TikTokは米国市場に残れるか?
2025-01-02 by Tatsuo Yabe
TikTokを米国市場から排除する法律(PAFACA法)は2024年4月24日にバイデン大統領が署名し成立しており、施行日を2025年1月19日とした。 実に米国では1億7000万人ものTikTokユーザーがおり、それらユーザーが2025年1月19日以降はTikTokを使用できなくなる(すでにスマホにダウンロードされたTikTokのアプリが使用不能になるまでの制限が掛かるかは不明、しかし、アプリの更新は無理になるだろう)。ところがTikTok側の司法でのバトル(TikTok禁止法施行の差し止め)が継続しており、昨年の12月18日最高裁が裁量上告を認め、最高裁は2025年1月10日の口頭審理を経て、1月19日までに判決を言い渡す予定を公開した。 トランプ次期大統領の就任式が2025年1月20日であり、実にその前日までに最高裁の判決が出る予定である。
さらに、驚くことに昨年12月27日にトランプ次期大統領が最高裁に判決の言い渡しを延期することを請願する陳述書を提出した。そもそもTikTokを米国市場から排除する大統領令は第1期目のトランプ政権にから派生しており、今回トランプ氏がTikTok側に立つ理由は昨年11月の選挙でTikTokによる若年層の集票という事実がある。とはいえ、すでにバイデン政権で成立したTikTok禁止法をトランプ次期大統領が簡単に無効にすることはできない。万が一、最高裁がTikTok禁止法は合衆国憲法修正第1条に抵触するという判断をすれば話は変わる。いずれにせよ、本事案は立法府、司法、及び、行政府の3者が複雑に関係しており、今月の大統領就任式の前日までに権力相互間のCheck and Balance (抑制と均衡)を見ることになる。
背景:
そもそもの始まりは2020年に遡り、当時のトランプ大統領の要請により、米国政府は国家安全保障を脅かすという理由で中国系のSNS(ソーシャルメディア)のプラットフォームであるTikTokを禁止することを検討していると発表した。 その後、マイクロソフトがバイトダンスのTikTokを買収する交渉があったり、オラクルによる買収の話があがったがいずれも最終の契約に到達しなかった。このビジネス交渉と並行しTikTokによる司法(カリフォルニア州中央区連邦地裁及び北部地区連邦地裁、等)による救済措置(TikTok禁止の差し止め)が講じられていた。 2021年1月20日にバイデン政権となり、大統領令によりトランプ前大統領のTikTok禁止措置を撤回し商務長官にTikTokの使用が米国国家安全保障を脅かすものかを調査するように要請した。2022年6月、バイトダンスの従業員はTikTokに寄せられた個人情報にアクセス可能であることが判明した。当初懐疑的であった両党議員は、2022年の後半にはトランプ前大統領の措置が正しかったという方に傾いた。
□ 連邦議会
PAFACA法案(Protecting Americans from Foreign Adversary Controlled Applications Act) 米国に敵対する外国の制御下にあるアプリからアメリカ人を保護する法案
2024年3月13日: 下院 352名の賛成で可決 (65名の反対)
2024年4月23日: 上院 79名の賛成で可決 (18名の反対)
□ 行政府
2024年4月24日: バイデン大統領が署名しPAFACAが立法(15
U.S.C. 9901)された。
施行日:2025年1月19日(トランプ大統領の就任式の前日)
DC地区連邦控訴裁判所
TikTok and ByteDance v. Merrick B. Garland, in this official capacity as Attorney General of the USA
2024年5月7日、TikTokの米運営会社とTikTokの親会社バイトダンスは米国政府(米国司法長官Merrick Garland氏)を相手にPAFACA法が合衆国憲法修正第1条の「言論の自由」、憲法第1章、9節の私権剥奪法(bill of attainder)、及び、修正第5条の適正手続き条項に違反するとして同PAFACA法(「TikTok禁止法」)の施行差し止めを求めDC連邦地裁に提訴した。 米国司法省は、同法律は「言論の自由」ではなく、国家安全保障を念頭におくもので、中国がTikTokユーザーの繊細な情報にアクセスし不当に利益を得ることに禁止するためのものであると反論した。 2024年9月、10月に、米国司法省はバイトダンス(中国)がTikTokの親会社であることによるさらなる国家安全保障にかかわる機密情報を同DC地区控訴裁判所に提示した。
2024年12月6日、DC地区控訴裁判所はTikTokの米運営会社と中国親会社のバイトダンスの訴えを棄却した。禁止の権限があるとする司法省の主張を支持する判決を下した。 即ち、PAFACA法は修正第1条の「言論の自由」及び修正第5条の適正手続き条項に違反するものではない。米国政府の行為は、敵対する外国から米国の自由を守り、且つ、敵対国がアメリカ人の情報を収集することを制限することのみを目的としている。
TikTok v. Garland
DC地区連邦控訴審の判決を不服とし、TikTok側が最高裁に上告したところ、最高裁は2024年12月18日異例の速さで裁量上告を認めた。
https://www.scotusblog.com/case-files/cases/tiktok-inc-v-garland/
最高裁での唯一の争点は:
PAFACA法は合衆国憲法修正第1条に違反するか否か?
最高裁は以下のスケジュールで対応するよう両当事者に要請した。
Ø 当事者による冒頭陳述書(13000語以内)の提出期限:2024年12月27日
Ø 第3者による陳述書(amicus brief)の提出期限: 2024年12月27日
Ø 反論(6000語以内)の提出期限: 2025年1月3日
Ø 口頭審理:2025年1月10日
尚、最高裁は2025年1月19日までに判決を言い渡す予定。
□ その他
2024年12月27日、トランプ次期大統領は最高裁に判決を延期することを請願する陳述書(amicus brief)を提出
https://www.youtube.com/watch?v=uF-MJ5KFKK4