Bowman v. Monsanto

合衆国最高裁判決 

May 13, 2013

合衆国最高裁、第2世代の特許された種に特許権の消尽認めず。

Summarized by Tatsuo YABE

May 30, 2013

 

Bowman v. Monsanto Co. et al.

合衆国最高裁判決2013513

 

最高裁は、特許権消尽の法理は、特許されたものに対してそれが最初に販売された時点で権利が消尽するという規則を確認した。 今回の特許対象物は自己再生可能な種であり、当該種を購入した時点で当該種に対する特許権は消尽するものの、当該種を植え付けて栽培される作物(穀物)からとれる第2世代の種には消尽の法理は適用されないとした。 その理由は第2世代の種は特許された種を新たに製造する行為による産物であり、特許されたものを新たに生成する行為は侵害を構成する。 依って、Bowman氏(農業従事者)が穀物商からMonsantoの種(Monsanto製の除草剤に対する抵抗力がある)を含む穀物(MIXされた状態)を購入し、それらを植えてMonsantoの除草剤を散布し、生き残ったものから生成される種(Monsanto特許の性質を備えた種)には特許権は消尽していないということでBowman氏が敗訴した。

 

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2013年2月19日に合衆国最高裁で口頭審理 (白色Bowman氏:75歳)

Monsantoの特許は除草剤に抵抗力のあるマメ科の種に関する。

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但し、最高裁は判決文の末尾に注記しているが、今回の判決はあくまでMonsantoの特許された除草剤に抵抗力を有する遺伝子組み換えされた種(自己再生能力を有する)に対する特許権消尽に対する判決であって、それ以外の自己再生能力を備えたすべての特許対象物に適用されるものではないと述べている。 或いは、簡単にコピーができるコンピューターのプログラムに対する判決ではないことも注意を喚起している。 本判決は著作権の消尽に関する判決ではないことも追記している。

 

昨日(5月21日)この判決をSPINという勉強会でDiscussionしているときに、バイオに詳しい弁理士さんによると、Monsantoの特許は実は遺伝子組み換え技術に関するもので、Monsantoの除草剤に免疫を持たせるべく植物の遺伝子を組み換えるのは人為的にだけではなく、Monsantoの特許で保護される植物(Roundup Ready Seedsによる植物)の農園に寄生する昆虫或いは風によってもそれ以外の農園(Roundup Ready Seedsによらない植物農園)にMonsanto特許のジーンがもたらされ、Roundup Ready SeedsMonsantoの特許)に変換されることも可能であるとのことです。このような状況(人為的ではなく、昆虫あるいは自然の力でMonsanto特許クレームの構成要素を満たしてしまう場合)が発生した場合に、当該農園の所有者は侵害者となるのでしょうか? 勿論、当該農家がそのようなことが起こることを予期しており、Monsanto農場の昆虫を誘因するべく措置した場合には間接侵害が成立すると考えられる。 

 

ご意見・アドバイス? 宜しくお願いします。 Tatsuo.やべ@sbpatentlaw.com

 

(以下最高裁判決抄訳)

Bowman v. Monsanto Co. et al.

合衆国最高裁判決:2013513

 

CAFC判決を支持。

CAFC判決要約:

穀物商(商店)から購入された種に対しては特許権の消尽は認められるとしても、当該種からさらに特許された種を新たに生成する行為には特許権の消尽は及ばない(当該生成された種には特許権を行使できる)。

 

Monsantoの特許:USP5,352,605及びRE39,247

遺伝子組換えにより除草剤に抵抗力の強いマメ科の種に関する発明。 Monsanto製のこのような種をRoundup Ready Seedと称する。 RoundupとはMonsanto製の除草剤(一般的な除草剤の有効成分であるglyphosateを含有している)であって、Roundup Ready SeedとはMonsanto製の除草剤を散布しても枯れない、即ち、当該除草剤(glyphosateという有効成分)に抵抗力のある種を意味する。

 

Monsantoは当該マメ科の種を農家にライセンス契約(購入した種を1シーズンのみ植えること、栽培された作物の消費、販売を許可するものの、当該作物から得られる種を再度栽培する目的で保存することを禁止する)のもとに販売している。

 

 

Bowman氏は大別して2つのルートでMonsantoの種を購入していた。 @ 一つはMonsantoの関連会社よりRoundup Ready Seedを購入し、そのライセンス契約を順守していた。 A もう一つは、他の穀物商からMonsantoの種が混合されたマメ科の種を購入し、それらに除草剤を散布し、除草剤に耐久性のある種から成長した作物からとれる種のみを保存し、次のシーズンでの使用に充てていた。

 

MonsantoBowman氏の上記2番目の行為は特許権を侵害するとし、Bowman氏を提訴した。 Bowman氏は特許権の消尽を主張したが地裁は当該主張を認めなかった(侵害と判断した)。 CAFCは地裁判決を支持した。 

 

最高裁判決:

特許権の消尽は、特許権者の許可を得ることなく農家が特許された種を再生(種を植えて栽培し作物より種を得る)することを許容するものではない。

 

(a) 特許権消尽の法理によると、特許された「もの:article」に対する特許権は、当該もの(article)に対する権限の与えられた最初の販売によって、消尽する。Quanta Computer v. LG Electronics そして、当該ものにたいする後の購入者および所有者に対しても当該権利は消尽している。United States v. Univis Lens Co.

 

然しながら、当該法理には制限があり、特定のarticle(もの)に対してのみ特許権者の権利が消尽する。 即ち、特許された製品を購入したるものが、当該特許された製品と同じものを新規に生成することを許すことではない。 本事件においてMonsantoの特許されたシード(種)を植えて栽培することによって、Bowman氏はMonsantoの特許発明のコピーを生成したのであって、この行為は特許権消尽の法理による保護範囲を超える。 もしもBowman氏の行為が認められるのであれば(消尽の法理による保護範囲)、Monsantoの特許の価値はほとんどなくなるに等しい。 即ち、Monsantoが一度特許された種を販売すると、その購入者は特許されたものと同じ性質を持つ種を生成し、Monsantoの競合社になり、さらに、農家は一度種を購入するだけで済む。

 

(b) Bowman氏は、自身は通常の農家のように種を使っているだけなので特許の消尽が適用されるべきであり、このような通常使用に対してMonsantoが異議を唱えるという行為は特許権消尽の法理を否定することになると主張した。しかし、Bowman氏の主張は、「特許されたもの(article)のコピーを新規に生成する行為までは消尽理論が適用されない」という確立した消尽ルールに例外を認めるべきであると主張しているのと同じである。もしBowman氏の行為に消尽理論の例外が認められることになれば、特許された種の価値はほとんどなくなるであろう。 消尽理論を通常のように適用することによって、農家は特許された種を有効に活用できるであろう。 Monsantoの関連会社から、当該特許された種を消費のために購入しているというBowman氏の行為に鑑み、当該消尽が認められないとマメ科の種を有効に活用することができないとするBowman氏の主張には説得力がない。 事実、Bowman氏は穀物商から購入した種を栽培している農家を知らないことを認めている。 通常、農家がMonsantoより除草剤に抵抗力のある種を購入する場合にはMonsantoのライセンス契約を順守し当該種を植え、作物を得ることが可能である。