■ Arisocrat Tech. v. International Game Tech. (CAFC decided on March 28, 2008)

 

クレーム1のMeans Plus Functionで表現された "game control means" に相当する明細書の構成(structure)が一般的なマイクロプロセッサとしか開示されていなかった。 CAFCは、当該明細書の開示のみでは、112条第6パラグラフで言う構造・構成(Structure)が開示されたいないと判断した。 プログラム関連発明の場合には、112条第6パラグラフで言う明細書で開示されたstructureとはTangibleな構造体(構成要素)という意味ではなく、一般的なマイクロプロセッサであれ、それがプログラムによって特定の機能を実行することになるので、この場合にはプログラムに相当するアルゴリズムが112条第6パラグラでいうstructureに相当する。 然るに、ゲーム・コンピューター関連発明或いはプログラム関連発明においては、マイクロプロセッサなどを開示するとともに、それがどのようなフローで機能を実行するかを説明するアルゴリズムを記載しておくことが必要である(筆者注)。

 

今回CAFCは、112条第1パラグラフで要求する実施可能要件(当業者が発明を実施できるレベルの詳細な記載)と同条文第6パラグラフで要求する機能表現されたクレームに対応する構成(structure)を記載するという要件の相違点を明瞭に判示している。  同112条第6パラグラフで要求する構成(Structure:アルゴリズム)が明細書に一切開示されていないので、112条第2パラグラフの基に、クレームの記載要件(明瞭な記載)を満たしていないと判断し、クレーム1を無効とする地裁の判決を支持した。

 

 

 Tatsuo YABE

 on  April 08, 2008

revised on April 12, 2008

 

   

Aristocrat社は米国特許6093102の保有者であり、同特許はプレーヤーが勝利の組合せ(Winning Combination)を選択できる電子スロットマシンに関する。

 

 

Claim 1 of USP 6,093,102  
A gaming machine

having display means arranged to display a plurality of symbols in a display format having an array of N rows and M columns of symbol positions,

game control means arranged to control images displayed on the display means,

the game control means being arranged to pay a prize when a predetermined combination of symbols is displayed in a predetermined arrangement of symbol positions selected by a player, playing a game, including one and only one symbol position in each column of the array,

the gaming machine being characterized in that selection means are provided to enable the player to control a definition of one or more predetermined arrangements by selecting one or more of the symbol positions (プレーヤー自らがwinning combinationの位置を設定可能である) and

the control means defining a set of predetermined arrangements for a current game comprising each possible combination of the symbol positions selected by the player which have one and only one symbol position in each column of the display means,

wherein the number of said predetermined arrangements for any one game is a value which is the product of k1 ... x ... ki ... x ... km where ki is a number of symbol positions which have been selected by the player in an ith column of the N rows by M columns of symbol positions on the display (0 < i <_ M and ki <_N).

 

 

争点は同特許クレーム1のゲーム制御手段(game control means)という構成要素が明瞭であるか否かである。

 

下級審(ネバダ地区連邦地裁)は同制御手段を means + functionクレームと解し、112条第6パラグラフの適用を受けると判断し、明細書で開示された構成とその均等物に限縮解釈されると判断した。 しかしながら、明細書に同構成要素の機能を実現するための構成が記載されていないので、同クレームは112条第2パラグラフの基に不明瞭であり、クレーム1は無効であると判示した。

 

CAFCは上記下級審の判決を支持した。 その根拠として以下の判例を引用した:

 

Donaldson大法廷判決(CAFC:1994年)

Means Plus Function形式で表現されたクレーム要素の権利範囲は明細書の開示及びその均等物に限縮解釈される。 然るに、明細書に当該構成要素のFunction(機能)に対応する構成が記載されていない場合には、112条第2パラグラフの基に不明瞭と判断され、クレーム全体が無効になる。

 

Medical Instrumentation & Diagnostics Corp. v. Elekta AB 344 F.3d (CAFC: 2007)

クレームの機能に相当する明細書の構成に対する開示が不明瞭な場合には、出願人は出願人としての義務を果たしたことにはならない、寧ろ、その行為は明細書の開示に一切限定されない機能的な表現をクレームしようという試みであると理解される。

 

VMS Gaming Inc. v. International Game Technology 184, F.3d (CAFC: 1999)

明細書に開示された構成とはコンピューターによって実行されるアルゴリズムである。 従って、クレームを明細書のアルゴリズムに限定的に解釈しなかった地裁の判断は誤りである。

 

Harris Corp v. Ericsson Inc. 417 F.3d (CAFC: 2005)

コンピューターによって実行される means + functionで表現された構成要素は、明細書中のそれに対応する構成であり、当該対応する構成とはアルゴリズムのことである。

 

本法廷:

Aristocrat社の反論で、明細書に開示した数式によって機能を実行した結果が説明されているとした。 しかし数式はどのように機能を実行するかというアルゴリズムではなく、単に機能を実行した結果を数学的に表現したに過ぎない。

 

さらにAristocrat社は図1およびTable1を参照し、これらがアルゴリズムであると主張したが、これらは記載されていないアルゴリズムを実施した結果の例にすぎない。 クレーム1で記載された数式と同様に、これら図1及びテーブルで開示されたWinning Combinationsは Means + Functionクレームでクレームされた機能を説明しているに過ぎない。 一般的な目的で使用可能なマイクロプロセッサを明細書で開示するだけでは112条第6パラグラフを満たすに十分な開示とはいえない。

 

    

 

112条第1パラグラフで要求する実施可能要件と112条第6パラグラフに基づき機能表現された構成要素の機能を実行するための開示要件とは異なる。 Aristocrat社の’102特許で開示された例(Examples)は当業者に同特許の発明を実施・使用することを可能にするレベルかもしれない、しかし’102特許の明細書には、機能表現されたクレームの機能を実行するための構成が開示されていない。 112条第1パラグラフで要求される発明された装置を実施可能にするための開示とは当業者がそれを学習し、同発明を実施・使用することができるに十分でさえあれば良い、しかし、112条第6パラグラフはクレームされた構成要素の権利範囲を明細書で開示された特定の構成とその均等物に限縮解釈するという全くことなる目的を遂行するためのものである

 

Intel Corp. v. VIA Techs., 319 F.3d (CAFC: 2003)

アルゴリズムの構成に対する開示が十分であるか否かは、当業者が同アルゴリズムをどのように理解するであろうかという観点で判断される。 しかしこの判示は本件では全く適用されない、なぜならAristocrat社の’102特許にはそもそもアルゴリズムが開示されていないからである。

 

以上