2010年以降の101条関連最高裁判決とUSPTOの Memorandumで紹介されたCAFC判決、及び、 PTOのActions(審査ガイダンス及びMemorandum) | Summarized by Tatsuo YABE – 初稿 2018-10-01 |
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2018年2月に実務経験豊富なIancu氏がUSPTOの長官に就任した。Iancu氏は就任後、前長官Lee氏時代には半ば諦めた「101条審査の明瞭化」という課題に早速取り組んだ。4月〜6月(2018年)に掛けて3件の審査メモランダムを出し、個々のメモランダムにおいて本年1月以降のCAFCの判決で101条判断に好適な判決
(Finjan, Core Wireless, Berkheim, Exergent, Vanda)を取り上げ、その判示の要(コア)の部分を審査官に通知した。Iancu氏就任後101条審査を出願人に好適結果を齎す方向への努力が顕著である。さらには9月24日にはIPOの集会でスピーチをし、特にAliceパート1の扱いに関して明瞭化するべく審査ガイダンスを準備中であると述べた。
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Since
inauguration of PTO’s new director (Andrei Iancu), several PTO’s memorandums
were given to the examiners in order to maintain uniformity in the quality of
eligibility examination. The trend, now, for the eligibility examination is bit
more Applicant friendly. Let us
review recent 101 friendly case laws (Finjan, Core Wireless, Berkheim,
Exergent, Vanda) and relevant Examination memorandums to see how
it impacts on the future 101 examination.
A:
最近の101条関連CAFC判決(適格性肯定):
[A1]
FINJAN v. Blue Coat System Fed.
Cir. 2018-01-10
[A2]
Core Wireless v. LG Electronics - Fed. Cir. 2018-01-25
[A3]
Berkheimer v. HP Inc. –
Fed. Cir. 2018-02-08
[A4]
Exergent Corp. v. Kaz USA - Fed. Cir. 2018-03-08
[A5]
Vanda Pharma v. West Ward Pharma - Fed. Cir. 2018-04-13
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B:
最近のPTOのメモランダム:
[B1]
USPTO’s
Memorandum –
2018-04-02
[B2]
USPTO’s
Memorandum –
2018-04-19
[B3]
USPTO’s
Memorandum –
2018-06-07
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C:
Remarks by Iancu at IPO Association – 2018-09-24
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Supreme Court Decisions |
Fed
Cir Decisions |
PTO |
[S1] Bilski (2010) |
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[S2] Mayo (2012) |
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[S3] Myriad (2013) |
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Alice v. CLS (en banc) |
Exam
Guidance (2014/3) |
[S4] Alice v. CLS (2014) |
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Interim
Exam Guidance (2014/12) |
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Guidance
Updated (2015/7) |
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2016/5/4:
Memorandum |
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Enfish v Microsoft: 2016-05-12 TLI v Automotive: 2016-05-17 |
2016/5/19:
Memorandum in view of Enfish and TLI |
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Bascom v AT&T: 2016-06-27 Sequenom v Ariosa: 2016-06-27 |
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Rapid Litigation v CellsDirect:
2016-07-05 |
2016/7/14:
Memorandum in view of Bascom and Sequenom |
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Electric Power 2016-08-01 |
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2016/10/17:
Requested Public Comments; 2016-11-14 & 2016-12/5: Holding Roundtable
discussions. |
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2017-7:
Published Report summarizing public comments and the roundtable
discussions. |
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2018-01-04:
Published “Eligibility Quick Reference Table” |
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[A1]
FINJAN v. BLUE COAT 2018-01-10 |
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[A2]
CORE Wireless v. LG Elect. 2018-01-25 |
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[A3]
Berkheimer v. HP Inc 2018-02-08 [A4]
Exergent Corp. v. Kaz 2018-03-08 |
Andrei
Iancu, 2018-02-08 New
Director of USPTO: |
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[B1]
2018-04-02:
Memorandum in view of FINJAN and Core Wireless |
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2018-04-11:
Remarks by Iancu @Chamber of Commerce Patent Policy Conference PTO
needs to clarify two uncertainties; [1] IPR; and [2] Patent Eligibility |
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[B2]
2018-04-19:
Memorandum in view of Berkheimer |
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[A5]
Vanda Pharma. v. West-Ward Pharma 2018-04-13 |
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2018-04-27:
Day after President Trump’s statement (increasing “reliability and
enforceability of patents”), a joint statement with Wilbur Ross
(Secretary of Commerce), Iancu says “…our IP rights must be “strong,
reliable and predictable”. |
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[B3]
2018-06-07:
Memorandum in view of Vanda Pharma |
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[C]
2018-09-24:
Speech by Director Iancu at IPO Association Meeting in Chicago; Alice
Part 2 Analysis should be broken down into: [a]
Whether claim recites one of Judicial Exceptions (law of nature, natural
phenomenon, abstract idea)? If
Yes, in the above [a], then [b]
Whether claim integrates the Judicial Exception into a practical
application? |
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2018年以降のCAFC判決
(USPTOのMemorandumで紹介されたもの)
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[A1]
FINJAN v. Blue Coat System - Fed. Cir. 2018-01-10
FINJAN社の特許:USP
6,154,844
844特許は、プログラムをダウンロードするときの安全性を確保するもので、従来のウイルスチェックの仕方(コードマッチングによって周知のウイルスを検出する)とは識別され、潜在的に問題を起こすと予想されるウイルスを挙動ベースのウイルスチェック(behavior-based
virus scan)によって検出し、その検出結果を安全性に関するプロフィールという形式でユーザーに知らせるという手法である。
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安全性に関わるプロフィール(Security
Profile)は、挙動に基づくウイルスチェック(behavior-based
virus scan)によって生成される潜在的に問題となる動作に関わる情報を含む。ここで言う「動作」とは従来のコードマッチング型のウイルスチェック(過去に特定されたウイルスに存在するコードを認識する)とは明瞭に識別される。
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■ 101条適格性が認められた理由(Alice第1ステップをクリア:Abstractアイデアではない)
844特許の発明では従来のウイルスチェックの仕方(コードマッチングによって周知のウイルスを検出する)とは識別され、潜在的に問題を起こすと予想されるウイルスを挙動ベースのウイルスチェック(behavior-based
virus scan)によって検出し、その検出結果を安全性に関するプロフィールという形式でユーザーに知らせるという手法である。依って、644特許に開示された発明は先行技術と比べて大いなる飛躍(進歩)があるという理由で101条を満たすと判断された。
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844特許のクレーム1:A
method comprising:
receiving by an inspector a Downloadable;
generating by the inspector a first Downloadable security
profile that identifies suspicious code in the received
Downloadable; and
linking by the inspector the first Downloadable security profile
to the Downloadable before a web server makes the Downloadable available
to web clients.
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CAFCはさらに以下のように述べている。
挙動をベースにウイルスを検出するというアプローチに関してFINJANは先駆者である。従来のコードマッチングのシステムでは周知のウイルスしか検出できない。挙動ベースの検出ではダウンロードしようとするプログラムのコードを分析し、潜在的な危険性或いは望ましくない動作を起こさないかを検出可能。安全性に対するプロフィールは、挙動をベースとするウイルス検出によって可能となる疑わしいコードに関わる詳細な情報を明らかにし、周知のウイルスのみならず難解なコード(周知のウイルスに修正を加えコードマッチングで検出できなくしたもの)からもコンピューターを保護できる。
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Blue
CoatはApple
v. Ameranth判決及びAffinity判決を基に844特許のクレームは結果を規定しているが、どのようにその結果が得られるかを規定していないと反論、CAFCは当該反論を否定。寧ろ844特許のクレーム1は所望される結果を得るための特定のステップを規定していると述べた。
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[A2]
Core Wireless v. LG Electronics - Fed. Cir. 2018-01-25
Core社の特許:USP
8,713,476
476特許は携帯電話のような小さいスクリーン上でユーザーが所望するApplicationへのアクセスを容易にするインターフェースに関する発明。
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■ 101条適格性が認められた理由(Alice第1ステップをクリア:Abstractアイデアではない)
CAFCはAlice判決後の自身の101条関連判決(101条を満たすと判断した判決:Enfish;
Thales; Visual Memory; Finjan)を引用し、Core特許のクレームはコンピューター装置のユーザーインターフェースを改善することに対する(directed
to)という理由でAliceステップ1をクリアすると判断した。
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より詳細には、476特許クレーム1ではApplicationサマリーがメニュから直接アクセスできること;Applicationサマリーが限定されたデータセットをリスト表示すること、リスト表示されたデーターを選択することで対応するApplicationが起動すること、選択されたデーターが当該Applicationの領域内で目視できること;さらに、Applicationを起動することなくApplicationサマリーが表示されることが規定されている。これら特徴は、ユーザーに対し限定された情報を具体的な様式で表示することを規定しているのであって、従来例のように一般的な索引(Index)を伴う表示によるユーザーインターフェースの手法とは異なる。
Enfish、Thales、Visual
Memory、Finjan判決において改善されたシステムがクレームされており、これら判決と同様に476特許クレームは従来のシステムを改善する特定のシステムを規定していると理解される。
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1.
A computing device comprising a display screen, the computing device being
configured to display on the screen a menu listing one or more
applications, and additionally being configured to display on the
screen an application summary that can be reached directly from the menu,
wherein the application summary displays a limited list of data offered
within the one or more applications, each of the data in the list being
selectable to launch the respective application and enable the selected data to
be seen within the respective application, and wherein the application
summary is displayed while the one or more applications are in an
un-launched state.
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(Applicationを起動することなくApplicationサマリー3,4を表示する)
⇒ 明細書には、該当するApplicationの上にハイライト表示され、1.2秒後にApplicationサマリー(図2の3、或いは、図3の4)が表示されると記載されている。
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1-screen display; 2-list of
applications; 3-App Snapshot (summary window);
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[A3]
Berkheimer v. HP Inc. - Fed. Cir. 2018-02-08
Berkheimerの特許:USP
7,447,713
Berkheimer事件で問題となった特許はディジタル資産管理システムにおけるファイルのディジタル処理とその記録と保管に関する発明で、明細書では共通のテキスト及び図式情報を重複記録するのを避けることで、システムをより効率よく運用し、且つ、記憶容量を減らすことでコストを削減すると説明している。同CAFC判決においてUSP744713のクレーム1-3及び9は目的とされた改良を実現するための特徴がクレームに記載されていないとして101条を満たさないと判断したが、クレーム4-7に関しては当該目的を達成するための特徴がクレームに記載されているとして101条を満たすと結論づけた。
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Berkheimer事件においては、101条判断においてクレームのある構成要素が当業者にとって当然のごとく理解され、ルーチンで、一般的な行為
(“well-understood,
routine, conventional”
activity)であるか否かに関して論争がある場合、それは事実判断であり、略式裁判で判断してはならないとした。
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[A4]
Exergent Corp. v. Kaz USA - Fed. Cir. 2018-03-08
Kaz
USA社の特許:USP
6,292,685
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体内温度(Core
Temperature)の測定方法に関する発明(Core
Temp = 肺動脈の温度)
A
divided Federal Circuit has affirmed-in-part — with Judges Moore
and Bryson siding with the patentee (valid under 101) and Judge Hughes
arguing invalidity. Although nonprecedential, the decision
offers a key explanation for when medical diagnostic methods can be patent
eligible.
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Alice
Part 2で保護適格性が認められた理由:
Here,
the patent is directed to the measurement of a natural phenomenon (core body
temperature). Even if the concept of such measurement is directed to a natural
phenomenon and is abstract at step one, the measurement method here was not
conventional, routine, and well-understood.
Following
years and millions of dollars of testing and development, the inventor determined
for the first time the coefficient representing the relationship
between temporal-arterial temperature (浅側頭動脈温度)
and core body temperature (肺動脈の温度)and
incorporated that discovery into an unconventional method of temperature
measurement.
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As
a result, the method is patent eligible, similar to the method of curing rubber
held eligible in Diehr. In other words, at the second step of Mayo/Alice,
the patent incorporated an inventive concept. The same is true here. The
inventor “transformed the process into an inventive application of the
formula.”
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[A5]
Vanda Pharma v West-Ward Pharma - Fed. Cir. 2018-04-13
Alice
Part 1で保護適格性が認められた理由:
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Vanda判決で問題となった特許USP8586610のクレーム1で、統合失調症の患者をイロぺりドン(投薬)で治療する手法を規定している。イロペリドンという薬は心臓の自然のリズムを乱す(QTc
Prolongationと言う)原因になる場合があり、CYP2D6による代謝機能が低い患者には一日当たりの投与量を12mg以下に抑えることを規定している。
注意:CYP2D6による代謝機能が欠損している人とは、肝臓において薬物代謝を担う酵素であるCYP2D6の薬物代謝機能が欠乏している人を意味する。
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Vanda特許クレーム1の概要:
統合失調症で苦しんでいる患者に対しイロペリドンを用いて治療する手法:
[a]
患者がCYP2D6代謝欠損者であるか否かを判断するために生物サンプルを取得する;
[b] 患者の遺伝子がCYP2D6代謝欠損遺伝子タイプか否かを当該サンプルを用い遺伝子解析によって決定する;
[c-1] CYP2D6代謝欠損遺伝子タイプの場合にはイロペリドンの投与量を一日当たり12mg以下とする;
[c-2] CYP2D6代謝欠損遺伝子タイプではない場合にはイロペリドンの投与量を一日当たり12mg〜24mgとする;
[d]
[c-1]の患者にイロペリドンの投与量を12mg以下にすることでQTc
prolongation(心臓の鼓動が乱れる)のリスクを軽減できる。
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上記クレームでは“特定の病気(統合失調症)を治療するために、患者の生体サンプルを採取し、遺伝子のタイプを分析し、遺伝子のタイプを決定するステップと当該タイプを基にして薬の投与量を決定し投与するというステップを規定している。
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発明者は、イロペリドン、CYP2D6代謝機能、とQTc長期化(QTc
Prolongation)との相互関係を認識したが、それらの関係を規定しただけではない。
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発明者は当該相互関係の適用をクレームしたのである。依って、最高裁のMayo判決とは異なり、本発明では治療に携わる医者にイロペリドンの投与量を管理することを要求している。従って、CAFCはVandaの特許はUSPTOのステップ2A(Aliceのパート1)で「クレームは特許保護適格性を満たさない主題を対象としているか?」でNOと結論づけた(即ち、claim
is not directed to a judicial exception)。
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CAFCが上記結論(即ちVanda特許のクレームは特許保護適格性あり)に至った理由は大別すると以下の3点に要約される:
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第1:CAFCは、一般的であろう遺伝子分析と治療のステップを規定したクレームを全体として解釈し、Vanda特許のクレームは患者の遺伝子のタイプとQTc
Prolongation(心臓の鼓動リズムが乱れる)との関係を対象とするものではないと結論づけた。 クレームの構成要素の全体を考慮し、USPTOのステップ2Aの判断をすることが重要であるということは先のCAFC判決、Finjan判決、Core
Wireless判決によっても強調された。(2018年4月2日付けPTOのメモランダム参照)
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第2:Mayo判決で問題となった特許のクレームはチオプリン(thiopurine)という薬を患者に投与することを規定しているが、クレーム全体としてそれは当該薬を特定の病気を治療するために適用するということを対象としていない。言い換えるとMayo判決のクレームは自然法則を現実的に適用するという治療方法をクレームしていない。
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第3:USPTOのステップ2A(Aliceのパート1)においてクレームは保護適格性を有すると判断されたのでUSPTOのステップ2B(Aliceのパート2)の判断をする必要はない。
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筆者コメント:
今回の判決を受けて薬学系の特許出願クレームにおいてはプレアンブルを「・・・の治療方法」と記載することが重要。
Mayo(2012年最高裁)のクレームもPreambleを変更することで101条満たすと判断されていたのかもしれない。
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Vanda判決で争点となった
8586610号クレーム1の概要は以下の通り:
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Mayo合衆国最高裁で争点となった
6355623号クレーム1の概要は以下:
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統合失調症で苦しんでいる患者に対しイロペリドンを用いて治療する手法:
[a]
患者がCYP2D6代謝欠損者であるか否かを判断するために生物サンプルを取得する;
[b] 患者の遺伝子が
CYP2D6代謝欠損遺伝子タイプか否かを当該サンプルを用い遺伝子解析によって決定する;
[c-1] CYP2D6代謝欠損遺伝子タイプの場合にはイロペリドンの投与量を一日当たり12mg以下とする;
[c-2] CYP2D6代謝欠損遺伝子タイプではない場合にはイロペリドンの投与量を一日当たり12mg〜24mgとする;
[d]
[c-1]の患者にイロペリドンの投与量を12mg以下にすることでOTc
prolongation(心臓の鼓動が乱れる)のリスクを軽減できる。
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免疫介在性胃腸疾患の治療効果を最適化する方法であって、
[a]
免疫介在性胃腸疾患を有する人に、6-チオグアニンの薬を「投与するステップ」、および
[b]
前記免疫介在性胃腸疾患を有する人における6-チオグアニンのレベルを「決定するステップ」を有し、
前記6-チオグアニンのレベルが、8×10**8赤血球当たり約230
pmol未満の場合には、その後のドラッグ投与量を増加する必要性を示しており、且つ、
前記6-チオグアニンのレベルが、8×10**8赤血球当たり約400
pmolを越える場合には、その後のドラッグ投与量を減少する必要性を示していることを特徴とする。
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Vanda Claim
1 of USP 8,586,610 |
Mayo Claim
1 of USP 6,355,623 |
1.
A method for treating a patient with iloperidone, wherein the
patient is suffering from schizophrenia, the method comprising the
steps of: |
1.
A method of optimizing therapeutic efficacy for treatment of an immune-mediated
gastrointestinal disorder, comprising:
(a) administering a drug providing 6-thioguanine to a subject having said
immune-mediated gastrointestinal disorder; and
(b) determining the level of 6-thioguanine in said subject having
said immune-mediated gastrointestinal disorder, wherein
the level of 6-thioguanine less than about 230 pmol per
8*10<8>red blood cells indicates a need to increase the
amount of said drug subsequently administered to said subject and
wherein
the level of 6-thioguanine greater than about 400 pmol per
8*10<8>red blood cells indicates a need to decrease the
amount of said drug subsequently administered to said subject. |
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[B]
USPTOのMemorandum
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[B1]
USPTOのMemorandum(2018-04-02)
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USPTOは4月2日付でFinjan判決(1月10日)及びCore-Wireless判決(1月25日)に鑑み審査官にメモを通知した。当該メモで、同判決の概要を説明し、2018年1月29日に更新された審査便覧(MPEP2106)との整合性があることを通知した。当該メモにおいて、Finjan判決とCore-Wireless判決は共にソフトウェア関連発明でありコンピューター技術の改良に照準を合わせた発明をクレームしており、依ってAlice第1ステップでAbstractアイデアを対象とするものではないと述べた。
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[B2]
USPTOのMemorandum(2018-04-19)
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4月2日のメモランダムに続き、USPTOはBerkheimer判決(2018年2月8日)に鑑み審査官にメモを通知した。Berkheimer事件においては、101条判断においてクレームのある構成要素が当業者にとって当然のごとく理解され、ルーチンで、一般的な行為
(“well-understood,
routine, conventional”
activity)であるか否かに関して論争がある場合、それは事実判断であり、略式裁判で判断してはならないとした。
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本メモランダムにおいて審査官が、クレームの構成要素を
well-understood, routine, conventionalであると結論づける場合には、当該構成要素が、問題となる発明が関連する技術分野において広く行き渡っている、或いは、一般的に使用されている場合のみとすることを強調している。即ち、102条の基に刊行物となるからという理由のみで”well-understood,
routine, conventional”なものとは限らないことを言及している。例えば、102条の基にはドイツの大学の図書館に眠る唯一の論文であっても刊行物となる、しかし、それは
well-understood, routine, conventionalなものではない。さらに審査官がOfficial
Notice(刊行物など証拠を一切特定せずに当然のことであると行政庁として通知すること:例、富士山は3000メートルより高い:筆者)を宣言する場合には、それなりの知見に基づき適切と思える場合にのみ実行すること。
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[B3]
USPTOのMemorandum(2018-06-07)
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4月19日のメモランダムに続き、USPTOはVanda判決(2018年4月13日)に鑑み審査官にメモを通知した。Vanda事件において問題となったクレームは、イロペリドンを用いて統合失調症を治療する方法に関し、患者の
CYP2D6代謝欠損遺伝子タイプの有無によってイロペリドンの投与量を変更することを規定している。当該治療方法を規定するクレームが特許保護適格性を満たすか否かが争点となった。Vanda判決で問題となったクレームはMayo判決で問題となったクレームとは識別される。即ち、Mayo判決においてはThiopurineという薬の投与量を規定してはいるがクレーム全体として特定の病気に対する治療方法を規定するものではない、依って、Mayoのクレームは自然法則の適用をクレームしているとは言えない。
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しかしVanda判決で言及されているように、自然法則を治療方法に適用することを規定するクレームは101条の特許保護適格性を満たす。従って、USPTOのStep
2Aによって特許保護適格性を満たすと判断するのが正しい。
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[C]
Speech by Director Iancu at IPO Meeting in Chicago – 2018-09-24
Click
HERE!
http://www.tatsuoyabe.aki.gs/Remarks%20on%20101%20by%20Iancu_2018_09_24.htm
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■101条のまとめ:
[I]
2010年以降に出た4件の最高裁判決(Bilski;
Mayo;
Myriad; Alice)によって特許保護適格性の判断基準が不明瞭となったことは否めない。特許庁も一生懸命になって何とか解りやすい審査ガイダンスを出そうと試みたが、結局労多くして実り無しでギブアップ気味だった。事実、2016年10月に官報で最高裁判決に対するパブリックコメントを求め、Roundtableディスカッションを実施し、関係者(団体及び個人)に意見及び改善提案を求めた。2017年7月、関係者によるパブコメを集約し、報告書を作成し公開した。
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50枚を超える報告書ではあったが、内容は特許保護適格性の歴史(立法及び司法)、IP5での対応に加えて、Roundtableディスカッションでの意見及び関係者からの意見及び提案事項のまとめに終わった。これら集積した意見を基にUSPTOの101条審査を今後どのように充実させていくかということに関しては触れていない。
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しかし、PTOが抽出したPublic
Commentからの推奨事項の中で頻出するキーワードは技術課題に対する技術解決手段(technical
solution to a technical problem:日本及び欧州での対応と類似)と有益性(useful)である。即ち、これら用語が101条の特許保護適格性に対する判断基準として最高裁判決後(2014年のAlice以降)のCAFC判決において良く用いられているということと、そもそも101条の条文においてusefulという用語が使用されていることである。
|
[II]
2018年2月に新たなPTO長官(実務経験の豊富なAndrei
Iancu氏)を迎えた。Iancu氏は所信演説の中でPTOとして101条審査を明確化することの重要性を述べた。
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[II-1]
そして暫く沈黙していたPTOが2018年4月2日にメモランダムを公開し、FINJAN判決とCore-Wireless判決(共に2018年1月)を基に101条審査に言及した。
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[II-2]
さらに、2018年4月19日にはBerkheimer判決(2018年2月)に鑑みメモランダムを公開し、審査官がクレームの要素が”well-understood,
routine and conventional”と主張するハードルを上げた。
|
[II-3]
さらに、2018年6月7日には
Vanda判決(2018年4月)に鑑みメモランダムを公開し、「特定の病気に対する治療方法」は101条の保護適格性を満たすということを審査官に周知徹底した。
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[II-1]
PTOの2018年4月2日にメモランダムにおいて、FINJAN判決とCore-Wireless判決(共に2018年1月のCAFC判決)を基に101条審査に言及した。これら2件の判決に共通するには従来技術に対して特定の改良を齎すことにクレームの構成要素がリンクしている場合には101条を満たすという点である。
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Aliceパート1で101条適格性を認めたFINJAN:
COREに共通するのは従来技術に対するImprovement(改善)に基づきクレームはAbstractアイデアではないと判断している。特に、Core判決では、Enfish判決、Thales判決、Visual
Memory判決、Finjan判決において改善されたシステムがクレームされているのと同様にCoreの476特許クレームは従来のシステムを改善する特定のシステムを規定していると述べている。
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然るに(主に機械・電気・制御系の技術分野における)出願実務者としては101条拒絶に対しては:
クレームの構成要素は、従来のTechnical
Problemに対しTechnical
Solution であってParticular
Improvementを齎す
(当該Improvementにクレームの構成要素が直接リンクしていること)という結論に結び付けられるようにクレームを補正或いはロジックを構成する。
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さらに、Particular
Improvementに説得性を持たすためには101条で規定する”Useful”であること、即ち、クレームの構成要素によってUseful,
Concrete, Tangible Resultを現出することを主張する。
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[II-2]
Aliceパート2でクレームの構成要素にinventive
conceptがあることを主張するために「Claim
element(s) is/are not conventional, routine, and
well-understood to those skilled in the art」を挙証するのが一般的な手法である。 しかし、Berkheimer判決において、”conventional,…and
well-understood”であるか否かの判断は事実判断(underlying
issues of fact)に基づく場合が多く、事実審を伴う場合には略式判決では済まされないと判示した。PTOの
2018年4月19日付けのメモランダムにおいてBerkheimer判決の概要を紹介すると共に、審査官がクレームの構成要素がconventional,
routine, and well-understoodであると判断する場合の基準(新規性を判断するのに先行技術を一件見つけるのとは違い、当業者に良く周知されていたものである)を審査官に周知徹底した。
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[II-3]
2018-04-13 Vanda判決で「特定の病気に対する治療方法」は101条の保護適格性を満たすとされた。Vanda判決を受けてPTOは2018年6月7日付けのメモランダムでVanda判決の概要を紹介するとともに審査官に周知徹底した。「クレームのPreambleの書き方に要注意!」
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補足
[III]
Exergent判決においてコアボディ体温を測る手法がUnconventionalということでEligibilityがAlice-PART2で認められた。
|
[IV]
2018-04-27: Day after President Trump’s statement (increasing “reliability
and enforceability of patents”),
a joint statement with Wilbur Ross (Secretary of Commerce), Iancu says “…our
IP rights must be “strong,
reliable and predictable”.
|
[V]
2018-09-24: Speech
by Director Iancu at IPO Association Meeting in Chicago
Alice
Part 1 Analysis (whether claim is directed
to Judicial Exception?)
should be broken down into:
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[a]
Whether claim recites
one of Judicial Exceptions (law of nature, natural phenomenon, abstract
idea)?
If
Yes, in the above [a], then
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[b]
Whether claim integrates
the Judicial Exception into a
practical application?
Iancu氏は、上記Aliceパート1判断手順を新たな審査ガイダンスに盛り込むべく検討中と述べた。
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(5)
LINKS
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