Patent Eligibility Restoration Act of 2024 101条(特許保護適格性)改正法案
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2024年9月6日、合衆国連邦議会の下院議員Kiley氏(共和党:カリフォルニア州)とPeters氏(民主党:カリフォルニア州)によって起草された特許適格性改正法案が公開された。同改正法案によるとMayo/Alice合衆国最高裁判決を含む過去の司法判断によるJudicial Exceptions(司法によって特許適格性が否定された主題)を全てリセットし、条文によって特許保護非適格となる対象物(発明主題)を明瞭に規定している。
昨年、2023年6月には上院議員Till氏とCoons氏によって起草された特許適格性改正法案が公開された。尚、2022年8月3日にも上院議員Till氏による同内容の改正法案が公開された。今回の改正法案の101条(特許適格性)の内容は略同じであるが、Section 1とSection 2を追記し、Section 2では司法によって101条の適格性判断が如何に混乱したかを赤裸々に綴っている。
以下、この業界で著名なPatentlyoの創設者Dennis Crouch氏の2024年9月8日のWebsiteが、101条が引用された連邦裁判所の事件の数をグラフで作成されています。
2010年のBilski最高裁判決~2014年のAlice最高裁判決の4年間で最高裁が4件の101条関連の事件を判断した。この4年間の最高裁の関与によって裁判所が101条判断に混乱を極めていることが明らかである。2020年以降やや下降気味とも見れるが101条のハードルが低かった2010年以前とは比較にならない。このグラフから、この混乱した101条適格性判断を司法によって解決することが無理なことは明らかで、法改正しかないといのが現状である。
アメリカは11月の大統領選を控え、終わりの見えない諸外国での紛争、物価高、ガソリン価格の高騰、凶悪犯罪の増加、不法移民の問題など、優先順位の高い問題が山積みの状況である。この状況を考慮すると本議会の会期中に本法案が可決する可能性はかなり低いと思える。しかし、毎年この法案が(ある意味でより強力な文言を加えて)出ているので、数年以内には101条は改訂されMayo/Aliceで混乱してしまった特許保護適格性の判断基準が2010年以前の低いハードルに戻ることを期待する。(以上筆者)
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本法案の概要は以下の通り:
SECTION 1:
特許適格性回復法案と称する。
SECTION 2:
連邦議会は昨今の特許適格性に関して以下のように考える。
(1)特許保護適格性(101条)に対する昨今の法解釈を大胆に変更する必要がある。
(2)CAFC及び他の裁判所において101条の適格性に対して司法の例外を創出したがゆえに多くの発明の特許保護適格性が否定された。
(3)上記(2)による司法の例外によって裁判所の判断、及び、特許の実務家に多大な混乱を招いた。
(4)CAFC及び連邦地裁の多くが101条の適格性判断に対するより詳しいガイダンスの必要性を切実に望んでいる。さらに、特許権者及び実務家の多くも101条の適格性の判断基準が混乱を極めており、当該基準を自信を持って適用できないと不平を述べている。
(5)本改正法案によって、101条の適格性を以下のように明確化する:
(A)過去の司法による例外規定を全て排除する;
(B)改正法案の(D)及び(E)で列記するものを除いて如何なる発明または発見も適格性を有する;
(C)102条、103条、112条が特許性を判断する要件であり、これら要件を適格性判断に用いてはならない;
(D)以下は適格性がない:
(i) 発明の部分を構成しない数学の公式(101条、(B)号のカテゴリーに属する);
(ii) 人間の思考のみ(人の精神活動のみ);
(iii) 人の体内に存在する遺伝子そのもの;
(iv) 自然界に存在するそのもの;
(v) 実質的には経済、金融、ビジネス、社会、文化、または、芸術;
(E)上記(D)(v)において
(i) 人によって行われる方法であって、ビジネス手法、ダンスの動作、結婚の申し込みの仕方、及び、それに類する方法、さらに実質的なコンピューターの機能に関連することなく、例えば、単に「・・・をコンピューターで実行する」と記載する場合には適格性を満たさない;さらに、
(ii) 機械(コンピューターを含む)或いは製法を用いないと現実的には実行できないプロセス(方法)は適格性を満たす;
SECTION 3:
(a) 米国特許法 Chapter 10(Patentability of Inventions)を以下のように改訂する:
第100条
(a)(1)(b)にて
(A)
「周知のプロセスを新規に利用することを含む」を「周知或いは自然界で起こる方法を利用、適用または製造する方法を含む」に改訂する;
(B)次のパラグラフを100条の終わりに追加する:
発明或いは発見という用語に対し「有用な(useful)」とは当業者の目でみて特定且つ実用的な有用性があるという意味である。
101条改正法案:
(a) 一般: 有用な、プロセス(方法)、機械、製造物、或いは、物の組成を発明又は発見、或いは、それらを改良した者はだれでも、以下(b)項で規定する例外をクリアし、且つ、本条文で規定する条件と要件を満たすことによって特許を受けられる:(「新規」を削除している:筆者注)
(b)適格性を有さないもの:
(1) 以下のようにクレームされたものは適格性がない:
(A) 数式であって、上記(a)項に属するクレームの一部を構成しないもの;
(B) (i) プロセス(方法)であり、少なくとも1つのステップは機械又は製造物を参照しているが、実質的には経済、金融、ビジネス、社会、文化的、或いは、芸術的なもの;
(ii) 上記(i)に該当するプロセスであるが機械或いは製造物を利用せずには実質的には機能しないものは適格性を否定されない;
(C) プロセスであって、
(i) 人間の思考によってのみ機能するメンタルプロセス;
(ii) 人間の行動とは独立或いは人間が行動する前から自然に起こるプロセス;
(D) 人体に存在する組み換えされていない遺伝子;
(E) 自然界に存在する改変されていない自然のもの;
(2) 上記(D)及び(E)の範疇にはいるものであっても以下を満たす場合には改変或いは組み換えされていないと解釈されない(改変或いは組み換えされている:筆者):
(A) 人間の行為によって、単離、精製、濃縮、又はその他の方法で変更されたもの;又は
(B) 有用な発明或いは発見に使用された場合;
(c) 適格性
(1) クレームされた発明が適格性を備えているか否かは、次のように判断する:
(A) クレームの構成要素の何れも除外することなく、クレームされた発明全体として検討する;
(B) 以下は考慮に入れない;
(i) クレームされた発明に至った経緯;
(ii) クレームの構成要素が、周知、一般的、習慣的、或いは、自然に発生するか否か;
(iii) 発明が為された時点での技術水準;
(iv) 本条文で規定する新規性、進歩性、或いは、記載要件;
(2) 侵害
(A) 一般:侵害裁判において、争点となる発明或いは発見の主題が特許適格性を備えているか否かを決定する際には本条文に基づくこと、仮に事実審における実質的な争点がない申立ての場合においても本条文に基づき判断すること;
(B) 上記(A)において裁判所が判断をする前に、特許適格性にのみ関する限定的なディスカバリーをすることも可能である。
現在の101条(1952年に立法)
新規かつ有用なプロセス、機械、生産品、組成物、またはそれらの新規かつ有用な改良を発明ないし発見した者は、本法に定める条件および要件に従って特許を受けることができる。
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References:
現行の米国特許法101条(1952年に立法):
35 U.S.C. 101 – Inventions patentable
Whoever invents or discovers any new and useful process,
machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful
improvement thereof, may obtain a patent therefor, subject to the conditions
and requirements of this title.