CAFC判決 In
re Google LLC 2020年02月13日 | サーバーが存在するという事実のみに基づき裁判管轄権は生じない。 OPINION by JUDGE Dyk, Taranto, and Wallach (Concurrence) | Summarized by Tatsuo YABE – 2020-02-25 |
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昨今稀に受ける質問ですが、本事案は裁判所の管轄権に関する。即ち、争点はサーバーを設置しているという事実に鑑み当該設置場所が管轄権の要件を満たすかである。 Googleはテキサス州東部地区にサーバーを所有していたが当該サーバーはGoogleとの契約に基づく他社(A社)の営業地に設置されていた。裁判所の管轄権の要件を満たすにはGoogleが同地区内に「営業地
(place of business)」を持っていることが必要であり、「営業地」とはGoogleの従業員(employee)或いは代理人(agent)が勤務しているか否かで判断する。A社はGoogleのサーバーを設置し、Googleの顧客をインターネットに接続し、サーバーをメンテするという業務を行っていた。このような状況においてA社の業務はGoogleの代理人としての業務とは言えないとしCAFCは管轄権の要件を満たさないと判断した。
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■ 事件の背景:
GoogleはGGC(Google Global Cache)サーバーをテキサス州東部地区(裁判地内)に所有しているがそれらサーバーはGoogleの所有するデータセンターに置かれているのではなく、Googleと契約関係にあるISP(Internet
Service Providers)のデータセンターの棚(ラック)に設置されている。ユーザーがGoogleのコンテンツを所望するとISPはGoogleの中央データ記憶サーバー(裁判地の外)を中継する前に裁判地内にあるGCCサーバーにユーザーのリクエストを中継する。SIT
(Super Interconnect Technologies)はGoogleを相手にテキサス州東部地区連邦地裁で特許侵害裁判を提起した。Googleは同裁判所には管轄権がないとして訴えの却下を申し立てた。しかしGoogleの申立ては否定された。同地裁の判断を不服とし、Googleは上級審(CAFC)に対して同地裁に職務執行令状(管轄権がないので訴えの却下)を求めるべく訴えを起こした。
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■ 以下CAFC判決の概要:
Googleが同様の職務執行令状(mandamus:上級審から下級審に職務を執行するように命令を下すこと)を求める訴えを過去にも起こしたが、2018年時点ではGoogleの同様の訴えをCAFCは認めなかった。然し、現時点において裁判所の管轄権の解釈に対して連邦地裁の判断に一貫性が欠けてきた(矛盾が生じてきた)ので下級審への職務執行令状を求める訴えを認めることとした。
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裁判所の管轄権に対する判例としては、In
re Cray (Fed. Cir. 2017)があり、以下の3要件を満たすときに、被告は設立された通常の営業地(regular
and established place of business)を有すると理解される:
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“(1)
there must be a physical place in the district; (2) it must be a regular and
established place of business; and (3) it must be the place of the defendant.”
871 F.3d at 1360.
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1] 管轄地内に「物理的な場所」があること;
2] 当該場所が設立された通常の「営業地」であること;
3] 当該場所が被告による場所であること;
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Googleは嘆願書で上記要件[1],[2]に関して議論を提示した。即ち、Googleの主張では「物理的な場所」という文言は不動産の貸借の性質を備えなければならない、且つ、「営業地」とは被告のビジネスを実行する従業者或いは代理人がいる場所を意味する。
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CAFCはCray判決における「物理的な場所」とは不動産或いはそのリース契約は必要ないと述べた。寧ろ、被告が製品を収容するスペース或いは棚をリース、或いは、その制御下においている場合であっても「物理的な場所」という要件を満たすと判断した。
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尚、CAFCは「営業地」とはGoogleの意見(被告のビジネスを実行する従業者或いは代理人がいる場所を意味する)に同意した。しかし、代理人とは自然人である必要はなく、機械(machine)であっても代理人の役割を果たすと述べた。
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上記をGoogleの状況に適用すると、テキサス州東部地区にはGoogleの本事案に関わるビジネスを実行するGoogleの従業員はいない。しかしISP(Internet
Service Provides)がGoogleの代理人と解釈されるのかを検討する必要がある。Googleとの契約に基づき、GoogleはISPにGGCサーバー装置を提供し、ISPは自社のISPデータセンターのサーバーラック(棚)にGGCサーバーを設置し、メンテをする。
ISPが行う業務は以下の通り:
[a] GGCサーバーをISPの顧客とインターネットに接続する;
[b] GGCサーバーを設置する;
[c] Googleの指示に基づきサーバーのメンテナンスを行う;
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CAFCは上記[a]〜[c]のいずれの行為もGoogleとの代理人関係を設立するものではないと判断した。特に[c]に関して、GGCサーバーをメンテする業務はGoogleが意図するビジネスを提供する行為とはその意味合いが大きく異なると述べた。従って、Googleはテキサス州東部地区に通常の設立された営業地を有さない、依って、テキサス州東部地区裁判所はGoogleに対して管轄権がない。
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