合衆国最高裁判決 Samsung
v. Apple Inc. 2016年12月6日 デザイン特許侵害の損害賠償額の算定(289条) Summarized
by Tatsuo YABE – 2017-02-28 |
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最高裁はCAFCの判決を破棄した。 最高裁によると、製品(スマートフォン)が分離されずに一般消費者に販売されるとしても、デザイン特許侵害の損害賠償額の算定(289条)の基礎となるのはデザイン特許の保護範囲(article
of manufacture)である。即ち、デザイン特許の保護範囲に相当するarticle
of manufacture(289条)を特定すること、そしてarticle
of manufactureに起因する侵害者の利益を算出する。
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Design特許権者:Apple
被疑侵害者: Samsung
問題となったDesign特許:
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デザイン特許 |
特徴 |
代表図 |
D593,087 |
長方形で、角部Rで縁部を盛上げ形状としたフロント面。
R = Rounded |
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D618,677 |
黒色長方形で角部Rとしたフロント面。 R = Rounded |
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D604,305 |
黒色スクリーンに配列された16個のカラフルなアイコン。 |
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地裁で、SamsungのスマートフォンはAppleの上記3件のデザイン特許を侵害しているとし、Samsungに399Millionドル(約440億円:\110/$)の損害賠償額の支払いを命じた。損害賠償額の算定に際しSamsungのスマートフォン(侵害品)の総売り上げから生じる総利益を基礎とした。Samsungは、侵害の対象”article
of manufacture”となるのはスマートフォン全体ではなく、その前面、或いは、スクリーンであり、損害賠償の対象を限定するべきであると主張したが、Samsungのスマートフォンはその部品を本体と分離して販売されることはないという理由でCAFCはSamsungの主張を否定した。依って、CAFCは地裁の判決(侵害と損害賠償額)を支持した。
35 U.S. Code § 289
Additional
remedy for infringement of design patent
Whoever during the term of a patent for a
design, without license of the owner, (1) applies the patented design, or any
colorable imitation thereof, to any
article of manufacture for the purpose of sale, or (2) sells or exposes for sale any article of manufacture
to which such design or colorable imitation has been applied shall be liable
to the owner to the extent of his total profit, but not less than $250,
recoverable in any United States district court having jurisdiction of the
parties.
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最高裁はCAFC判決を破棄差し戻しとした。
最高裁は1952年の米国特許法で立法された289条の起源と背景を説明した。遡ること、1885年、Dobson
v. Hartfold Carpet事件において、最高裁は下級審の判決「侵害者のカーペット全体の売り上げから生じる総利益を損害賠償額算定の基礎とした」を破棄し、損害賠償の算定において特許権者にデザイン特許を使用することで生じる侵害者の利益を証明する必要性を判示した。Dobson判決に鑑み、1887年、連邦議会はデザイン特許侵害に対する損害賠償額に関する条文(デザイン特許が適用される物品”article”或いはその複数の物品”articles”を製造或いは販売することで生じた利益・・・)を成立させた。そして1952年(現行特許法の基礎)に289条の条文を制定した。
上記したように、289条に基づくデザイン特許の侵害訴訟における損害賠償額の算定の基礎となる”article
of manufacture(製造された物品)”は消費者に販売される最終製品である必要はなく、個々の部品であっても良い。289条の”article
of manufacture”をこのように解釈すると171条(a)のデザイン特許の保護対象として規定された”article
of manufacture”と整合性がとれる。さらに、この解釈はUSPTO及び裁判所において採用されている。 また、この解釈は米国特許法101条(特許保護適格性)で規定された4つのカテゴリーの”manufacture”に対する裁判所の理解とも整合性がある。
上記理由で、CAFCの理解(一般消費者に分離して販売されないのでスマートフォンという最終製品である)は289条の”article
of manufacture”という文言に鑑み正しくない。当事者(Samsung:Apple)の何れもスマートフォンのどの箇所が各デザイン特許のarticle
of manufactureに該当するのかに対して意見を述べていないので、本法廷(最高裁)でarticle
of manufactureがスマートフォン全体を対象とするのか、スマートフォンの特定の部品を対象とするのかを判断できない。
依って、下級審(CAFC)に差し戻す。
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以下参考:REFERENCES
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35 U.S. Code § 289
- Additional remedy for infringement of design patent
Whoever
during the term of a patent for a design, without license of the owner,
(1)
applies the patented design, or any colorable imitation thereof, to any
article of manufacture for the purpose of sale, or
(2)
sells or exposes for sale any article of manufacture to which such design
or colorable imitation has been applied shall be liable to the owner to the
extent of his total profit, but not less than $250, recoverable in any United
States district court having jurisdiction of the parties.
Nothing
in this section shall prevent, lessen, or impeach any other remedy which an
owner of an infringed patent has under the provisions of this title, but he
shall not twice recover the profit made from the infringement.
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D618677
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D593087
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D604305