TLI Communications LLC v. AV Automotive L.L.C. Fed. Cir. Decision 2016-05-17
Summarized
and Commented by Tatsuo YABE June
2, 2016 |
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本事案で問題となった295特許(USP6,038,295)のクレームは、本判決の5日前に判示されたEnfish判決(2016年5月12日:Hughes判事)で問題となったクレーム(地裁判決を破棄し保護適格性が認められた)と比較すると対照的に保護適格性を満たさない典型的なクレームと理解される。そもそもデジタル画像を分類し、保管するというステップに電話ユニット及びサーバーを組み込んだようなクレームが2010年以降の4つの最高裁判決、特にMayo判決、Alice判決に鑑みて保護適格性を主張(Mayo判決の2パートテストをパス)するのはかなり困難と思料する。そもそも問題となった295特許の権利満了日が2017年6月17日なので、デラウェア州のペーパーカンパニー(?)TLIはダメ元でYAHOO、MicrosoftなどITジャイアントを含む数多くの会社を相手に訴訟を提起したのだろう。流石はバージニア州東部地区連邦地裁、「訴え却下の申し立て」を認め特許保護適格性を適切に判断した。控訴審も地裁判決を支持した。
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本事案のクレーム17は2010年以前であれば101条で無効になることは到底なかったであろう。しかし現在では本事案のクレーム17はAbstractアイデアを規定しており、他の構成要素(電話ユニット、サーバーなど)と組み合わせてもAbstractアイデアを顕著に超えていないと判断される代表的なクレームと理解される。ソフトウエア関連発明の米国出願クレームを起案する実務者は以下にコピーしたクレーム17を一読してみる価値はあると思います。(筆者)
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特許権者:TLI
Communications LLC
被疑侵害者:AV
Automotive L.L.C. et al.
問題となった特許:
米国特許第6038295号(以下295特許と称する)
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1996年6月17日にドイツ出願され丁度1年後に米国出願され2000年3月14日に米国特許となった。 |
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問題となった295特許の代表的なクレーム:
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17.
A method for recording and administering digital images, comprising the steps
of:
recording
images using a digital pick up unit in a telephone unit,
storing
the images recorded by the digital pick up unit in a digital form as digital
images,
transmitting
data including at least the digital images and classification information to a
server, wherein said classification information is prescribable by a user of the
telephone unit for allocation to the digital images,
receiving
the data by the server,
extracting
classification information which characterizes the digital images from the
received data, and
storing
the digital images in the server, said step of storing taking into consideration
the classification information.
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背景:
TLI(デラウェア州のペーパカンパニー:筆者)は2014年に295特許を侵害しているとしてAV
Automotive、HALL、YAHOO、Capital
ONE、Microsoft、INSTAGRAM、他多くの会社を相手にデラウェア地区連邦地裁及びヴァージニア州東部地区連邦地裁で侵害訴訟を提起した。これら数多い訴訟を訴訟経済の観点で東部地区連邦地裁で統合して面倒をみることになった。 被告は訴え却下を申し立て(motion
to dismiss)、地裁は申し立てを認め295特許は保護不適格な主題(Abstractアイデア)をクレームしているとし無効と判断し、訴えを却下した。TLIは同地裁判決を不服としCAFCに控訴した。
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CAFC判事:
Dyk判事,
Schall判事, HUGHES判事(OPINION作成)
注:5日前に判示されたEnfish判決(5月12日)のAuthorでもある。
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Mayo判決の2パートテストのステップ1(PTOの審査ガイダンスのSTEP2A)を検討する。代表的なクレーム17は一見したところ画像を分類し、保管するという概念を主題としているようだ。クレーム17は電話ユニット及びサーバーという物理的なものを構成要素として含んでいるが、これらは画像を記録し、分類し、保管するというAbstractアイデアを実現する環境を提供しているだけである。
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5月12日のEnfish判決で、ステップ1(PTOの審査ガイダンスのSTEP2A)において、クレームはコンピューター関連技術に改善をもたらす主題に対するものか、それともAbstractアイデアに対するものかを判断すると述べた。
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コンピューターの機能を向上させることに対するクレーム(非Abstractクレーム)と一般的なステップを周知のコンピューター機能で実施することに対するクレーム(Abstractアイデア)とを対比する。TLIのクレームはデジタル画像を記録し、管理し、保管するステップを規定しており、これら手順はデジタル画像を分類し、体系的に記憶するというAbstractアイデアであると理解される(PTOの審査ガイダンスのSTEP2A)。
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次にMayo判決の2パートテストのステップ2(PTOの審査ガイダンスのSTEP2B)を検討する。電話ユニット、サーバーなどの構成要素がクレームに記載されてはいるが、これら構成要素と組み合わせても、デジタル画像を分類し、保管するというAbstractアイデアを特許保護可能な主題にまで変換されていない。
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明細書を参酌しても電話ユニットは汎用のものであり、サーバーも通常の使用の域を超えるものではない。本事案においてステップ2(PTOの審査ガイダンスのSTEP2B)を満たすためには、関連技術分野において周知・既知、ルーチン、汎用な使用の域を(well-understood,
routine, conventional activities previously known to the industry)を超えるものでなければならない。
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295特許のクレームはAbstractアイデアであるとした地裁判決を支持する。
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