CAFC判決

In re VAN OS

201713

審査官が引例を組み合わせて拒絶するのに

単にIntuitive(直観的に理解できる)という理由では不十分

判決文

Summarized by Tatsuo YABE – 2017-03-07

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KSR判決(2007年最高裁判決)において、自明性を主張する場合に引例同士を組み合わせる理由としてTSM (Teaching, Suggestion, Motivation)が明示されていなくとも当業者にとっての一般常識或いは想像力を考慮にいれることが可能であり、TSMルールを硬直的に適用する(1)ことを否定した。今回の判決はKSR判決でTSMルールの適用が緩和されたことを再確認するも、引例同士を組み合わせることの動機(Motivation)が当業者の一般常識(common sense)である、或いは、当業者にとって直感的に理解できる(intuitive)ことであるというだけでは不十分であると判示した。

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引例の組み合わせの理由が不明な自明性拒絶を出す審査官に対して警笛を鳴らした判決と理解される。米国特許出願実務者にとって自明性拒絶を回避するために引例同士を組わせることに対するteach awayMPEP2143)を主張できればベストではあるが、組み合わせることに対する審査官の理由づけが余りにも脆弱な場合には本判決を有効活用できると思料する。

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 (1)TSMルールを硬直的に適用するとは、TSMがいずれかの引例に明示されていなければ引例同士を組み合わせて自明性を主張できないという意味。

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出願人:Marcel Van OS

問題となった米国特許出願No. 12/364,470 – [Pre-Grant Pub. No. 2009-0138827]

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470特許出願:

特許出願発明の概要:

 

クレーム38

ユーザーによる第1アイコンタッチでアイコンに対応するアプリを開き、ユーザーによる第2タッチ(第1タッチよりも長い時間タッチする)で相互作用型のアイコン再配置モードが開始され、そしてユーザーがアイコンを動かすことができる。

 

クレーム40

クレーム38のように第1アイコンタッチ(アプリを開く)は規定されておらず、所定時間アイコンをタッチすることでアイコンの再配置モードが開始され、アイコンを画面上で移動可能となると規定している。

 

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争点:

引例Hawkins (USP7,231,229)と引例Gillespie (Pre-Grant Pub. 02/0191059)とを組み合わせることによって470出願クレーム3840は自明であるとした審査官及び審判部の拒絶は妥当か?

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出願審査過程:

審査官は、Hawkinsはクレーム38の「ユーザーがより長い時間画面をタッチすることでアイコンの再配置を可能にする相互作用型再配列モードの特徴」以外の全てを開示していると理解し、当該非開示の特徴をGillespie引例(タッチ操作型の複数のアイコンがスクリーンに表示され、複数の指でアイコンをタッチすること、2度素早くアイコンを打つこと、或いは、アイコンを所定時間タッチ状態で保持することでアイコンを作動状態にすることが開示されている)から補いクレーム38を自明であると判断した。クレーム40の特徴もクレーム38と同様であるとして自明と判断した。

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審判部による審理:

審査官の審査経過と結果を支持した。

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CAFCによる判断:

審判部による事実認定に関してはsubstantial evidence(十分な証拠に基づき挙証されている)基準で判断し、法律判断に対してはde novo(全く拘束されない)基準で判断する。自明性の判断は、事実認定を基礎とする法律問題である。当事者が引例を変更、或いは、組み合わせていたであろうか否かという問いは事実審である。Belden Inc. v. Berk-Tek LLC (Fed. Cir. 2015)

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審判部は審査官の引例を組み合わせる理由づけ(以下参照:「直観的に:intuitive way」と述べている)は間違いではないと判断した。審判部は審査官の以下の引例を組み合わせる根拠(理由づけ)にさらなるコメントを追加しなかった。

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KSR最高裁判決(2007年)は、自明性拒絶において引例同士を組み合わせることの動機があったか否かを判断する上で当業者にとっての常識(common sense)に依存するのを硬直的に禁止するというルールを批判した。KSR判決で、引例同士を組み合わせることの動機があったか否かを判断する上で当業者にとっての一般常識、或いは、想像力を評価することを認めた。然しながら、KSR判決でもたらされた(引例同士を組み合わせることに対する)柔軟性は事実審理をする者に理由を明示する義務を蔑ろにするということではない。寧ろ、KSR判決において引例同士を組み合わせる動機があったであろうと判断する場合にはその理由を明示するべきであると述べている。

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KSR事件後も、CAFCは自明性判断をする場合の事実認定に対する明白な理由を明示しなければならないと判断してきた。単に一般常識であると述べることは、自明性判断を支持することにはならない。実際にはKSR事件の前からもCAFCは、審判部は一般常識に依存することを許容するがその場合には何故そうすることが当業者にとって常識なのかを説明する必要があると判示した。 DyStar Textilfarben GmbH & Co. v. C.H. Patrick Co. (Fed. Cir. 2006)

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このように、明白な理由づけがない場合には、引例を組み合わせることは常識、あるいは、直感的に理解できたであろうというのは、全く理由を伴わずに引例を組み合わせるのは自明であったであろうと結論づけるのと同じである。

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以下参考:REFERENCE

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Claim 38:

A portable electronic device including a graphical user interface, comprising:

              a touch-sensitive display configured to display the graphical user interface;

              a processor coupled to communicate with the touch-sensitive display; and

              a machine-readable storage medium including a plurality of instructions that, when executed by the processor, cause the performing of operations including,

              displaying a plurality of icons of the graphical user interface on the touch-sensitive display, the icons individually corresponding to applications to provide additional functionality through the portable electronic device;

              detecting a first user touch on the touch-sensitive display, the first user touch of a first duration and t a location proximate a first icon of the plurality of icons;

              interpreting the detected first user touch as an input to initiate the application corresponding to that first icon;

              detecting a second user touch on the touch-sensitive display, the second user touch of a second duration, longer than the first duration, and at a location proximate a second icon  of the plurality of icons;

              interpreting the detected second, longer, user touch as an input initiating an interface reconfiguration mode; and

              in response to subsequent user movement on the touch screen from the location proximate the second icon to a third location, moving the second icon from the second location to the third location.

 

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