■Allergan USA v. MSN Lab. & SUN Pharma Indus. - Fed. Cir. 2024-08-13
優先日を同じとするPatent Family(親特許と後の継続出願で派生する子特許)において、先に出願され、先に権利化された場合でPTAが付与された親特許は、子特許よりも権利期間が長くなったとしても子特許のクレームによってODP拒絶を受けることはない
■ Celanese Int'l Corp. v. ITC - Fed. Cir. 2024-08-12
問題となったのは欧州で非開示の方法で製造された製品を米国に輸入し販売する行為によって問題となる特許(非開示の方法)は On-Sale-Bar(販売によって新規性喪失)となり102条(a)(1)項の下に無効となるかであった。結論としてはPre-AIAの時代と102条で規定する「販売」とは同じ意味であり、販売された製品がどのように製造されたかは公に開示されている必要はない。即ち、非開示の製法で作られたものを基準日前に販売することで102条の「販売」に該当し、後に当該製法を特許することはできない。
■ Sanho v. Kaijet Tech. Int'l - 2024-07-31
本CAFC判決はAIAによる102条(b)(2)(B)の新規性喪失の例外規定の適用に関する。そもそも2011年に成立したAIA(アメリカ発明者法)によって米国特許法は先発明主義から先願主義に変わった(適用されるのは2013年3月16日以降に有効出願日を持つ米国出願)。102条(a)(1)は有効出願日前の刊行物、販売、公用が引例となる。102条(a)(2)では先願(本願の有効出願日前に有効に出願された米国出願)が引例となる。102条(b)は新規性喪失の例外を規定しており、今回問題となったのは先願の有効出願日の前の販売行為が102条(b)(2)(B)で規定する「公衆への公開
(public disclosure)」に該当するかであった。
■ SIPCO v. JASCO - 2024-05-29
本事案はTD(ターミナルディスクレーマー)に関する重要な地裁判決である。特許権者のTD書面におけるTD対象特許番号の誤記(1字間違い)により権利行使不能となった。
■ 2010年以降の112条関連の重要判例のまとめ:(AIPPI論説:May 2024)
■LKQ v. GM CAFC大法廷判決 - 2024-05-21
CAFC大法廷は意匠の自明性判断に適用されてきたRosen-Durling テストを覆しUtility 特許と同じく103条と1966年のGrahamテストとした。
■Weber v. Provisur Tech Inc., - Fed. Cir. 2024-02-08
食品を拘束でスライスする高額な機械の購入者(10社程度?)のみに配布された複製禁止の操作マニュアルは米国特許法102条の刊行物に該当するのか?
■RAI Strategic Holdings v. Philip Morris - Fed. Cir. 2024-02-09
明細書で開示した数値レンジよりも狭い数値レンジを規定するクレーム(但し、狭い数値レンジは明細書には記載されていない)は112条(a)項の「記述要件」を満たすか否か?
■ K-Fee System v. Nespresso USA. - Fed. Cir. 2023-12-26
クレームで要となる構成要素、「バーコード」、が2進化情報のコード「ビットコード」を含むか否かが争点となった。今日の明細書作成に要求される品質ではありえないことだが原出願書類(明細書及び図面)に「バーコード」という用語以上の説明がなかった。唯一、対応するEPのファミリー特許に対する異議申し立てにおける権利者の主張が判断の根拠となった。
■ Actelion Pharma v. Mylan Pharma - Fed. Cir. 2023-11-06
クレームの「pH13」がpH12.5~pH13.4を含むのかを判断するのに内部証拠では不十分で外部証拠による解釈が必要とした判例。
■ ABS Global v. Cytonome - Fed. Cir. 2023-10-19
クレームの移行句(transitional phrase)に「comprising」を使いクレーム本体で「a SSS」と記載するとat least one SSS(複数を含む)を意味する。その解釈を避けたい場合には明細書で単数のSSSであることを明示する必要がある。
■ WSOU Investments v. Google LLC - Fed. Cir. 2023-10-19
クレームの”a processor”はMPF解釈される場合とそうでない場合があるので要注意。
MPF解釈されることを想定し明細書で対応するアルゴリズムを開示しておくこと!
■ In re Cellect - Fed. Cir. 2023-08-28
自明性ダブルパテント拒絶を回避するためにTD(ターミナルディスクレーマー)をするとPTA(特許期間調整)には影響するがPTE(特許期間延長)には影響しない。
■ In re FLOAT'N'GRILL - Fed. Cir. 2023-07-12
特許発効後2年以内であれば再発行出願でクレームの権利範囲を拡大することは可能であるが、あくまで原明細書に開示された発明でなければならない。
■Amgen v. Sanofi - (Supreme Court: 2023-05-18)
2023年5月18日、米国特許法第112条(a)項の明細書に課せられた「実施可能要件」に関する合衆国最高裁判決がでました。一言で云うと最高裁はAmgenの特許クレームは112条(a)項の実施可能要件を満たさないとした地裁・CAFCの判決を認容した。
■ HIP v. Hormel Foods - Fed. Cir. 2023-05-02
「成立したA社の特許にB社のメンバーを共同発明者として追加せよ!」という請求を基に地裁で訴訟が開始され地裁はB社の訴えを認めUSPTOにB社のメンバーを加えて訂正証明書を発行するように命じた。しかし、地裁判決はCAFCで破棄された。
■ UCB v. Actavis Lab - Fed. Cir. 2023-04-12
本事案はクレームの数値レンジと引例との数値レンジが重複する場合における新規性と自明性の判断に関わる判例である。
■ Amgen v. Sanofi: 合衆国最高裁で口頭審理 2023-03-27
米国特許法第112条(a)項の実施可能要件に関する最高裁での口頭審理、1952年立法されて最高裁が「実施可能要件」を審理するのは初めて(機能表現された抗体に対するGenusクレーム)
■ ChromaDex v. Elysium - Fed. Cir. 2023-02-13
クレームは自然界に存在するもの(牛のミルクに含まれるNR)を単離しただけで自然界に存在するものと顕著な差がないとし特許保護適格性(101条)が否定された判決(2013年のMyriad最高裁判決に類似)
■ PMC v. Apple - Fed. Cir. 2023-01-20
Pre-GATTの出願(原出願:1981年)で2012年に権利化された特許で権利行使をしたところprosecution lachesが認められた判決。
■Grace Instrument v. Chandler Instruments - Fed. Cir. 2023-01-12
粘性測定装置の構造に関わるクレームで「enlarged chamber」が地裁で不明瞭と判断されCAFCで破棄された判決。
■Mosaic Brands v. Ride Wallet - Fed. Cir. 2022-12-20
地裁で略式判決の申し立てが認められる挙証基準に関する判決。Credibility of Witness: 1名の証言者(被疑侵害者)の購入伝票(invoice)に基づくPrior
Saleの挙証のみでは不十分)
■ Plastipak v. Premium Waters - Fed. Cir. 2022-12-19
発明者の認定(共同発明者1名欠落により地裁略式判決で12件の特許無効: 事実認定の必要有としCAFCで破棄差戻) Pre-AIA 102(f))
■ Amgen v. Sanofi 最高裁上告受理
合衆国最高裁は112条の「実施可能要件」に関して審理することを決定した。1952年に現行法の基礎たる米国特許法112条が立法されてから「実施可能要件」に対して最高裁がレビュするというのは初めてという意味で画期的なことである。
■Thaler v. Vidal (PTO Director)Fed Cir. 2022-08-05
本事案は2019年にThaler氏が開発したAIシステム(DABUS)によって生じたとされる発明に対し、AI(DABUS)を発明者として米国出願できるか否かが争点であって、PTOは否定し(AIは発明者にはなれない)、地裁の略式判決を経て今回CAFCでの判決となった。結論から言うとDABUS(AI)は発明者とはなりえない。米国特許における発明者は自然人でなければならない。
■Novartis v. HEC Pharma - Fed Cir. 2022-06-21
本事案は出願審査中のクレーム補正において否定的限定事項(Negative Limitation)が追加され権利化された。明細書には当該Negative Limitationの明白なサポートはないが、地裁、CAFCの多数意見では記述要件を満たすと判断しクレームの有効性を維持した。しかし、再考(rehearing)の要請を受けCAFCは多数意見の判事の一人を交代し(退職による)前回のCAFCの多数意見を覆す判決(即ち、クレームは記述要件を満たさないので無効)となった。本事案は手続き面での正当性とNegative Limitationに対する記述要件に関してCAFCの大法廷で審理される可能性あり。
■Am. Axle v. Neapco 合衆国最高裁上告不受理 - 2022-06-30
1年半以上待たれたAm. Axle v. Neapcoの事案は、5月24日の訟務長官(Solicitor General)による上告受理を推奨する意見書の提出にも拘わらず上告不受理となりました(2022年6月30日)。 最高裁から上告不受理の理由は一切述べられていません。
■AmericanAxle v. Neapco - Solicitor General's Amicus Brief - 2022-05-24
2022年5月24日に米国訟務長官(政府側として最高裁に助言する機関)が最高裁に対して上告受理を推奨する意見書が提出された。上告受理を推奨するに至った経緯(地裁判決とCAFC判決)と上告受理を推奨する意見書の概要をまとめた。本事件に関わる技術はメカの分野で、車両の駆動軸の内側にライナーを挿入する構造であり、当該ライナーの質量と剛性度合いを調整し駆動軸に生じる2種類の振動モードを減衰するという内容である。
■ Pavo v. Kingston Tech Company - Fed. Cir. 2022-06-03
本CAFC判決は、クレーム用語に誤記がある場合に侵害裁判において地裁がクレーム解釈時にどの程度の誤記を訂正可能とするかに対する判断基準の一つを示すものである。一言で言うならばクレームの誤記が当業者にとって明々白々であって誤記訂正によってクレームの権利範囲に影響を及ぼさない、且つ、経過書類を参酌しても禁反言は生じないという場合に裁判所において誤記訂正或いは誤記訂正無いままで誤記訂正されたとしてクレームが解釈される。同じ争点を扱った2011年のCBT_Flint事件も引用されている。
■ Littelfuse v. Mersen - Fed. Cir. 2022-04-04
事件ではクレーム解釈における従属クレームの意義が問われた。結論から言うと独立クレームはその従属クレームより権利範囲は広いと推定され、従属クレームは独立クレームに対して何らかの特徴を追記するものである(Claim Differentiation Theoryに基づく考え方).
■ Qualcomm v. Apple - Fed Cir. 2022-02-01
IPR手続き(出願人が明細書で自認した文献はIPRにおける先行技術になるか?):
本事案は、IPR手続きにおいてクレームを無効にする根拠となる先行技術(米国特許法311条(b)項で規定)を明瞭に説示した判決である。即ち、IPRにおける根拠となる先行技術は「特許」と「刊行物」のみであり、無効化の対象となる特許の明細書で記載された出願人が自認した先行技術(Applicant’s Admitted Prior Art: AAPA)はIPR手続きにおける先行技術とはならない。
■Belcher
Pharma v. Hospira - Fed. Cir. 2021-09-01
不公正行為(FDAに提出した重要な情報をPTOには非開示):
新薬申請時にFDAに提出した重要な情報を出願審査中には提出しなかった。地裁で不公正行為が認定されCAFCで支持された。
2011年のTherasense判決の法理に基づき地裁で「(i)重要性」と「(ii)騙す意図」の要件が審理された。本判決で新たな法理論が提示されたわけではないが地裁で不公正行為が認定された場合にCAFCで地裁判決をどのようにレビュするかの基準が再確認された。即ち、「(i)重要性」と「(ii)騙す意図」の判断の基礎となる事実に対する地裁の認定に明白なエラー(clear
error)があるか否かで判断する。その判断基準を基礎とし「不公正行為があったか否か」という最終判断に対しては地裁の裁量権の乱用(abuse
of discretion)という基準で判断する。Larson
Mfg. Co. of S.D. v. Ali (Fed. Cir. 2009) 従って、地裁で不公正行為が認定された場合に余程のことがない場合にCAFCで覆されることはない。
■Ex
Parte Zhang: AIA 102(b)(1)(B) novelty Exception - PTAB 2021-07-13
AIA102条(b)(1)(B)項の例外規定(意匠特許:“design patent”):
2011年に成立したAIA米国特許改正法で特に新規性に関わる条文が大きく改訂された。所謂、「先発明主義」から「先願主義」への移行である。ここでAIA102条(b)項は新規性喪失の例外規定であるがその中でもAIA102条(b)(1)(B)項の例外規定が活用された事案は少ない。 特にその例外規定において、特許権者(本件はdesign patent)による有効出願日前の諸外国(米国以外)での特許出願の発明に対応する製品の販売日を証明することで有効出願日と販売日の間の先行技術文献の地位を否定した事案は少ない。本審決においてこの稀な事例(AIA-102(b)(1)(B))が示された。
■ Campbell Soup
v. Gamon Plus - Fed. Cir. 2021-08-19
米国意匠特許(Design Patent)の自明性判断の法理を再確認:
即ち、Utility特許の自明性判断基準と同様に1966年最高裁Graham判決のGrahamテスト[1]-[4]の項目を考慮に入れて判断する。然し、Grahamテストの[1]-[3]の項目を検討する際にはDurlingテスト(Durling
v. Spectrum: Fed. Cir. 1996)を用い、当業者はデザイナーが引例同士を組み合わせることでクレームされた意匠と全体として同じ印象を与えるか否かで判断する。尚、Grahamテストの[4]二次的考察事項はUtility特許と同様に挙証の対象となる製品とクレームとのNexus(緊密な関連性)の有無を判断する。
■ Chemours v.
Daikin - Fed. Cir. 2021-07-22
自明性(クレームに対するTeach
Awayの適用):
PTABは単一の引例でクレーム(数値限定)を自明と判断したが、CAFCは当該引例の記載を基にTeach
Awayの法理を適用し審決を破棄した。クレームに対するTeach
Awayの法理を適用する解りやすい判例。
■United
States v. Arthrex Inc. -(Supreme Court: June 21, 2021)
IPR手続きを担当する行政府の特許判事は合衆国憲法に鑑み違憲:
IPRを担当する行政府の特許判事(Administrative
Patent Judges: APJ)に付与されている権限は合衆国憲法第2章2条2項の「任命条項」に鑑み違憲であると最高裁は判断した。即ち、APJはPTAB(審判部)のIPR手続きにおいて成立した特許のクレームの有効性に対して行政庁としての最終決定を出すことができる。しかしIPR手続きにおいてAPJの最終決定はUSPTOの長官によってレビュされるということはない。従って、そのような権限を持つためにはAPJは「principal
officer」という行政府のStatus(即ち、大統領による任命)を得ていなければならない。
■ Raytheon Tech
v GE - Fed. Cir. 2021-04-16
自明性(実施可能要件に問題のある単一の先行技術文献):
Obviousness by a single Non-Enabling Prior Art? 唯一の先行技術は1987年のNASAの技術メモ(未来のターボエンジンの構想(仮想案)を記録)。当該技術メモでクレームを自明にできる?
■
McCoy v Heal
Systems - Fed. Cir. 2021-04-01
自明性(当業者のレベル):
103条(自明性)判断における「当業者のレベル」とは?
■
Deere v.
Gramm- Fed. Cir. 2021-02-04
自明性(敢えてMPF解釈):
"coiled
spring"の代わりに"biasing
means for biasing.."とクレームすることでMPF解釈され余裕で非自明と判断された。
■Maxill
v. Loops - Fed. Cir. 2020-12-31
クレーム解釈(クレームドラフティングの練習材料):
本事案で問題となった特許は、凶器としての使用を防ぐために全体的に柔軟な構造に構成された刑務所或いは精神科の施設で使用される歯ブラシに関する。クレーム解釈に対する解りやすい判例。また、クレームドラフティングの練習材料となる判例。
■Ex
Parte Lebovich: PTAB 2020-09-15 (Objective Evidence)
自明性(客観的証拠と審査官の拒絶理由とを比較衡量):
本事例はPTABによる審決であり自明性の判断に関する。特に、出願人が提示する客観的証拠の取り扱いに関する。審決で明示されているように、自明性の最終判断は、審査官の自明性拒絶と出願人の提示する客観的証拠の強さを天秤(比較衡量)に掛けて判断する。
■Ex
Parte Morey (Result-Effective Variable) PTAB 2020-07-02
自明性(Result-Effective
Variable):
Online Seminar (注意:Clickして視聴できない場合にはURLをコピーし視聴ください): https://www.youtube.com/watch?v=hWYk4bGmOlg
本事例はPTABによる審決であり自明性拒絶に関する。特に材料系の出願において(メカでもときどき)変数を所定範囲に規定するクレームはResult-Effective-Variable(結果を得るために有効な変数)であり当業者にとって当該変数を最適化することは自明であるという拒絶を受けることがあります。この種の拒絶を受けたときには比較的最近改訂された審査便覧2144に基づき対応することが望ましい。即ち、審査官がResult-Effective-Variableとする変数は先行技術において所望する結果を得るために影響を与える(有効な)変数であることが認識されていないことを証明し反論する。
■Neville
v Foundation - Fed. Cir. 2020-08-27
クレーム解釈:
地裁略式判決が支持された判決。実在する「平坦面」というクレームの特徴を一体形成された筒状部分をスライスし「仮想面」で満たすと主張するのは明らかに間違い。
■ THRYV Inc. v.
Click to Call Tech - (Supreme Court: April 20, 2020)
IPR手続き:
315条(b)項で規定する請求可能期限(訴訟提起後1年以内)を渡過しIPRが請求されPTAB(PTOの審判部)が審理を開始した場合に、当該請求期限に対するPTABの判断を不服とし控訴することはできない。
■ Collabo v.
SONY - Fed. Cir. 2020-02-25
自明性:
引例の図で示された形状は「カップ形状」か、それともクレームされた「台形」と解釈されるか否か? SONYの勝利!
■ In re Google -
Fed. Cir. 2020-02-14
管轄権(サーバー設置):
サーバーを設置するだけでは裁判管轄権は生じない。Presence
of server alone does not establish jurisdiction.
■ Samsung v.
PriSUA - Fed. Cir. 2020-02-04
IPR手続き:
IPR手続き進行中にクレームが不明瞭であると判断される場合にPTABは新規性及び進歩性の判断ができないとしてクレームを無効にする権限はあるのか?
■ Google v.
Phillips - Fed. Cir. 2020-01-06
自明性(当業者にとって自明の試み):
本事案は103条(自明性)判断に関する判決で、自明性判断の中でもObvious
to Try(当業者にとって自明の試み)の適用に関して説示した。より詳細には方法クレームの最後のステップのみが引例との差異であり、その差異が当業者にとって限られた数のオプションと理解される場合にはObvious
to Tryと理解されると判示した。
■ Fox Factory
v. SRAM LLC - Fed. Cir. 2019-12-18
自明性(客観的証拠):
本事案は103条(自明性)判断における2次的考察事項(商業上の成功など)と問題となるクレームとのNexus(緊密な関連性)に関して判示した。即ち、問題となる特許クレームにAとBの特徴のみが規定されており、商業上の成功を収めた製品がAとBに加えてCという重要な特徴を備えている場合にクレームと2次的考察事項との間にNexusが存在すると言えるのかが争点となった。
■ DOE (Doctrine
of Equivalents) Fundamentals
均等論まとめ:
昨今セミナーをさせていただいて参加者の大多数が2002年以降にこの業界に入ってこられた方々であることに気づきました。即ち、均等論に関して2002年のFesto判決をリアルタイムでは知らない方が多いです。このような事情に鑑みて米国の均等論に関する最高裁及びCAFC大法廷判決の概要を纏めました。
■ Pharma Tech
Solutions v. LifeScan - Fed. Cir. 2019-11-12
経過書類禁反言と均等論:
本事案は経過書類禁反言(Prosecution
History Estoppel)により均等論の適用が禁止されたことを示す分かりやすい判決である。
■ In re David Fought - Fed. Cir. 2019-11-04
クレーム解釈(Preambleの解釈):
本事案はクレームのプレアンブルの解釈に対する判決である。本判決理由と整合性のある判決が3月26日にも出されている(Arctic Cat Inc.
v. GEP Power PRoducts: Fed. Cir. 2019-03-26)。即ち、プレアンブルにおいて発明が意図する目的のみを記載している場合にはクレームの限定事項(limitation)とは解釈されない。しかしながら、プレアンブルの文言がクレームの本体部の先行詞(Antecedent
Basis)として機能する場合には限定事項と解釈する。
■Liqwd
v. L'OREAL USA - Fed. Cir. 2019-10-30
自明性(客観的証拠):
本事案は自明性判断における「客観的証拠」の取り扱いに関する。1966年のGraham最高裁判決で自明性を判断するのに客観的証拠(secondary
considerationとも称する)も考慮に入れると判示された。客観的証拠の例としては商業上の成功(但しクレームとのNexusが必要)、長年望まれたニーズ、業界紙による賞賛、他者によるコピー(copying
by others)などがある。本事案では他社によるコピー(copying
by others)が問題となった。
■Campbell
v. Gamon - Fed. Cir. 2019-10-15
自明性:
久々の全くもってメカ発明の自明性に関するCAFC判決。問題となった特許発明はスープなどのシリンダー状の製品を陳列し取り出しを容易にしたラック(スーパーなどに設置するラック)に関し、購買者が製品をピックアップした後に気が変わりラックに戻すときに最前列の製品の上に容易に載置する(戻す)ことができるという構造に関する。そのような構造はスープ缶で有名なキャンベルのラックに採用されている。難解な発明に関する判例を解読するのに疲れた人向けのスッキリ判決。
■ MTD v. Iancu
(PTAB) - Fed. Cir. 2019-08-12
MPFクレームの戦略的活用:
特許権者がクレームの構成要素に112条6項解釈の適用を主張しクレームの無効(自明)を免れた面白い事件。MPFクレームは時として有効活用できることを明示した判決。
■ Iridescent v
AT&T - Fed. Cir. 2019-08-12
クレーム解釈(造語):
クレームで使用される造語(業界における一般的ではない用語)の権利範囲の決定の仕方?
■ Amgen v.
Coherus - Fed. Cir. 2019-07-29
経過書類禁反言:
本判決は経過書類禁反言に関するもので権利者Amgenは出願審査中に引例と識別するために引例にはクレームされた塩(salt)の組合せが開示、示唆されていないと述べた。CAFCは出願経過において出願人が特許を得るために主張した内容は、それが権利化するうえで真に必要であったか否かに拘らず、禁反言を構成することになりうる。寧ろ、禁反言を構成するか否かの判断は競合者が出願人の主張内容が問題となる発明主題を放棄するものであると合理的に理解するかどうかで判断すると判示した。
■ Alison v. ITC
& Aspen - Fed. Cir. 2019-08-27
112条2項のクレームの明瞭性(造語の使用とそのサポート):
本判決は112条第2項のクレームの明瞭性に関するものであり、Aspen社の359特許で問題となった用語は、エアロゲル(軽量でありながら高い絶縁性を有する)の材料を規定するクレーム1の”lofty fibrous batting”という用語である。明細書によると”lofty batting”とは孔(気泡:空気)と圧縮後に復元する弾性という性質を備えた繊維材料である。被疑侵害者であるAlisonは当該用語の解釈で「弾性(圧縮後復元する)」という意味合い(どの程度の復元なのか)が当業者にとって合理的な確証を与える程度の明瞭性がないと主張したがITC及びCAFCでも当該主張を認めなかった。
■ Arctic Cat
Inc. v. GEP POWER PRoducts - Fed.
Cir. 2019-03-26
クレーム解釈(Preambleの解釈):
Pre-AIAにおける発明日の遡及(発明を実施するまでの「誠実な努力」の継続性のレベル):
本判決はクレームのPreambleを限定と解釈するか否か(第1の争点)に関する興味深い判決である。米国特許の一般的な法理としてクレーム本体(body)でPreambleの用語が引用されているか、或いは、審査経過でPreambleが引例と識別するべく主張されたという記録がない場合にはPreambleは権利範囲を減縮しません。本願ではまさにその法理によりPreambleが限定として解釈されなかった。第2の争点はPre-AIA102条(e)項の先行技術を規則131条に基づき発明日を遡及する場合のconceptual stage(発明の着想)~reduction to practice(発明の実施)の間のdue diligence(誠実な努力)の継続性の挙証に関する。地裁は発明者のdue diligenceの継続性を否定したが、CAFCは発明者の記録によって(地裁の判断は厳格すぎるとして)due diligenceの継続性を認めた。
■ Forest Lab v
Sigmapharm - Fed. Cir. 2019-03-14
明細書の記載によってクレームが減縮解釈:
自明性:発明者にしか認識されていなかった問題点
本事件の第1の争点は明細書で [i]“the invention relates to…”;[ii]”the title of the invention”;及び[iii]本願発明のメリットの記載によるクレームの文言解釈への影響に関する。即ち、[i]; [ii];
[iii]での開示に整合性があり、それらと非整合或いは異にする発明の開示がない場合には「the invention
relates to “X”」の”X”をクレームの権利範囲に読み込んで解釈されても仕方ないということが学べる。第2の争点は自明性の判断に関する。興味深い点は本事案特許の発明者にしか認識されていなかった問題点(アセナピンを飲み込むという服用に起因する心毒性)を解決したという事実が認定され当業者にとって予期せぬ結果(“unexpected result”)を得たと地裁は判断した。然し、CAFCは当該地裁判決を否定した。即ち、CAFCは当業者に周知されていなかった問題点を解決したということ自体でunexpected
resultを挙証したことにはならないと判示した。第2争点に関してはCAFC大法廷による見直しが必要と考える(筆者)。
■ Endo v Teva -
Fed. Cir. 2019-03-28
101条、特許保護適格性:
Vanda判決(2018年)以降に保護適格性(101条のEligibility)が認められた治療方法に関する事案である。 薬の投与量と人体の反応(薬物動態)との関係を規定するクレームにはEligibility(特許保護適格性)を認めない、しかしながら当該関係を利用し薬の投与量(あるいはその頻度)を規定するステップがクレームにある場合にはEligibility を認める。
■ In re Conrad -
Fed. Cir. 2019-03-22
自明性:
本判決は自明性に関する内容で、争点は発明者が従来技術の問題点を発見しそれを解決する構成要素がクレームに存在する場合に当該問題点(即ち発明者が発明に至った動機付け)に対して一切言及していない2件の引例同士を(発明者の動機付けとは全く異なる理由で)組み合わせて自明とするのは妥当かという点である。
■ Helsinn
v Teva Pharm. - (Supreme Court: January 22, 2019)
AIA102条(新規性)におけるon-sale
bar(販売行為):
2019年1月22日、合衆国最高裁は、米国特許改正法(America
Inventors Act: AIA)によって102条(a)(1)項の on-sale(有効出願日前の販売行為によって新規性を失う)は守秘義務のある販売行為を含むと判示した。Pre-AIAの"on-sale
bar"とAIAにおける"on-sale
bar"は法的に同じ解釈とする。
■ WesternGeco
LLC v Geophysical Corp - (Supreme Court: June 22, 2018)
271条(f)(2)に基づく侵害行為に起因する外国での遺失利益:
米国特許法第271条(f)(2)に基づく侵害行為に起因する外国での遺失利益(Lost
foreign Profits)を284条で規定する損害賠償額の基礎となるかに関して最高裁の判決が出た。7:2の多数意見で諸外国におけるLost
Profitsは284条の損害賠償の基礎となると判示した。
■ Oil States
Energy v. Greene's Energy Group - (Supreme Court: April 24, 2018)
IPR:
最高裁によるIPR関連の判決。1件目はOil
States事件で、IPRを合憲と判断した。依ってIPRは今後も継続される。2件目はSAS事件で、IPRが開始された場合、USPTOはIPR請求人によって無効を主張されたクレーム全ての有効性を判断しなければならないとした。
■ Hologic v.
Smith & Nephew - (Fed. Cir. 2018-04-05)
112第1項、明細書の記述要件に関する判決:
予想可能な技術分野において、単一のSpecies
(a fiber optics bundle)を開示していたことでGenus
(a light guide)に補正が認められた判決。
■ In re Nordt - (Fed. Cir. 2018-02-08)
プロダクト・バイ・プロセスクレーム:
装置クレームで”Injection
Molded(モールド成型された)”が構造を意味すると判断された判決
(Product by Process Claim)。本判決において、injection
molded以外にも ”interbonded one to another by interfusion”; ”intermixed”; “ground
in place”; “press-fitted”; “etched”或いは”welded”というプロセスで表現された特徴が構造的な限定事項と判断されたことを紹介している。さらに、クレームの“chemically
engraved”という用語、“superimposed”という用語、”Integral”という用語、“molded
plastic”は構造の意味合いを含むプロセス用語であると解釈された4件のCAFC判決を紹介している。
■ Core Wireless
Licensing v. LG Elecs., Inc. - (Fed. Cir. 2018-01-25)
101条、特許保護適格性:
Coreの「携帯電話など画面の小さなスクリーンにおける表示の仕方の特徴」に対する特許、非常に広いクレーム、Aliceパート1をクリアし101条適格性満たす。
■ FINJAN v.
Blue Coat System - (Fed. Cir. 2018-01-10)
101条、特許保護適格性:
FINJANの「ウイルス検出手法」に関する特許、非常に広いクレーム、Aliceパート1をクリアし101条適格性満たす。
■ Ex Parte
Schulhauser PTAB Decision (審決)2016_04_28
条件付きの方法クレームの解釈:
かなり古い事案です。PTABの審決(2016年4月28日)において条件付きの方法クレームとそれに対応するシステム形式のクレームではクレームの解釈が異なるとした。 尚、本審決は4年ぶりに先例(前回の先例認定は2013年の審決)と認定された。 依って今後の米国特許庁における条件付き方法クレームの審査に適用される。条件付きの方法クレームのドラフティングには要注意!
■ BASF Corp v.
Johnson Matthey - (Fed. Cir. 2017-11-20)
112条2項の明瞭性(・・触媒作用を起こすのに有効な組成物):
本事件の争点は、USP8524185特許クレーム1の”composition effective to catalyze
(触媒作用を起こすのに有効な材料組成物)”という用語は、Nautilusの基準、即ち、明細書の説明及び当業者の知識に鑑み、どのような材料組成物がそれに該当するのか当業者が合理的な確証をもって理解できるのかである? CAFCは「触媒作用を起こするのに有効な材料組成物」というクレームの表現はNautilus基準を満たすと判断。
■ One-E-Way v.
ITC - (Fed. Cir. 2017-06-12)
112条2項の明瞭性(程度を示す用語の使用):
Virtually
Free from Interferenceは112条2項要件を満たすか? CAFCは2:1の多数意見でvirtually
free from interferenceとfree
from interferenceには権利範囲に違いがあることを認めるも、当該差異が技術的(定量的)には規定されていないがそうであるからと言って不明瞭とはならないと判断した。Prost判事長はvirtuallyという用語によってどの程度のinterferenceを許容するのか当業者に合理的な確証を与えるレベルに明瞭ではないと反対意見を述べた。
■ SKKY v
MINDGEEK - (Fed. Cir. 2017-06-07)
MPF解釈(meansを付けて意図的にMPF解釈):
明細書にはwireless
deviceという用語があるが、出願人は敢えて”means”を付記しクレームでは、wireless
device meansと規定し、6項解釈(明細書の開示と均等物という減縮解釈されるので権利化しやすい)を希望し審査段階では認められた。しかしIPRでの審理ではwireless
deviceという用語はそれ自体で構造体と理解され”means”という用語を付けただけで6項解釈は適用されないと判断した。CAFCも審決を維持した。
■Rivera
v ITC - (Fed. Cir. 2017-05-23)
112条1項の記述要件:
112条第1項「記述要件」に関する判決。7年も掛けて権利化した特許(発明はコーヒーの抽出機に関し、3回のRCE、100頁を超える審判理由書・・・)も審査中に問題にならなかった開示要件で無効となった。審査で許可されたクレームであっても登録料納付前にクレームをチェックするのが望ましい(特に権利行使に使えそうな重要出願)。
■ Impression v
Lexmark (Supreme Court: May 30, 2017)
国際消尽(使用済のトナーカートリッジの再販):
最高裁特許権の国際消尽を認めた。販売(米国及び外国において)後の使用済トナーカートリッジにトナーを充填し再販する行為は特許法では制限(禁止)できない。
■ SCA Hygiene
v. First Quality Baby (Supreme Court: March 23, 2017)
286条で規定する損害賠償の訴求期間内にラッチス(懈怠)の抗弁は可能か?
本判決はラッチス(懈怠)の抗弁に関する。即ち、権利者が侵害行為を周知していながら訴訟の開始時期を大幅に遅らせ、結果的に被疑侵害者に侵害行為の継続を容認したかのような印象を与えたという事実に基づく抗弁。最高裁は7:1でCAFC大法廷判決を破棄し、286条で規定する損害賠償の遡及期間である6年間(訴訟提起前の6年間)に生じた損害賠償に対してラッチスの抗弁は適用されないと判示した。
■ In re VAN OS - (Fed. Cir. 2017-01-03)
自明性(引例同士の組み合わせが一般常識):
KSR判決(2007年最高裁判決)において、自明性を主張する場合に引例同士を組み合わせる理由としてTSM
(Teaching, Suggestion, Motivation)が明示されていなくとも当業者にとっての一般常識或いは想像力を考慮にいれることが可能であり、TSMルールを硬直的に適用することを否定した。本判決はKSR判決でTSMルールの適用が緩和されたことを再確認するも、引例同士を組み合わせることの動機(Motivation)が当業者の一般常識(common
sense)である、或いは、当業者にとって直感的に理解できる(intuitive)というだけでは不十分であると判示した。
■ Sonix
v. Publication International - (Fed. Cir. 2017-01-05)
112条2項(主観的な表現):
クレームの”visually
negligible(目視で無視できるレベル)”という用語が112条第2項の要件(クレームの明瞭性)を満たすか否かが争点となった。地裁では112条第2項の要件を満たさないと判断した。CAFCは地裁の略式判決を破棄した。
■ Life
Technologies v. Promega Corp. (Supreme Court: February 22, 2017)
271条(f)(1)項の侵害(構成要素の一部を外国に輸出する行為):
クレームの単一の構成要素を米国で製造し、外国に輸出する行為 (外国において組合されてクレームの構成要素を全て満たす)は271(f)(1)項の基に侵害となるか? 最高裁は271条(f)(1)項の”…all or a substantial portion of the
components of a patented invention…”というフレーズの”a
substantial portion”という用語は質的(qualitatively)な実質性ではなく量的(quantitatively)な実質性を意図しており、複数であって、単一の構成要素ではないと判示した。然るに、被疑侵害者Life
Technologiesの行為(単一の構成要素を英国に輸出し英国でクレームのごとく組み合わされる)は271条(f)(1)項の基に侵害行為を構成しないと判断した。然し、271条(f)(2)項は271条(f)(1)を補完する条文である。271条(f)(2)で規定されているように、「・・・汎用品ではなく、且つ、特許発明を意図して作られており、実質的に特許非侵害の使用にそぐわない如何なる部品(any
component of a patented invention)を米国に輸入或いは米国から輸出する行為は・・・」とあり、”any component of a patented
invention”であり、単一(単数)の構成要素の場合を含むと明瞭に規定されている。
■ Samsung v.
Apple Inc. (Supreme Court: December 6, 2016)
デザイン特許侵害の損害賠償額の算定(289条):
地裁で、SamsungのスマートフォンはAppleの3件のデザイン特許を侵害しているとし、Samsungに399Millionドル(約440億円:\110/$)の損害賠償額の支払いを命じた。損害賠償額の算定に際しSamsungのスマートフォン(侵害品)の総売り上げから生じる総利益を基礎とした。Samsungは、侵害の対象”article
of manufacture”となるのはスマートフォン全体ではなく、その前面、或いは、スクリーンであり、損害賠償の対象を限定するべきであると主張したが、Samsungのスマートフォンはその部品を本体と分離して販売されることはないという理由でCAFCはSamsungの主張を否定した。依って、CAFCは地裁の判決(侵害と損害賠償額)を支持した。
■ Inguran
LLC v. Premium Genetics - PTAB Final Decision - PGR2015-0017
優先権の喪失によりAIAの先行技術が適用され権利が無効:
USP8,933,395(以下395特許)はPre-AIAで審査され権利化されたものではあるが、優先権を2013年3月16日以前の出願から主張するもので、所謂Transition出願であった。395特許のクレーム1は2013年3月16日以前の優先権出願に明白にサポートされていないというPGR請求人の主張が認められ最先の優先日(2004年9月3日)に訴求できないと判断された。即ち、395特許の有効出願日は2013年3月16日以降に出願されたAIA米国出願日(2014年1月31日)と判断され、Pre-AIAでは引例にならない公開公報も引例となった。
■ Apple v.
Samsung (Fed.
Cir. en banc: 2016-10-07)
自明性:
CAFC大法廷は自身のパネル判決(3件のApple特許に対する判決)を8-3で破棄し異例の速さでApple勝訴の判決をだした。Appleの申し立てを受け、何故、CAFC大法廷が異例の速さで審理を開始し、僅か7か月足らずで判決を言い渡したのか不明である。判決文が非常に長いのでその中でもAppleのslide to
unlockという特徴をクレームした特許に関してまとめた。このSlide
to unlock(画面のアイコンを横方向にスライドしないと携帯が作動しない)という特徴はまさに発明者の年齢、学歴・職歴を一切不問で本来の特許の醍醐味と言えよう。即ち、日々の暮らしで不便を感じたとこに着眼し、ふと思いついたことを文字にしたら権利が取れたというレベル。しかしこのような特許が何十億円もの価値になるのは面白い(筆者)。
■Rapid
Litigation v. CellzDirect - (Fed. Cir. 2016-07-05)
101条、特許保護適格性:
-
101条保護適格性判断テストであるMayo(Alice)
2-Part TestのStep
1 Analysis:
"whether
claim is directed to judicial exception(クレームが司法上の例外に照準を合わせているのか?)"の判断をさらに明示した。発見(discovery)自身には特許保護適格性はない、しかしその新規且つ有用な適用には保護適格性あり、よってクレームは司法例外を主題としていない(not
directed to judicial exception)と判断すると判示した。
■ Bascom v.
AT&T - (Fed. Cir. 2016-06-27)
101条、特許保護適格性:
-
101条保護適格性判断テストであるMayo
2-Part TestのStep
2 Analysis:
Abstractアイデアを顕著に超えた(significantly
more than abstract idea)ことを証明するために"Inventive
Concept(発明概念)"
の存在を挙証し認められた数少ない判例と考える。
■ Cuozzo Speed v.
PTO - (Supreme Court: June 20, 2016)
IPRを開始するか否かのPTOの判断に対し控訴可能か?
第1争点はIPRを開始するか否かの審判部の判断に対して控訴可能か否かであり、最高裁はAIA_35
USC §314(a)の条文で明白に規定されている通りUSPTOの判断は確定(最終)判断とし控訴不可であると判示した。第2争点はIPRにおけるクレーム解釈の基準であり、AIA_35
USC §316(a)(4)で規定されているように、IPRにおけるクレーム解釈基準はUSPTOに決定する権限が与えられていると判示した。PTOが採用しているBRI基準は、再審査、インターフェアランス等の基準と同じでIPRにおいて同基準が採用されることは妥当性を欠くものではない。
■ Halo
v. Plus (Supreme Court: June
13, 2016)
284条の賠償額増額の発動基準(地裁裁判官に与えられた裁量権):
最高裁は、米国特許法284条に基づく懲罰規定(所謂上限3倍賠償)の発動の基準に関して判示した。Seagate判決(2007年のCAFC大法廷判決)で判示された284条の賠償額増額の発動基準(主観要件と客観的要件:
Subjective knowledge & Objective recklessness)は全面的に否定された。即ち、地裁裁判官に与えられた裁量権の行使に適切な自由度があることが確認された。今回の判決は、285条の発動(弁護士費用の負担)に関する2014年のOctane判決及びHighmark判決からある程度予想された。要は、条文に特定の規定がない限り地裁裁判官に与えられた裁量権の行使はある程度の自由度が認められるということだ。とはいえ裁判官がきままに発動できるというほど安易なものではないと注意を喚起している。
■Recent
Developments in Patent Eligibility Issues under 35 U.S.C. 101: 2016-06
101条、特許保護適格性:
2010年のBilski判決以降の101条関連最高裁判決とPTOの101条審査ガイダンス(及び昨今のEnfish事件とTLI事件)を時系列でまとめました。
■TLI
Comm. LLC v Automotive, LLC (Fed. Cir. 2016-05-17)
101条、特許保護適格性:
本事案で問題となった295特許(USP6,038,295)のクレーム17は、本判決の5日前に判示されたEnfish判決(2016年5月12日)で問題となったクレーム(地裁判決を破棄し保護適格性が認められた)と比較すると対照的に保護適格性を満たさない典型的なクレームと理解される。クレームはAbstractアイデアに対するものと判断され、他の構成要素と組み合わせてもAbstractアイデアを顕著に超えていないと判断される代表的なクレームとして学習する価値はあると考える。
■Enfish v.
Microsoft (Fed. Cir. 2016-05-12)
101条、特許保護適格性:
Mayo判決の2パートテストのSTEP2Aステップ1ではクレームがAbstractアイデアに関わる構成要素を含む、或いは、クレームがAbstractアイデアに関わるというレベルで”directed
to…(照準を合わせる)”を満たすのではなく、明細書を参酌しクレームがAbstractアイデアに着眼しているのか、それともコンピューターの機能を向上することに着眼している(照準を合わせている)のかを判断するべきであるとした。 即ち、形骸化傾向にあったステップ1(フローチャートSTEP
2A)のハードルを上げた。
■Advanced
Steel v. X-Body (Fed. Cir. 2015-11-12)
均等論:
本事件は久々に見るDOE侵害の適用に対する判決である。争点はクレーム1の文言で「AがBの隣接端部に連結されている」という特徴が規定されている。なお、Aは油圧ピストンでBはAの作動によって水平方向に摺動するコンテナーでAの位置から見て遠方端部と隣接端部があり、「Aは当該隣接端部に連結されている」と規定されている。イ号の形態は、AとBに相当する部材は存在しており、BはAの作動によって摺動する、但し、AがBの長手方向の隣接端部から35%程度離間した部位に連結されているという状態であった。文言上侵害なしということは明白であり、均等論侵害の判断として機能・手法・結果テスト(3パートテスト)を適用した。少なくとも3パートテスト(機能・手段・結果)の手法Prongを満たさないとして均等侵害が否定された。
■Media
Rights v. Capital One (Fed. Cir. 2015-09-04)
MPF解釈と112条2項のクレームの明瞭性:
本事件はWilliamson大法廷判決(2015年6月16日)以降のMPFクレームに関する判決であり、Media
RightsのUS7,316,033特許(以下033特許)で問題となったクレーム用語の一つはcompliance
mechanismで、確かにmeansという用語は使っていない。しかし当該用語には当業者が理解しうる構造体を含んでいるとは理解できないとして地裁およびCAFCは当該用語をMPF用語であると判断し、112条第6項解釈を適用した。そして、問題となるクレーム用語で規定する機能を実現するための構造体(アルゴリズム:すなわち、MPF用語に対応する構造体)が明細書に開示されているか否かを判断した。結論としてはcompliance
mechanismというクレーム用語に対応する機能(4つの機能)に対応する構造体(機能を実現するための十分な開示)が開示されていないとして112条第2項のクレームの明瞭性の要件を満たしていないとして当該クレームを無効と判断した。
■Akamai
v. Limelight (Fed. Cir. en banc: 2015-08-13)
直接侵害(271条a項)方法クレーム:
方法クレームの直接侵害(271条a項)の成立要件である「single
party ルール」の解釈の仕方に関して大法廷が判示した。複数の当事者で方法クレームのステップを実行する場合に直接侵害の有無を判断するには、裁判所は一方の当事者の行為が他の当事者に帰属し、全体として単一の当事者が侵害行為に責任を負うか否かを検討する。次のような場合に当事者が他者によるステップを実施する行為に対しても責任を負う(1)当該当事者が他者の行為を指揮(指示)・監督している場合、(2)複数の行為者(例:当事者と他者)が共同事業体を構成する場合。
■Williamson
v. Citrix - (Fed. Cir. en banc: 2015-06-16)
MPF解釈と112条2項のクレームの明瞭性:
CAFC大法廷はmeansという用語を使用しない構成要素にMPF解釈(112条第6項解釈)を適用する基準を明示した。しかし、当該基準(3Prongテスト)はWilliamson判決以前からMPEP2181に記載されていたので審査においてクレーム用語のMPF解釈の判断基準は変わらない。問題となった構成要素は”distributed
leaning control module”で”module”は”means”を置換したにすぎない、”module”以外でも、例えば、mechanism、 element、 deviceなども十分明白な構造をその用語に内在(含意)するものではなくmeansを使用するのと等価である。さらにlinking
wordとして”for
・・・ing[機能]”の代わりに”configured
to”或いは”so
that”に書き換えてもMPF解釈に影響を与えない(詳細はMPEP2181参照)。
■Commil
v. Cisco - (Supreme
Court: May 26, 2015)
271条(b)項の教唆侵害(特許無効を善意で信じている場合):
最高裁は6:2の多数意見で、「被疑教唆者が問題となる特許が無効であると善意で信じていた(alleged
inducer’s belief in invalidity)」という挙証は教唆侵害(271条(b)項)の責任を免れないと判示した。最高裁は本題に入る前にCommil社と政府(Solicitor
General)の教唆侵害に対する理解を正した。即ち、教唆侵害を構成するには問題となる特許の存在を周知していることのみならず被疑教唆者の行為によって他者が当該特許を侵害することを周知しているという2つの周知要件を挙証することが必要である(2011年Global-Tech最高裁判決)。
■Akamai
v. Limelight - (Fed. Cir. 2015-05-13)
271条(b)項の教唆侵害(271条(a)項の直接侵害との関係):
最高裁からの差戻審(2:1判決)。CAFC多数意見は自身のMuniauction事件(2008年)の判示を肯定した。即ち、271条(a)項の直接侵害を構成するためには「単一のEntity: single entity」によってクレームしている全てのステップが実行されなければならない。ここで言う「単一のEntity」とは単一の人(法人)、或いは、本人と代理人との関係、契約関係、或いは、共同事業を営む上で互いに代理人となる関係を含む。
■EON
v. AT&T Mobility LLC - (Fed. Cir. 2015-05-06)
MPF解釈とアルゴリズム:
ソフトウエア関連発明を規定するMPF用語の機能を実現するための構造(アルゴリズム)を記載しておくことの重要さを再警告した判決。地裁判決と本CAFC判決の間にTeva判決(2015)とNautilus最高裁判決(2014)が出た。
■Biosig
v. Nautilus - (Fed. Cir. 2015-04-27)
112条2項の明瞭性の要件:
2014年6月2日、最高裁(Nautilus v. Biosig)は、112条第2項の要件の判断基準をCAFCの “solubly ambiguous(当業者がなんとか理解できるレベル)”を否定し”reasonable
certainty(当業者に合理的な確証を与える程度の明瞭さが必要:新基準)“を判示した。 依って、本事件をCAFCに差戻した。CAFCによると最高裁の新基準によっても”in
spaced relationship”という用語を含むBiosigのクレームは112条第2項の要件を満たすと判断した。
■ Pacing Tech
v. Garmin Int'l - (Fed. Cir. 2015-02-18)
クレーム解釈(明細書「発明の要約部」の記載によってクレームが減縮解釈された):
明細書の要約部(Summary of the Invention)の詳細な記載によって独立クレームが限定的に解釈された顕著な判決である。本件特許明細書(Pacing社)の要約部には驚くことに19項目の発明の目的が列記されている。それだけで独立クレームが減縮解釈されるというわけではないが、それら19項目の目的を達成するために・・と続く発明の構成要件に独立クレームの構成要件よりも詳細な特徴を記載していた。
■ Teva v.
Sandoz - (Supreme Court: January 20, 2015)
下級審の事実認定に対する控訴審での判断(review)基準:
合衆国最高裁(7:2)は、クレーム解釈の基礎となる地裁の「事実認定」に対する控訴審でのレビュー基準はCLEAR
ERROR基準が妥当するとした。本事件の争点(控訴審における地裁のクレーム解釈に対するレビュ基準)は1995年のMarkman判決(CAFC大法廷判決)で始まり、翌年1996年のMarkman最高裁判決、そして1998年のCybor判決(CAFC大法廷)を経て2014年にLighting
Ballast判決(CAFC大法廷)に至った。CAFC大法廷判決(Markman: Cybor: Lighting Ballast)は全て満場一致ではないが多数意見では地裁のクレーム解釈に対しては事実判断であるか否かに拘らずde
novo基準が妥当するとした。2014年のLighting Ballastにおいては6:4で際どいところでCybor判決の判示(de novo基準)が先例の拘束性という消極的理由でもって支持された。そもそも1996年のMarkman判決において今回の争点に関して最高裁がもう少し明瞭に言及できたのにそれをしなかったことで約20年経過した今になって当時のMarkman判決で言及できたであろうことを最高裁が名言した。従って、1998年のCybor大法廷判決及び2014年のLighting
Ballast大法廷判決は共に否定されたことになる。
■ COMMIL v.
CISCO: Supreme Court granted Certiorari-
2014-12-05
271条(b)項の教唆侵害
合衆国最高裁、271条(b)項、教唆侵害の構成要件(Intent)に関して審理することを決定。
■ Ultramercial
v. Wildtangent - (Fed. Cir. 2014-11-14)
101条、特許保護適格性:
本事件はAlice v. CLS
Bank事件(最高裁判決:2014年6月19日)後、101条適格性が否定された数多くのCAFC事件の一つである。 UltramercialのUS7346545特許の権利者であり、当該特許は、宣伝を見ることを条件にメディアコンテンツの視聴を許すというビジネス手法に関する発明をクレームしている。
■ World Class
Tec v. Ormco Corp - (Fed. Cir. 2014-10-20)
クレーム解釈(従来例の記載によってクレームが減縮解釈された):
本事件は、クレームの文言がイ号(被疑侵害形態)を含みうる広さで記載されていたが明細書に記載された従来例の問題点とそれを解決する実施例に鑑み、クレームが減縮解釈された判例の一つである。クレームを解釈する基本ルール (Canons of Claim Interpretation)として、①クレームは好適実施例を包括するようにクレームを解釈するべきである、しかし、②好適実施例の限定事項によってクレームが限定される必要はないという一見すると相反する規則がある。本事案に関して言うならば明細書の従来技術の記載欄における従来技術の問題点と当該問題点を解決するための実施例の形態に減縮解釈された。
■ American
Calcar v. American Honda Motor - (Fed. Cir. 2014-11-26)
Post-Therasenseで不公正行為が認められたCAFC判決。
Post-Therasense不公正行為関連の判決(2:1)である。多数意見は、再審査で未提出情報の重要性が否定され、意図的に騙す意図の挙証が弱いに拘らず不公正行為を認めた。Newman判事の反対意見の方に理があると筆者は考える。即ち、重要性の要件に対しては再審査で問題となった未提出の情報が審理されたに拘らず特許の有効性が維持された。この事実のみに鑑みても不公正行為が認定されることはありえない。然し、今後は出願審査過程において未提出の文献(知る状態にあったがIDS提出し忘れたような文献)が見つかった場合にはAIAで2012年9月16日から可能となったSupplemental
Examを実施し、被告の不公正行為の抗弁を封じてから訴訟を提起することが重要であろう。
■ 特許関係の合衆国最高裁判決とCAFC大法廷判決のまとめ
(1994年~2014年)
Table
for Patent Related Supreme Court and Fed Cir en
banc Decisions (1994 to 2014)
■ Apotex
v. UCB - (Fed. Cir. 2014-08-15)
Post-Therasenseで不公正行為が認められたCAFC判決。
本事件は不公正行為の認定がされた事件の中でも最たるもので、Apotex社の創立者であって問題となった6,767,556特許の唯一の発明者(出願人)であるSherman博士の出願明細書の記載、出願審査中にとった一連の行為は甚だ悪質であったとしか言いようがない(勿論、地裁の事実認定をすべて正しいと推定すると)。132条の宣言書(専門家の証言)で重要事項に関して虚偽をするということは不公正行為を挙証するための重要性の要件(BUT-FOR-Material)の例外としての「甚だしく悪質な行為」に該当するというTherasense事件の法理は後のIntellect
v. HTCで確認された。
■ Digitech v.
Electronics for Imag'g Inc.- (Fed. Cir. 2014-07-11)
101条、特許保護適格性:
Alice
v CLS Bank最高裁判決後、初の101条適格性に関するCAFC判決であり、画像処理に関する集積されたデータ及びその手法は101条を満たさないと判示した。
■ Hill-Rom v. Stryker - (Fed. Cir. 2014-06-27)
クレーム解釈に対する丁寧な判決:
本事件は地裁の略式判決(クレーム用語の解釈)をCAFCが徹底的に否定し破棄差戻しした事件である。4つの構成要素の意味合いが争点となったが、地裁におけるクレーム用語の解釈には明らかな間違いが散発した。CAFCにおいてそれら地裁判断の間違いを躊躇なく正している。例えば、クレーム解釈においてPhillips基準が適用されること、即ち、明細書及び経過書類を参酌したうえで一般的な意味合いとして解釈される。しかし例外としては出願人が辞書編集者としてクレーム用語を自らの意味合いで規定している場合がある。さらにクレーム解釈において明細書の実施例を参酌するが、実施例の特徴をクレーム解釈には盛り込まない。本判決は地裁裁判官に恰もクレーム解釈基礎講座をしているようである。
依って、我々実務者にとっても本判決はクレーム解釈(及び明細書作成時の留意事項)を復習をするのに良い題材である。
■
Alice v. CLS
Bank - (Supreme Court: June 19, 2014)
101条、特許保護適格性:
最高裁は、Aliceの特許(4件)のクレーム(方法、記憶媒体形式、及び、システム形式のクレーム)は第3者機関(supervisory institution)を介在し金融取引のリスクを軽減(risk
hedge)する手法に関し、実体的には「抽象的なアイデア(Abstract Idea)」を規定しているのみであるとして101条保護適格性(Eligibility)を満たさないと判断した。尚、本判決までは最高裁にて主に方法クレームの適格性が審理されたが、本Alice判決によって抽象的なアイデアを規定した方法クレームをシステムおよび記憶媒体の形式に書き換えることはclaim
draftsmanにとっては容易なことであり、そのような小手先対応で「抽象的なアイデア(方法クレーム)」を保護適格性を有する発明に変換することはできないと判示した。
■ Judge Rader will
retire as of 2014-06-30 (発表2014年6月13日)
■ Limelight v.
Akamai - (Supreme Court: June 2, 2014)
271条(b)項の教唆侵害(271条(a)項の直接侵害との関係):
271条(a)項による直接侵害が成立しない場合には被告Limelightは271条(b)項の教唆侵害の責任を負うことはないと判示した。 CAFCに271条(a)項の直接侵害の成立要件(方法クレームのステップを複数人で満たす場合の要件)を再度審理するよう差戻した。
■ Nautilus v.
BioSig - (Supreme Court: June 2, 2014)
112条2項の明瞭性の要件:
最高裁はCAFCの112条(2)項要件の判断基準、即ち、「クレームの意味合いが分析可能(“amenable to construction”)である場合、或いは、クレームが解消不能(“insolubly
ambiguous”)な程度まで不明瞭ではない場合には112条(2)項の要件を満たす」を否定した。 最高裁が示した新基準は、112条(2)項の要件を満たすには「明細書および経過書類を参酌しても当業者が合理的な確証をもって(with
reasonable certainty)発明の権利範囲が理解できる」ことである。即ち、”solubly ambiguous”から”reasonable
certainty”とクレームの明瞭性のハードルを上げた。
■ Chief Judge
Rader is stepping Down from Position as Fed. Cir.'s
Chief Judge
レーダー判事は2014年5月30日で判事長の職責を返上し、判事として今後もCAFCで職務を継続される予定。プロスト判事が判事長に就任される予定。
■
Octane事件、Highmark事件 (Supreme Court: April 29, 2014)
285条に基づく「例外的な事案」:
本判決は285条に基づく「例外的な事案”exceptional
case”:弁護士費用を相手側当事者に負担させうる」に関する事案である。最高裁はCAFCがこれまで適用していたBrooks判決(Brooks
Furniture v. Dutailer :2005年CAFC判決)の法理(判断基準)を全面的に否定した。Brooks事件の法理では285条の例外的な事案を認定するには①客観的に根拠のない訴訟(objectively baseless)、且つ、②主観的悪意(subjective
bad faith)で訴訟を起こしたという2つの要件を「明白かつ説得性」のある挙証基準(C&C基準)で証明しなければならない。
最高裁判決では、285条の「例外的な事案」とは通常の意味合いで解釈するべきで、即ち、訴訟における一方当事者の実質的な強さ(準拠法および事実関係の観点から)が他方当事者と比べて顕著に秀でている、或いは、不合理に訴訟が行われたという意味である。地裁は、事件の全貌を考慮しながら、事案が例外的なものであるか否かを事案毎に判断する裁量権を有する。
■ Teva Pharmceutical v. Sandoz Sup
Ct Granted Cert.
上級審における下級審のクレーム解釈に対するReview基準:
最高裁はCybor判決の法理を本事件の上告審においてレビュすることを決定した。 2014年3月31日
■ Lighting
Ballast v. Phillips Elec. (Fed.
Cir. en banc: 2014-02-21)
上級審における下級審のクレーム解釈に対するReview基準:
今回の大法廷判決の多数意見(6:4)は、1998年のCybor大法廷判決の法理(上級審でクレーム解釈をする場合に下級審の判断に拘束されることなく新たに審理する:de
novo review)を支持した。⇒ 最高裁上告受理可能性?要Watch!
■ Medtronic v.
Mirowski (Supreme Court: January 22, 2014)
ライセンシーによる確認訴訟:
通常、侵害訴訟において特許権者が侵害の挙証責任を負う。本事件のユニークな点は、実施権が与えられたライセンシーによる確認訴訟(非侵害を主張する確認訴訟”DC
Action”)における挙証責任の行方である。即ち、このような確認訴訟において挙証責任は特許権者から被疑侵害者(ライセンシー)にシフトするか否かが争点となった。最高裁判決によると、ライセンシーによるDJアクションにおいても特許権者が侵害の挙証責任を負う。要は特許権者による侵害の主張が曖昧のままで非侵害の反訴をするのは暗中模索の対応となる。
■ Novartis v. Lee
(USPTO's director) (Fed. Cir. 2014-01-15)
PTAの計算(3年ルールとRCE期間):
今回の事件は154条(b)(1)(B)(i)に関する。即ち、154条(b)(1)(B)(i)では、「RCE審査に要した期間は上記3Yearルールの対象とはしない」と規定されている。本事件の争点は、「RCE審査に要した期間」とはRCE後の許可可能通知発効日から特許証発効日までの期間を含むか否かである。この度、CAFCはUSPTOの理解が間違っていると判断した。 即ち、RCEをいつ実施したか(出願日より3年以内にRCE実施か否か)に関係なくRCE後の許可通知から特許証発行までの期間も上記3Yearルールの判断(154条(b)(1)(B)の計算)に使うと判断した。
■ Post
Therasense判決 パート3:
不公正行為(Therasense事件後):
2013年11月15日にOhio Willow Wood v. Alps South判決がでた。再審査継続中における出願人の審判趣意書における陳述(証言者の信憑性を攻撃するために証言者は利害関係者であると全く根拠なしに主張した)が問題となった。本判決で述べられているOWW側のアクション(再審査係属中)がすべて事実とするならばTherasense判決のBUT-FOR Materialityを満たすだけではなく、重要性の要件の例外としてあるAffirmative Egregious Misconduct(著しく悪質な行為)の要件をも満たすであろう。さらに、これら状況証拠から合理的に導き出される唯一の推論は「USPTOを騙す意図」である( “deceptive intent” must be the single most reasonable inference drawn from the evidence”)ことは間違いなかろう。
■ Ibormeth v.
Mercedes-Benz (Fed. Cir. 2013-10-22)
MPF解釈と112条(b)項の関係:
112条(f)項解釈されるクレームの構成要素(computational
means)が112条(b)項のクレームの明瞭性を充足する要件を判示した。即ち、MPF解釈された当該構成要素の機能に対応する構造あるいはアルゴリズムを当業者が理解できるレベルに明細書で開示されていなければならない。(2015年のWilliamson判決の基礎)
■ Post
Therasense判決 パート2:
不公正行為(Therasense事件後):
2011年Therasense大法廷判決以降、4件のFed
Cir判決が出た。CAFCの判決としては、2012年4月のAventis判決と2013年10月のIntellect判決のみが不公正行為を認定し、権利行使不能と判断した。尚、2012年9月の1st
Media事件において、Fed
CirはTherasense大法廷判決における「騙す意図」の立証責任の困難さをより明白に説示した。その後SONY
Entertainment Americaにより上告されたが、最高裁はSolicitor
Generalの助言(2013年9月)に基づき上告を棄却した(2013年10月15日)。
■ Fresenius v.
Baxter: (Fed. Cir. 2013-07-02)
再審査の確定判決と係属中の訴訟:
本事件は再審査の結果(確定判決)の係属中の訴訟に対する影響に関して判示した。より詳細には係属中の訴訟がどの程度進行していれば再審査の結果が考慮されないかが判示された。3人の判事うち2人の多数意見によると再審査結果が確定した時点における訴訟の進行状態がFINALである場合には再審査の結果(問題となるクレームが無効)は考慮されない。ここでいうFINALの状態とは特許侵害訴訟において全ての争点の最終結論がでており(CAFCで確定)、唯一、判決の執行を待つ状態を言う。
★ Fresenius v.
Baxter base Hypo Quiz and Answers
再審査の確定判決と係属中の訴訟:
侵害訴訟において被告の敗訴(侵害と損害賠償額)が確定し、その執行のみを待つ場合には、後に再審査によってクレームが無効と判断されたとしても被告は損害賠償の支払い義務を負う。再審査、IPR、PGRを含み訴訟の開始時期、及び、PTO及び訴訟における挙証責任との関連性に対するQ&As.
■ Associate for
Molecular v. Myriad Genetics (Supreme Court: June 13, 2013)
101条、特許保護適格性:
Myriadは、変異することで乳がん、および、子宮がんの原因になる確率が顕著に増大するという遺伝子の位置とその配列(BRCA1とBRCA2と称する)を発見した。Myriadの発見は染色体の一部に含まれる800万にも及ぶヌクレオチドのペアーの中からの発見であり、革新的なものであるが、それは反復解析の手法によるものであり、それ自体で保護適格性を満たすことにはならない。合衆国最高裁:(1)そもそもDNAは情報であり、単離されたDNAは、自然界に存在するDNAとその情報の成分に違いはないとして101条の適格性を満たさないが、(2)研究室で生成されたcDNAは自然界に存在する状態のものではないとして101条適格性を満たす。
■ Sony
Entertainment America v. 1st Media
不公正行為(Therasense事件後):
2011年のTherasense大法廷判決の法理、最高裁で見直しとなるか?
CAFCは自身のTherasense判決(2011年5月25日)で確立した不公正行為を成立するための構成要件(硬直的なルール)に鑑み、1st
Media側の発明者も代理人も欧州特許庁で引用された公知文献を「意図的に隠蔽した(made a deliberate decision not
to disclose)」という事実を立証できていないとして地裁判決(不公正行為を認定)を破棄した。 (2013年3月4日)。連邦最高裁は総務長官(Solicitor
General)に意見を求めた(2013年5月13日)
■ Bowman v.
Monsanto (Supreme Court: May 13, 2013)
特許権の消尽(自己再生可能な特許された種):
最高裁は、特許権消尽の法理は、特許されたものに対しそれが最初に販売された時点で権利が消尽することを確認した。今回の特許対象物は自己再生可能な種であり、当該種を購入した時点で当該種に対する特許権は消尽するものの、当該種を植え付けて栽培される作物(穀物)からとれる第2世代の種には消尽の法理は適用されないとした。その理由は第2世代の種は特許された種を新たに製造する行為による産物であり、特許されたものを新たに生成する行為は侵害を構成する。
■ CLS bank v.
Alice CAFC en banc (Fed.
Cir. en banc: 2013-05-10)
101条、特許保護適格性:
この度(2013年5月10日)、長らく待たれたCLS bank判決(CAFCの大法廷判決)が出た。10人の判事による大法廷判決は過半数の多数意見(Majority Opinion)に至らず、5人の判事を代表しLourie判事によって書かれた意見がPer
Curium(今回の大法廷判決とする)の判決となった。そもそも101条(保護適格性)のハードルは低いもので多くの場合には他の条文、記載要件或いは新規性・進歩性の判断をすることで特段101条の審査さえする必要はなかった。しかし、2012年に最高裁がMayo判決において適格性に対する新しい法理(保護適格性に対する新規判断基準)を判示した。当該法理論には「発明概念」の必要性を盛り込むなど、実務者には到底理解し難いもので裁判官が適用するには余りにも無理があり、過去にはあり得ないSplit
Decisionとなった(6
opinions)。
■ Kirtsaeng
v. John Wiley & Sons (Supreme Court: March 19, 2013)
著作権の国際消尽:
最高裁において6:3で「著作権の国際消尽」を認めた。即ち、一度外国において正規に販売される(販売行為が米国領土の外)と著作権は消尽するという”first
sale doctrine”を支持した。 これによって、本の購入者が古本屋にその本を販売する行為、あるいは、古本屋が他のユーザーに再販する行為は著作権の侵害を構成しないということが確定した。
■ Gunn v.
Minton 合衆国最高裁判決 (Supreme Court: February 20, 2013)
州の裁判所における事物管轄権(特許クレームに関わる弁護士の過失):
合衆国最高裁は、特許クレームに絡む弁護士の過失に対する事物管轄権(弁護士の過失を判断するうえにおいて連邦特許法の解釈を必要とする)を州の裁判所は有すると判断した。連邦法28章1338条(a)項は、弁護士の過失を判断するうえにおいて連邦特許法の解釈をする必要がある場合であっても、州の裁判所がそれを行うことを否定するものではないとして最高裁は全員一致で州裁判所の事物管轄権を認める判決をくだした。
■ C.W. Zumbiel
v Graphic Packaging (Fed. Cir. 2012-12-27)
自明性:
アメリカのコンビニ或いは食料品店においてよく見る1~2ダース入りの炭酸飲料水を収容するカートンボックスに関する発明であって、その前端部を開口するための指差込フラップの位置を規定した従属クレーム2は非自明である。この技術の難易度はかなり低いがこれがまさに特許の醍醐味(簡単で他社が真似したい)。
■ Raylon LLC v.
Complus Data innovation (Fed. Cir. 2012-12-07)
根拠なき訴訟の提起と法的制裁(弁護士費用請求可):
昨今稀に見る特許権者に制裁を科した判決。CAFCはRaylonのクレーム解釈と侵害理由は著しく合理性を欠くものであり、根拠のなき訴訟の提起であり法的制裁(弁護士費用の支払い)を科すべきと判断した。
■ Post Therasense
Decisions and Practical Tips (Jan 2013)
不公正行為(Therasense事件後):
2011年のTherasense判決後のCAFCの判決を少しフォローしてみました。不公正行為の認定は特に「PTOを騙す意図」の証明がかなり困難になっているとみられる。
■ In re Baxter (Fed. Cir. 2012-10-26)
ダブルトラック(挙証基準の違いに起因しPTOと訴訟手続きで有効性判断が違う):
大法廷での口頭審理の開催をCAFCは拒否。 クレームの有効性判断を裁判所で行う場合とPTOで行う場合の判断基準(クレーム解釈の基準と挙証基準の違い)に起因し、異なる結果となる場合がある(ダブルトラック)。2008年のIn re Swanson事件での判示を確認した。
■ 1ST MEDIA v.
ELECTRONIC ARTS (Fed. Cir. 2012-09-13)
IDSと不公正行為(Therasense事件の後):
Therasense大法廷判決の法理を再確認するとともに明快に適用したCAFC判決。本判決は、実務において、我々がときどき直面する状況、即ち、米国出願で許可通知が発行された後に、対応外国出願(本事件ではEP出願)において関連度の比較的高い先行技術文献(本事件ではY表示の引例)が引用されたに拘らず当該先行技術文献をIDSしなかった場合に、どのような要件を満たす場合に不公正行為が認定され、米国特許が権利行使不能になるかという明白なガイドラインが判示されたと言えよう。
■ Flo Healthcare
Sol. v. PTO & Rioux Vision (Fed. Cir. 2012-10-23)
MPF解釈(高さ調整機構):
本事件の争点は「高さ調整機構」というクレーム用語が112条第6項解釈されるか否かであった、しかしCAFCは、「PTO審判部のクレーム解釈をCAFCで判断するときの基準(Review
STD)」に関してIntra-Circuit
Conflictを認め、大法廷での審理の必要性を名言した。
■ Akamai v.
Limelight v. Epic (Fed. Cir. en banc:2012-08-31)
方法クレームに対する間接(誘因)侵害:
大法廷(6:5)の僅差で、2つの事件(Akamai事件とMcKesson事件)に共通する方法クレームの誘因侵害(米国特許法第271条b項)に対し重要な判決をくだした。 多数意見(6:5)によると、方法クレームに対する誘因侵害を成立するには、誘因者(教唆者)が問題となる方法クレーム(特許)を周知しており、方法クレームの全てのステップが満たされている(侵害がある)ことが大前提である。しかし、方法クレームの全てのステップを満たす(実施する)のに、教唆者がステップの一部を実施し、残りのステップを被教唆者によって実施されても良い(Akamai事件)。 さらに、教唆者が方法クレームのステップの何れも実施せずに、複数の実行者(被教唆者)によってステップが分割的に実施され、全体としてステップの全てが実施されている場合であっても良い(McKesson事件)と判示した。
■ Wake Forest
v. Smith & Nephew (Fed. Cir. 2012-08-13)
上級審における下級審の事実認定に対する判断基準:
米国特許出願審査中における自明性の判断は審査官或いは審判部が行うわけだが、訴訟において特許クレームの自明性を判断する際には、事実問題(陪審の判断事項)と法律問題(裁判官の判断事項)が入り組み、どこで線引きをするのかが必ずしも明確ではない。 今回の事件はその線引きを確認するとともに、その線が実はボヤケタ状態で地裁において運用されていること、及び、その運用をCAFCも認めていることを示す判決のひとつである。⇒ 3年後の最高裁(Teva v.
Sandoz )によって事実問題と法律問題に対するレビュ基準が明瞭に判示された。
■ Plasmart v.
Kappos and Wang (Fed. Cir. 2012-05-22)
CAFCの審決(自明性)に対するReview基準:
審判部の自明性判断に対するCAFCでのReview基準を判示した。 CAFCにおける審決の判断基準は、審判部の事実認定に関しては十分な証拠でサポートされているか(Substantial Evidence)という基準であり、審判部の自明性に対する最終判断に対しては審判部の判断を一からReviewするという de novo基準である。
■ Marine v. HemCon (Fed. Cir. en banc: 2012-03-15)
再審査におけるIntervening
Rights:
米国特許においてIntervening
Rightsという用語は、通常252条に基づく再発行出願(特許発行後2年以内のBroadening Reissue)によって権利範囲が拡大された場合に、権利範囲の拡大によってのみ侵害となった第3者の行為(クレームが拡大される前は非侵害)を特許再発行後も一定の範囲で許容しようとする米国特許法252条の規定に基づく権利である。再審査においてはクレームの権利範囲を部分的であっても拡大することはできないので再発行出願におけるIntervening
Rightsの考え方とは性質を異にする。今回、大法廷判決(6:4)によって、307条(b)項のIntervening
Rightsの意味合いが説示された。即ち、再審査によってクレームが減縮補正された場合には
(減縮補正された後も第3者の行為が侵害と認定されたとしても)
再審査以前の侵害行為に対する損害賠償を免責するという侵害者にとって非常に有利な権利である。この法理の考え方は、再審査によってクレームが減縮補正されるということは再審査前、即ち、減縮補正前のクレームは無効であったと解釈できる、依って、無効な特許クレームの権利範囲を侵害する行為はそもそも損害賠償の対象とならないという考え方である。
■ Therasense v.
Becton - カリフォルニア北部地区地裁判決 (2012-03-27)
IDSと不公正行為:
District
Ct. Decision Remanded by CAFC
CAFC大法廷の厳格な基準に鑑みた差戻し審: Therasense(Abbott)の不公正行為を再度認定した。
■ Mayo v Prometheus - (Supreme Court: March 20, 2012)
101条、特許保護適格性:
治療方法(免疫介在性胃腸疾患の治療効果を最適化する方法)に関する101条適格性に関して最高裁判決がでた。最高裁はCAFC判決を破棄し、Prometheusの特許を無効とした。最高裁は、Bilski判決 (2010年)後に、本事件の審理をCAFCに差戻した。同差戻し審において、CAFCはPrometheusの特許クレームの特許主題適格性(101条)を認めた(2010年12月)。当該判決を不服とするMayoの裁量上告が認められ、この度、合衆国最高裁の判決が下された。最高裁によるとPrometheusのプロセスクレームは自然法則を適用するにあたり特許可能な主題にまでクレーム全体の性質が変換されていない(自然法則に追加されたステップは周知のルーチンである)という理由でPrometheusの治療方法に関するクレームの101条適格性を否定した。
■ CBT Flint v.
Return Path and Cisco (Fed. Cir. 2011-08-10)
誤記を含むクレームの解釈(訴訟):
地裁で訂正可能なクレーム用語のエラー;地裁では問題となったCBT特許クレーム13の用語、detect
analyze(動詞が接続詞無しで2つ繋がっている)は訂正不可とし同クレームは112条第2項の明瞭性の要件違反とし無効と判断した。CAFCは内部証拠(明細書と図面)に鑑み当該クレーム用語は”detect and analyze”という意味合いで解釈することは明白であるとし地裁判決を破棄した(即ちCBTの特許は無効ではない)。
■ MS v. i4i Limited P'ship (Supreme Court: June 9, 2011)
被疑侵害者の挙証責任:
争点は、訴訟において特許の有効性を争うときに審査段階で考慮されなかった先行技術で無効を主張するときの挙証責任の基準は「明白、且つ、説得性のある証拠: “Clear and
Convincing evidence”:以下C&C基準とも称する」によるべきか、それとも「証拠の優越性: Preponderance of Evidence: 以下、P基準とも称する」の基準によるべきかである。即ち、審査段階で引用されたか否かでそれぞれの先行技術に対して挙証基準を変えるのかが争点となった。そもそも、そのような判断は現実的に不可能(引用されたA引例「C&C基準」と引用されなかったB引例は「P基準」との組み合わせで自明性を主張する)であり結論として最高裁はいずれの先行技術に対してもC&C基準が妥当すると判示した。
■ Stanford v. Roche (Supreme Court: June 6, 2011)
Bayh-Dole法(政府補助による特許権の帰属):
今回の事件はBayh-Dole法による発明(HIVウイルスの血中濃度を測定する手法に関する発明)の帰属が問題となった。連邦政府による財政支援の基に発明がなされた場合に、Bayh-Dole法(1980年成立)によって、その発明に対する権利が発明者から自動的に連邦政府との契約者であるStanford大学に移譲されるのか否かが争われた。最高裁の多数意見(7:2)では、連邦政府の支援で生じた発明であっても当該発明は発明者に帰属するというのが大原則であり、Bayh-Dole法はその原則を変えるものではない。連邦政府との契約者(Stanford大学)に権利を帰属させるためには発明者から書面で譲渡を受けることが必要である。(※ Bayh-Dole法とは連邦政府の支援のもとで生まれた発明の活用を促進するために1980年に成立した法律)
■ Global-Tech
Appliances v. SEB. S.A. (Supreme Court: May 31, 2011)
271条(b)項の間接(誘因)侵害:
271条(b)項の「侵害の誘因(inducement)」を成立する要件が争点となった。
米国特許法第271条(b)項:Whoever actively
induces infringement of patent shall be liable as an infringer;
271条(b)項の誘因侵害を成立するには被告が侵害行為を周知していることが要件である。或いは、故意の盲目(Willful Blindness)は「侵害行為を周知している」という要件の代わりとなる。合衆国最高裁(8:1)はCAFCの判断基準(Deliberate
Indifference:故意の無関心)を否定するも、最高裁は「意図的に盲目(willful
blindness):刑事法で採用されるより悪質性が高い」という基準に鑑みCAFCの誘因侵害の判断は正しかったであろうという理由でCAFC判決を支持した。 尚、この基準(willful blindness)を満たすには2つの要件が必要であるとした;(1) 被告がその事実(特許侵害)が高い確率で起こるという危険性を周知している;(2)被告はその事実(侵害)を知ることを意図的に避ける行動をした。
■ Abbott
(Therasense) v. Becton (Fed.
Cir. en banc: 2011-05-25)
IDSと不公正行為:
CAFC大法廷においてIDS提出不備に起因する不公正行為の判断基準に対して判決が出た。6-4-1と意見は分かれたが多数意見としては不公正行為の認定基準がかなり厳しくなった。不公正行為の構成要件である「1:
USPTOを騙す意図」と「2: 情報の重要性(その情報が正しく伝えられていたら特許は成立していなかったであろう」に対して明白な判断基準が示された。即ち、被疑侵害者は[1]と[2]をそれぞれ明白かつ説得性の挙証基準で立証すること。
■ MS v. i4i Limited
P'ship
Oral Hearing
at Sup. Ct. took place on April 18, 2011
被疑侵害者の挙証責任:
合衆国最高裁にて口頭審理が開かれた。争点は審査されなかった引例で特許を無効にするときの挙証責任を証拠の優越性にするべきか否かである。早ければ本年6月ごろに最高裁判決が出ると予想される。
■ Prometheus Lab. v.
Mayo (Fed. Cir. 2010-12-17)
101条、特許保護適格性:
Bilski判決(2010年6月28日:合衆国最高裁)後に、治療方法に関するクレームの101条適合性に対するCAFCの判断が明示された判決である。治療方法クレームにおいて、ある薬を投与し、それが体内で違う物質に変換されるとき、分解された物質の血中濃度を測定するステップを規定し、当該測定値に応じて所定の対応をすることをクレームしたる場合には101条を満たす。何故なら、薬を投与した後に体内で異なる物質に分解されるステップはBilski判決の Machine
or TransformationテストのTransformationを満たすからである。
■ Therasense v.
Becton Dickinson & Co.
IDSと不公正行為:
2010年11月9日 (Fed.
Cir. En Banc: 大法廷による口頭審理)
不公正行為の構成要素である「重要性」と「騙す意図」のそれぞれの判断基準に焦点を絞り議論が成された。近時に大法廷による判決が出るでしょう。 重要な争点は、「騙す意図」の立証においてPTOに隠蔽された情報の「重要性」は考慮に入れられるべきか否かである。⇒ 大法廷で不公正行為の認定に対する判断基準が判事された(CAFC大法廷判決:2011年5月25日)。
■ Laryngeal Mask
Co., (LMA) v. Ambu AS (Fed. Cir. 2010-09-24)
112条1項の開示要件と明細書の「発明の要約部」:
本判決は、Ariad判決(2010年3月:CAFC大法廷)以降、112条第1項の「開示要件」を基礎とする無効理由が侵害裁判において頻繁に利用されていることを示す。また本件特許は100%機械発明であり、112条第1項の「開示要件」をメカ関連のクレームでどのように判断するべきかの一つの指針になる判決と考えます。また、発明の要約部(Summary
of the Invention)の記載がクレーム解釈に重要であることを再認識させる事件である。
■ Brooks Brothers v.
United States (Fed. Cir. 2010-08-31)
特許虚偽表示:
米国特許法292条に基づく虚偽表示を理由に、刑事的民事訴訟を提起する場合に、被告と競合関係にない原告(即ち、何人も)に当事者適格性はあると判断された。⇒注意: 2011年9月16日に成立したAIA(America Invents Act: 改正特許法)によって292条(b)項が改訂され解決を見た。
(b) 何人も罰金を科すよう提訴することができ,その場合は,罰金の半分は提訴者に帰属し,他の半分は合衆国による使用に委ねられる。
(b) 本条に基づく違反の結果、競争的被害を被った者は,その被害を補償する十分な損害賠償を求めて連邦地裁に民事訴訟を提起することができる。
■ False
Markingに関して一言、二言:
特許虚偽表示:
Stauffer事件の口頭審理(2010年8月3日)
292条に基づく虚偽表示を理由に、刑事的民事訴訟を提起する場合に、被告と競合関係にない原告の訴訟適格性は? ⇒注意:2011年に成立したAIA(America
Inventors Act:米国特許改正法)の292条(b)項で訴訟の当事者適格性が虚偽表示により損害を被った者に限定された。
■ Bilski v. Kappos (Supreme Court June 28, 2010)
101条、特許保護適格性:
Bilski事件で問題となった発明は、商取引分野におけるリスクをヘッジ(リスク防止策)する方法に関し、CAFC大法廷判決(2008年10月)においては方法クレームが特許保護適格であるか否か(即ち、米国特許法第101条を満足するか)の判断は1972年の合衆国最高裁判決(Benson事件)の法理の適用が妥当すると結論づけた。この度最高裁は、Machine
or Transformation (MOT)テストは方法クレームの保護適格性(101条)を判断する上で有用な判断基準であるが唯一の基準ではないと判示した。⇒ここからが101条の適格性に対する混乱の始まり!
■ Abbott Diabetes (Therasense, Inc.) v. Becton, Dickinson and Co.
不公正行為:
CAFCは2010年1月25日の判決を破棄し、大法廷で審理することを決定した(2010年4月26日)。 特に不公正行為を認定するにあたり、PTOに開示されなかった情報の「重要性」とPTOを騙す「意図」のこれら2要件をバランスする判断基準を今後も適用するべきか、また、他の連邦事件においてより適切に不公正行為の判断基準を適用している判例はないかなどに関して審理をする意向を示した。⇒ 後に大法廷で審理され不公正行為の認定に対する判断基準が判事された(CAFC大法廷判決:2011年5月25日)。
■ Ariad Pharmaceuticals v. Eli Lilly & Co. (Fed.
Cir. en banc: 2010-03-22)
112条第1項の「記述要件」と「実施可能要件」:
9:2の大法廷判決は112条第1項の「記述要件」は「実施可能要件」とは識別される要件であり、発明者がクレームしている発明を本当に所有していたかどうかを当業者が理解できるように明細書に記載しなければならないとした。大法廷は、「記述要件」を満たす明細書の開示に対する明白な判断基準を示さなかったが、包括的なクレームが当該記述要件を満たすには、当該クレームの範囲に属する代表的な実施例(複数)が明細書で開示されていることで満たされるであろうと説示した。 拠って、今後は、実施例のわりに広すぎるクレームがある場合には、発明者が当該広さに対応する発明を所有していなかったという理由で出願審査時には記述要件違反で拒絶、或いは、そのようなクレームは裁判所で無効と判断されるケースが増えると予想される。
■ Abbott Diabetes v. Becton (Fed. Cir. 2010-01-25)
IDSと不公正行為:
対応する欧州特許出願(counterpart
EP App)審査中に出願人が欧州特許庁に対して述べたコメントがUSPTOに対して宣誓した供述の内容に対して重大な齟齬があったとしてIDS開示義務違反(不公正行為)と判断し、権利行使不可とした。⇒ 後に大法廷で審理され不公正行為の認定に対する判断基準が判事された(CAFC大法廷判決:2011年5月25日)。
■ ABBOTT LAB. v. SANDOZ (Fed.
Cir. en banc: 2009-05-18)
プロダクト・バイ・プロセスクレーム:
プロダクト・バイ・プロセスクレーム(product
by process claim)のプロセス部分をクレームの構成要素と解釈するか否かに関して、CAFCは1991年のScripps判決(侵害判断時にプロセス部分は構成要素とは解釈しない)と1992年のAtlantic
Thermoplastics判決(侵害判断時にプロセス部分も構成要素と解釈する)で真っ向から対立していた。 Scripps判決もAtlantic
Thermoplastic判決もCAFCの3人のジャッジパネル判決だったので、今回CAFC大法廷判決でAtlantic
Thermoplastic判決が正しく、Scripps判決は間違いであると明言した。 即ち、侵害判断時にはプロダクト・バイ・プロセスクレームのプロセス部分は構成要素と解釈し、同プロセス部分を被疑侵害物が文言上あるいは均等論の基に満たさなければ非侵害であると判示した。
■ In re BILSKI (Fed.
Cir. en banc: 2008-10-30)
101条、特許保護適格性:
CAFC大法廷判決は「プロセス発明」が特許可能主題か否かを判断する基準は、1972年の合衆国最高裁判所、Benson事件で判示されたテスト( Machine
or Transformation テスト)を適用するとした。 当該Machine or
Transformationテストとは以下の(1)または(2)が満たされれば101条で規定するところの特許適格性のあるプロセスクレームであると判断する
(1) クレームされたプロセスは特定の機械 (Machine)、或は、装置に関連付けられているか? 又は
(2) クレームされたプロセスは特定の物(Article)を異なる状態或は別の物に変換 (Transformation)するか?
■ STAR
SCIENTIFIC v. RJR (Fed. Cir. 2008-08-25)
不公正行為(Therasense前):
本判決は、不公正行為の判断基準を変更したわけではない。しかし、今回の判決は過去のCAFCの不公正行為の判断に対する判示を整理し、不正行為の立証責任の基準をより明確にしたという意味で重要であると考える。特に、2004年のMonsanto判決を今回CAFCが再確認したという点に鑑み、被疑侵害者にとっては、問題となる特許の経過書類において、IDS開示義務違反の事実を見つけたとしてもそれを根拠にして特許の権利行使不能の抗弁が困難になると予想される。逆に特許権者にとってはIDS開示義務違反をしたことが後に発覚したとしてもそれ自体で特許が権利行使不能になることはないという意味において、既存のIDS提出ルーチン(社内・所内規則)が設定されており、同ルーチン(社内・所内規則)に基づきIDS提出を実行している場合には、同ルーチン(社内・所内規則)をより厳格に見直す必要性を課す判決ではないと言える。⇒ 後にCAFC大法廷で同じ争点に関し審理され不公正行為の認定に対する判断基準が判事された(Therasense
v. Becton CAFC大法廷判決:2011年5月25日)。
■ Taltech Limited v.
Esquel Apparel (Fed. Cir. 2008-05-22)
ベストモード要件:
112条第1項のベストモード要件に対する明瞭なガイダンスを与えた判決である。⇒
2011年のAIA(米国特許改正法)によってベストモード要件は2011年9月16日以降に提起される訴訟では無効理由から排除された。但し、USPTOでの審査においては拒絶理由の根拠として残る。
■ Arisocrat Tech. v.
International Game Tech. (Fed. Cir. 2008-03-28)
MPF解釈(制御手段):
クレーム1のMeans Plus
Functionで表現された
"game control means" に相当する明細書の構成(structure)が一般的なマイクロプロセッサとしか開示されていなかった。 CAFCは、当該明細書の開示のみでは、112条第6項で言う構造・構成(Structure)が開示されていないと判断した。プログラム関連発明の場合には、112条第6項で言う明細書で開示されたstructureとはTangibleな構造体(構成要素)という意味ではなく、一般的なマイクロプロセッサであれ、それがプログラムによって特定の機能を実行することになるので、この場合にはプログラムに相当するアルゴリズムが112条第6項でいうstructureに相当する。従って、ソフトウェア関連発明においてクレームで「制御手段」或いは「制御部」を機能で規定する場合には明細書にマイクロプロセッサなどを記述するとともに、機能を実行するアルゴリズムを記載しておくことが必要である。機能を実現するアルゴリズム(Structure)の開示が不十分な場合には112条第2項のクレームの明瞭性の要件を満たさないとしてクレームは無効とされる。⇒
2015年のWilliamson大法廷判決で112条6項解釈の適用基準と112条2項の明瞭性との関連性が明白に判示された。
■ Paice LLC v.
Toyota (Fed. Cir. 2007-10-18)
差止請求と実施権:
CAFCの多数意見としては、裁判所が原告の差止請求を認めない場合には被告に自動的に実施権を与えることにはならない、しかし当事者間で合意に至らない場合には地裁が妥当なライセンス費用の決定に介入できると判示した。しかし、Rader判事は反対意見として、それは強制実施権を与えるのと同義であると述べた。
■ Festo v. SMC (Fed. Cir. 2007-07-05)
均等論(Festo最終確定判決):
侵害の判断において、まずは文言侵害が大原則であり、第1段階の例外として均等論適用による侵害があり、均等論を適用できない条件の一つとして特許性に関わる理由により限縮補正された要素という第2段階の例外(禁反言の法理)がある。 さらに、第3段階の例外(禁反言の法理適用の例外規定)として、特許性に関わる理由で限縮補正された構成要素であっても所定要件を満たす場合には均等論の適用が許可されるというのが現行の判例法である。
本判決の争点は上記第3段階の例外を判断する上で、イ号の形態が forseeable(予測可能性)であったか否かという要件を如何に判断するかであり、本判決によると、foreseeability(予測可能)であったか否かを判断するときに
Function/Way/Resultの3要素テスト(機能・方法・結果の実質同一性を判定するテスト)あるいはInsubstantial
Changeなるテスト(非実質的な違いか否かを判断するテスト)を適応する必要はない。イ号の問題となる構成要素がクレームの補正時に先行技術文献(引例)に開示されているという場合には、問題となるイ号の構成要素は当業者にとって予測可能であったであろうと判断される(即ち、第3段階の例外規定の適用無し)。
■ Ex Parte
CAROLYN RAMSEY CATAN PTO審決: 2007年7月3日
USPTOでの自明性の判断:
本事件はKSR最高裁判決が出てからUSPTOで先例(Precedent)の地位が与えられた最初の審決である。依って、今後暫くは、米国特許庁での審査及び審判における自明性の論争は本審決が参酌されることになる。従って、米国特許実務者は本先例で引用された最高裁判決並びにCAFC判決の判示事項を再確認することが重要。
■ Leapfrog
Enterprises, Inc., v. Fisher-Price,
Inc. and Mattel, Inc., (Fed. Cir. 2007-05-09)
自明性:
本事案は、KSR判決後10日以内に出た自明性判断に対するCAFC判決である。本事件で問題となった特許クレーム25の有効性に対して2件の引例装置と周知の構成要素の一つが組み合わされて自明であると判断された。これら3件の公知技術の組み合わせに対してはKSR最高裁での判示が引用され、その組み合わせの是非を判断するためTSMテストを硬直的に適用させず、当業者の一般知識に鑑み妥当か否かという判断基準で審理され、同組み合わせの動機付けを認めクレームを自明と判断された。
■ KSR v. Teleflex (Supreme Court April 30, 2007)
自明性:
2007年4月30日、合衆国最高裁判所のKSR事件の判決が出た。
CAFCの判決は破棄された。即ち、自明性の判断において、引例の組み合わせに対するTSM(teaching,
Suggestion, Motivation)の存在が証明されない場合には自明と判断しないとしたCAFCの判示は否定された。 即ち、TSMテストを厳格に(硬直的に)適用することは最高裁のこれまでの判決と矛盾するとし、TSM以外にも当業者にとっての一般知識・常識が参酌され、自明性の判断が行われることが判示された。
■ Liebel v. Medrad.
Inc., (Fed. Cir. 2007-03-22)
実施可能要件:
Liebelは出願審査中に競合社Medradの形態を包括するべくクレームを拡大補正し、審査官は拒絶することなく特許した。クレームの権利範囲に明細書でサポートされない部分が存在するということのみでクレームは無効とはされない。しかし当該サポートされない発明を当業者が実施しようとする際に、明細書の開示を参酌して妥当な努力のもとに実現ができない場合(言い換えると相当数の実験を繰り返さないと発明を実施できない)には当該クレームは112条第1項の実施可能要件を満たさないという理由で無効と判断されるということを判示した。
■ KSR v.
Teleflex (Supreme Court 合衆国最高裁で口答審理 November
28, 2006
自明性:
去る11月28日午前11時より約1時間に渡り、合衆国最高裁判所においてKSR事件の口答審理が開催された。被疑侵害者KSR側の代理人Dabney弁護士; 政府側(米国特許庁の代表弁護士)としてHungar弁護士(KSR側を支持している);及び、特許権者であるTeleflexを代理するGoldstein弁護士の順に最高裁判所で意見が述べられた。口答審理のトランスクリプトとAIPLA(アメリカ知財弁護士協会)の速報を基に抜粋した。口答審理のトランスクリプトを読んでも今後の判決の行方は明瞭には浮かばないが、(筆者の個人的見解ですが)少なくともTSMテストは維持されるが、TSMテストを硬直的に適用するのではなく、TSMの存在を主張する根拠(証拠)の拡大が明示されると予想する。 注意: TSMテスト(Teaching,
Suggestion, Motivationの存在を判断するテスト)
■ eBay v.
MercExchange (Supreme Court May 15, 2006)
差し止め請求の4要件テスト:
最高裁は連邦地裁の判断とCAFCの判断をともに否定した。連邦地裁の判断、即ち、特許発明を自分で実施せず、他者にライセンスのみ与える者に対して差止め請求権は認められないというもので、同判断を “Categorical Rule”と称し、そのような特許権者にも差止め請求権を認める場合もあるとした。さらにCAFCの判断、即ち、特許の有効性と侵害の判断が下されれば差止め請求が可能という判示も否定した。
最高裁は、差止めは、衡平(エクイティ)の原則に基づき、4項目テストを適用することによって、連邦地裁の裁量で『認めても良い』と判示した。
■ Phillips v. AWH
Corp: AWH社最高裁へ上訴 2005-11-09
クレーム解釈:
AWH社は以下の質問に対する最高裁の判断を得るべく最高裁へ裁量上告した。
CAFCは連邦地裁によるクレーム解釈の全ての観点に対して全く新たに判断するという解釈(即ち、de
novo 基準:下級審の判断に全く拘束されない)は正しいのか? 要は、クレーム解釈とは事実審と法律審の両側面からなされるものであって、地裁のクレーム解釈の基になる事実認定(例えば当業者による用語の理解;発明当時の技術レベルに鑑みた解釈など)に対してもde
novo基準で判断するのかという点である。⇒ 結局、最高裁は裁量上告を却下したが、後に2015年の最高裁(Teva v.
Sandoz )によって事実問題と法律問題に対するレビュ基準が明瞭に判示された。
■ Phillips v. AWH
Corp. (Fed.
Cir. en banc: 2005-07-12)
クレーム解釈:
クレームの用語を解釈するときに何を参酌するべきか、また、その優先順位は如何にというクレーム解釈の手法・手順に対する大法廷判決がでた。後に訴訟におけるクレーム解釈の基準をPhillips基準と称する根拠となった重要判決である。
Michel判事に代表される大法廷判決多数意見によると、クレーム用語を解釈するときに内部証拠(クレーム; 明細書; 経過書類)を重視すること、辞書及び専門書(外部証拠)を使用することを否定しないが、内部証拠以上に過渡に依存するのは妥当ではないと述べております。 また、本大法廷はTexas判例(CAFC2002年の判決)においては、クレーム解釈時に過度に外部証拠を参酌する判示をしたことを認めた。クレーム用語を解釈するときに、まずはクレーム自身、それから明細書を当業者がどのように理解するかという観点でクレームを解釈するというのが最良の手法であるとするも、裁判官がクレーム解釈をするときに内部証拠と外部証拠をどのような順序で参酌するかでは自由裁量であって、重要なことは、各証拠にどれだけのウェイトを配分するかであると述べた。
■ CAFCの103条(自明性の判断基準)に関して最高裁に裁量上訴
KSR
International - against
-Teleflex and Technology Holding Co.,
自明性:
KSR社は地裁判決(特許無効)を破棄差戻ししたCAFC判決に不服を唱え、最高裁に裁量上告している。争点は、「先行技術の教示内容をクレームされた態様に組み合わせるように当業者を導いたであろうという教示、示唆、或いは、動機付け(TSM)の存在を示す証拠がない場合には、103条(a)項の基に自明と言えないとしたCAFCの硬直的な法理が正しいか否か」である。下級審地裁においては自明性故に問題となったTeleflex特許クレームの無効が認められたが、CAFCにおいて同無効判決が破棄された。その理由は、Asano特許と市販品の制御装置をクレーム4のように組み合わせることに対する Teaching/Suggestion/Motivationが挙証されていないということである。24名で構成される全米ロースクールの知財専門の教授陣もKSR社の裁量上告を支持するとともに、法廷助言者としての意見書を提出しており、より適切な自明性(特に引例を組み合わせて自明とする)の判断基準を判示することを要請している。
本件の裁量上訴が認められ、最高裁において自明性判断基準のガイドラインがでることを希望する(筆者)。
■Phillips
v. AWH En Banc Hearing Took Place on Feb 08, 2005
クレーム解釈:
2005年2月8日CAFC大法廷でヒアリングが実施された。Phillips氏(特許権者)とAWH社(被疑侵害者)共に、次の2点に関しては同意した模様。 クレーム用語の解釈に関して、(1)まずは辞書ではなくて、明細書が参酌される;(2)明細書で明瞭な放棄がある場合には同放棄を基にクレームを限定解釈する。 但し、明細書に特定の実施例しか開示されていない場合に同開示によってクレームが限定解釈されるか否かに関しては被疑侵害者側であるAWH社は限定解釈を主張するも、その根拠を明瞭にするべく迫ったCAFC判事の質問(執拗なる質問から判断するにCAFC大法廷としては特段の理由がない場合にはクレームは明細書の実施例によって限定解釈されないという結論に到達していると予想されます)に説得力のある反論ができなかった。大法廷での判決を待ちたい。
■Insituform
Technologies v. Cat Contracting. (Fed. Cir. 2004-10-04)
Festo判決後の均等論適用の例:
本事件は1991年6月の陪審審理に起源をもち、原告・被告の控訴・反訴を経てさらに、2000年のCAFC大法廷によるFesto判決(I)、2002年最高裁によるFesto判決(II),さらには2003年のCAFC大法廷によるFesto判決(III)を経て、最高裁からの差し戻し後、本CAFC法廷における判決に至った。 本判決の核心部は2003年のFesto判決(CAFC大法廷判決であって、最高裁からの差戻しでFesto推定の反証の条件を判示したもの)の第2番目の反証手法として、クレームを減縮補正した理由が被疑侵害の形態とは表面的な関係しかない(要は補正理由が被疑均等物の形態を避けるためのものではない。さらに言い換えると特許性を主張するために回避した先行技術文献の開示部と被疑均等物との形態が異なる場合)ことを証明できた場合にはクレームの補正箇所であっても均等を認めようというものである。 即ち、同第2番目の反証手法をどのように使えるかを判示したCAFCの重要な判決である
■ Knorr-Bremse
Systeme v. DANA Corp (Fed.
Cir. en banc: 2004-09-13)
秘匿特権行使による不利益の推定:
被疑侵害者(被告)が弁護士から鑑定を得なかったこと、或いは、弁護士・顧客間の秘匿特権で保護された情報を開示しなかったことによって、弁護士の意見は被告にとって不利になっていたであろう、或いは、弁護士の意見は不利なものであったと推論するべきではない。先例において本判示に反するものは無効とする。従って、CAFCは地裁(本審の下級審であるバージニア州東部地区連邦地裁)の故意侵害の判決を破棄し、同地裁に本件の弁護士の意見は不利益なものであった、または、そうであったであろうという不利推論を廃し、再審理をするべく差戻す。
■ In re ALBERTO LEE
BIGIO (Fed. Cir. 2004-08-24)
Analogous
or Non-Analogous (先行技術は同類か否か:MPEP
2141.01(a))
CAFC多数意見はヘアブラシに対する特許出願の先行技術として歯ブラシを類似技術と判断した米国特許庁審査官と審判部の判断を支持した。 Newman判事は反対意見を述べ、歯ブラシはヘアブラシと同類の引例にはなりえないと主張しております。そもそも歯ブラシに要求される機能とヘアブラシに要求される機能は全く異なる。⇒ 然し、後に2007年のKSR最高裁判決によって設計変更のニーズ或いは市場の必要性に応じて異なる技術分野のものも先行技術となりうると傍論で述べて先行技術として引用されうる技術分野の広がりを示唆している。KSR事件の直後に出たLeapfrog
Enterprises判決ではまさに先行技術として引用できる技術分野の広がりが判示されている。
■ Innova/Pure
Water, v. Safari Water Filtration System (Fed. Cir. 2004-08-11)
クレーム解釈:
単一の実施例しか明細書に開示していない場合にクレームは減縮解釈されるか?
本事件においては機械系の特許明細書でよく使う表現 "operatively connected"(操作可能に、或いは、機能的に連結する状態という日本語明細書の英訳に良く使う表現)の解釈に関して議論がなされた。本件特許独立クレームにおいては operatively
connected (operatively associatedも同様に使用された)の表現があるが,実施例(図面を含む)においてはキャップ15とフィルター25が強固に且つ物理的に固定された状態しか開示されておらず、Safari社は同クレーム用語はそのような強固な固定的な連結に減縮解釈されると主張した(下級審ではその主張が認められた)。しかしCAFCではSafari社の主張(及び下級審の解釈)を真っ向から否定し、下級審に差戻した。従って、本事件の判示に鑑みて"operatively
connected(或いは operatively
associated)"という用語を明細書で使用すること自体は問題なさそうだが、2010年のAriad大法廷判決に鑑み、さらに被疑侵害者の反論材料とならないように operatively
connected (associated) という用語はdirectly;
indirectly; detachably connected等の状態も含むという但し書きを明細書に追記しておくことが望ましい。
■ Phillips, v.
AWH Corp. EN BANC HEARING GRANTED July
21, 2004
--- DECISION on
APRIL 08, 2004 OF THIS COURT IS
VACATED
クレーム解釈:
2004年07月21日、CAFCはPhillips社の再弁論(Rehearing)の請求を却下するも、大法廷における再弁論(再審理)の機会を認めた。CAFCは本年4月8日付けの判決(Phillips社の米国特許4677798クレームには「バッフルの延設角度が90度の形態を除外する」という文言はないが、明細書には90度の延設状態が開示されていないという理由で、クレームを減縮解釈し、AWH社は米国特許4677798を侵害していないとする地裁の略式判決を維持した)を取消した。 CAFCはクレーム解釈に対する1-7の質問に対して法廷助言者
(amicus curiae)の意見を求めることにした。⇒ 後に2005年Phillips大法廷判決において質問7を除いて意見が述べられた。
■ Honeywell v.
Hamilton Sundstrand (Fed.
Cir. en banc: 2004-06-02)
均等論(Festo判決後:)従属クレームを独立形式に補正すると従属クレームの特徴には均等論は適用されない。
Delaware地区連邦地裁ではSundstrand社の行為はHoneywell社の米国特許第4380893号(及び米国特許第4428194号)のクレームを均等論適用の基に侵害し、同侵害行為は故意侵害を構成するとしSundstrand社に合計約50億円の損害賠償の支払いを命じる判決がくだされた。 然しながら問題となったクレームは元々従属クレームであり審査中に拒絶通知を受けて独立クレーム形式に補正したものである。今回CAFC大法廷において、従属クレームを独立形式に補正することによって同補正部分(従属クレームにしか存在していなかった特徴)に対して均等論の適用を禁止する推定が働くことを確認した。依って、Sundstrand社の非侵害と判断するも、同推定は反駁可能な推定でありますのでFesto最高裁判決で判示された手法で推定を覆せるか否かを判断することが可能であります。そのような事実判断は当裁判所の下級審である連邦地裁において審理されるべく差し戻しがされた。
NEWMAN判事は112条第4項を参照し、従属クレームは独立クレーム形式で記載されるべきものを便宜上従属形式で表現したものであるとして従属クレームを独立形式に補正することは減縮補正にならないとして反対意見を述べている。
■ Phillips, v.
AWH Corp. (Fed. Cir. 2004-04-08)
クレームの解釈(単一の実施例に限定的に解釈):
本事件は明細書の開示によってクレーム用語の権利範囲が減縮解釈されることを肯定した判決である。問題となった特許USP4677798はPhillips氏の米国特許で、刑務所の建造物等に使用される暴行或いは破壊行為に対抗可能な建築モジュール(規格パネルで構成される)をクレームしている。 争点となったのはクレーム1の" baffle(バッフル)"という用語の権利範囲解釈であって、Newman判事及びLourie判事(多数意見)によると同用語
"baffle"は構造的な表現であるので
6項(MPF)解釈はしないと判断しながらも、明細書中の実施例の形態及び図面では"baffle"はパネル壁面に対して90度を除く角度で延設するものしか開示していないとして同実施形態の特徴をクレーム1の
"baffle"に読み込んで権利範囲を解釈し、AWH社のイ号形態を非侵害と判断した(下級審の略式判決を支持した)。 DYKE判事は"baffle"の解釈に対して反対意見を述べている。⇒ 後に2005年Phillips大法廷判決において最終判断がなされた。
■ ULEAD SYSTEM
v. LEX Computer (Fed. Cir. 2003-12-09)
半額サービスの特約を受けられる小規模事業主のStatus変更に要注意:
LEX社は20名以下のsmall entity(小規模事業主)であって出願費用及び特許発行費用を small
entity statusで支払っていた(これは問題なし)、しかし、特許発行後の特許維持年金費用支払い時にnon-small
entity(大規模事業主)に通常実施権を付与している事実があったに拘わらず small
entity statusの減額措置の恩恵を受けた維持年金を依然として支払ったとしてカリフォルニア中央地区連邦地裁では特許無効と判断された。しかし、CAFCでは、「特許庁を欺く意図」が立証されていないとして連邦地裁に差戻した。
※ さらに米国特許及び出願において小規模事業主の地位が特許庁費用の支払いと関連するのは(A)出願費用支払い時(B)特許発行費用支払い時(C)3回の維持年金支払いのタイミングであって(A)~(B)の間のOAに応答するときの期限延長費用の支払い時にはStatusの変更は関係ない。
■ FESTO CAFC大法廷判決(II) 2003年9月26日
均等論(Festo最高裁判決後):
クレームの構成要素が減縮補正された場合に当該補正された構成要素に対して均等論の適用を禁止するという推定が働く。当該推定に反証するため最高裁が提示した3つの反証手法のうち第1手法の「unforeseeable(クレーム補正時に問題となる侵害の形態が予見不能であったことをFESTO側が立証責任を負う)」 の判断をするために地裁に差戻した。
■ Dayco Prods. Inc., v. Total
Containment, Inc., (Fed. Cir. 2003-05-27)
IDS:関連出願で引用された先行技術文献の取り扱い
本事件では出願1と出願2は共に基礎出願が同じでありながら、異なる審査官A、Bが審査しており、互いにダブルパテント拒絶を受けるレベルにクレームが類似していたという事実、及び出願人が出願1の情報(審査官Aが審査)を審査官Bに伝えなかったという事実がある。地裁は略式判決で不公正行為を認定したが、CAFCは、出願人がPTOを騙す意図を持って情報を隠蔽したということは証明されていないという理由で地裁判決を破棄し、差し戻した。本判決以降、関連出願で引用された先行技術文献を互いの出願係属中には全てIDSするというような規則を設定しIDS手続きをする企業も出てきた。然し、費用(IDS提出に掛かる手間と費用)対効果(被疑侵害者による不公正行為の抗弁を防ぐ)の観点で本当にそこまで実直にIDS手続きをするべきかビジネス判断をするのも企業にとっては重要である。
■ Festo判決に基づく均等論適用可否に関するFlow-Chart
均等論(Festo最高裁判決):
Festo最高裁判決を基にどのようなクレーム補正の場合に均等論を適用できるか否かをフローチャートで説明した。
■ Festo最高裁判決 (Supreme Court: May 28, 2002)
均等論(Festo最高裁判決):
CAFC大法廷判決破棄、差戻し
最高裁は、出願経過において減縮補正されたクレームの構成要素にも均等論適用の余地が有ることと判示した。経過書類禁反言は、発明者が減縮補正された構成要素に対する均等物の全てに侵害を主張することを禁止するものではない。 禁反言は広範な範囲の均等論の適用を禁止することはできるとしても禁反言の適用域を決定するには、当該減縮補正によって放棄された主題がなんであるかを検討することが必要である。即ち、減縮補正されたクレームの構成要素に対する均等物の全てに対して均等論の適用を禁止する(Complete
Bar
: CAFCの法理)と解釈する必要はない。減縮補正された構成要素が特定の均等物の形態を含む場合とは、例えば、①出願時に均等物の形態が予想できなかった、②減縮補正の理由が問題となる均等物と非実質的な関連性しかない場合であって、特許権者は「経過書類禁反言は均等物を排除する」という推定に対して、クレームの補正時に問題となる均等物の形態を文言上含めるようにクレームをドラフトすることが当業者にとって合理的に期待できなかったことを証明することによって当該推定に反駁することが可能である。
■ Johnson
& Johnston v. R.E. Service Co (Fed. Cir. en
banc: 2002-03-28)
クレーム解釈:(明細書で開示しているがクレームに含まれない特徴)
Johnstonの5,153,050特許の明細書では「アルミは基板にとって好適な材料であるが、ステンレス鋼或いはニッケル合金をアルミの代わりに使用することも可能である」と記載している(コラム5の5-10行目)。しかし、050特許のクレームでは「アルミ製のシート」であると規定している。CAFC大法廷は、050特許のアルミ製というクレームの構成要素を、明細書に開示したがクレームしなかった鋼製の基板を包括するべく、均等論を適用しクレームの権利範囲を拡大解釈できないと判示した。その理由は、特許権者は、開示したがクレームしなかった主題を諦める必要はなく救剤措置がある。特許が発行されて2年以内であれば特許権者は権利範囲を広げる再発行特許出願が可能である。さらに、特許が発行される前に継続出願をすることも可能である。従って、明細書に開示したがクレームに文言上含まれていない特徴は公共に譲り渡したもの(dedication
to public)と理解される。
■ Symbol
Technologies v. Lemelson (Fed. Cir. 2002-01-24)
出願手続きの意図的な懈怠(衡平法による救済)
本事件の対象となったLemelsonの特許は、1954年~1956年にかけて機械視覚(machine vision)及び自動認識技術(automatic identification technologies)に関し特許出願されたものである。 Symbol and Cognex (原告)はバーコード読み取り器及び関連する製品の製造販売社であり、1988年頃からSymbolの顧客がLemelsonから警告書を受け始めた。Symbol社は特許権者であるLemelson相手に“出願手続きの懈怠 (prosecution laches)”を理由にDJアクション(衡平法の基に権利行使不可)を提起した。ネバダ地区連邦地裁は原告の懈怠の主張を認めなかったがCAFCは2:1で原告の主張を認め地裁の判決を破棄した(即ち、Lemelsonの出願手続きの懈怠は正当な理由を有しないので衡平法に鑑み権利行使不能)。
■Semiconductor Energy Lab. (SEL) vs. Samsung Electronics Co. (Fed. Cir. 2000-03-02)
非英語文献をIDSする場合にクレームとの関連性に関わる簡潔な説明文(concise explanation of relevance)を提出することが規則1.98a3で要求されている。本事件では発明者であるSECの社長が非英語文献の関連性のある重要情報をPTOを騙す意図をもって開示しなかったとして地裁で不公正行為(権利行使不可)が認定され、CAFCにおいても地裁判決が支持された。尚、判決文を読むと同氏は単に非英語文献の重要情報を開示しなかったのみならず、IDSを促す代理人を一時解雇する等、出願審査経過中に不誠実な行為が多々あったようだ(筆者)。
■Marquip, Inc. v. Fosber America, Inc., (Fed. Cir. 1999-12-06)
均等論による侵害判断時において、その均等の適用幅を検討するときの手法に関する判決である。即ち、均等侵害の対象となるクレームをベースに被疑社製品(イ号)を文言上含む仮想クレームを作成し、その仮想クレームが引例(公知技術)によって特許性があるか否かを検討する。もし仮想クレームの特許性が無いと判断されるとその仮想クレームによる均等幅は不適切であり、そのような均等幅での均等論の適用を受けないとした。この仮想クレームによる均等幅の判断に関する法理論は、1990年のCAFC判決 Wilson Sporting Goods Co v. David Geoffrey & Assoc., 904 F.2d 677, 683 (Fed. Cir. 1990)で判示された。然し、実務上この法理論の適用は困難を極める(仮想クレームの妥当性の判断+仮想クレームの特許性の判断:陪審には理解不能!)ので実用価値はかなり低い(筆者)。
■ Elkay vs Ebco (Fed. Cir. 1999-09-15)
米国出願実務において、審査官の特許許可理由(Examiner’s Reasons for Allowance)に対して出願人は応答をしない場合が多く、仮に応答したところで審査官がそれに対してさらに特許通知を発行することはない(MPEP1302.14参照)。しかし、本判決によって、審査官の許可理由に納得がいかない場合には、出願人サイドとして、何らかの反論(或は同意できないという主張)をしておくことが望ましいということが再確認された。そのような反論をしておくことによって、後の権利行使の段階でにおいて審査官の許可理由によってクレームの権利範囲を不利に解釈(被疑侵害者の反論の余地)されることの予防となると考える。
■ State Street vs Signature (Fed. Cir. 1998-07-23)
ビジネス手法に関する発明であるという理由で101条の適格性を否定するのは間違いである。即ち、ビジネス手法に関連するとしても101条で規定するプロセスというカテゴリーに入り、特許性は102条、103条、112条の基に判断されるべきであると判示した。しかし、2010年のBilski判決で始まり、極めつけは2014年のAlice判決において最高裁が101条の適格性の判断基準を混乱させた。然し最高裁は本判決の判示(ビジネス手法に関するというだけで適格性を否定するのは間違い)を否定してはいない。
■ Hilton Davis最高裁判決No. 95-728速報 (Supreme Court: March 8, 1997)
本判決によって均等論の適用に関し以下が明瞭となった:
□ 均等論を適用するうえで、侵害者の侵害行為に対する意図の有無は無関係である;
□ 均等物の判断は、クレームの構成要素ごと(element by element)に客観的に検討されるべきであり、クレーム全体として検討されるものではない;
□ 均等論を適用するタイミングは特許日ではなく侵害の起こった時である;
□特許出願審査中に追加された限定事項には、その理由が特許性と関係ないと立証できない場合には裁判所は推定的に審査経過における禁反言(file wrapper
estoppel)を適用する。