
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背景:
Enfishはマイクロソフトが604特許と775特許を侵害しているとしカリフォルニア地区連邦地裁に侵害訴訟を提起し、地裁は略式判決によって問題となった特許クレームの全ての101条保護適格性を否定し、さらに問題となったクレームの幾つかの新規性を否定し、且つ、マイクロソフトのADD.NET(製品)は非侵害と判断した。当該地裁判決を不服としEnfishが控訴し、本判決に至った。
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CAFC判事:
Moore判事,
Taranto判事, HUGHES判事(OPINION作成者)
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■ 問題となる特許発明の概要:
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一般的な「関連モデル:rational model」とEnfish特許の「自己参照型の論理モデル」との違いは以下の通り:
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一般的な「関連モデル」においてDexis会社のScott氏によるDocument名(Project
Plan)を会社のファイル収納部に保管する場合には以下のような3つのテーブルが作成される。
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[1] ドキュメントテーブル (保存されるドキュメントに含まれる情報)
[2] 個人のテーブル (筆者に関する情報)
[3] 会社のテーブル (筆者の所属する会社に関する情報)
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各テーブルは、当該テーブルの意味合いを規定するコラムを含む。 |
Dexis会社のScott氏によるDocument名(Project
Plan)を会社のファイル収納部に保管する場合には以下のように3つのテーブルが作成される。 (「関連モデル」のEXAMPLE) |
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即ち、「関連モデル」においては以下のような関連付けを行っている。上のテーブルによって筆者に対するIDとして1が与えられドキュメントテーブル、個人のテーブル、と会社のテーブルとはリンクされる。即ち、各テーブルの横列(行)同士をリンクすることで各テーブルの関連付けをしている。
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上記「関連モデル」に対して特許された自己参照型(self-referential
type)のモデルでは2つの特徴を備える。一つは、上記関連モデルのすべてのアイテム(要因)が一つのテーブルに収納される。上記関連モデルのコラムに相当する定義が単一のテーブルの横列に含まれる。上記「関連モデル」のEXAMPLEを自己参照型モデルで表現すると以下のようになる。即ち、関連モデルのEXAMPLEのすべての情報を単一のテーブルに収容できる。
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さらに、ID#4に示すTYPE=FIELDは特別の列であって、この列は本テーブルのコラムの内容を規定する。Labelコラムに“EMPLOYED
BY”とあり、右から二つ目のコラムは#4でEmployed
Byとなる。これ以外にも列においてコラムに保管される情報の種類(整数、少数・・・)を規定することもできる。このように自己参照型モデルを使用することで関連モデルにおける複雑なモデリング作業(複数のテーブルを作成し関連付けをするなど)を簡略できる。例えば、上記テーブルに新規の属性(メイルアドレス)を追加したいような場合であっても以下の図のようにID#5の列を追加し、LabelをEMAILにすることで、対応するコラムを作成することができる。
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■ 事件の背景:
2012年Enfishは2つの特許(604特許のクレーム17,31,32と775特許のクレーム31,32)でもってMicrosoftのADD.NETというソフトが当該特許を侵害していると主張しMicrosoftを相手にカリフォルニア地区の連邦地裁に侵害訴訟を提起した。地裁は略式裁判にて604特許と775特許の問題となるクレームは全て特許保護不適格なAbstractアイデアを規定しているとし101条保護適格性を満たさない、604と775特許のクレーム31,32は102条(b)項の基に新規ではない、さらにクレーム17は非侵害であると判断した。
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CAFCは全ての判断事項(101条適格性、102条新規性、非侵害)に関して審理をし、101条の保護適格性に関して地裁判決を真っ向から破棄した。 以下、101条保護適格性に関してのみある程度詳細に記す:
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■ 101条適格性に関して:
CAFCは2010年のBilski最高裁判決以降の3つの最高裁判決、即ち、Mayo判決(2012年)、Myriad判決(2013年)、Alice判決(2014年)を列記し、それらを考慮しても最高裁は何がAbstractアイデアなのかという明瞭な定義をしていないことを注記した。 そしてMayo/Alice判決に鑑みた2パートテスト(以下「Mayo/Alice判決の2パートテスト」と称する)の第1ステップ(クレームがAbstractアイデアに対するものである:”claim
is directed to an abstract idea”)に対して最高裁は本事件のクレームとBilski判決或いはAlice判決におけるクレーム(単にAbstractアイデアであると判断された)とを比較することで101条適格性を判断することを認めている。 Bilski判決もAlice判決においてもクレームはそれぞれリスクヘッジという経済概念と商取引をするうえで第3者による解決手法という概念との間に意味のある隔たりはない。即ち、本質として経済及びビジネスの手法は仮にコンピューター上で実行されたとしても単なるAbstractアイデアであると判断される。
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Mayo/Aliceの判断基準(Mayo/Alice判決2パートテスト)を作成するにあたり、最高裁は第1のステップとしてクレームが特許保護不適格な概念に対するものであるか否かを判断しなければならないと述べている。このようにMayo/Aliceの第1ステップは重要な意味を持つのである、即ち、技術分野に属する殆どの特許は保護不適格な概念に対するものではない。
Mayo/Alice判決の2パートテストは以下:
判決文ではStep
2Aを「ステップ1」と呼称しており、Step
2Bを「ステップ2」と呼称している。
(尚、以下フローチャートでは略されているSTEP
1はクレームが101条で規定する4つのカテゴリーに該当するか否かである)
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即ち、
「ステップ1」=Is
the claim directed to a law of
nature, a natural phenomenon, or an abstract
idea?
「ステップ2」=
Does the claim recite additional elements that amount to significantly more than
the judicial exception?
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ここで第1ステップにおいて「・・・に対する:”directed
to…”」という判断をするときにクレームが保護不適格な概念を含むものか否かというような判断をしてはならない。なぜなら特許保護適格性のある特許クレームの殆ど全ては自然法則或いは自然現象に関連する物あるいはそれらに関連する行為を含むからである。然るに、第1ステップの「・・・に対する:”directed
to…”」の判断は101条適格性を判断するための第1ステージのフィルター機能を十分に果たすべきで、明細書を参酌し、クレームのその特性全体として保護不適格な主題に対するものであるか否かを判断するべきである。
Internet Patents
Corp. v. active Network, Inc.
(Fed. Cir. 2015); Genetic Techs. Ltd.
V. MerialL.L.C. (Fed. Cir. 2016)
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Alice判決において最高裁はコンピューター自身の機能を向上すること、或いは、既存技術のプロセスを改善することにクレームが寄与している場合には101条適格性を満たすとしている。Alice事件において最高裁はコンピューター関連技術の向上にクレームが寄与するか否かの判断を第2ステップで議論してはいるが、それはAlice事件において第1ステップの判断が明白であったが故に第1ステップの議論を詳述する必要がなかったためである。
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依って、本法廷は、Alice事件が「クレームがコンピューター技術に改善を加えるとしてもそれは本質的にはAbstractアイデアに対するものであって、改善を加えるものか否かは第2ステップで判断する」というように判示しているとは理解しない。さらにクレームがソフトウェア関連であるからといってそれは本質的にAbstractアイデアであり、特許保護適格性は第2ステップで判断するという考えには賛同しえない。依って、本法廷はMayo/Aliceの101条判断基準の第1ステップにおいてクレームがコンピューターの機能の向上に対するものか否か、それともAbstractアイデアに対するものかを第1ステップで判断するのが正しいと考える。
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本事案のクレームはコンピューター機能を改善することに着眼している(コンピューターの汎用機能のみが利用された経済活動或いは他の活動に照準があるものではない)ので、Alice判決に鑑みてクレームはAbstractアイデアに対するものではない。本事案のクレームは寧ろコンピューター機能を特殊に向上させることを対象としている。
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以下、代表的なクレーム:
604特許のクレーム17:
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A data storage and retrieval system for
a computer memory, comprising:
means for configuring said memory according to a logical
table,
said logical table including:
a
plurality of logical rows, each said logical row including an object
identification number (OID) to identify each said logical row, each said logical
row corresponding to a record of information;
a
plurality of logical columns intersecting said plurality of logical rows to
define a plurality of logical cells, each said logical column including an OID
to identify each said logical column; and
means
for indexing data stored in said table.
地裁は上記クレームの means
for configuringを解釈するために112条第6項を適用し(即ち、機能を実現するために明細書に開示された対応する構造)、”configuring”という機能を実現するcorresponding
structure として明細書に記載された4つのステップ(アルゴリズム)を構成要素として読み込んだ。
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1. Create, in a computer memory, a logical table that need not be stored contiguously
in the computer memory, the logical table being comprised of rows and
columns, the rows corresponding to records, the columns corresponding to
fields or attributes, the logical table being capable of storing different
kinds of records. |
3. For each column, store
information about that column in one or more rows, rendering
the table self-referential, the appending, to the logical table, of new columns that are available for
immediate use being possible through the creation of new column definition
records. |
2. Assign each row and column an object identification number (OID) that, when stored as
data, can act as a pointer to the associated
row or column and that can be of variable length between databases. |
4. In one or more cells defined by the
intersection of the rows and columns, store
and access data, which can include structured data,
unstructured data, or a pointer to another row. |
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地裁は上記クレームは、論理テーブルに記憶する、体系化する、メモリーを読みだすというAbstractアイデアに対するもので、或いは、テーブル化されたフォーマットを利用し情報を体系化するという概念に対するものであると判断した。しかし地裁のクレーム解釈は発明の極端な抽象化でありクレームの文言による縛り(境界)を無にすることになる。Diamond
v. Diehr(1981年最高裁)において、クレームを過剰に一般化して解釈することで発明のすべてが自然法則(原理)に帰着し、全ての発明は特許できなくなるということに注意を喚起している。本事案のクレームはテーブル化されたデータを単に記憶する形式に対するものではなくコンピューターのデータベースに対する自己参照型のテーブルに対するものである。
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特に上記アルゴリズムの3番目(以下)でself-referential(自己参照)という要素があるが地裁はこの構成要素を過度に一般化して解釈し、当該構成要素がもたらす発明の利益を蔑ろにした。
For each column, store
information about that column in one or more rows, rendering the
table self-referential, the appending, to the logical table, of new
columns that are available for immediate use being possible through the creation
of new column definition records.
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明細書を参酌し、上記第3番目のアルゴリズムは、単一のテーブルの一つ或いは複数の横列に当該コラムの情報を格納し、当該単一のテーブルに新規の横列を作成することで新しいコラムを追加することが可能になると説明している。(コラムの情報をテーブルの列として格納される)
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CAFCは昨今の101条適格性を満たさないと判断した判例を以下のように羅列している:
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Alice, 134 S. Ct. at 2358–60; Versata Dev. Grp.,
(computer performed “purely
conventional” steps to carry out claims directed to the “abstract idea of
determining a price using organization and product group hierarchies”);
Mortgage Grader, Inc.
v. First Choice Loan Servs. Inc., (Fed. Cir.
2016)
(claims attaching generic computer
components to perform “anonymous loan shopping” not patent eligible);
Intellectual Ventures
I LLC v. Capital One
Bank, (Fed. Cir. 2015)
(claims adding generic computer
components to financial budgeting);
OIP Techs.,
(claims implementing offer-based price
optimization using conventional computer activities);
Ultramercial, Inc. v. Hulu, LLC, (Fed. Cir. 2014)
(claims applying an exchange of
advertising for copyrighted content to the Internet);
buySAFE, Inc. v. Google, Inc.,
(Fed. Cir. 2014)
(claims adding generic computer
functionality to the formation of guaranteed contractual relationships).
Gottschalk v. Benson,
409 U.S. 63, 93 (1972), see also Alice,
134 S. Ct. at 2357–58,
or recited a purely conventional computer implementation of a mathematical
formula, see Parker v. Flook,
437 U.S. 584, 594 (1978); see also Alice, 134 S. Ct. at 2358, or recited generalized steps to be
performed on a computer using conventional computer activity,
Internet Patents,
(claims directed to abstract idea of
maintaining computer state without recitation of specific activity used to
generate that result),
Digitech Image Techs.,
LLC v. Electrs. For Imaging, Inc., (Fed. Cir. 2014)
(claims directed to abstract idea of
“organizing information through mathematical correlations” with recitation
of only generic gathering and processing activities).
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さらに本法廷は改良されたポイントを物理的なもので表現できない場合には101条を満たさないと判断することは間違いであると指摘している。要はそのように判断するとBilski判決のMOTテスト(Machine
or Transformation Test)を絶対的なものとして復活させることになる。Bilski判決においてMOTテストは保護適格性を判断するための唯一のテストではないと明言している。コンピューター関連技術において数多くの改良は物理的な特徴によるものではなく論理構造であったり論理ステップによってのみ表現できる特徴による。
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上記したように本事案のクレームで規定されている自己参照型のテーブルは特殊なデータ構造でありコンピューターがデータをメモリーに記憶させる、及び、メモリーからデータを取り出す手法に改善をもたらす。また、本事案のクレームは、本質的には経済の活動又は数学式に汎用コンピューターの部材を後付けしたという種のクレームではないことは明らかである。本事案のクレームは寧ろソフトウェア技術分野における問題の特殊な解決手法に対するものである。依って、本事案のクレームはAbstractアイデアに対するものではないと判断する。このようにMayo/Alice判決の2パートテストのステップ1においてNO(クレームはAbstractアイデアに対するものではない)なのでMayo/Alice判決の2パートテストのステップ2を検討する必要はない。しかし他のコンピューター関連発明に関する事案においてMayo/Alice判決の2パートテストのステップ1での判断が明白にできない場合にはステップ2においてコンピューター技術の分野に改善をもたらすか否かを判断できる。
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■ 112条第2項の明瞭性に関して
クレーム17の”configuring
said memory according to a logical table”は上記した4つのアルゴリズムを参酌しても不明瞭であるというマイクロソフトの主張には同意できない。即ち、クレーム17の当該構成要素は明細書で記載された4つのアルゴリズムによって明瞭である。
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■ 102条(b)の新規性に関して
604特許及び775特許のクレーム31と32はマイクロソフトのExcel
5.0(1994年初頭から公知公用の状態にあるSpreadsheetプログラムのピボットテーブルと称する特徴)によって新規性がないというマイクロソフトの主張には同意できない。
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■ 特許侵害に関して
地裁は604特許クレーム17を非侵害と判断した。当該判断を支持する。
604特許のクレーム17:
A data storage and retrieval system for
a computer memory, comprising:
means
for configuring said memory according to a logical table,
said logical table including:
a
plurality of logical rows, each said logical row including an object
identification number (OID) to identify each said logical row, each said logical
row corresponding to a record of information;
a
plurality of logical columns intersecting said plurality of logical rows to
define a plurality of logical cells, each said logical column including an OID
to identify each said logical column; and
means for indexing data stored in said
table.
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争点となったのは上記クレーム17の下線部の特徴をマイクロソフトのADO.NETが満たすか否かである。当該下線部の特徴の解釈には112条6項が適用され、地裁はEnfishが主張する明細書の対応する構造(corresponding
structure)として以下の3つのアルゴリズムであることに同意した。
1. Extract key phrases or words from the
applicable cells in the logical table.
2. Store the extracted key phrases or
words in an index, which is itself stored in the logical table.
3. Include, in text cells of the logical
table, pointers to the corresponding entries in the index, and include, in the
index, pointers to the text cells.
ADD.NETは上記3番目のステップ或いはその均等物を実施しない、故にADD.NEXTは上記クレーム17の下線部の特徴を満たさない。非侵害とした地裁判決を支持する。
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■ 結論:
地裁の101条保護適格性に対する判断を破棄、新規性に対する判断を一部無効、非侵害に対する判断を認容。
一部破棄、一部無効、一部認容、依って地裁に差し戻しとする。