In re ALBERTO LEE BIGIO

 

C.A.F.C. 判決 20040824

U.S. Patent Application Serial No. 09/451,747より控訴された事件

United States Court of Appeals for the Federal Circuit No. 03-1358

 

Summarized BY Tatsuo YABE on Sept. 14, 2004

 

 

Yabe Comment:

 

CAFC多数意見はヘアブラシに対する特許出願の先行技術として歯ブラシを同類と判断した米国特許庁審査官の判断と審判部の判断を支持しました。 Newman判事は反対意見を述べ、歯ブラシはヘアブラシの同類の引例にはなりえないと主張しております。 そもそも歯ブラシに要求される機能とヘアブラシに要求される機能は全く異なると考えるのが普通であると考えます。 しかしBigio特許出願明細書の OBJECT OF THE INVENTION のセクション(著者はCIPの公開公報を参照しているので追加されているかもしれないが)において(M1)動物の毛づくろいにも適したヘアブラシを提供することを目的とするという記載があること、及び、(M2)ブラシの毛の基部を砂時計形状にすることを目的とするという記載がある。 勿論、(M3)人間の解剖学的に正確なヘアブラシを提供するという記載もあるが、前記2つの目的の前者(M1)によってBigioクレームのヘアブラシの解釈範囲が頭皮に留まることなく、また、人間の使用に留まらないという無用な広がりの可能性をもたらせるという根拠になると思います。 さらに、後者(M2)の記載「基部を砂時計形状にすることを目的とする」はUtility特許ではそもそも発明の目的にはなりえないと考えます。 要は、所定の形状にすることはそれによる効用があるからで(勿論、文脈から人間解剖学的により正確なものにするという意味と予想できますが)、所定の形状のものを作成すること自体はUtilitu特許の目的にはなりえないと考えます。 然るに、審査官及び審判官が歯ブラシが本願の類似技術に属するか否かを判断するときに本願発明の「機能」という観点で判断することが必要になりますが、上記(M1)と(M2)の目的を達成することを考えると歯ブラシがその目的を達成するべく機能しないと言い切れなくなると考えます。 然るに、今回のCAFCの多数意見には依然納得はできませんが、Bigio特許の明細書の目的の記載が災いした可能性を拭えないと考えます。

 

CAFC判決概要:  

 

ヘアーブラシに関するAlbert Lee Bigio氏(以下Bigio)の米国出願番号第09・451,747号(以下747出願)のクレームは、米国意匠424303号及び米国意匠第140438号に鑑みたイギリス特許第17666号(Flemming)によって自明であるとして拒絶された。 

 

1. A hair brush comprising:

 

an elongated member element having handle segment and a bristle substrate segment on a common axial centerline;

said bristle substrate defining an hourglass shape with a core segment having along its longitudinal extent, a smoothly curved progressively radially smaller central region and progressively radially larger end regions;

 

said hair brush bristles segregated into groups of small bundles disposed over said bristle substrate in a series of axially aligned and radially distributed linear bristle rows;

 

each bristle bundle in a respective linear row spaced axially apart along said bristle substrate and extending substantially radially with respect to said axial centerline and forming an hourglass shaped hair brush bristle system for said hair.

 

1.ヘアブラシであって以下の構成要素を備えている(comprising):

 

ハンドル部分と毛の基板部分を同軸上に備えた延設部材;

 

前記毛の基板部は長手方向に延設するコア部; 滑らかに曲率し、段階的に中央部で半径が小さくなるような中央領域; と 徐々に半径を大きくなっている両端部領域によって砂時計の形状に形成されている;

 

前記ヘアブラシの毛(複数)は前記毛の基板部の上に軸方向に整列され、半径方向に分配された直線的な毛列により成る小さな束のグループに分離される;

 

各直線列の前記毛の束は前記毛の基板に沿って軸方向に間隔をおいて配置されるとともに、前記軸芯に対して実質的に半径方向に延設しており、さらに、前記ヘアに対する砂時計形状のヘアブラシの毛システムを形成している。

 

 

 

引用された先行技術文献:

 

Flemming特許: GB17666

Tobias米国デザイン特許: USD 424303

Cohen米国デザイン特許: USD 140438

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本法廷(CAFC)では以下の2点に関して審理した:

 

@ Bigio特許出願クレームの hair brushの意味合い;

 

A 歯ブラシはBigio特許出願の hair brushの類似の(Analogous)引例になるか?

 

上記質問に対してCAFCは米国特許庁審判部の審決に一切拘束されることなく審理した結果、@Bigio特許の「ヘアブラシ("hair brush")」は頭皮のヘアのみではなく動物の各種ヘア(人間の顔の毛、眉毛、ペットのヘアなど)を包括すると判断した。 さらに、A歯ブラシがBigio特許出願のヘアブラシに対する同類の引例(Analogous Art)になるか否かに関しては(A−1)当該引例は当業者からみて同一の領域にあるといえるかで判断する「当業者による分野テスト」と(A−2)当該引例が当業者の考える領域に存在しない場合には本願発明の関連する課題に対して適度な関連性があるか否かを検討することによって決定する。

 

米国特許庁審査官も審判部も上記(A−1)当業者による分野テストを適切に実施した。 審判部は本願発明の機能及び構成を参酌し、分野テストを適切に実施したと判断する。審判部はクレームされた発明の構成及び機能に対して明細書を参酌し、歯ブラシと小さいブラシの構造的な類似性によって特定の分野で就労する当業者が歯ブラシを含む類似のブラシを考慮するであろうという理由によって、Flemmingの歯ブラシはBigioの技術分野に属するとした審判部の判断は正しい。 本法廷(CAFC)は上記(A−1)の当業者の分野テストが機能しない理由を一切見出せない。 類似技術分野に関する先例の大部分は上記(A−2)"第2テスト”で躓いていることを認識しているが、本法廷(CAFC)では上記(A−1)の分野テストにおける不明点を見出せない。 当業者による技術分野は発明ごとに記載された記載事実に応じて変化するが、この変化することが分野テストの不明瞭さ或いは中立的な基準の不存在に結びつくことはない。

 

■ 判決:

(多数意見)

 

米国特許庁審判部はBigio特許出願クレーム1のヘアーブラシの妥当な解釈をしており、歯ブラシをBigioのヘアブラシと同類の先行技術であるという事実を実態的な証拠があるので本法廷は審判部の審決を支持する。

認容

 

Newman判事の反対意見(要約):

 

上記多数意見に反対である。 歯ブラシの技術はヘアブラシの技術の類似技術ではない。 Bigio特許はヘアブラシに関するもので、そのクレームはヘアブラシに限定されている。 ヘアに使用するブラシはヘアが歯に似ている以上に(皮肉なる言い方)、歯に使用するブラシに関連することはない。 歯ブラシは歯を上下方向に且つ回転運動によって歯の表面をごしごし擦り取るためのものである。ヘアに使用するブラシはそれとは全くことなる形状、素地であり、異なる目的のために用いられる。 米国特許庁も私の同僚(Rader判事及びSchall判事)も1995年の In re GPAC Inc., (57 F.3d 1573, 1578: Fed. Cir. 1995)で言及された類似技術の判断基準(発明者が遭遇している問題に関連するものとしてその技術分野を選択し、応用することが同技術分野に示唆、動機付け、或いは、教示されている場合には同技術分野は類似技術分野である)に基づく理由を提示していない。 本裁判の多数意見はBigioのクレームが人の頭皮のヘアのためのブラシに限定されることはないという審判部の判断に賛成している。 しかしこの意見がBigioのクレームでサポートされているか否かは関係のないことである;何故なら歯は体のヘアではない。このように本願クレームのヘアブラシが頭皮に使用されるブラシを超えて顔のヘアにも使用されるブラシをも包括するか否かということに対し本法廷の多数は判断したのであって、それが顔面のヘアから歯に飛躍することを許容し、歯を磨くこととヘアをブラッシングすることが類似技術分野であると結論づけるものではない。Bigio特許のクレーム範囲は明細書に匹敵するものであってBigioは112条で要求される明瞭さを超えて拡大された権利範囲を望んでいるわけではない。 歯ブラシはヘアブラシの類似技術ではない。