CAFC大法廷判決

Apple v. Samsung

2016107

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OPINION by en banc Court

Summarized by Tatsuo YABE – 2016-11-18

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本大法廷判決は、パネル判決(2016226日)を不服としたAppleが大法廷での審理を申請した結果、即断で大法廷審理が開始された、その結果である。通常、大法廷での審理は、余程重要な事案、或いは、CAFCパネル判決に整合性が乱れCAFCとして統一見解を出す必要が生じ、その上で数多くの利害関係者からの争点に対する助言(意見: amicus curie brief)を収集しそれらをレビュしてから始まる。結論から言うと今回の大法廷では8-3でパネル判決を破棄し地裁判決(Samsungに約$120Millionの損害賠償を命じた)を支持した。

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Appleの特許:

地裁判決

CAFCパネル判決

大法廷判決(8-3)

USP 5,946,647– Linking Relevant Actions

647特許

Samsung侵害

Samsung非侵害

 

Samsung侵害

USP 8,046,721 - Slide to Unlock

721特許

Samsung侵害

特許有効(非自明)

特許無効(自明)

Samsung侵害

特許有効(非自明)

 

USP 8,074,172 - Auto Word Correction

172特許

Samsung侵害

特許有効(非自明)

特許無効(自明)

Samsung侵害

特許有効(非自明)

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大法廷(8-3)が地裁判決を支持した主たる理由は地裁の事実審理がSubstantial Evidence2015Teva最高裁判決)でサポートされているということである。尚、大法廷がAppleの大法廷レビュの申請を受理した主たる理由は、自身のパネル判決が地裁で採用された証拠以外の外部証拠(辞書)を考慮しクレームの構成要素の意味合いを解釈したということである。

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依って少なくとも以下の点に関してSamsungとしては大法廷判決に異議を唱え最高裁に上告するであろう。

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1点:控訴審が地裁の事実認定を判断する基準(2015Teva最高裁判決)はSubstantial Evidenceであるが今回の大法廷はその基準に沿うか?

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2点:721特許クレーム(slide to unlock)の自明性判断において、先行技術(Neonode*1Plaisant*2)を組み合わせるのに動機付け(motivation to combine)がないとした大法廷の判断はKSR最高裁判決に鑑みて妥当か?

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3点:721特許クレームの自明性判断における「二次的考慮事項:secondary consideration」に対する大法廷の判断は、Graham最高裁判決、その他、先例に鑑み妥当か? 自明性判断において、二次的考慮事項にどの程度の重みを与えるか? 二次的考慮事項とクレームのNexusに関して、先行技術に開示されているクレームの構成要素 (Slide to unlock)Nexusがあってもよいのか?

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今回の大法廷判決は入り口からして合点がいかない(何故、大法廷で取り上げたのか?)、さらにKSR事件(2007年最高裁判決)の自明性判断基準に鑑みてもApple721特許の有効性が維持されたことには合点がいかない。KSR最高裁判決において、自明性判断で2つの先行技術を組み合わせるにあたり明白な動機付けがなくとも良いというのがの重要な判示事項の一つである。今回の大法廷判決はPre-KSR事件、まさにKSR最高裁前のCAFCパネル判決に相当する。多くの場合に最高裁が特許事案に関与すると「明白なCAFCの大法廷判決(今回の大法廷判決は大きな混乱と疑問が残る)」が破棄され、特許実務関係者を混乱させる(顕著な例としては、2010年から2014年の間に101条に関して4件の最高裁判決がだされ今なお実務者に混乱を与えている)。しかし、今回の場合は裁量上訴を受理され、今回の不思議な大法廷判決を最高裁が是正してくれることを期待したい。(以上筆者)

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事件の背景:

特許権者:Apple

被疑侵害者: Samsung

問題となった特許:

Appleの特許:

以下呼称

特許発明の概要:

USP 5,946,647

647特許

– Linking Relevant Actions

USP 8,046,721

721特許

– Slide to Unlock

USP 8,074,172

172特許

– Auto Word Correction

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AppleSamsungとの間で互いに特許侵害訴訟が長年係属しており、本事件ではAppleの上記3件の特許に関して以下のように略式判決がなされ、上記3件の特許をSamsungが侵害しており、721特許と172特許に対してはSamsungの無効主張が認められず有効性が維持された。同地裁判決を不服としSamsungCAFCに控訴したところ地裁判決が破棄された(2016226日)。AppleCAFCパネルにおいて地裁での証拠を超えた外部証拠(辞書を参酌し、647特許クレームの用語を解釈した)が採用され地裁判決が破棄されたとして大法廷でのレビュを申し立てた。大法廷でAppleの申し立てが受理され僅か7か月弱で今回の大法廷判決がだされた。

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[1] 地裁判決の概要:

Appleの特許:

 

647特許

Samsung侵害

721特許

Samsung侵害・特許有効

172特許

Samsung侵害・特許有効

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 [2] CAFCパネル判決の概要: by Chief Judge Prost; Judge Dyk; Judge Reyna

CAFCパネルで、3件の特許のうち、1件(647特許)は侵害判断、2件(721特許と172特許)に関してはその有効性(非自明性)に対する地裁判断がレビュされた。

 

Appleの特許:

 

647特許

非侵害

721特許

自明(特許無効)

172特許

自明(特許無効)

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[3] CAFC大法廷判決の概要

CAFC大法廷では、上記3件の特許に対する上記CAFCパネルでの判断がレビュされた。

判事:Prost (Chief Judge); Newman; Lourie; Dyk; Moore; O’Malley, Reyna, Wallach, Chen, Hughes; and Stoll

Moore判事による多数意見--パネル判決を破棄、(地裁判決を支持)

Prost; Dyk; Reyna判事による反対意見

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多数意見

大法廷判決では、2016226日のパネル判決を破棄し、特にCAFC(控訴審)における下級審の自明性判断に対するレビュ基準を再度判示した。CAFCが大法廷でレビュするに主たる至った理由のひとつ(Appleが大法廷でのレビュを申請した主たる理由)はCAFCパネルにおける審理において外部証拠(辞書でanalyzerの意味を参酌し、647特許クレームの意味合いを地裁とは違う解釈をした)を参酌したということである。今回の大法廷判決では控訴審においては [i] 地裁で使われた証拠に基づき、[ii] 地裁の事実判断に対してはあくまでSubstantial Evidence(十分な証拠で判断に至ったか:2015年の最高裁Teva判決)の基準で判断するとした。大法廷はさらに[iii]控訴の争点となっていない事実判断を破棄することはできないと述べた。

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上記理由で大法廷は自身のパネル判決を破棄した。判決文が反対意見を入れると100ページを超えるので721特許クレームに対してのみ、その概要を以下に要約する。(筆者)

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721特許の代表的なクレームは以下の通り:

USP 8,046,721 – Claim 7

クレームの概要

7. A portable electronic device, comprising:

a touch-sensitive display;

memory;

one or more processors; and

one or more modules stored in the memory and configured for execution by the one or more processors, the one or more modules including instructions:

to detect a contact with the touchsensitive display at a first predefined location corresponding to an unlock image;

to continuously move the unlock image on the touch-sensitive display in accordance with the movement of the detected contact while continuous contact with the touch-sensitive display is maintained,

wherein the unlock image is a graphical, interactive user interface object with which a user interacts in order to unlock the device; and to unlock the hand-held electronic device if the unlock image is moved from the first predefined location on the touch screen to a predefined unlock region on the touch-sensitive display.

721特許発明の目的は、携帯電話をポケットに入れたりしているときに歩行動作に応じてタッチスクリーンの画面が作動し全く意図していないアクション(メイル送信、電話を掛ける、データを消却・・: pocket dialing problemと判決文と表現している)が実行される場合がある。それを防止する簡易な手法と装置を提供する。

ロックを解除するためには、タッチ画面のロック解除のイメージ(402)を第1位置から第2位置に移動することで実行する。

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721特許の図5A〜図5C

ロック解除イメージ402404に沿って左から右にスライドする。

上記クレームの有効性を攻撃するべくSamsungは2つの先行技術を提示し、それらを組み合わせることで自明と主張した。尚、Apple社もこれら2つの引例によってクレーム7(及びその従属クレーム8)の全ての構成要素が開示されているということには反論していない。

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Neonode (*1)

旧式画面タッチ式の携帯電話の使用マニュアルで、デバイスがONされた後は画面上で指をスライドタッチして操作することが開示されている。

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Plaisant (*2)

携帯電話ではなく壁面に取り付けられるエアコンのタッチ画面の操作手法を示している。各種タッチ画面でのスイッチがあり、721特許に最も関連するスライド動作が開示されていると考える(注意:筆者はYouTubeからPlaisantを理解した)。

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大法廷は以下に列記する地裁での事実認定[1][3]Substantial Evidence(十分な証拠)で挙証されているとして地裁判決(721特許は自明ではない)を支持した:

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[1] NeonodePlaisantとを組み合わせることに対する動機付けがない。

Plaisantは壁に設置されるエアコンのタッチ操作パネルであって当業者がPlaisant文献の教示内容をNeonodeの携帯電話に組み合わせる動機付けがない。Samsungはこれら2つの引例を組み合わせることに対する動機付けを挙証できていないと陪審は判断した。

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[2] Plaisant文献はスライドタッチすることを否定している。

Plaisantには、スライド動作は6つのボタン操作(タッチ画面上での操作)のうち好適順位で5番目であると記録されている。要は好まれない操作であると認識されている。

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[3] 二次的要因(secondary consideration)を考慮すると721特許クレームは非自明である。

[a] 産業界における賞賛 (Industry Praise)

サムソンの技術者の記録にもAppleのスライド解除を賞賛する記録がある。Steveジョブ氏がApple社のイベントでiPhoneを用いスライド解除を実演したところ会場にどよめく賞賛が起こった。プレス(記者)も多く参加していた。

[b] 業界における模倣 (Coping)

Appleにとっての最大手の競合社であるサムソンでさえもその機能(スライド解除)を採用した。

[c] 商業上の成功 (Commercial Success)

iPhoneの商業上の成功はもとより、スライド解除の機能があるのとないのでは値段が変わるか否かを調査した結果、スライド解除機能の商売における重要性が明白な結果として出た。陪審も同意した。上記のApple社のイベントでジョブ氏がスライド解除を実演したときの会場のどよめく賞賛も商業上の成功の証拠となる。クレームで規定されたスライド解除の機能(特徴)と商業上の成功との間に明らかなNexus(結び付け)があることが証明されている。

[d] 長期にわたる必要性  (Long Felt Need)

ポケットダイアリングという問題が長年発生していたがこれという有効な防止手法が存在していなかったといことを陪審も認めた。

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反対意見 (Prost判事長、Dyk判事、Reyna判事)

反対意見の筆者である3名の判事の意見としては、CAFCが自明性に関する事案を大法廷で取り上げるのは1990年のIn re Dillon事件以来、26年ぶりで、且つ、両当事者のさらなる意見はおろか、裁判所の助言者(Amicus Briefs)及び特許庁の助言も聞かずに大法廷で取り上げるのは異例のことである。裁判長であるProst判事も本事案を大法廷で取り上げる理由が理解できないと述べている。

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例えば、KSR事件(2007年最高裁)の判示にあるように、引例同士を組み合わせる動機付けがあるか否かは事実判断ではなく法律判断である。さらに、Graham判決とKSR判決から明らかなように、2次的考察(客観的な考察:商業上の成功云々・・)をどの程度考慮するかは裁判所の仕事(法律判断)である。

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事実、721特許クレームのslide to unlock(指を画面上でスライドさせてロックを解除する)の特徴はNeonode引例に開示されている。さらに、172特許のauto correction(自動スペル訂正)の特徴はRobinson引例に開示されている。さらに、多数意見では引例同士を組み合わせるには特別の動機付けが必要である・・・はKSR判決に真っ向から反対である。

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3名の判事に共通するのはそもそも今回大法廷で審理される要件を満たしていない。即ち、大法廷で審理をするには、パネル判決(複数)の整合性を維持するために統一見解を出す必要性が生じた、或いは、大法廷で審理をするに値する特別の重要性がある場合のみである。また、司法経済の原理に鑑みても、単に、パネル判決(単数)に同意できないという理由のみで大法廷審理は実施されるべきではない。

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以下参考:REFERENCES

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(*1) Neonode N1 Quick Start Guide

旧式画面タッチ式の携帯電話の使用マニュアルで、デバイスをONにするためには画面をタッチすることは開示されていないがONされた後は画面上で指をスライドタッチして操作することが開示されている。

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(*2) PlaisantTouchscreen Toggle Design 1992 by Catherine Plaisant

以下の図は筆者がYouTubeからコマ送りでコピーペーストしたもの。携帯電話ではなく壁面に取り付けられるエアコンのタッチ画面の操作手法を映像で説明しており、各種タッチ画面でのスイッチがあり、721特許に最も関連する画面操作は以下と考える。以下に示すように指をタッチ画面上で左右にスライドすることでON/OFFに切り替わる状態が理解される。

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代表的なクレーム:

647特許

クレーム

 

 

1. A computer-based system for detecting structures in data and performing actions on detected structures, comprising:

an input device for receiving data;

an output device for presenting the data;

a memory storing information including program routines including

an analyzer server for detecting structures in the data, and for

linking actions to the detected structures;

a user interface enabling the selection of a detected structure and a

linked action; and

an action processor for performing the selected action linked to the

selected structure; and

a processing unit coupled to the input device, the output device, and the memory for controlling the

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172特許

クレーム

 

 

18. A graphical user interface on a portable electronic device with a keyboard and a touch screen display, comprising:

a first area of the touch screen display that displays a current character string being input by a user with the keyboard;

and

a second area of the touch screen display separate from the first area that displays the current character string or a portion thereof and a suggested replacement character string for the current character string;

wherein;

the current character string in the first area is replaced with the suggested replacement character string if the user activates a key on the keyboard associated with a delimiter;

the current character string in the first area is replaced with the suggested replacement character string if the user performs a gesture on the suggested replacement character string in the second area; and

the current character string in the first area is kept if the user performs a gesture in the second area on the current character string or the portion thereof displayed in the second area.

 

(1) US Patent Related 

(2) Case Laws 

(3) Self-Study Course

(4) NY Bar Prep

(5) LINKS

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