ABBOTT
LAB. v. SANDOZ; and Teva 2007-1400 LUPIN
v. ABBOTT 2007-1446 CAFC en banc Decision Issued
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Summarized by Tatsuo YABE On
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今回の大法廷判決で過去に全く矛盾していた2つのCAFC判決(Atlantic
Thermoplastic判決; Scripps判決)でプロセス部分を限定であると判示したAtlantic判決を支持し、プロセス部分を限定としないと判示したScripps判決を否定した。 但し、同大法廷判決でプロセス部分を限定事項と解釈するというのは権利行使の段階であり、権利取得の段階に関しては明瞭には言及していない。 然し、Atlantic判決を支持するということから示唆されているように、プロセス部分は審査段階においては、審査便覧(MPEP)2113で規定されているように基本的には限定事項(構成要素)とは解釈しないという運用が今後も継続されるであろうと理解される。 然しこのように審査段階で限定と解釈しないプロセス部分が権利行使の段階では限定となるというようなクレームの構成要素の解釈に非整合な基準をもたらすことの問題は重大であると考えます。 依って、今後この矛盾点(非整合性)を解消あるいは緩和するために審査便覧2133の改訂があるのか、それともプロダクトバイプロセスクレームの審査段階でのプロセス部分の解釈に関するCAFC判決が出されるのかWatching要である。 このようにクレーム解釈に混乱をきたす要因を内在するものの、本判決はCAFC大法廷判決である以上は、本判決が破棄されるのは合衆国最高裁判所が上告を認める場合でしかない。 しかし合衆国最高裁が上告を認める確率は数%に留まっている。 依って、今後暫くは上告の有無、あるいはCAFCの今後の判決を継続的にWatching要であると思うが、現実的にはプロダクトバイプロセスクレームでライセンス契約を結んでいる場合にはライセンス費用の見直しが可能であると考えます(ライセンシーにとっては有利な判決である。 即ち、非侵害を主張できる可能性大)。 尚、権利取得時においては、できるだけ物クレームか方法クレームの2種類を併用し、プロダクトバイプロセスクレームの使用は極力避けることが重要であろう。(筆者注)
(1) 多数意見の概要:
Michel判事,
Rader判事; Bryson判事; Gajarsa判事, Linn判事, Dyk判事, Prost判事,
Moore判事
Sandoz及びTevaに対しAbbottが起こした仮差止請求を破棄した下級審(イリノイ州北部地区連邦裁判所)の判断を支持する。
バージニア州東部地区連邦裁判所の略式判決(Lupin社はUSP’507を非侵害)を支持する。
Abbott
LaboratoriesはUSP4935507特許の独占的ライセンシーである。
Product
by Processクレームに関して問題となった同特許のクレーム2、5は以下の通りである:
クレーム2.
Crystalline
7 - [ 2 - (2 – aminothiazol – 4 - yl) – 2 -
hydroxyiminoacetamido] – 3 – vinyl – 3 - cephem – 4 -
carboxylic acid which is obtainable by acidifying
a solution containing 7 - [2 - (2 – aminothiazol – 4 - yl) – 2
– hydroxyiminaoacetamido ] – 3 – vinyl – 3 –
cephem – 4 - carboxylic acid at room temperature or under warming.
クレーム5.
Crystalline
7 – [ 2 – (2 – aminothiazol -4- yl) – 2 –
hydroxyiminoacetamido] – 3 – vinyl – 3 – cephem –
4 – carboxylic acid which is
obtainable by cephem – 4 – carboxylic acid in an alcohol,
continuing to stir the solution slowly under warming, then cooling the collusion
to room temperature and allowing the solution to stand.
プロダクトバイプロセスクレーム(product
by process claim)のプロセス部分をクレームの構成要素と解釈するか否かに関して、CAFCは1991年のScripps判決(侵害判断時にプロセス部分は構成要素とは解釈しない)と1992年のAtlantic
Thermoplastics判決(侵害判断時にプロセス部分も構成要素と解釈する)で真っ向から対決していた。 Scripps判決もAtlantic
Thermoplastic判決もCAFCの3人のジャッジパネル判決だったので、今回CAFC大法廷判決でAtlantic
Thermoplastic判決が正しく、Scripps判決は間違いであると明言した。 即ち、侵害判断時にはプロダクトバイプロセスクレームのプロセス部分は構成要素と解釈し、同プロセス部分を被疑侵害物が文言上あるいは均等論の基に満たさなければ非侵害であると判示した。
さらに、今回の大法廷判決はobtainable
(得ることが可能である)というクレーム表現(a product A
obtainable by process B)は、obtained
byと同義であると判示した。
但し、大法廷判決の多数意見は侵害判断時にはプロセス部分は構成要素であると明言したが、有効性の判断、或は、特許性を判断するときに構成要素(限定事項)と解釈するか否かに関しては明言していない。 然し、Atlantic
Thermoplastic判決において特許性を判断するときと、侵害判断時におけるプロダクトバイプロセスクレームのプロセス部分の解釈が異なることは容認されており(侵害判断時にはプロセスを限定事項と解釈するが、特許の有効性を判断するときにはプロセスの限定に重点をおかない)、審査便覧(MPEP)2113においても同趣旨に基づく記述がされている。 依って、今回の大法廷判決多数意見がAtlantic
Thermoplastic判決を支持するとした以上は、USPTOでの特許性判断時にプロセス部分の解釈に関しては構成要素と解釈するかは従前の手法で判断してよいということを黙示的に認めたと理解される。 従って、特許出願審査においては、審査便覧(MPEP)2113が妥当する、即ち、プロセス部分は基本的には特徴と見做さない。
MPEP2113:
"[E]ven though product-by-process claims are limited by and defined
by the process, determination of patentability is based on the product itself. The
patentability of a product does not depend on its method of production. If the
product in the product-by-process claim is the same as or obvious from a product
of the prior art, the claim is unpatentable even though the prior product was
made by a different process." In re Thorpe, 777 F.2d 695,
698, 227 USPQ 964, 966 (Fed. Cir. 1985) (citations omitted) (Claim was directed
to a novolac color developer. The process of making the developer was allowed.
The difference between the inventive process and the prior art was the addition
of metal oxide and carboxylic acid as separate ingredients instead of adding the
more expensive pre-reacted metal carboxylate. The product-by-process claim was
rejected because the end product, in both the prior art and the allowed process,
ends up containing metal carboxylate. The fact that the metal carboxylate is not
directly added, but is instead produced in-situ does not change the end
product.).
>The structure implied by the process steps should be considered when
assessing the patentability of product-by-process claims over the prior art,
especially where the product can only be defined by the process steps by which
the product is made, or where the manufacturing process steps would be expected
to impart distinctive structural characteristics to the final product. See,
e.g., In re Garnero, 412 F.2d 276, 279, 162 USPQ 221, 223 (CCPA 1979)
(holding "interbonded by interfusion" to limit structure of the
claimed composite and noting that terms such as "welded,"
"intermixed," "ground in place," "press fitted,"
and "etched" are capable of construction as structural
limitations.)<
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(2) 反対意見の概要:
尚、Newman判事(Mayer判事及びLourie判事)は上記多数意見に反対を唱えており(31ページの多数意見よりも長い39ページの反対意見:、その最大の理由は、特許性判断時と(審査段階)と侵害判断時(権利行使時)でプロセス部分を異なる基準で判断することは許しがたいことであるとし、過去のCAFC判決で同趣旨の重要性を判示した判決(Amgen
v. Hoechst Marion Roussel Fed. Cir. 2003: Amazon.com v. Barnesandnoble Fed Cir.
2001: C.R. Bard. V. M3 Systems Fed
Cir 1998: Beachcombers v. WideWood
Creative Fed. Cir. 1994: Smithkline
Diagnostics v. Helena Laboratories Corp. Fed Cir. 1988)を引用し、多数意見の矛盾点とそれから派生する問題と社会的影響の重大さに注意を喚起している。