Symbol Technologies v. Lemelson

Decided on Jan 24, 2002 (CAFC)

Summarized by Tatsuo YABE on February 27, 2002

Revised on March 17, 2002

See more details at: CAFC 00-1583 decided on Jan 24, 2002

Background:

レメルソン医療、教育、研究財団(以下Lemelson)は約185個の権利期間の満了していない米国特許及び多くの審査係続中の特許出願を所有しており、本事件の対象となっている特許は、1954年〜1956年にかけて機械視覚(machine vision)及び自動認識技術(automatic identification technologies)に関する発明として特許出願されたものである。 Symbol and Cognex (原告)はバーコード読み取り器及び関連する製品の製造販売社である。 1988年頃から、原告の顧客がLemelsonから警告書を受け始めたので原告はLemelson特許を侵害することになった場合の責任を負うことを顧客に確約した。

Symbol社は特許権者であるLemelson相手に“出願懈怠 (prosecution laches)”を理由にDJアクションを提起した。それに対して Lemelsonはそのような法的措置の根拠がないことを主張した。

→ ネバダ地区の地裁は原告の懈怠の主張を認めなかった。 それを不服とし、原告(Cognex社)は当CAFCに控訴した。

■ CAFCでの審理の争点は以下の通りである:

「即ち、出願人が米国特許法及び規則を遵守したとはいえ、出願から権利化までの審査過程を妥当性を欠いて、且つ、理由なく遅らせたという事実を根拠とし、懈怠の公平論を適用し、特許権の行使を禁止することができるか否かである。」

Discussion:

CAFCは2:1で原告の主張を認め地裁の判決を棄却、差戻しとした。 その(2人の裁判官:Mayer氏とClevenger氏)判断の根拠には2つの最高裁判例がある:

Woodbridge判例(1923年)

この当時、特許法に基づき出願人は特許の発行を1年間延期申請することが可能であった。 しかし、特許庁のミスによって9年後に特許が発行された。 Woodbridgeはその間特許庁に特許証発行の遅れを伝えなかったばかりか、発行の前にクレームを補正し、関連技術形態を包括することを試みた。 Woodbridgeはこの補正時期になって本発明が重要なものとなったとし、この補正の正当性を主張した。 → 最高裁はこの9年に及ぶ期間内に出願人は特許庁に連絡することによっていつでも権利化を促進することが出来たのに、市場での利益が最大になるまで、意図的に特許証発行の遅れを阻止するための措置を取らなかったとした。 本件は特許の放棄というものではなく、むしろ、意図的な懈怠を理由とする特許権の没収に関するものであるとした。

Webster判例(1924年)

出願人Kane氏は1910年に特許出願をし、当該出願は1916年に権利化された。 親出願(1910年出願分)の係続中に、Kane氏はインターフェランスを提起する目的で昨今発行された他者の特許クレームをコピーし、分割出願を実施した。 その後Kane氏はインターフェランスで負けてしまい、クレーム7,8を追加し、1918年に当該分割出願が権利化され、この特許が訴訟の対象となった。これら2つのクレームは当初のインターフェランスには関連しないものであった。 最高裁は、この遅れは妥当性を欠くもので、状況から鑑みて懈怠を構成するとし、これらクレーム7,8を権利行使不可とした。 最高裁はさらに、2年間の遅れは、遅れの非妥当性の一見証明になる「遅れが非妥当であることの推定」と言及した

■ Lemelson側は、上記のような出願懈怠の抗弁は以下の3つの理由によって無効であると反論した。

(1) Websterの規準はインターフェランスで生じるクレームに限定される;

(2) 1952年の米国特許法及び法案起草の経過書類を参酌すると出願懈怠を排除している;

(3) CAFCの2つの判例(非公開分: non-precedential opinions)では出願懈怠の抗弁を拒絶している。

■ Lemelsonの主張に対するCAFCの反論:(By Judge Mayer and Judge Clevenger)

Lemelsonの主張「Websterの規準はインターフェランスで生じるクレームに限定される」は他の最高裁判例 Crown Cork & Seal Co v. Ferdinand Gutmann Co.によって否定される。

Webster事件で争点となったクレームはインターフェランスに関係するものではない。 さらに、Webster事件がインターフェランスに限定されることを示唆するものはない。

Lemelsonは1952年の特許法の第120条(継続出願)及び第121条(分割出願)の規定を遵守していることとその規定による特許出願の効果を主張し、これら条文を遵守することで、連邦議会は出願懈怠の抗弁を廃止したと主張した。 しかし、法案起草経過及び1952年米国特許法の起草者のコメントのどこにも、そのような意図(出願懈怠の抗弁を廃止する)は存在していない。 さらに、連邦議会は出願懈怠の抗弁を積極的に明言する意図を示唆する根拠も存在しない。 しかし、1952年の条文を作成するための起草経過及びコメントを慎重に解釈すると、282条 (Presumption of validity; defenses) の第2パラグラフにそのような抗弁が維持されていることが理解できる。

Lemelsonの2つの非公開の判例に対する反論に対しては、本法廷においても判例を考慮にいれずに裁判を行うことは米国の司法において許されないことを認識している。 しかし裁判の数が増大するなかで判例としての重要性を持たない事件或いは明白に解決された争点に関する繰り返しになる判例を非公開にできるということが1915年の司法会議で決定された。 その後、1972年の司法会議においても、非公開の判決を許容することが決まった。 非公開 (non-precedential)判決とはいうものの、それは司法に自由に法律を作成することを許容しているのではなく、司法に、当該裁判事件が法律全体に対して十分な貢献をするか否かの判断を許可したことを意味する。  即ち、非公開判決は後の審理部或いは裁判所がそれに拘束されるべきか否かを判断することを許容した。 勿論、審理部及び裁判所は支配的な先例(判例)に従うことを義務とするのは言うまでもない。 明瞭に解決された争点に対し、繰り返し審理をし、その審理された意見を発行することによって、裁判所は法律の正確性、安定性、予想可能性を損なうことになる。 従って、我々の理解としては、一度理想的な原則が成立すると、非公開判決を裁判に適用するか否かは後の裁判所の裁量で行うこととし、それを適用するにしても当事者にそれら非公開判決を説明することとし、裁判意見に加えないことである。 従って、我々は今回Lemelsonが引用している非公開判例を検討しないこととする。 

Conclusion: 判決

 破棄、差戻し


■ Judge Newmanの反対意見:

米国特許法及び施行規則を遵守した特許権者が、出願中に法律及び規則で規定されている以上の行為を実行するべきであったという訴えに対して弁護が要求されるという法的理由は存在しない。 1952年の特許法の制定にあたり、連邦議会において十分に継続出願の規則が検討された。 しかるに、1952年特許法120条、121条で規定される継続出願は、当該条文及び規則を遵守するもに対して、しかしながら、権利の没収の危険性を警告するものではない。  地裁(下級審)において、連邦議会が制定しなかった公平性に対して、裁判所が介入するべきではないとしたのは正しい。 しかしながら、私の同輩(Mayer & Clevenger)及びこの裁判所は、「出願懈怠」という新規の公平性の法的措置を創造するべく介入の路を選択した。  このように司法が特許に対する新たな防御の抗弁を創造するということは、「法的条項が存在すると、公平性の不利益を受けること無く、それを遵守できる」という規則に真っ向から対立することになる。

本日まで維持され有効であった規則は、継続出願に関する法的要求事項が守られるときには、法的根拠以外の理由で特許性を攻撃されることはないということである。  しかし本裁判所の判決によって、法的要件をすべて満たして発行された特許に対してさらなる不確実さを与えることになる。 本裁判所は、この「出願懈怠」をLemelsonに対してのみ言及しているのではあるが、この判決の既判力は本件に止まらず法的に許可された特許に対しても影響を及ぼすであろう。

Woodbridge事件において、当時法的に認められた特許発行を1年間遅滞できるという権利をWoodbridgeは9年も経過してしまったのであって、法で認められた1年間という延長可能な権利期間を喪失したにすぎない。

Webster事件において、分割出願を親出願が発行された後に、2年以内にしなければならないとか、クレームを当該2年以内に審査官に提示しなければならないという一般的な要求事項が判事されたのではない。

公平性の外観からも、本裁判所が法を修正し、連邦議会が拒絶した立場をとるのは誤りである。 特許法120条及び121条で規定された継続出願に関する法律は、出願審査期間の短長に拘わらず出願全てに同様に適用されるものである。

Bott及びRicohは非公開判例であるが、当法廷において、これら判例を議論することが不承不承許可された。 当法廷の我同輩(Judge Mayer and Judge Clevenger)は、それら非公開判例を認識することを拒絶した。 私は裁判所が非公開の判決を出すことが許容されていること及びそれを実施する権利を有する必要があることに完全に同意しているが、Lemelsonが提示した2つの非公開判例においては継続出願審査の多様性が記載されている。 他の判例においても、裁判所は法に忠実であるべきことと、さらなる拘束を加えることは法改正を有するという立場を支持している。 Ford Motor Co. v. Lemelson, Advanced Cardiovascular Sys. v. Medtronic Inc, Price v. Code-Alarm Inc.,

当法廷での争点は、出願懈怠が侵害に対する抗弁になるか否かではなく、法的に認められた行為であるに拘わらず、その行為が後に特許を永久に権利行使不能にしうるかという点である。 発明者は公共が出来るだけ早急に発明を自由実施できるように品行方正でなければならないという義務を負わない。 本法廷において表面上の公平さの基に、法律を改定し、連邦議会が拒絶した立場を採用するということは妥当ではない。