Cybor大法廷判決の判示「クレーム

解釈は控訴裁判所でDe Novo基準でレビュする(下級審の

判断に一切拘束されない)」を大法廷で見直すことを決定した。

 

Lighting Ballast Control LLC v. Universal Lighting Technologies

 

CAFC Order

March 15, 2013

 

by Tatsuo YABE

March 28, 2013

 

 

今回の決定は、15年前のCybor大法廷判決を、再度大法廷(15年前とは判事のメンバーが変わっているが・・・)で審理するという意味で画期的な決定であると言えよう。 昨今においてもCybor判決(1998)CAFCの大法廷判決であり、クレーム解釈に対する不動の権威(揺ぎ無い法律)として理解されており、昨今のCAFC判決においても陪審の事実認定に対しては余程のことがない限りはそれを肯定しているのに対して、それら事実認定を基礎とする下級審の裁判官の最終法律判断に対しては全く敬意が支払われない(勿論、Cybor判決がそれを正しいとしているので当然だが・・・)。依って、地裁での法律判断が控訴審(CAFC)で破棄される確率が高くなっており、また、破棄するに至った理由付けに十分な説明がないという問題があるという現実を否めない。 

 

例えば、昨今においても、以下の判決において陪審(或いはPTO審判部)の事実認定と裁判官(或いはPTO審判部)による法律判断に対してCAFC(3人のJudge Panel)が説示しているが、裁判官(審判部)の法律判断を破棄するに至った理由(説明)は極めて不親切である(要は「間違っているから間違いだ」といわんばかりである)。 このようにCAFCが下級審の法律判断に対して不親切に対応する(対応しても良い)理由はCybor判決の存在に他ならない。

 

CAFC事件名と判決日

概要

Wake Forest Univ. v. Smith & Nephew Inc

Fed. Cir. 08-13-2012

自明性判断における陪審と裁判官の役割分担に関して:(陪審はGraham事件の4つの要因に対する事実認定をし、それら事実を基礎として裁判官が法律を適用する)

PlaSmart v. PTO and WANG & GU

Fed. Cir. 05-22, 2012

本判決文においてCAFCは、Grahamファクターに対するPTO審判部の事実認定を認めるものの、審判部が認めた引例とクレームとの差異()を軽微(miner distinctions)なもの、及び、そのような設計変更は一般常識(common sense alternative design choice)de novo審理で片付けた。CAFC判決文での理由付けは杜撰であったと考える(筆者)

 

然るに、下級審では事実認定のみが重要で、CAFCへの控訴を考慮に入れると下級審での法律判断は全く無視して良いということになる。 ここらで、大法廷でCybor判決の見直しをし、何が問題で、その打開策が検討されることは、まさに望ましいと考えます。 (筆者)

 

***********************************************

 

    以下今回のCAFCの決定(Order)の概要:

 

CAFCは、15年前の大法廷によるCybor判決1998年:CAFC大法廷判決)の判示事項、「クレーム解釈は法律問題であり控訴裁判所は下級審のクレーム解釈に対しDe Novoの基準で審理する」を大法廷で審理することを決定した(2013315日)。

 

本決定によると、CAFC自身のLBC v. ULT事件のパネル判決(201312*1)を破棄し、以下の3つの質問に対して大法廷で審理する:

 

a)  Cybor v. FAS Tech. Inc大法廷判決(1998年)を破棄するべきか?

b) CAFCは下級審のクレーム解釈に幾らかでも敬意を表すべきか(認めるべきか)?

c) 上記b)YESの場合には、どのような状況において敬意を表すべきか(認めるべきか)?

 

CAFCULTの意見書提出期限を2013429日とし、当該ULTの意見書に対するLBCの応答期間を30日とした。 CAFCはさらに米国特許庁に裁判所の助言者としての見解を求めた。

 

***********************************************

 

    今回の決定の基になったLBC v. ULT *1 (Fed Cir Jan. 02, 2013)判決の概要:

 

LBCは米国特許第5436529号の権利者である。 当該特許は、一般的には蛍光灯の電子照明のバラスト(支持部)を制御・保護するための回路の発明に関し、クレームに「電源手段: “voltage source means”」という用語を以下のように使用している。

 

“voltage source means providing a constant or variable magnitude DC voltage between the DC input terminals.”

 

連邦地裁(下級審)において、最初は、当該構成要素「電源手段」は112条第6項のmeans + functionM+F)クレームと判断し、明細書にそれをサポートする構成物の開示がないとして、当該クレームは不明瞭で、無効と判断した。LBCの専門家の証言(当業者であれば「電源手段」という用語はそれが整流器或いは電圧供給装置に対応すると理解できる)を聞き、再考した結果、地裁は最初の判決を破棄した。 依って、当該クレームの構成要素に112条第6項の解釈を採用せず、当該クレームは明瞭であり、無効ではないと判断した。 

 

控訴審(CAFC)の3人のジャッジパネル(Reyna判事、Rader判事長、O’Malley判事)において地裁の判決が破棄された。 まず当該用語の解釈において、meansが使用されているので112条第6項の解釈を適用するという推定が働くとした。 その後LBCの主張および判例(クレーム用語は構造物を示唆している外部証拠および専門家の証言によって112条第6項の解釈は回避された)を考慮(レビュ)するも、それら判例で問題となったクレームの構成要素は meansという用語を使用していないので、そもそも反駁するべき推定が働かなかったと指摘した。

 

依って、CAFCは問題となるクレームは、M+Fの推定が反駁されていない(当業者の理解に関する専門家の証言があるのみでそれは推定に対する反駁ではない)としM+F形式のクレームであると判断した。LBCは当業者であれば問題となるクレームの構成要素が何であるかを理解できるという専門家の証言に依存したが、Reyna判事は、その証言によって、明細書に全く開示されていない対応構成物を補充するものではないと指摘した。 

 

Reyna判事はさらに、LBCの専門家証言は、当業者であればクレームで規定された機能を幾種かの構成物で達成することを理解できるであろうということを証明しているにすぎない。 しかし、当業者であればクレームで規定された機能を達成する構成物を見つけられるという可能性は112条第6項のM+Fクレームで要求される明細書の開示要件を満たすことにはならない。 上記理由でCAFCは問題となるクレームは112条第2項に鑑み不明瞭で、無効であると結論づけた。

 

(1) US Patent Related

(2) Case Laws

(3) Self-Study Course

(4) NY Bar Prep

(5) LINKS

Home