Case Laws
  Horwitz & Bab氏によるPortola判例 (*1) fed.circuit 96-1376に対するコメント概要

再審査で審査される新規引例を回避するために補正或いは追加したクレームが特許出願審査時に検討された引例のみ(旧引例)を根拠に拒絶されることはないとした。

Portola判例(1998) ⇒ 古い判例(2004年以降は使えない); 審査中に引用された先行技術でも再審査で使用可能である。<Revised by Yabe>

  Date: March 28, 1998 By Tatsuo YABE

Revised on Oct 2006 by Tatsuo YABE

(I) Background:

(I-a) 関連米国特許:USP 4,496,066 "Neck finish for plastic container"

◎ 特許日: Jan. 29, 1985

◎ 出願日: July 27, 1983

 

◎ 発明者: Joseph J; Bullock, III

◎ 譲渡人: Portola Packaging Inc.,

◎ 審査経過:

クレーム1,2はUSP 3,204,799 (Hunter)で102条拒絶(新規性拒絶)

クレーム3−6,8−11はUSP4,202,455 (Faulstich)と他の2つの引例で103条拒絶(自明性拒絶)

(I-b) 再審査

* Oct 27, 1993 第3者による再審査請求

再審査請求の理由:

(1)クレーム1,3,5,7はHunterによって新規性がない;

(2)クレーム1,3,5,7はUSP4,177,906(Von Hagel)によって新規性なし;

(3)'066特許クレーム全てはFaulstichと Hunter又は Hagelの組み合わせによって自明である。

* これに対してPortolaはクレーム2,6をキャンセルし、それぞれの主題を各々クレーム1と5に盛り込む補正をする;

* 審査官は、クレーム1,3−5,7,8をFaulstich特許と Hunter特許によって自明として拒絶した。

(II) Ethan Horwitz & Cheryl M. Bab (Darby & Darby)のコメント概要:

米国特許の再審査(Reexamination)の申請はその米国特許満了期限以内であれば誰でも(特許権者ならびに如何なる第3者であれど)実施可能である。

今回の連邦裁判所のPortola判例 (*1) (In re Portola Packaging, Inc., 110 F3d 786., Fed. Cir. 1997, 122 F3d 1473) は、発明が引例に鑑みて特許性があるとした米国特許庁の判断は、侵害裁判の法廷において、明白で説得性のある証拠によってのみ覆すことが可能であるした。

再審査において、特許権者は新規引例を考慮し特許庁の審査官との協議の基にクレームを補正し或いは追加し、それを許可に導くことが可能であり、この許可された補正クレームは後々、侵害を訴えられた当事者が無効にするのが非常に困難となります(35 USC 282にPresumption of validityがあるからです)。 再審査において従来は、特に再審査においてクレームが補正されたり追加された場合には、審査官が特許出願審査時に検討した引例(以下旧引例と称する)を再検討し、それらクレームの特許化にマイナスに影響するという危険性があった。しかし、本Portola判例によって、その危険性が除去された。 このPortola判例によって、特許出願審査時に検討された旧引例、単体或いは、他の旧引例と組み合わされたとしても、再審査で補正されたクレーム或いは追加されたクレームを拒絶する根拠にはならない。

従って、本Portola判例によって、今後特許権者がex perte 形式の再審査(特許権者自らが再審査を申請する)をすることによって自らの特許権を、侵害者に対する強力な武器にすることが可能となる。即ち、再審査によって新規の引例を提出し、その構造的特徴を回避するべくクレームを補正すると共に、侵害を訴える製品或いはプロセスをより明瞭に包括するようにクレーム補正し、特許庁にそれらクレームの新規引例に対する特許性を確認してもらうことが可能となる。今回のPortola判例によって、上記特許戦略を、特許庁が再度、旧引例を検討し判断するかもしれないというリスクを無視して実行可能とした。

さらに、著者、Ethan Horwitz & Cheryl M. Bab (Darby & Darby)氏の後半のsuggestionにおいて、今後、特許権者にとって再審査が非常に有利になる、しかし、第三者にとって再審査申請は不利に働く可能性が増したこと、さらに、再審査を実行する以前、即ち、特許出願時に既にその準備にかかることの重要性も述べています。即ち、米国特許出願では出願人がサーチをしてまで、IDSとして出願人が周知の引例を特許庁に提出する必要はないですが、今後はサーチをしてでもできるだけ多くの引例を出願時(出願審査中)に提出しておくことを推奨しています。要はこれら提出した引例は再審査時には旧引例に相当するわけで、今回のPortola判例によって、これら旧引例は再審査で補正するクレームの特許性検討に関与しないからです。

尚、詳細は、

Intellectual Property /Federal Circuit Changes Patent Reexamination /Patentees Can / Implement Several Strategies / New York Journal/ March 09, 1998

URL: http://web.archive.org/web/20001101005742/http://www.ljx.com/patents/0309reexam.html

をご覧下さい。

Portola 判例 (*1) In re Portola Packaging, Inc., 110 F3d 786 (Fed. Cir. 1997) reh'g denied, 122 F3d 1473/ URL:

http://web.archive.org/web/20001101005742/http://www.law.emory.edu/pub-cgi/print_hit_bold.pl/fedcircuit/apr97/96-1376.html