USPTO’s
Decision on Petition in Application No. 16/524,350 https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/16524350.pdf DAbUS
(AI)は発明者になれない。 Only a Natural Person can be an
Inventor (AI cannot be an Inventor) 2020年 04月 22日
Summarized by
Tatsuo YABE –
2020-05-04 |
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Thaler氏(米国特許出願人)によると自身が開発した人工知能(高度なAI)を備えた機械(DABUSと呼称)によって発明がなされた。そしてThaler氏は自身を出願人、DABUSを発明者として米国特許出願をした。同様の出願をEPO及び英国にも実施した。本事案は米国特許庁(USPTO)の判断であって裁判所の判決ではない。USPTOの判断として現時点ではAI(機械)は米国特許法による「発明者」にはなれない。米国特許法100条、101条、115条の文言および発明者に関するCAFCの判決によると当該「発明者」は自然人でなければならない。依って、AIは特許法の基に発明者にはなれない。自然人が発明を完成するのをAIがアシストすることに疑いの余地はないが、本USPTOの判断においてAIは発明を生成(完成)することはできるのかに関して言及していない。
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自然人以外にも知財を認めた判決はある。昨今の判決としてNaruto
v Slater(第9地区巡回控訴裁判所:2018年)が知られている。Naruto事件において、Slater氏が置き忘れたカメラを使ってNarutoと名付けられた猿が自身の写真(“Monkey
Selfies”)を撮影し、その写真に著作権が生じ、然しながら著作権法の基に動物に侵害訴訟を起こすための当事者適格性はないと判示された。
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Thaler氏の対応英国出願における英国特許庁の判断はNaruto判決に類似している。即ち、英国特許庁では、DABUSが発明を為したことを認めるもののDABUSに発明者としての地位を認めていない。
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今後、AIが介在する発明及びその出願は増えるであろう。今後、立法或いは裁判所においてAIを発明者として認定する日が来るのか・・・(以上筆者)
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Thaler氏による米国特許出願No.
16/524,350に対するUSPTOの判断(要約)
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2020年4月22日
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■ 特許出願人:Stephen
L. Thaler (イスラエル)
■ 発明者:DABUS
(Thaler氏の主張による発明者:USPTOは認めなかった)
■ 問題となった特許出願:US
Patent Application No. 16/524,350
■ 争点:
DABUS(人工知能を備えた機械)を発明者として米国特許出願できるか?
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■ 経緯:
2019年7月29日、発明者をDABUS(AI:機械)、譲受人と出願人をThaler氏とし、米国特許出願がなされた。115条(d)項に基づく発明者による宣言書の代わりに規則1.64条に基づきSubstitute
Statement(代替書面)によって発明者DABUSの代わりにThaler氏が署名した。譲渡書においてはDABUSの発明から派生する権利の全てをThaler氏に譲るという内容で、譲渡者としてDABUSの法的代理人としてThaler氏が署名し、且つ、譲受人としてThaler氏自身が署名した。
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2019年8月8日、USPTOは出願必要書類(発明者の記載不備)が欠落しているという理由でNotice
of Missing Partsを出した。2019年8月29日、Thaler氏は当該USPTO信を不服としUSPTOのSupervisorに考慮を求めた(嘆願書)。しかし2019年12月13日に2回目のNotice
of Missing partsが発行された。尚、2019年12月19日付けUSPTO通知でThaler氏の8月29日に提出された嘆願書は却下された。諦めきれずにThaler氏は2020年1月20日に再考を求めるべく再度嘆願書を提出した。
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■ USPTOの判断:
Thaler氏:
Thaler氏によると、本願発明はDABUSと名付けた機械によるものである。DABUSという機械は独自に発明できるように本願関連技術分野における一般情報を基に訓練がなされた脳神経回路をプログラムした創造型の機械であると主張している。DABUSは特定の問題を解決するために作られたものではなく、本願発明の新規性及び特徴を認識できるように製造されている。依って特許出願における発明者は自然人に限定されるべきではない。
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USPTO:
特許法101条において”Whoever…”という文言は自然人を示唆している。115条でも同様に自然人の代わりに
“himself”, “herself”という文言を使っている。さらに115条では宣言書は”person(人)”によって署名されなければならないと規定している。関連条文の他の部分でも同様の記載である。然るに、特許法の条文の”inventor”という文言を自然人以外を含むという解釈は同条文の通常理解される意味合いと矛盾する。
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さらに、CAFCにおいても特許法における発明者は自然人であると説示している。例えば、Univ.
of Utah v. Max-Planck-Gesellshcaft (2013年)において100条(f)項で定義する発明者は個々の人であり発明を着想したるものであることが理解できる。発明の着想とは発明者を決める基準であり、発明の精神的部分の完成(completion
of mental part of invention)を意味する。
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同様に、Beech
Aircraft v. EDO Corp 事件において、CAFCは発明者と発明の所有者の違いを説示する上で「発明の着想」に関して言及しており、即ち、発明の着想は発明者の心で生じるものであり、それは発明者の精神活動であると述べた。
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発明者に関する特許法条文とCAFCの判例を考慮し、USPTOは「発明者」とは自然人であることが要件であると理解しており、特許規則における多くの箇所でその理解(自然人であるという要件)が反映されている。審査便覧、MPEP、においても発明者を決定づける要は「着想(conception)」であることを詳述している。The
MPEP defines “conception” as “the complete performance of the mental part
of the inventive act” and it is “the formation in the mind of the inventor
of a definite and permanent idea of the complete and operative invention as it
is thereafter to be applied in practice” このように、”mental”及び”mind”という用語の使用は発明の「着想(conception)」は自然人によってしかなされないことを意味している。
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このように、特許法の条文、CAFC判決、USPTOの規則に鑑み、発明者は自然人に限定される。依って、出願書類において、DABUSを発明者とすることは115条(a)の要件を満たさない。
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さらに、Thaler氏は、USPTOは本願に対応するEPO出願及びUK出願における欧州特許庁及び英国特許庁の審査も考慮するべきであると主張しているが、それら特許庁がDEBUSを発明者と認めるという審査結果を出したわけではない。USPTOは自身の管轄地における法律の枠内で判断する。
注意:EPO及びUKIPOもDEBUSを発明者とすることを認めていない。 但し、UKIPOではDABUSが発明を為したということは認めている。
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結論:
2019年8月8日付けのUSPTO通知の判断、即ち、「DABUSを発明者とする宣言書は認められない」は却下しない。
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References:
「1」関連条文:
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35 U.S.C. 100(f):
(f)
The term "inventor" means the individual or, if a joint invention, the
individuals collectively who invented or discovered the subject matter of the
invention.
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35
U.S.C. 100(g):
(g)
The terms "joint inventor" and "coinventor" mean any 1 of
the individuals who invented or discovered the subject matter of a joint
invention.
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35
U.S.C. 101:
Whoever
invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or
composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a
patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title.
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35
U.S.C. 115(a):
An
application for patent that is filed under section 111(a) or commences the
national stage undersection 371 shall include, or be amended to include, the
name of the inventor for any invention claimed in the application. Except as
otherwise provided in this section, each individual who is the inventor or a
joint inventor of a claimed invention in an application for patent shall execute
an oath or declaration in connection with the application.
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35
U.S.C. 115(b):
An oath or declaration under subsection (a) shall contain statements
that—
(1) the application was made or was authorized to be made by the affiant
or declarant; and (2) such individual believes himself or herself to be the
original inventor or an original joint inventor of a claimed invention in the
application.
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35
U.S.C. 115(h)(1)
Any
person making a statement required under this section may withdraw, replace, or
otherwise correct the statement at any time. If a change is made in the naming
of the inventor requiring the filing of 1 or more additional statements under
this section, the Director shall establish regulations under which such
additional statements may be filed.
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「2」DABUS発明に基づくThaler氏の対応欧州と英国出願:
EPO及びUKIPOもDEBUSを発明者とすることを認めていない。
European patent application No.EP18275174 & EP18275174
EPO Publishes Grounds for Its Decision to Refuse Two Patent Applications Naming a Machine as Inventor
https://www.epo.org/news-issues/news/2020/20200128.html
GB 1816909.4 & GB 1818161.0
I
have found that DABUS is not a person as envisaged by sections 7 and 13 of the
Act and so cannot be considered an inventor.
https://www.ipo.gov.uk/p-challenge-decision-results/o74119.pdf
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「3」Naruto v Slater(第9地区巡回控訴裁判所)
Slater氏が置き忘れたカメラを使ってNarutoと名付けられた猿が自身の写真(“Monkey
Selfies”)を撮影し、その写真をSlater氏がWildlife誌に掲載した(以下の写真にあるようにとても好評だった!)。Narutoと長年生活を共にしたEngelhardt博士が後にNarutoの著作権を侵害しているとしSlater氏を相手に裁判を提起した。Narutoの自撮りに著作権が生じることは認めらたが、Narutoは著作権侵害の裁判を起こす当事者適格性はないと判示した。
https://cases.justia.com/federal/appellate-courts/ca9/16-15469/16-15469-2018-04-23.pdf?ts=1524502895
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2017年7月12日、第9地区控訴裁判所での口頭審理
(Wikimedia-Wikipediaより)
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9f/16-
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Naruto(猿の名前)のセルフィ―(Wikipediaより)
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(5) LINKS |