Chemours
v. Daikin Fed.
Cir. Case 2021年7月22日
Opinion by Reyna:
Newman (Circuit Judges) Opinion
Concurring in part and dissenting in part by Circuit Judge Dyke Summarized by
Tatsuo YABE –
2021-07-30 |
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本CAFC判決は過去の自明性判断に対する法理を変更したものではない。寧ろ、以下の法理を再確認した:
「1」
単一の引例の場合におけるTeach Awayの法理;
問題となったChemoursの特許クレームには通信ワイヤーを被覆する過程における溶融ポリマーの流速(Melting
Flow Rate:MFR)が27〜33
g/10minと規定している。引例ではMFRが15
g/10min以上との記載があるが最大MFRは24
g/10minの記載があった。しかし当該引例にはポリマーの分子量の分布を均一にすることの重要性とMFRを増大することで分子量がばらつくということが記載されていた。依ってCAFCは、当該引例に開示している24g/10minを特許発明の下限値27g/10minに上昇することに対しTeach
Awayしていると判断した。
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「2」2次的考察事項であるcommercial
successの挙証においてmarket
shareのデータが欠落しているという理由のみで否定されることはないと判示した;
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「3」Blocking
Patentの意味合い。
問題となる特許自体が自身のBlocking
Patentにはなりえない。(以上筆者)
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■ 特許権者:Chemours
Company FC,
■ 関連特許:USP
No. 7,122,609 and USP No. 8,076,431
■ 特許発明の概要:
被覆型の通信ワイヤの被覆に使われるポリマーの材質と性質に関する発明であって特に問題となったのはワイヤーを被覆する過程における溶融ポリマーの流速(MFL:
Melting Flow Rate)が27〜33g/10minと規定されている。
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■ 代表的なクレーム:
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1. A partially-crystalline copolymer comprising
tetrafluoroethylene, hexafluoropropylene in an amount corresponding to a
hexafluoropropylene index (HFPI) of from about 2.8 to 5.3, said copolymer being
polymerized and isolated in the absence of added alkali metal salt, having a
melt flow rate of within the range of about 30±3 g/10 min, and having no
more than about 50 unstable end groups/10**6 carbon
atoms.
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■ IPR手続きにおいて:
Kaulback引例には問題となった特許クレームの材質と略同じものが開示されており、MFRは15g/10min以上であってExample
A11に24g/10minが開示されている。依って、PTABはChemoursの特許はUSP
No. 6,541,588 (Kaulback)によって自明と判断した。
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Chemoursは商業上の成功を市場での販売実績のデータで主張したがPTABは市場におけるシェアに関するデータが欠落しているとしてクレームと商業上の成功とのNexusを認めなかった。さらに、Chemoursの商業上の成功はChemours
の特許がBlocking Patentであって競合他社の参画を阻止したからである。
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■ Fed
Cir:
CAFCにおける争点に関して:
[a] Teaching Away (阻害要因)
の有無
[b] Commercial Success (商業上の成功)
の有無
[c] Blocking Patentの適否
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[a] Teaches Away:
Kaulback引例には問題となった特許クレームの材質と略同じものが開示されており、MFRは15g/10min以上であってExample
A11にMFR 24g/10minが開示されている。然し、Kaulback引例ではポリマーの分子量の分布を小さくすることに主眼を置いている。A11の例に24g/10minが開示されているがそのMFRをクレームの下限値27g/10min(27g〜33g/10min)に上昇することでポリマー中の分子量の分布を小さく維持できるとは当業者が理解できるという証拠が提示されていない。
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寧ろ、Kaulback引例は従来例では押出成形において分子量のバラツキが増大することを許容することで押出成形の速度を上げることができると記載している。依って、Kaulback引例はクレームの範囲まで成形速度を上げることに対してteach
awayしていると理解できる。
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[b] Commercial Success:
商業上の成功を「(i)市場での販売実績のデータ」とさらに「(ii)市場におけるシェア」に関するデータがあればより説得力はあるが(ii)が欠落しているという理由で商業上の成功を認めないとした審決は間違いである。
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★ Commercial
successがメインの争点となった事案(Fox
Factory v SRAM: Fed Cir. 2019-12)は以下YouTube参照
(63)
103条自明性関連[7B]
「商業上の成功」でもって非自明を主張する。
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YouTube
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[c] Blocking Patent
Chemours の特許はBlocking
Patentではない。Blocking PatentとはChemoursの特許以前に成立した特許で、Chemoursの発明を実施するために許諾を得る必要となる先の特許のことを言う。要はChemoursの特許自身がChemours特許に対するBlocking
Patentにはなり得ない。
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PTABの審決を破棄する。
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Dyke判事による一部反対意見は略す。
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