Semiconductor Energy Lab. (SEL)

vs. 

Samsung Electronics Co., Nos. 98-1377, 99-1103

 

判決:20000302

Virginia州の東部地裁からの控訴

 

SELのUSP636特許出願時にSEL社長兼発明者であるYamazaki博士がIDSとして提出した日本公開特許出願公報56−135968(キャノン引例)に対するConcise Explanation of relevancy (特許性に関わる簡潔な説明文:37CFR1.98a3で要求されている)においてUSP636特許クレームの特許性にとって最も重要な部分を記載していなかったことで、地裁においてYamazaki博士は意図的に最も関連する部分を英訳しなかったとして、この行為をFraudと判断された。 当法廷において地裁の判決が維持され、Yamazaki博士のIDS提出行為はFraudであるとされた。 従って、本事件の速報のみを聞いた米国特許出願実務者は今後非英語先行技術をIDS提出する時で、特に「特許性に関わる簡潔な説明文」を作成するときに非常に神経をすり減らすことになると思われます。 要は、本判決速報のみでは、最重要部分を英訳し忘れれば、その行為をFraudとされるかもしれないと早とちりする可能性があるからです。 

 

しかし、本事件の判決文を読んでいくとYamazaki博士のIDS提出に関わる一連の行為には、“単に特許性に関し最重要な箇所を英訳しなかった”という事実ではなくて、それを意図的に(特許庁を欺き、USP636特許の権利化を確保するため)実行したと相手側に主張されても仕方が無いであろうと思える数項目の“相応しくない行為”を実行していたと考えられます。 従って、今回、Yamazaki博士が実施した非公正な行為(或は後に被疑侵害者側に好都合に利用される材料)を認識し、そのような行為の何れが日々の実務に当て嵌まるのかを冷静に検討する必要があると考えます。

 

そのような行為を本判決文からピックアップすると以下の通りです:

 

    (1)Yamazaki博士はSELの米国特許代理人であるFerguson氏が特許性に重要な先行技術文献を特許庁に提出しようとしたという理由でFerguson氏の代理権を一時的に破棄した。

    (2)636特許の親出願審査中においてNakagawa引例の内容を特許庁に対して誤報(不実表示)したことを説明できなかった。

    (3)Yamazaki博士は、「Tsai博士による先行技術文献(636特許にとって関連性のあるIDS資料)の重要性を理解していない」と言いながらも、Tsai博士の功績を「素晴らしい」と絶賛した挙句、その論文をTsai博士より受け取るとともに、ジャーナルに掲載したYamazaki博士の論文で論じたという事実が後に暴露された。

    (4)Yamazaki博士はTsai文献及びその他の関連出願をIDSとして特許庁に提出したものの、それはSELのライセンシーであるIBMの要請があったので提出した。

    (5)636特許クレームに関連性の深いCanon引例の最重要関連箇所「不純物を避けることに対する警告」を簡潔な説明文で開示しなかった。

 

米国出願実務者のIDS提出時において上記(5)の項目に該当する行為を犯してしまうことはあるでしょう。 即ち、非英語先行技術文献をIDSするときに要求される簡潔な説明文 (37CFR1.98a3)で出願クレームの特許性に対し最も重要な特徴を開示しなかったということはあるでしょう。しかし、その重要情報を開示しなかったという事実だけではFraudを立証出来ません、即ち、特許庁を欺く意図(deceitful intent)を立証することが必要となります。 欺く意図を立証するのに好都合な材料、即ち、上記(1)〜(4)の項目に関して考察すると、通常の努力を支払えばこれら(1)〜(4)の項目に該当する行為は避けることが可能ではないでしょうか? 従って、実務者は既存のIDS提出手続きを再度見直し、上記しました欺く意図を立証する材料になりそうな行為(仮にそのような行為があるとするならば)を是正することは重要であると思われますが、非英語先行技術を今後は全英訳するとかの非現実的な判断を下さないことが肝要ではないかと考えます。 

(March 27,2000 commented by T.YABE)

 

 

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(I) 要約

SELのUSP636特許出願時にSEL社長であるYamazaki博士がIDSとして提出したキャノン引例に対するConcise Explanation of relevancy (特許性に関わる簡潔な説明文:37CFR1.98a3で要求されている)においてUSP636特許クレームの特許性にとって最重要箇所を説明していなかったことと、それを意図的に特許庁を欺く目的で実行したとして、地裁においてYamazaki博士の行為はFraudと判断された (SEL v. SAMSUNG, 4F. Supp. 2d 477 (E.D.Va. 1998); SEL v. Samsung, 24F. Supp. 2d 537 (E.D. Va. 1998)。当法廷によって地裁の判決が維持された。

 

詳細はCAFC判決の全文を参照ください: 

http://www.ll.georgetown.edu/Fed-Ct/Circuit/fed/opinions/98-1377.html

 

(II) SELの米国特許:

SEL社の米国特許第5,543,636

米国出願日:1995年06月07日

1995年04月20日に出願された米国出願番号425455(1995年04月20日出願)の分割出願であり,(中略)1985年05月20日に放棄された米国出願番号735697からの継続出願である。

発明者:Yamazaki Shunpei (Yamazaki博士)

優先権主張: JP59-100250; JP59-100251; JP59-100252  1994年05月18日

クレーム1:

An insulated-gate field effect transistor comprising:

    a non-single crystalline semiconductor layer doped with a hydrogen or halogen and having an intrinsic conductivity type;

    a channel region formed in said semiconductor layer, wherein a concentration of at least one of oxygen, carbon and nitrogen contained in said semiconductor layer is not higher than 5 times 10 sup. atoms/cm.sup.3;

    source and drain regions forming respective junctions with said channel region whereby charge carries move through said channel region between said source and drain regions in a path substantially parallel to said substrate;

    a gate insulator comprising silicon nitride and directly contracting said channel region; and 

    a gate electrode contacting said gate insulator;

wherein said channel region is interposed between the gate insulator and another insulator.

 

 

判決文抄訳:

 

SELはセミコンダクターの研究開発を専門とする日本の会社である。SELは1980年から世界に5000以上もの特許出願を実施し、そのうち約1500件の米国及び外国特許を取得した。 山崎シュンペイ博士は物理学者であるとともに、SELの社長、有数の株主、であると共に、米国636特許を含むSEL特許の殆どに対する共同発明者或は発明者である。

 

636特許は、IGFET ( Insulated Gate Field Effect Transistor) の一種である単一の結晶状シリコンの薄膜トランジスタ(TFT)をクレームしており、TFTは活性型メートリックス表示装置の画素をON-OFF切替するのに使用される。

 

636特許は1995年06月07日に出願された,1996年08月06日に権利化された。 SELは636特許の遡及可能な優先日が1984年05月18日であると主張している。 SELの米国特許弁護士であるFerguson氏は、氏が重要先行技術を米国特許庁に提出しようとしたことを理由に代理権を撤回された短期間を除いて636特許の出願時及びその基礎になる過去の出願の業務に携わった。

 

636特許は以前の米国特許施行規則第60条に基づく分割出願であるので、それ自身のIDSを有しており、そのIDSは15ページであり1995年11月15日に提出された。 当該IDSは特許庁の定型書類PTO−1499において90にも及ぶ先行技術をリストしており、それら全てに対して審査官はイニシャルを追記した(検討を意味するチャックを入れました)。 これら先行技術には日本特許出願公開公報第56−135968号(以下キャノン引例と称する)を含んでおり、キャノン引例に対して、

 

        (1)その日本語の公報全文29ページ、

        (2)特許性に関する簡潔な説明文 (concise explanation of relevance)、及び、

        (3)本件とは関連のない過去の出願で使用された1ページの英訳

 

を提出した。

 

ここで上記(2)の簡潔な説明文においてキャノン引例は薄膜型トランジスタのゲート絶縁層に窒化シリコンを使用することを開示していると簡潔に説明した。 上記(3)の翻訳文においてはキャノン引例の4つのセクションを網羅しており、TFTの構造、多孔性シリコンにより構成される半導体層、窒化シリコンでコーティングされたゲート電極、酸化シリコンを窒化シリコンに置換することの観察結果を記載している。 SELはそれ以外にも3つの引例を提出した:Tsai引例("Amorphous Si Prepared in a UHV Plama Deposition Systemという題名の1983年の記事);特開平第59−35423号(423出願公報);と特開平第59−35488号(488出願公報)である。 これら3つの引例の何れにも636特許でクレームしたレベルより不純物のレベルを下げることが開示されている。

 

1996年10月10日にSELはSamsungの活性型メートリックス表示及びそのような表示部を備えたコンピューターがSELの636特許、米国特許第5,521,400号(400特許)、及び、米国特許第5,349,204号(204特許)を侵害したとしてバージニア州東地区の地裁に裁判を申し立てた。 Samsungは侵害を否定すると共に、当該特許の実施可能要件欠落、自明、ベストモード開示不備、不正行為を理由に防御を企てた。 そらにSamsungはSELがRICO及び不正競争違反であると反論した。

 

SELはSamsungの不正行為防御、RICO、独禁法、不正競争反訴に対して略式判決を申請した。 地裁はRICO及び独禁法の反訴に対して申請を受理したが、不正行為及び不正競争反訴に対しては認めなかった。

 

7日間に及ぶ非陪審審理において地裁は2つの理由を根拠とし不正行為を認定し、636特許は権利行使不可とした。第1の理由は、SELの提出した、キャノン引例に関わる簡潔な説明文及び英訳文1ページは正確であるが、(読者に)誤解を与えるほどに不充分であり、SELはキャノン引例を特許庁に対して意図的に隠そうとしたと判断した。 キャノン引例に対する簡潔な説明文において、一つの例として、窒化シリコンゲートのみを記載し、キャノン引例が“不純物を回避することを警告している”ことを記載するのを怠った。 第2番目の理由としては、SELはTsai引例がTFTというより、むしろsolar cellsに関するものであると特許庁に主張しており、地裁は、この主張はTsai引例が重要でないと審査官に思わせるためにSELが意図的に行ったと判断した。

 

地裁は以下に示す複数の事実に基づきSELの欺く意図を認定した:

            地裁はYamazaki博士が、米国特許第5,315,132号(現在問題となっている636特許の関連出願)の審査中に、Nakagawa引例に開示されている不純物のレベルを不実表示した(誤って伝えた)ことに対し、十分に納得のいく説明をできなかったことを指摘した。

            さらに、地裁はYamazaki博士がTsai引例の重要性を認識していなかったという主張を次の理由によって信頼性がないと判断した。 即ち、Yamazaki博士はTsai博士の業績に関するスピーチを「大変見事である」と絶賛しており、1983年10月には、その文献をTsai博士より入手しており、さらには、1984年の非結晶固体 (Non-crystalline Solids)というジャーナルにおいてTsai氏の文献を引用しているからである。

            さらに、Yamazaki博士の2つの特許出願(423出願,488出願)において、ソーラーセルでの不純物が低レベルであることによる優優位性はTFTにも適用されると明瞭に説明している。

            さらに、Yamazaki博士は、Tsai引例、423出願、及び、488出願を636特許及び455出願審査中にIDSとして提出したが、地裁の認定した事実によると、ライセンシーたるIBMがその必要性を明白に指示してからYamazaki博士は提出した。

        上記事実に基づき、地裁は、SELは精巧、巧妙、且つ、継続的に特許庁からボールを隠そうと試み、これらの行為は出願人に要求される誠実で、且つ、正直であることに対する義務に鑑みて明白に違反する行為であると判断した。

 

不正行為に関して:

不正行為は、欺く意図を伴う以下の行為を含む:

    重要事実を誤って伝えた場合;

    重要情報を開示しなかった場合;或は

    間違った重要情報を提出する行為。

 

    被疑侵害者は、その者が特許侵害訴訟での被告或はDJアクションにおける原告であることに関わり無く、明瞭で、且つ、説得性のある証拠に基づき情報が重要であったことと行為が欺く意図を持って実行されたことを証明しなければならない。

 

当法廷では、隠された情報或は誤報された事柄が重要性の閾値レベルであるか否か、さらには、出願人の行動が、欺く意図を証明する閾値レベルを満たしていたかを判断する。 (中略) 地裁で判断された不正行為の判断は、事実認定を明白に間違ったか、或は、関連法の適用を誤ったか、或は、関連法の内容を誤解したときにおいてのみ、地裁の判決を差し戻すこととする。

(後略)

 

    A 重要性

    37CFR1.56(1995年) 規則56条において“特許性に対する重要な情報という意味が規定されている:

 

37 CFR 1.56(b) Under this section, information is material to patentability when it is not cumulative to information already of record or being made of record or being made of record in the application, and

    (1) It establishes, by itself or in combination with other information, a prima facie case of unpatentability of a claim; or

    (2) It refutes, or is inconsistent with, a position the applicant takes in:

                    (i) Opposing an argument of unpatentability relied on by the Office, or

                    (ii) Asserting an argument of patentability. 

 

隠された情報は、それが(クレームに)関連する特徴の組合せをより完全に開示している場合には、それら関連する特徴の全てが他の引例(複数)に開示された状態で審査官の掌中にあったとしても、非常に重要なものとなりうる。 Molins, 48 F.3d at 1180, 33 USPQ2d at 1828.  (中略)  当法廷は、地裁がキャノン引例が重要であるとした判断に明白な間違いはないと判断する。 地裁はキャノン引例の重要性に関して何通りかの理由を示しており、キャノン引例が重複する(情報)ものではなかったとしており、キャノン引例の英訳されていない箇所には、審査官に提出された他の情報のいずれよりも636特許のクレーム要素のより完全な組合せが開示されている。(中略)

 

第2に地裁はキャノン引例は他の引例、たとえば、Tsai引例、或はYamazaki博士の423出願、488出願のいずれかと組合せることによって636特許を一見したところ特許不可にするという事実を認定した。 SamsungのFonash博士は、キャノン引例の全訳は、636特許に開示された装置を作成するための良い設計図となっていたであろうと説明している。 従って、Tsai引例と組みわせることによってキャノン引例は636特許クレームを自明にしていたであろうと判断される。

 

    B 意図

   意図は直接的な証拠によって証明する必要はなく、それはむしろ行為及びその行為を行う者が意図していたと推定されるべき、自然派生する結果を示すことによって証明される。 Molins, 48 F.3d at 1180, 33 USPQ2d at 1828-29  一般的に言って、意図は出願人の行動を覆う環境及び事実から推論されなければならない。 Id. at 1180-81, 33 USPQ2d at 1829  (中略) 省略されたり誤報された情報が重要であればあるほど、不正行為を成立させるための意図の度合いが低くても良い。 Id. at 1256, 43 USPQ2d at 1668    (中略)

 

SELはMPEP609を引用し、出願人は、提出する情報とクレームとの違いに対する議論を提示する必要がないと主張し、SELが米国特許庁の規則を法律的に遵守しているということは審査官を欺く意図があったという推定を否定するものであると主張した。 さらなる誠実さの根拠として、SELは、キャノン引例をライセンシーであるIBMなどに促されたからではなく、自発的に提出したということを主張した。

 

地裁では、Yamazaki博士とSELの他の証人は信頼性がないとした。 さらに、地裁は日本語を母国語とするYamazaki博士は物理学者であり、キャノン引例の重要性を理解していると判断した。 さらに、Yamazaki博士は、キャノン引例のより完成された翻訳を提出すると636特許が発行される可能性を低下させることを知っていたと判断した。 以上によって地裁はYamazaki博士はキャノン引例のどの箇所を翻訳するべきかを意図的に判断したと判断した。

 

SELは、SELの不当ではなかった行為を繰り返し力説するが、それら行為を適切に実行したことを証明するだけでは、欺く意図の事実認定を撤回することはできない。 むしろSELは、キャノン引例のより完成された翻訳或は簡潔な説明をすることができなかったことに関して釈明しなければならない

 

SELの行為が施行規則第98条及びMPEP609A(3)に準じているということは余り重要な意味を持たない。規則第98条は,出願人に外国語文献に対する既存の翻訳を提出することを要求しているが、この規則第98条は不正行為の申し立てに対する安全対策ではない。 地裁が説明するように、規則第98条は、外国語文献に要求される翻訳文提出の最低限度を規定するのみであって、先行技術文献の重要部分を隠匿することに対する免責事由或はライセンス契約たるものではない。 (中略)

 

同様に、MPEP609A(3)は、「簡潔な説明文は、特定の図或はパラグラフがクレームされた発明に関連することを示しても良く、クレームされた発明と情報の要素との類似点を指摘する短文であっても良い」と記載しているにすぎない。 即ち、MPEP609A(3)は、簡潔な説明をどのような記載にするかを出願人の裁量に任せるという許容度を示すのみであって、それは出願人が文献の重要な教示内容を意図的に省くことを正当化するものではない。 もしSELの主張するように、「簡潔な説明文」に対する要求がそれが正確でありさえすれば、出願人が知りうる情報を選択することを許容していると理解するならば、関連する重要要素の一つを開示しない(それ以外の要素を正確に説明する)ことによって、審査官を容易に誤解させることができるであろう。 その結果、本来であればその先行技術によって権利化できないクレームをその先行技術によっては拒絶できないという印象を与えることになるであろう。

 

    C 開示ミス

最後に、SELは翻訳されていないキャノン引例の全てを特許庁に提出したので審査官にこの先行技術を隠したというのは誤りであると言うことを力説している。 See Scripps Clinic & Research Found. v. Genentech, Inc., 927 F.2d 1565, 1582, 18 USPQ 2d 1001, 1015 (Fed. Cir. 1991) 「先行技術が審査官に提出されたということは、.....その情報を審査官から隠したとは言えない」 (中略)

 

SELは、正確に仕事を遂行すると推定されている審査官はキャノン引例を日本語で読み、それを理解したと推定されなければならないと主張している。 SELは、さらに審査官は翻訳業務に従事するスタッフを抱えているので、審査中に翻訳を依頼することができたことを強調している。 Gambro Lundia AB v. Baxter Healthcare Corp., 110 F.3d 1573, 1582, 42 USPQ2d 1378, 1386 (Fed. Cir. 1997)

 

キャノン引例の日本語文全体29ページ、簡潔な説明文(重要度の低い部分に関する)、と既存の翻訳文1ページ(重要度の低い部分を開示している)を提出することによってSELは審査官に対して、本先行技術を翻訳する必要或はさらに検討する必要はないという印象を与えた。 即ち、SELは意図的に審査官がキャノン引例を実体よりも非重要であると判断するように導き、特許庁に対しキャノン引例を積極的に隠蔽した

 

SELは、審査官を誤解させる1ページの英訳及び簡潔な説明文を審査官に読ませた上で、英訳されていないキャノン引例を審査官が読み、その内容の全てを理解しなければならないと主張しているが、その主張は馬鹿げている。 審査官が仕事を正確に行ったと推定されるのは事実であるが、審査官が特別の理由のない限り、日本語のような外国語を理解しているか、或は、外国語文献の高額な全訳を依頼すると推定することは法律のどこにも規定されていない。 むしろ、MPEP609C(2)においては審査官の外国語文献の理解は出願人の提出する簡潔な説明により収集される内容に通常は限定されると説明している

  

即ち、審査官のイニシャルマークが付いているので、審査官がキャノン引例を検討したと推定することを我々に要求するものの、この推定は審査官が短い英訳文と簡潔な説明文を検討したことを推定するに留まる。 

 

SELが特許庁は全ての外国先行技術の英訳を出願人に負わせるべきではないと強調していることは重要なポイントを見失っている。 本事件における“義務”とは、誠実であることに対する“義務”であって、翻訳の義務ではない。 誠実であることの義務は出願人が外国語先行技術の全てを英訳することを要求しているのではなく、出願人が周知する先行技術の関連開示内容を審査官に誤解させるような部分翻訳或は簡潔な説明文を提出するのを控えることを要求するものである

 

上記理由により、当法廷は地裁の重要性及び意図に対する事実認定に明白な誤りを見出せない。 審査官を誤解させるキャノン引例の部分英訳及び狭義で不充分な簡潔な説明文を提出したという不正行為を理由に636特許は権利行使不可とした地裁の判決を支持する。

  

※ 判決文は、ジョージタウン大学のホームページより:

    http://www.ll.georgetown.edu/Fed-Ct/Circuit/fed/opinions/98-1377.html

 

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