USPTO’s Proposed Revision on Terminal Disclaimer

2024510
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米国特許庁のターミナルディスクレマーに対する規則改定案

Summarized by Tatsuo YABE  2024-05-12

 510日、米国特許庁はターミナルディスクレーマー(以下TD)に関する規則の改定案を公表した。同改定案によると、本願(或いは本特許)において自明性型のダブルパテント拒絶(以下、OTDP)を回避するべくTDで対応する場合には以下のような合意文書(agreement)を記載しなければならない:

 TDの根拠となる米国出願(或いは米国特許)の何れかのクレームが最終的に新規性無し、或いは、自明であるという理由で拒絶(或いは無効)と判断された場合には本願より成立する特許(或いは本件特許)は権利行使できない。」

米国特許庁によるとクレームが互いに自明のレベルの複数の特許の存在自体が企業間の競争に対する弊害となっており、競合者がそれぞれの特許を回避する策を講じる必要があり、技術革新を助長するにはTDをする際に権利行使に対する制約を設けることが望ましいということだ。 

出願実務においてOTDP拒絶が最終的に残った場合にTDで対応するという場合が多い。その理由は第1OTDP拒絶に反論する必要がない。さらに、1995年の法改正により権利期間が出願から20年となったので、TDをしたところで実質特許の有効期間への影響は少なくなった。さらに日本企業における単願で権利者を同一で維持される場合にはTDによる権利行使に対する制約を受けることもない。しかし本規則改定案が通ると関連出願が多数ある場合にTDを活用すると1件の特許が引例によって無効と判断されるとドミノ倒しのような影響を受ける可能性がある。本改定案に対するパブコメを今後(官報で公開後60日間)募るので、改定案がこのまま通るとは考え難い。何れにせよ、要Watchである。(以上筆者)

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2024510日、米国特許庁はターミナルディスクレーマー(以下TD)に関する規則の改定案を公表した。当改定案によると、本願(或いは本特許)において自明性型のダブルパテント拒絶(以下、OTDP)を回避するべくTDで対応する場合には以下のような合意文書(agreement)を記載しなければならない:

TDの根拠となる米国出願(或いは米国特許)の何れかのクレームが最終的に新規性無し、或いは、自明であるという理由で拒絶(或いは無効)と判断された場合には本願より成立する特許(或いは本件特許)は権利行使できない。

原文は冗長で読みにくいが以下の通りである:
The proposed rule change would require terminal disclaimers filed to obviate nonstatutory double patenting to include an agreement by the disclaimant that the patent in which the terminal disclaimer is filed, or any patent granted on an application in which a terminal disclaimer is filed, will be enforceable only if the patent is not tied and has never been tied directly or indirectly to a patent by one or more terminal disclaimers filed to obviate nonstatutory double patenting in which: any claim has been finally held unpatentable or invalid as anticipated or obvious by a Federal court in a civil action or by the USPTO, and all appeal rights have been exhausted; or a statutory disclaimer of a claim is filed after any challenge based on anticipation or obviousness to that claim has been made. 

簡単な例で説明すると、米国特許出願Aの審査において、米国特許出願B(或いは米国特許B)のクレームによって自明性のダブルパテントであるという拒絶(OTDP拒絶)を受けた場合に、同OTDP拒絶を回避するためにTDを提出する際に、「米国特許Bのクレームの何れかが新規性無し、あるいは、自明であるという理由で最終的に無効と判断された場合には米国出願Aより成立する米国特許Aでもって権利行使をできない」ということに合意していると記載しなければならない。 

USPTOはクレームが似通った(互いに自明のレベル)複数の特許の存在自体が企業間の競争に対する阻害要因となる可能性があり、本改訂によってTDの根拠となった特許が先行技術で最終的に無効と判断された場合にはTDで成立した特許による権利行使を回避できるので競合社がより自由に市場での競争が可能となり技術革新に繋がると述べている。

現在(現行の規則では)、OTDP拒絶を回避するために2種類のTDが活用されている。一つは、規則1.321(c)によるものでTDの関係で成立した複数の特許(TDを提出した特許とTDの根拠となった特許)が同一人所有である場合にのみ権利行使が可能であるという合意が必要である。2つ目は規則1.321(d)に基づき、共同開発の合意による複数の出願人による米国出願において、TDの関係で成立した複数の特許(TDを提出した特許とTDの根拠となった特許)は個別には権利行使をしないという合意が必要である。米国特許出願実務では規則1.321(c)によるTDが大多数である(筆者注)。

上記した現規則に基づき、OTDP拒絶を回避するためにTDで対応し成立した特許AOTDP拒絶の根拠となった特許B(或いは特許出願Bでその後特許B)がある場合に、特許Aのクレームと特許Bのクレームの有効性は個別に判断されなければならない。 See 35 USC 282(a); Simple Air Inc. v. Google LLC (Fed. Cir. 2018) 従って、競合他社が市場に参入する際に自明の関係にある複数の特許を個々に対応する必要があり多大な費用を必要とするであろう。 

【改訂規則によるTDの影響(上記した改定案による合意文書を伴いTDをする場合)】 

以下、「直接関連する」、あるいは、「間接的に関連する」という文言はTDの影響を受けるという意味で使っている。 

1
X(出願X、或いは、特許X)においてW(出願W或いは特許W)に対してTDをした場合、XW直接関連(directly tied)しているとする。

W X 

この場合のTDXWに対して一方向の関連性であり、WXに対し直接の関連性はない。即ちXTDが適用される特許で、WTDの根拠となる参照特許である。そしてWのクレームが引例によって最終的に拒絶或いは無効と判断される場合にXは権利行使不可となる。但し、Xのクレームが最終的に拒絶或いは無効と判断されたとしても、Wは権利行使不可とはならない。何故なら、改訂規則による合意文書Xにおいて提出されたからである。

さらに、XTDがされたもののXが権利化されるまでにTDが取り消された場合にはXWのクレームが無効とされても権利行使可能である。

2:
上記例1に続き
Y(出願Y、或いは、特許Y)においてX(出願X或いは特許X)に対してTDをした場合、YX直接関連(directly tied)しているとする。

W X Y

上記したようにTDの影響は一方向なので、WXにもYにも関連していない(XTD、或いは、YTDの影響はない)、さらにXYにも関連しない(YTDの影響はない)と理解される。しかし、YXに直接関連(directly tied)し、YXを介してW間接的に関連(indirectly tied)している。従って、Wのクレームが引例によって最終的に無効と判断されるとXは権利行使不可となり、さらにYも権利行使不可となる。 

3
上記例1及び例2に続き
Z(出願Z、或いは、特許Z)においてY(出願Y或いは特許Y)に対してTDをした場合、ZY直接関連(directly tied)しているとする。

W X Y Z 

Wのクレームが引例によって最終的に無効と判断されるとXは権利行使不可となり、Yも権利行使不可となり、さらに、Zも権利行使不可となる。

4PTOの例を簡略化する) 双方向のTDの場合
最初、X(出願X、或いは、特許X)においてW(出願W或いは特許W)に対してTDをした場合、XW直接関連(directly tied)している。

W X

次に、W(出願W、或いは、特許W)においてX(出願X或いは特許X)に対してTDをした場合、WX直接関連(directly tied)している。

 
この場合のTDXWに対して、且つ、WXに対して双方向の関係性であり、XWに対して直接関連し、WXに対し直接関連する。即ちXTDが適用される特許で、WTDの根拠となる参照特許であり、且つ、WTDが適用される特許で、XTDの根拠となる参照特許である。そしてWのクレームが引例によって最終的に拒絶或いは無効と判断される場合にXは権利行使不可となり、且つ、Xのクレームが引例によって最終的に拒絶或いは無効と判断される場合にWも権利行使不可となる。

5
最初、X(出願X、或いは、特許X)においてY(出願Y或いは特許Y)に対してTDをし、次に、Z(出願Z、或いは、特許Z)においてY(出願Y或いは特許Y)に対してTDをする。

X Y Z

この場合、XZは共にY直接関連(directly tied)する。従って、Yのクレームが先行技術によって最終的に無効と判断されるとXZも権利行使不可となる。しかしZXに関連しない、XZに関連しない、YX及びZに関連しない。従って、XまたはZのクレームが無効と判断されたとしても他の2件の特許の権利行使には影響しない。 

OTDP拒絶への対応の仕方】

OTDP拒絶を回避するには、さらには、上記した改訂規則による「合意文書」を回避するには以下に示すような幾つかの対応手段がある。

[1] 問題となるクレーム同士(TDする特許出願Aと参照となる特許出願B)を単一の出願に統合する;

[2] OTDPの対象となるクレームをキャンセル、あるいは、補正する;

[3] OTDP拒絶に対して自明ではないと反論する;

[4] OTDPの根拠となるものが米国特許の場合に問題となる米国出願のクレームをキャンセルし、当該米国特許を再発行出願し、キャンセルされたクレームを追加する(補正の根拠があると仮定)。 

さらに、出願審査においてOTDP拒絶を回避するためにTDを活用した場合であっても特許が発行されるまでに規則1.182に基づきTDを取り消すことで本改訂規則の「合意文書」の影響を排除できる。

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(1) US Patent Related 

(2) Case Laws 

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