Bascom
Global Internet Services v. AT&T Fed. Cir. 2016年6月27日 判決文 by Judge Chen Concurring Opinion by Judge
Newman | Summarized by Tatsuo YABE –
2016-07-09
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Enfish判決(2016年5月12日)に続き、2016年6月27日CAFCは101条に対する新たな判決(本判決:Bascom判決)をだした。本判決においてもMayo・2パートテストの第1ステップと第2ステップを適用することでBascomの606特許クレームの101条保護適格性が判断された。地裁では606特許クレームの保護適格性が否定されたが本法廷は当該地裁判決を破棄差し戻しとした。Mayoテストの第2ステップの判断において、クレーム主題に「”inventive-concept”:発明概念」が存在することでAbstractアイデア(第1ステップで認定)を顕著に超えたものに変換しているか否かという判断がなされた。PTOの101条審査ガイダンスでは(STEP2b)ではクレームの例外規定以外の構成要素と組み合わせることでクレーム全体として例外規定を顕著に超えたものになっているか否かという判断に相当する。今回の裁判ではMayoテストの第2ステップの「例外規定を顕著に超えたか否か」を「発明概念」が存在するかで判断した。
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「発明概念」という用語が登場したのは最高裁判決(Alice:2014年)であり、Mayo判決の判断基準を踏襲するも第2ステップの判断(例外規定を顕著に超えたものに変換されているか?)に当該用語(クレーム主題に発明概念が存在するか否か)を判断基準に使った。この発明概念という用語の意味合いがAlice判決で明瞭に定義されていない(103条の非自明性とは違うという以外は)ので、実務者に多大な混乱をもたらした。当時、著名米国弁護士群によるセミナーでは101条判断の代用として103条を満たす場合には当然101条を満たすであろうというような説明もあった。然し、103条判断で101条判断を代用できると言い切れるのかは釈然としないというのが現状である。
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今回の判決において多数意見は地裁の「発明概念」に対する判断は103条判断に類似していると揶揄するも、多数意見自身も同様の判断をしている(ConcurringオピニオンでNewman判示はさらっと皮肉っている)。以下下線部(CAFCが言うところの「発明概念」)を参照されたい。どうみても仮想の先行技術(ごくごく一般的な汎用技術)とは異なるであろうという点を指摘しているとしか理解できない。即ち、新規と思える特徴をピックアップしている。
「即ち、本件606特許クレームにおいてはフィルター機能を有するツールをエンドユーザーから離反したる箇所に設置し、エンドユーザー個々のニーズに合致するカスタマイズされたフィルターを提供するということが「発明概念」に相当する」
要するに最高裁が明白に定義もしていない「発明概念」というような用語を使って、同概念がクレーム主題に存在するか否かを判断すること自体に無理がある。そこでConcurringオピニオン著者であるNewman判事の意見に注意を喚起したい。Newman判事は101条の条文に戻ろう、101条の立法趣旨は4つのカテゴリーに所属する新規で有用なものは保護適格性を有し、特許されるか否かは他の条文(112条、102条、103条)のハードルで結果を出せばよいという趣旨である。このNewman判事の意見はAlice v CLS事件(Fed
Cir. en banc:2013年)でMayo最高裁判決(2013年)のMayoテストの適用で混乱してしまったCAFC判決(10人の大法廷が5つの意見に分かれた)で自身が述べられた意見(*1)と整合性があり、且つ、Rader元Chief
Judgeが嘆きの文章[Additional Reflection (*2)]を付記された。その内容と重複する部分が多い(101条の条文に戻ろう!と明記された)。
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上記に鑑み実務者としては101条拒絶にどのように対応するか、確かに不明点が増すかもしれない。しかし、Practicalな対応としては5月12日のEnfish判決前に出されたPTOのメモランダム(2016年5月4日)に記載された「出願人の反論に対する評価(以下(*3)」に基づき101条拒絶に反論するのが最も安定的であり且つ効果的であると思料する。Enfish事件(2016年5月12日)後、速やかにさらなるメモランダムが公開されたが(2016年5月19日)同メモランダムにおいても2016年5月4日公開のメモランダムの内容は肯定されている。5月4日のPTOメモランダムは「出願人の反論に対する評価(以下)」の内容は2010年以降の4つの最高裁判決の判示事項に沿う。
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例:例えば本事件のBascom特許のクレームは以下「出願人の反論に対する評価(以下(*3))」(B)(iv)“当該技術分野(インターネット上でのコンテンツにフィルターを掛けるという技術)において周知、定常的ではない特定の構成要素(ISPの方にフィルターシステムを設置し、ニーズに合うフィルターを選択できる)が追加されており、クレームが特定の有益な適用(ユーザーのニーズに合致したフィルターをカスタマイズでき、ISPサーバーにフィルターが設置されているのでハッカーの侵入に対しより安全)を実現することに限定する”に基づきAbstractアイデアを顕著に超えたということを主張可能である。
(以上筆者)
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□□ 事件の背景:
特許権者:Bascom
特許:USP5,987,606号 (以下606特許)
特許の概要:ユーザー個別にカスタマイズされたコンテンツ視聴フィルターをISP(インターネット・サービス・プロバイダー:以下ISP)のサーバーに設けたフィルターシステムに関する。
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606特許は1997年3月19日の米国出願より権利化された。1997年当時、Netscape、MicrosoftのExplorer等のブラウザを介してインターネットが数多くのユーザーに利用されてきた。しかしある種のコンテンツへのアクセスを制限する必要に応じてフィルター技術が開発された。当時のフィルターはユーザーのローカルコンピューターにインストール、或いは、会社ではインターネットのユーザーとの間に設置されたサーバーにインストールされるものなどがあった。またAmerican
Online(ISP)は自身の遠隔サーバーにフィルターをインストールしているが単一のフィルター基準が採用されていた。606特許はユーザーにカスタマイズされたフィルターを提供するものである。
606特許の図1
121: Filtering Scheme
120: data base
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代表的なクレームは以下の2種類がある:|
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USP 5,987,606 |
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1.
A
content filtering system for filtering content retrieved from an Internet
computer network by individual controlled access network accounts, said
filtering system comprising: |
22.
An ISP server for filtering content forwarded to controlled access network
account generating network access requests at a remote client computer,
each network access request including a destination address field, said
ISP server comprising: |
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BascomはAT&Tを相手に侵害裁判を提起した。しかし地裁(N-D
TEX)はAT&T側の訴え却下の申し立て(606特許クレームは特許保護適格性を満たさない:101条違反)を認め606特許を無効と判断した。AT&T側は606特許で規定するフィルターは図書館員が特定の書籍を子供が閲覧するのを制限することと類似しており、606特許クレームの他の構成要素と組み合わされてもコンテンツの閲覧を制限する(コンテンツをフィルターする)というAbstractアイデアを101条の適格性を満たすものに変換するものではないと主張した。
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Bascom側の主張としては、606特許はコンピューターネットワークの分野で生じる問題に対するコンピューター技術に根差す解決策を与えるものなので606特許はAbstractアイデアに対するものではない。また606特許の発明時においてインターネットのコンテンツの視聴を制限する(コンテンツの視聴にフィルターを掛ける)という技術は長きにわたる懸案事項ではなく、且つ、基本的な事項ではなかった。606特許が仮にAbstractアイデアに対するものであるとしてもクレームで規定された構成要素との組み合わせによって「発明概念」を生じる。
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地裁はAT&Tの主張に同意し606特許を無効と判断した。
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□□ CAFCの判断:
地裁の訴え却下の認定に対してde
novo基準で判断する。地裁の101条判断に対してもde
novo基準で審理する。
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101条は新規で有用な手法、マシン、製造物、又は組成物、或いは、それらの有用な改良に対して特許保護を付与できうると規定している。最高裁は長きにわたり自然法則、自然現象、及び、Abstractアイデアは101条の適格性を満たさない例外であると判断してきた。
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Mayo判決において最高裁は2ステップでの保護適格性判断基準を判示した。第1ステップにおいてクレームが本質的にAbstractアイデアに対するものか否かを判断する。第1ステップでYESと判断される場合にはクレームの他の要素を個々に、且つ、クレームされた組み合わせで考慮し、これら他の要素によってクレームが保護適格性を満たすものに変換されているか否かを判断する。
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昨今のCAFC判決(Enfish判決:5月12日)においてデータベース・システムに特定な改良を齎す発明は保護適格性があると判示した。当該判決においてMayo・2パートテストの第1ステップにおいて当該発明はコンピューター技術に特定の改良に対するものと判断した。然しながら他の発明においては第1ステップにおいてクレームが何に対するものなのかを判断するのが困難な場合があり、そのような場合にはMayoテストの第2ステップを適用することで保護適格なものか否かの判断が明瞭になる。
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606特許はインターネットのコンテンツの視聴(コンテンツにフィルターを掛ける)に制限をすることに対するものである。606特許のクレーム1はコンテンツにフィルターを掛けるシステムに関し、クレーム22はコンテンツにフィルターを掛けるためのISPのサーバーに対するものである。
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コンテンツにフィルターを掛けるということはAbstractアイデアであるとした地裁判断に同意する。依って、Mayoテストの第2ステップにおいてクレームの他の構成要素によってクレームに発明概念が存在するか否かを判断する。ここで言う「発明概念」が存在するとはクレームの他の構成要素によってAbstractアイデアを顕著に超えたものに変換するということであって、Abstractアイデアの実行を指示すること、あるいは、Abstractアイデアを単にコンピューターに適用することではない。
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地裁は、606特許クレームの構成要素を個別にみたところ、それらは汎用コンピューター、ネットワーク、及び、インターネットの構成部材であって、個々には「発明概念」に該当しないと判断した。当法廷はこの地裁判断に同意する。
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但し、構成要素がクレームされたように組み合わされた場合にも「発明概念」に該当しないという地裁判断には反対である。地裁の「発明概念」の有無に対する判断は、詳細な理由は述べられていないが、103条で規定する非自明性の判断に類似しているように見える。「発明概念」はクレームの構成要素の各々が周知であるか否かを認定するだけでは不十分である。ここでは特に周知で且つ汎用部材であってもそれらの非一般的なアレンジメント(組み合わせ:配列)に「発明概念」を見出すことができる。即ち、本件606特許クレームにおいてはフィルター機能を有するツールをエンドユーザーから離反したる箇所に設置し、エンドユーザー個々のニーズに合致するカスタマイズされたフィルターを提供するということが「発明概念」に相当する。Bascomの主張では、ISPは、サーバーと通信されるユーザーのIDを特定し、ユーザーが要請するフィルターリングの種類(インターネットのコンテンツ)とユーザーの端末とを関連付けることが発明概念である。
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さらに、606特許クレームはインターネット上のコンテンツに対するフィルター技術の全てを占有するものではない、寧ろ、コンテンツのフィルターリングというAbstractアイデアを特定、且つ、個別に実行することを規定している。
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また、従来のフィルターはハッカーに対して脆弱であり、ユーザー端末のハード・ソフトの性能に依存するのみで、或いは、フィルターの設定に柔軟性がなく規格設定に制限されるというものであった。
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CAFCは2014年以降の自身の101条関連判決を幾つかピックアップし概説している。
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DDR Holdings LLC v. Hotels.com L.P. (Fed. Cir. 2014)
インターネットに特有の問題に対する技術的な解決手段をクレームしているので101条特許保護適格性を認めた。インターネット上でリンクをクリックすると別のサイバースペースに移動してしまい初期画面から離反してしまうという問題に対して第1Websiteを維持した状態で第2Websiteを視聴できるようなハイブリッドなWebページを構築した。
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OIP Technologies v. Amazon.com (Fed. Cir. 2015)
最適プライス(値段)の申し出をインターネットを介してメッセージを送信し、プログラムを介して自動的にプライスを設定するというシステムに関するクレームであって、Abstractアイデアに対するクレームで、101条保護適格性を有さないと判断した。
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Ultramercial Inc. v. Hulu, LLC (Fed. Cir. 2014)
クレームされたAbstractアイデアをインターネット上で利用することを占有すると判断し101条保護適格性を否定した。
Accenture Global Services GmbH v. Guidewire
Software
(Fed. Cir. 2013)
クレームされたAbstractアイデアを汎用コンピューターで実行することを占有すると判断し101条保護適格性を否定した。
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606特許クレームはインターネットのコンテンツ視聴に対しフィルターを掛けるというAbstractアイデアの利用を占有するものではない。606特許クレームはフィルターシステムの設置位置を特定しており、個々のユーザーのニーズに合うようにカスタマイズされたフィルターを提供しなければならい。
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結論:
606特許クレームはインターネットのコンテンツにフィルターを掛けるというAbstractアイデアに対するものである。しかしBascomが主張するようにMayoテストの第2ステップをパスするので101条の特許保護適格性が認められる。Bascomの主張にあるように、606特許の発明概念はクレームされた構成要素の組み合わせによってコンテンツのフィルターリングというAbstractアイデアを特定、且つ、現実的な適用に変換したという点にある。依って、訴え却下の申し立てを認めた地裁判決を破棄し、訴訟の再開を許容する。
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破棄・差し戻し
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Newman判示によるConcurringオピニオン:
多数意見に賛同するも、昨今、保護適格性の判断に関して無用に時間を費やしている。特許性の判断と保護適格性の判断を個別に行うことで法的コストを増大させ、特許を基礎とするビジネスを不確定なものにしている。保護適格性を判断するのにより柔軟な手法があるべきだ。Abstractアイデアの保護適格性を判断する代わりに特許性の判断に時間を割くべきであると考える。先に特許性を判断することで保護適格性の判断の必要がなくなる場合があるので、今回のような無用な法的コストを削減できうる。保護適格性を先に判断したところで特許性をパスするとは限らない。
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米国特許法第101条:
101条で規定されたカテゴリーに属する発見或いは発明は特許保護適格性を備え、後の特許性(新規性・進歩性)の判断をパスすることで特許可能となる。Chakrabarty判決(1980年)において最高裁は101条の条文において立法者(連邦議会)がANY(いかなる)という用語を追加した理由は特許法の保護範囲を広範にする意図があったことを示していると述べた。
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歴史的に観た場合に、裁判所は保護適格性の判断は不確定なものになってきている。本事案においても地裁とCAFC(控訴審)においてBascom特許に対する「発明概念」の理解の仕方が異なっている。私は保護適格性の判断に対して101条の条文の文言に戻ることを提案する。この条文に戻る限り定義されてもいない「発明概念」という基準を保護適格性判断の基準に適用する必要がなくなる。広範な権利範囲を有するクレームは他者が改良を生み出す道を閉ざしかねないという懸念があるが、新規なる広範な発明をなしたる者にも狭い範囲にしか権利を与えないという規則はない。
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特許性と保護適格性に関して:
新規且つ有用な機械、手法、製造物、組成物はAbstractアイデアではない。もしもクレームが広範すぎて抽象的(Abstract)な場合には特許性の判断をすることで問題(特許が有効か否か)は解決する。112条(a)項は明細書の記載要件を規定しており、112条(b)項はクレームが発明を明白且つ特定することを要求しているので過度に広範な抽象的なクレームはこれら要件を満たさない。このように112条の要件は特許性を判断する要件で特許保護適格性を判断するものではないが、Abstractアイデア(抽象的なアイデア)を除去する機能がある。最高裁(Mayo判決)も自認するようにすべての発明は幾分かはAbstractアイデアを利用、適用、或いは、それに根差すものである。101条適格性の判断は現実的には102条及び103条に類似する判断によって促進されること先例が示している。
AT&Tの訴え取下げの申し立てに関して:
地裁においてMayoテストの第2ステップの「発明概念」に対する両当事者の主張は結局のところ特許性に関連している。本控訴審においても同じことが繰り返された。Bascom特許クレームで規定されている構成要素全体には発明概念が存在するという多数意見に同意する。しかし地裁において唯一判断されたのは101条の保護適格性のみであり、控訴審にて破棄・差し戻しとなったため地裁で特許性に対して審理を再開しなければならない。然るに、Abstractアイデアであるか否かが争点であったとしても直接特許性の判断をすることでより効率的に、且つ、低コストで訴訟を完結することが可能となる。Alice判決或いはMayo判決においても2つの訴訟(Abstractアイデアか否かを判断することと特許性を判断すること)をすることを要求しているわけではない。クレームの101条保護適格性が争点になっていたとしても、特許性の判断が争点に解決を与えるとした場合には、地裁及び当事者に特許性を判断するという柔軟性が認められるべきである。クレーム主題の特許性が認められる場合には当該クレーム主題はAbstractアイデアではない。
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参考:
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(*1) □ Judge Newmanの意見(概要):
今回の大法廷での審理は、そもそもは101条の特許保護適格性に対する不確定さを少しでも緩和することが目的であったが、複数の判事グループが互いに整合性のない意見を出すことになってしまった。 司法(最高裁を意味していると考える(筆者))においてこの混乱を早期に解消することが必要である。少なくとも次の3点に関する明確な司法判断を希望する:(1)101条の条文に「保護適格性」が規定されているのか?(101条の条文のみで、そもそも保護適格性を判断したら良いのか?)(2)クレームの形式(方法、媒体、システム)によって101条適格性の判断基準が変わらないということを確認する;(3)実験使用は特許侵害を構成しないことを再確認する。Diamond
v Diehr判決を引用し、”…the system of
patents embraces “anything under the sun that is
made by man”であり、コンピューター実行形式で記載されたクレームがどれだけ広範な範囲をクレームしているか否かで判断するのではない。 クレームの範囲の妥当性に関しては102条、103条、或いは、112条によって決定されるのである。今回問題となる方法クレーム、媒体クレーム、及び、システムクレームの全ては101条の保護適格性を有する。
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(*2) □ Chief Judge Raderの嘆き(Additional
Reflection):
最後にRader判事長は今回の大法廷判決(大法廷が合意に至らなかったことに)に対する嘆きを5ページの追加コメントとしてまとめています。特に自分よりもシニアの判示(Lourie判事とNewman判事)が101条の解釈に関してここまでつまずいていることに驚きを隠せないと述べています。また、Diamond
v Diehr(1981年最高裁判決)で引用された1952年の特許法の立法趣旨(議事録)の有名な句である「anything
under the sun that is made by man」を引用し、ソフトウエア自身に対しても保護適格性を与えている欧州と日本の特許事情を述べています。 一言で言うならば、これだけ101条の解釈に混乱が生じているので、今回の事情を解消するには、条文に戻ろうということです。 101条の条文は”any”という用語を使用しており、また特許法第282条で規定している裁判における侵害者の防御(“defense”)としての特許の要件(‘condition
for patentability’)に101条の特許保護適格性は含まれない。 Rader判事長は今年で25年の判事の経験を踏まえて上記を述べるとともに、未来に今回のコメントをプラスに思い起こすことを期待すると括っています。
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(*3) □ 2016年5月4日メモランダムに記載された「101条拒絶に対する出願人の対応」:
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(i)
クレームを補正し(クレームにさらなる構成要素を追加、或いは、構成要素を補正し、クレームを全体として「例外」を顕著に超えたものにする、及び/又は、(ii)
審査官の101条拒絶理由が間違っているという反論、乃至は、証拠を提示し、101条拒絶に対応することが可能である。
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101条拒絶を受けた場合の出願人の対応の仕方
(A) クレームを補正し、或いは、クレーム補正しなくともクレームが「例外」を規定していないと反論する;
(B) クレームで規定している他の構成要素(「例外」以外の構成要素)によってクレームが全体として「例外」を顕著に超えたものになっていると反論する。
上記(B)で言う「顕著に超えた(“significantly
more than”」を主張するのには、
(i)
他の構成要素によってクレームの「例外」を有意義に限定する(meaningfully
limits);
(ii)
他の構成要素によって他の技術或いは技術分野に改善(向上)をもたらす;
(iii) 他の構成要素によってコンピューター自身の機能を向上させる;
(iv) 当該技術分野において周知、定常的ではない特定の構成要素(特徴)が追加されており、クレームが特定の有益な適用を実現することに限定する。-
Adding a specific limitation other than what is well-understood, routine and
conventional in the field, or adding unconventional steps that confine the claim
to a particular useful application.
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