トランプ第2次政権: 米国特許庁の動向とPresidentialメモランダム

2025年1月29日
Tatsuo YABE 


「1」USPTOの副長官
2025120日付でCoke Morgan Stewart氏がUSPTOの副長官となる。
https://www.uspto.gov/about-us/coke-morgan-stewart

上記USPTOURLによるとStewart氏は合衆国商務省の知的財産担当副長官およびUSPTOの副局長を務めることになります。副長官の場合には連邦議会上院の承認が必要ないが副長官としての在任期間は210日となっており、その間により相応しい人をトランプ大統領が任命し上院で承認されれば交代となる。言い換えると、USPTOは暫くの間は正式な長官ではなくStewart副長官によって運営されることになる。合衆国の政府の要職では比較的良くあることです。
Coke Morgan Stewart | USPTO

「2」トランプ大統領による政府職員の採用一時停止とテレワークの禁止
トランプ大統領は就任(2025/1/20)と同時に数多くの大統領令に署名した。その中でメキシコとの国境の壁を完成する、不法移民の強制送還、性別は男女のみ(トランスジェンダー認めない)、女子スポーツにトランス女子の参加を禁止する、メキシコ湾をアメリカ湾に命名する、WHOからの離脱(再考中)、パリ協定からの脱退などは新聞でも大きく取り上げられている。大統領令に加えて大統領のメモランダム(Presidential Memorandum: PM:「メモランダム」とは柔和な感じだが実際には命令に近い)というアイテムがあり、我々特許関係者に関して言うと行政機関全体に対して取り敢えず新規採用を停止するということ、さらにはテレワークを辞めて本来の政府機関の建造物に戻って仕事をせよというPMがある。

PMを受けて、2025122日に行政庁のOPM(合衆国人事管轄庁)より各省庁に対して125日付でPMを施行し、特段の事情の無い限りできるだけ早期にテレワークを中止するよう指示した。コロナの蔓延が始まった2010年初頭にOPMはテレワークを推進するよう要請したが現在もテレワークが定着しており特にDC近辺の連邦政府の建屋がほぼ空になり周辺の経済にも負の影響があると共に政府によるサービスの低下、さらには職員の指揮監督も徹底しにくくなっている。

 現在特許庁の14000人の職員のうち凡そ13000人がテレワークをしており、これら職員(主に審査官)が各職場に戻って仕事をするというのは果たして現実味があるのだろうか? USPTOの組合がPMに対してどのように反対するのか、実力行使(ストライキ)に突入することになると現在深刻なバックログ(出願審査の遅れ)をどう解消するのか我々の実務の遂行にも影響を及ぼす可能性がある。