合衆国最高裁判決

Life Technologies v. Promega Corp.

2017222

クレームの単一の構成要素を米国で製造し、外国に輸出する行為

(外国において組合されてクレームの構成要素を全て満たす)は271(f)(1)の基に侵害となるか?

SCOTUS No. 14-1538

Summarized by Tatsuo YABE – 2017-02-28

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クレームの単一の構成要素を米国で製造し外国に輸出する行為(外国において組合せクレームの構成要素を全て満たす場合)は271(f)(1)の基に侵害となるのかが争点となった。最高裁は271(f)(1)項の”…all or a substan­tial portion of the components of a patented invention…”というフレーズのa substantial portionという用語は質的(qualitatively)な実質性ではなく量的(quantitatively)な実質性を意図しており、複数であって、単一の構成要素ではないと判断した。然るに、被疑侵害者Life Technologiesの行為(単一の構成要素を英国に輸出し英国でクレームのごとく組み合わされる)は271(f)(1)項の基に非侵害であると判断した。

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Tautz [Promega]の特許:

地裁判決

CAFC判決

最高裁判決

RE 37,984

984特許

271(f)(1)の基に非侵害:

271(f)(1)の基に侵害:

単一の構成要素であっても271(f)(1)a substantial portionを満たす場合がある。

271(f)(1)の基に非侵害:

271(f)(1)は量的な実質性を意図しており複数であり、271(f)(2)が単数の場合を含む。

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今回の最高裁の判決によると、米国特許クレームの構成要素がABの2つでありL社が部品Aを米国で製造し、英国(外国)に輸出し、英国で部品Bを調達し組み立てるという場合、L社の輸出行為は271(f)(1)の基には非侵害となる。しかし、部品Aが特許発明の使用以外の汎用性がないとした場合にはN社の行為は271(f)(2)項の基に侵害と判断される可能性は大である。

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271(f)(1)substantialの意味合いが質的ではなく量的であるとする最高裁の理由づけ(以下第1点)には大いに疑問を感じるが(f)(1)(f)(2)で法の抜け穴を塞ぐべく補間しあっているという理由づけ(以下第2点)は比較的納得しやすいと思料する。

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特許権者:Tautz

専用実施権者:Promega Corp.

被疑侵害者: Life Technologies Corp.

問題となった特許:

Tautzの特許:

特許発明の概要:

RE 37,984

遺伝子検査用のキットに関しクレームは5つの構成要素を規定している。

(1) a mixture of primers that mark the part of the DNA strand to be copied;

(2) nucleotides for forming replicated strands of DNA;

(3) an enzyme known as Taq polymerase;

(4) a buffer solution for the amplification; and

(5) control DNA.

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PromegaTautz特許の専用実施権者であってLife Tech社に所定範囲(地域を含む)における製造、販売を許諾していた。但し、英国における製造、販売は許容されていなかった。Life社は984特許クレームの[3]Taqポリメラーゼという酵素を米国で製造し、自身の英国の施設に輸出し、英国において他の4つの構成要素と組み合わせて984特許クレームで規定するキットとして販売していた。PromegaLife社の当該輸出行為は米国特許法271(f)(1)項の基に侵害であるとし訴訟を提起した。

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地裁の略式判決では、Life社の行為(クレームの単一の構成要素を製造し、輸出する行為)は271(f)(1)で規定する “all or a substantial portion”を満たさないとして非侵害と判断し、CAFCでは単一の構成要素の製造、輸出行為であっても “substantial portion”を満たすとし侵害であると判断した。

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最高裁の判断:

Life社の行為(単一の構成要素を外国に輸出する行為)は271(f)(1)の侵害とはならない。最高裁は以下3点の理由を述べている。

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35 U.S.C. 271(f)(1):

 “Whoever without authority supplies or causes to be supplied in or from the United States all or a substan­tial portion of the components of a patented invention, where such components are uncombined in whole or in part, in such manner as to actively induce the com­bination of such components outside of the United States in a manner that would infringe the patent if such combination occurred within the United States, shall be liable as an infringer.

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1点:

271(f)(1)の文言、”substantial portion”は品質的な意味合いではなく、量的な意味合いと解釈するべきである。事実、271条(f)項の文言からは「質的」に実質的な部分か「量的」に実施的な部分かは明白ではない。事実、“substantial”という用語は質的なもの、あるいは、量的なものに使用される。しかし、271(f)項のsubstantialという文言の前後の用語から理解されるのは量的な意味合いと理解するのが妥当である。”all”は質的なことではなく、量的に全てという意味であり、”portion”とは全てではないがその部分を示す。さらに、a substantial portionという用語は”of the components“(複数の構成要素)で修飾されている、もしもa substantial portionが質的な意味合いであれば”of the components”は不要で、条文はa substantial portion of a patented inventionとされていたであろう。然るに、a substantial portionが質を意味しているのであれば”of the components”という修飾語が意味を為さなくなる。依って、a substantial portionは量的な実質性と解釈するのが妥当する。 且つ、Promegaが主張するように事案毎にa substantial portionが質か量かを判断するべきであるという意見は事実審を混乱させることになり、法解釈の安定性を阻害する。現実的な側面でもクレームの構成要素のいずれが市場においてどれだけ重要であるかを判断することは容易ではない。

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2点:

271(f)(2)271(f)(1)を補完する条文である。以下271(f)(2)で規定されているように、「・・・汎用品ではなく、且つ、特許発明を意図して作られており、実質的に特許非侵害の使用にそぐわない如何なる部品(any component of a patented invention)を米国に輸入或いは米国から輸出する行為は・・・」とあり、any component of a patented invention”であり単一(単数)の構成要素の場合を含むと明瞭に規定されている。

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35 U.S.C. 271(f)(2):

“Whoever without authority supplies or causes to be supplied in or from the United States any component of a patented invention that is especially made or es­pecially adapted for use in the invention and not a staple article or commodity of commerce suitable for substantial noninfringing use, where such component is uncombined in whole or in part, knowing that such component is so made or adapted and intending that such component will be combined outside of the United States in a manner that would infringe the pa­tent if such combination occurred within the United States, shall be liable as an infringer.”

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もし271(f)(1)が単一の構成要素を侵害行為として含むのであれば271(f)(2)の条文の意味合いが薄れてしまう。依って、271(f)(1)が量的な実質性、即ち、複数の構成要素を必要としていると解釈することで271(f)(2)と連携して271(f)項の条文が作用し、(f)(1)項と(f)(2)項が個別に適用可能となる。

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3点:

1984年の法改正によって、271(f)項の条文が追加された。それ以前は米国外で特許された製品を製造或いは使用することに対して侵害の余地はなかった。Deepsouth Packing Co v. Laitram Corp1972年最高裁判決)において、米国で特許されたエビの背臓を除去する製品(複数の部品より構成)の個々の部品を米国で製造し、外国の販売業者に個々の部品の状態で輸出し、同販売会社が外国において組み立て販売するという行為は米国特許法第271(a)項の基には侵害にならないと判断した。1984年に連邦議会は271条の抜け穴を塞ぐべく、即ち、米国で製造され諸外国で組み付けられる行為に対しても米国特許の排他権を拡張するべく271(f)(1)(f)(2)項を立法した。

http://uscode.house.gov/statviewer.htm?volume=98&page=3383

即ち、271(f)(1)項は、発明を構成する複数の部材の全て或いは実質的な部分(複数)を輸出する行為を侵害とし、271(f)(2)項は、汎用品ではなく発明に使用することを意図した単一の部品を輸出する行為を侵害と定めたと解釈することで立法者の意図に合致する。

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以下参考:REFERENCE

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米国特許法第271(f)(1)-(f)(2) – 1984118日成立

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