ULEAD SYSTEM v. LEX Computer


(Fed. Cir. Decided2003129日)
 

判事: DYK判事(本CAFC多数意見); Prost判事; Newman判事(反対意見)

   

Summarized by Tatsuo YABE on Jan 08, 2004

Revised & Added on Jan 12, 2004

 

By DYK判事

 

判示要約:  

LEX社は20名以下のsmall entity(小規模事業主)であって出願費用及び特許発行費用を small entity statusで支払っていた(これは問題なし)、しかし、特許発行後の特許維持年金費用支払い時にnon-small entity(大規模事業主)に通常実施権を付与している事実があったに拘わらず small entity statusの減額措置の恩恵を受けた維持年金を依然として支払ったとしてカリフォルニア中央地区連邦地裁では特許無効と判断された。 しかし、CAFCでは、「特許庁を欺く意図」が立証されていないとして連邦地裁に差戻した。

 

※ 日本で米国特許に関わる実務者は、小規模事業主が米国特許取得後に大規模事業主に権利を完全に譲渡するのではなく、只単に通常実施権を与えることによってsmall entity statusを喪失することを認識するとともに、同状態において維持年金を小規模事業主の減額(1/2 price)で支払うことは問題であるということを認識することがまず重要である  確かに特許庁を欺く意図がなければ不足分を支払うことによって免責されるというような判示になったが日本の実務者で米国特許成立後の維持年金支払いを外部に委託しているような場合に権利者のライセンス状況が何らかで維持年金の支払い額に影響をうけるようなシステムになっているかということと、そのような問い合わせが維持年金支払い時にされているかを見直すことが重要であろう。 さらに米国特許及び出願において小規模事業主の地位が特許庁費用の支払いと関連するのは(A)出願費用支払い時(B)特許発行費用支払い時(C)3回の維持年金支払いのタイミングであって(A)〜(B)の間のOAに応答するときの期限延長費用の支払い時にはStatusの変更は関係ない (筆者注釈)。

 

背景:

 

Lex社は米国特許第4538188号の所有者である。 カリフォルニア中央地区の連邦地裁はメンテナンス費用支払い時に小規模事業主に該当しないのに同小規模事業主の恩恵(維持年金支払い額の半額免除)を受けたという理由で当該米国特許は権利行使不能であるという略式判決をくだした。 不公正な行為に対する略式判決は妥当性を欠くものである。 何故なら、Lex社が騙す意図(特許庁を欺く意図)があったか否かという重要な事実争点が残っていることを判示した。 さらに、小規模事業者としての間違った支払いは、その支払いが不正行為の責めに問われない場合において、米国特許施行規則1.28(c)の基に免責される可能性がある。 従って、下級審(連邦地裁の判決:弁護士費用をLex社が負担することを含む)を破棄し、同地裁に差戻す。

 

事実関係:

 

Lex社の米国特許第4538188号

 

United States Patent

4,538,188

Barker ,   et al.

August 27, 1985


Video composition method and apparatus

 

Inventors:

Barker; Ronald C. (Weston, MA); Schuler; Chester L. (Sudbury, MA)

Assignee:

Montage Computer Corporation (West Concord, MA)

Appl. No.:

452287

Filed:

December 22, 1982

Video composition method and apparatus

Abstract

A video composition apparatus and method select segments from image source material stored on at least one storage media and denote serially connected sequences of the segments to thereby form a composition sequence. The apparatus and method employ pictorial labels associated with each segment for ease of manipulating the segments to form the composition sequence. The labels are displayed on an ordered spatial array of display monitors to simulate the temporal relationship between the segments in what is typically a "snapshot" non-temporal display. The composition control function is highly user interactive and responds to user commands for selectively displaying segments from the source material on a pictorial display. The control function allows the user to denote a start and end of each of a plurality of selected segments to form defined segments, identify each selected segment by a pictorial image segment label which is displayed as described above, and assemble the selected and defined segments, and the corresponding labels, into a serially connected image sequence and a serially connected label sequence corresponding to the image sequence. The composition mode of operation employs continuous looping of the displayed segment(s) to aid in the composing process.

 

 

Lex社は1986年5月21日にUSP'188特許を譲り受けた時点においては20名以下の従業員を有する間違いなく小規模事業主に相当する会社であった。

 

Lex社は1988年に第1回目の特許維持年金(メンテナンス費用)を小規模事業主として支払った。

 

Lex社は1993215日に従業員500名を超えるAdobeシステム社(小規模事業主の減額措置の恩恵を受けない大規模事業者)に通常実施権(ラインセンス)を認めた。

 

1993111日に支払い期日に遅れている第2回目のメンテナンス費用を受理してもらうための嘆願書(遅延費用支払い費込み)を伴い

小規模事業主減額の恩恵を受けて支払った。 (2回目のメンテナンス費用の支払期限は1992年8月27日であった:著者注

 19931115日にUSPTOは同嘆願書を受理し、’188特許を復活させた。 

 

1998721日にUleadカリフォルニア社は、非侵害、無効性、及び、188特許の権利行使不能性に対する略式判決を請求した。

1998年09月28日にLex社は支払期日が超過した3回目のメンテナンス費用の支払いをUSPTOに受理してもらうための嘆願書を

伴いメンテナンス費用の支払いを試みた。 1999426日にUSPTOはLex社の同嘆願書を認容し、188特許を復活させた。

同嘆願書にはLex社が小規模事業主に相当することを明記していた。

20001226日及び28日にUleadカリフォルニア社及びUlead台湾社は、188特許が権利行使不能であって、無効で、権利喪失などを根拠に各位が略式判決の請求を行った。

 

Ulead社が主張する118特許の無効理由は以下2点である:

ー Lex社がUSPTOに対して小規模事業者のStatusを不正に主張したこと;

ー 間違った(減額の)メンテナンス費用の支払いを誠実に行っていないこと。

 

Lex社はUSPTOを欺く意思がなかったという理由で略式判決に反対した。 Lex社はさらにPTOが、Lex社が小規模事業主であるという間違って主張してしまったことを追認したため188特許は権利期間を満了していないことを主張した。

 

連邦地裁においてLex社が不正行為を行ったということとLex社が小規模事業主であることを誤報したことないしは欺く意図の何れに関しても真の事実争点が存在しないという理由で当該118特許が無効であると判示した。 同地裁は、さらにメンテナンス費用をフルに支払っていないということとLex社は小規模事業主を主張したのは不誠実によるものなのでメンテナンス費用の支払いの不足分を1.28(c)項の基に補充することはできないとし、同118特許は権利消尽の状態にあると判示した。

 

議論:

 

略式判決は事実関係の重大な争点がない場合において有効である。 DH Tech., Inc. v. Synergystex Int'l, Inc. (CAFC 1998) 

 

本事件は、適用を受ける資格のないものが小規模事業主の地位を米国特許庁に主張した場合に、その誤りによって特許が無効となるための判断基準は何かという重要な質問を提起するものである。

 

、根拠条文は米国特許施行規則第1.28条(d)項で以下の通り:

 

(d)

(1)  Any attempt to fraudulently

(i)              establish status as a small entity or

(ii)         pay fees as a small entity shall be considered as a fraud practiced or attempted on the Office.

           (2) Improperly and with intent to deceive;

    (i)              establishing status as a small entity, or

    (ii)         paying fees as a small entity shall be considered as a fraud practiced or attempted on the Office

 

37 C.F.R. 1.28(d) (1993)

 

USPTOは上記改訂施行規則によってCAFCの過去の不公正な行為に対する判断との矛盾点を解消した。 従って、CAFCの過去の不公正な行為の判断基準がメンテナンス費用支払いに関する米国特許庁を相手とする手続きにも適用されると判示した。 然るに、「重要性」と「意図」の各々に対する閾値判断と両者のバランスが考慮される。 さらに、立証責任は不正行為を主張する当事者が負い、同当事者は「明瞭で且つ説得性のある証拠」によって証明する責任を負う。

 

本事件において連邦地裁の重要性に対する判断に対しては重大なる疑義はないが、意図に関しては重要な事実争点がある。 騙す意図を直接的に証明する証拠は必要ないが、通常は特許権者の行動全般から推論される。 不正行為は陪審ではなく、裁判所の判断事項ではあるが、重要な事実の争点がある場合には略式判決は不適切である。

 

Lex社は小規模事業主の地位で減額のメンテナンス費用を支払ったことに対して、それは騙す意図のない、単純な間違いであったと主張し、同社の弁護士Haberman氏(特許弁護士ではなく不動産関係の弁護士:通常実施権を大規模事業者に与えることがライセンスサー「特許権者」の小規模事業主の地位を喪失させるということを知らなかった。)とWeiner弁護士(メンテナンス費用を小規模事業主減額で支払っていたことを知らなかった)の陳述によって当主張の信憑性を補強しようとした。

 

CAFCはLex社が支払い額不足分を補おうとしたときの米国特許施行規則第1.28条(c)項を引用し、同条同項は誠実性に関する質問を米国特許庁に委託又は要求していないと結論づけた:

 

If status as a small entity is established in good faith, and fees as a small entity are paid in good faith, in any application or patent, and it is later discovered that such status as a small entity was established in error, or that through error the Office was not notified of a loss of entitlement to small entity status as required by section 1.27(g)(2), the error will be excused upon: compliance with the separate submission and itemization requirements of paragraphs ©(1) and (c)(2) of this section, and the deficiency payment requirement or paragraph (c)(2) of this section.

 

37 CFR 1.28(c) 2001

 

当該規則があるに拘わらず、特許権者の間違いは善意で行われたということを確認する基準を満足しているか否かをUSPTOが質問する義務があるとは認識していないし,実際にそのような質問をしていない。 言い換えると、USPTOは特許権者の不足分の支払いを受領するか否かを判断する基準として1.28条(c)項を運用していない。 このような状況下において同規則が特許権者に対してUSPTOが質問をすることを要求しているかのように連邦地裁において限定的に解釈し、特許権が消尽するか否かを判断するのは妥当性を欠くと判示した。USPTOによって不足分が受領されるということによって,特許権者の瑕疵が治癒される。

 

然しながら、特許権者が1.28(c)項の誠実さの要求基準を満たさないことを周知の上で不足分の支払いをした場合には、特許権者は不公正な行為に関与したと判断される可能性はある。

 

争点は、特許権者が不正行為によって小規模事業主の地位を取得したのか、或いは、不正に小規模事業主の支払額減免を享受したのかである。 DH Technology 154 F. 3d at 1343

 

従って、争点はLex社が不公正な行為を行ったか否かであり、Ulead社が明瞭で且つ説得性のある証拠によって同不公正な行為を証明する責任があるとした。 当該立証責任は略式判決によって果たされるものではない。

 

結論:

 

破棄、差戻し

**********************************************

 

反対意見: NEWMAN判事:

 

省略