Advanced Steel
Recovery v. X-Body Fed.
Cir. Decision 2014-1829 2015-11-12 | “Proximal End”という用語の解釈? 文言上と均等論適用時の権利範囲? | By Tatsuo YABE 2016-01-10 |
|
本事件は久々に見るDOE侵害の適用に対する判決である。争点はクレーム1の文言で「AがBの隣接端部に連結されている」という特徴が規定されている。なお、Aは油圧ピストンでBはAの作動によって水平方向に摺動するコンテナーでAの位置から見て遠方端部と隣接端部があり、「Aは当該隣接端部に連結されている」と規定されている。 イ号の形態は、AとBに相当する部材は存在しており、BはAの作動によって摺動する、但し、AがBの長手方向の隣接端部から35%程度離間した部位に連結されているという状態であった。 文言上侵害なしということは明白であり、均等論侵害の判断として機能・手法・結果テスト(3パートテスト)を適用した。少なくとも3パートテスト(機能・手段・結果)の手法Prongを満たさないとして均等侵害が否定された。 手法Prongを満たさないという判断理由は均等論の適用によって、端部から長手方向に35%離間したイ号を均等と認めると「隣接端部」に連結されているというクレーム1の特徴を無にすることになり、Warner-Jenkinson判決で判示したAll
limitationルールによって許されないとした。さらに、分別のある陪審(reasonable
jury)が、35%離間したイ号の形態と「隣接端部」に連結されているという特徴とが非実質的な差異しかないとは理解しないであろうと述べた。
|
文言侵害および均等侵害を判断する前に当然のことながらクレーム解釈があり、当該解釈の基本手法がコンパクトにまとめられている。訴訟実務を専門としない出願実務者にとっては明細書作成実務で留意するべきポイントを再確認できると思います。例えば、クレームで隣接端部に連結されているというところまで限定する必要はあったのか、隣接端部と記載した場合に均等論の適用幅はどのように判断されるのか・・?
(以上筆者注)
|
****************************************************
Fed. Cir. 判事-
Prost判事長; Moore判事;
Stroll判事(No Dissent: 反対意見なし)
特許権者:
Advanced Steel Recovery (Advanced Steel)
被疑侵害者:
X-Body Equipment, Inc. & Jewell Attachments LLC
|
■問題となった特許USP
No. 8,061,950号の概要:
商品(バルク材)で満たされたコンテナーを搬送用のトラックの荷台(等)に積荷するためのシステムに関し、上方に開口するコンテナーパッカー6に商品(バルク材)が供給され、油圧動力によって作動するピストン・シリンダーユニット30によってコンテナーパッカー6が搬送用コンテナー8まで移送される。 その後に第2ピストン・シリンダー機構56によって当該コンテナーパッカー6に収納された商品が押し出され搬送コンテナー8に収容される。
クレーム1(争点部分のみ: 実際には本書面では2ページ全体に及ぶ非常に冗長なクレームである)
A
container packing system, which comprises: a transfer base including proximate
and distal ends and a container packer guide; a container packer including a
proximate end, a distal end with an opening, opposite sidewalls, a floor and an
interior; said container packer being movable longitudinally along said
container packer guide between a retracted position on said transfer base and an
extended position extending at least partially from said transfer base distal
end; ………
said container packer drive comprising a
container packer piston-and-cylinder
unit connected to said transfer base proximate end and said
container packer proximate end; ……………
a transport container selectively located
in proximity to said transfer base distal end and adapted for selectively
receiving at least a portion of said container packer with said container packer
in its extended position.
■Background:
Advanceはバルク材で満たされたコンテナーの積卸システムおよびその手法に対する950特許の権利者であり、X-Bodyを相手に侵害訴訟を提起した。問題となった特許クレーム1の構成要素にはピストン・シリンダーユニットがコンテナーパッカーの隣接端部に連結されているという特徴が規定されており、X-Bodyが販売する被疑侵害品(Acculoader装置)の形態はピストン・シリンダーユニットがコンテナーパッカーの端面からその長手方向に35%離間した床部に連結されている。非侵害の略式判決が認められ地裁は「隣接端部」という用語の意味合いを最端部(縁部)と解釈し、合理的な(分別のある)陪審であればAcculoader装置の連結部が隣接端部に固定されていると解釈しないとして非侵害(文言および均等論適用)と判断した。
|
■争点:
クレーム1のピストン・シリンダーユニットがコンテナーパッカーの隣接端部に連結されているという特徴が規定されており、「隣接端部」の解釈が争点となった。より詳細には「隣接端部」とは全く端の部位(extreme
edge:縁部)のみを意味するのか、縁部(extreme
edge)から35%離間した位置に連結されたイ号の形態も含むのか?
|
■CAFC判決の概要:
|
判決
地裁判決(非侵害)を支持する。
|
クレーム用語の究極の解釈および内部証拠に基づくクレーム解釈は法律解釈であり、控訴審においてde
novoでレビュする。但し、地裁の外部証拠に基づく事実認定に対してはクリアエラー基準(明らかな間違いがある場合のみ否定できる)で審理する。Teva
Pharma. USA, Inc. v. Sandoz, Inc., S. Ct. (2015) クレーム用語は通常および一般的な意味合いで解釈される。
|
Advanceは「端部」という用語は遠隔端部の反対側の部分あるいは領域を含むと主張している。さらにクレームの「隣接端部」は後半部あるいは遠隔端部の反対側のいかなる部分も含むという解釈が辞書から理解されると主張している。 当該主張は認められない。
|
文言侵害に関して:
X-BodyのAcculoader装置のピストン・シリンダーユニットはコンテナーパッカーの端部からその長手方向に35%離間した箇所に連結されている。以下図参照
|
上記状態が「隣接端部」に連結されているというクレーム1の特徴を満たすとは分別のある陪審は理解しないであろう。よって地裁判決(文言侵害なし)を支持する。
|
均等論侵害に関して:
均等論侵害の判断は事実問題であるが、分別のある陪審がクレームと被疑侵害の形態が均等と判断しないことを支持する証拠がある場合には、地裁は一部あるいは全体的な略式判決の申し立てを認める義務がある。Warner-Jenkinson
v. Hilton Davis Chem, 520 U.S. (1997) 特許権者の側が両者(クレームされた発明と被疑侵害の形態)の間に非実質的な差異しか存在しないことと機能・手法・結果テストを満たすことを証言しなければならない。Aqua
Tex Indus., Inc. v. Techniche Sols. 489, F. 3d
(Fed. Cir. 2007) 尚、注記すべきは均等論の適用にも制限がある。 すなわち、All
limitationルール(構成要素ごとに判断すること:クレーム全体とイ号を比較しない)、経過書類禁反言、クレーム用語に内在する減縮解釈等によって均等の適用幅に制限が生じる。Moore
U.S.A. v. Standard Register Co., 229 (Fed. Cir.
2000)
|
均等論侵害を成立させるためにはAdvancedは機能・手法・結果テスト(3パートテスト)のもとに証拠を提示しなければならない。
Augme Techs v. Yahoo!
Inc. (Fed. Cir. 2014)
クレームされた発明と被疑侵害の形態が実質的に同じ機能を実現し、同じ結果を達成するとしても、異なる手法によってそれら(機能と結果)を達成するのでは均等論侵害とはならない。Perkin
- Elmer Corp. v. Westinghouse Elec. Corp. (Fed.
Cir. 1987) 本事件でAdvanceはクレームされた発明と実質的に同じ手法を用いるということを挙証していない。
|
Advancedの挙証(専門家による供述書)では、Acculoader装置のパッカーは水平な案内部に沿って移動するし、シリンダーも油圧で作動するので、ピストンをコンテナーパッカーの底部中間部に固定するのと完全なる端部に固定するのでは実質的な差はないと主張している。しかしAdvancedの主張の根拠たる案内部と油圧作動型のシリンダーはクレーム1の他の部分で規定する構成要素であって、問題となるクレームの構成要素(ピストン・シリンダーユニットはコンテナーパッカーの隣接端部に固定されている)に対する3パートテストの機能を実現する手法に対する分析ではない。均等侵害の挙証責任を負う特許権者は他の構成要素に対して3パートテストを適用することで問題となる構成要素の均等を主張することはできない。 即ち、それを許容するとWarner-Jenkinson判決で判示されたAll
limitationルールを無効にすることになる。 クレームされた発明と被疑侵害品との全体的な類似点に関する一般化した証言は均等論侵害の挙証を充足しない。
|
クレーム1の問題となる用語、「隣接端部」は絶対的な端部から幾分か離間する状態をすべて排除するとは解釈されないが、地裁の「分別のある陪審が端部より長手方向に35%離間した連結箇所をクレームの隣接端部と均等であると解釈しないであろう」という略式判決に間違いはない。 均等幅を広げることによってそもそものクレームの権利範囲から離脱することは許されない。 本事件の場合、均等幅をAcculoader装置の連結部を含むまで広げるとクレームで規定された明白且つ的確な構造の限定事項(特徴)を無視することになる。依って地裁の略式判決(均等侵害なし)は間違いではない。
|
上記理由によって地裁の略式判決(3パートテストに基づき均等侵害はない)を支持する。